竈門家のお姉ちゃん
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炭治郎が一歳になった頃。12月という雪が多い冬にまた新しい家族が誕生した。今日はその誕生から経って新年になったおめでたい日である。
朝はお母さんの手伝いをしておせち料理を美味しく食べた。夜には父さんがヒノカミ神楽をやる予定である。
新しい家族は女の子である。自分以外の女の子が産まれてきてとても嬉しくなった。
お母さんのお腹が膨らんでいたからなんとなく予想はしていたのだ。そして父さんと一緒に名前を考えたり、藤の花を多く取ってきたりした。
成長したらガールズトークが出来るのかと思うと笑顔が止まらない。そんな私を見て両親はまた笑った。
居間には赤子を抱き抱えるお母さんと炭治郎がいる。忍び足でお母さんに近づくと後ろから赤子を覗き込んだ。しわくちゃな赤い顔である。炭治郎にそっくりでとても愛らしい。
「燈火、禰豆子に明けましておめでとうって言うのよ」
優しい声音でお母さんが言った。私はこくりと頷いて禰豆子を見る。
「明けましておめでとう」
私の可愛い妹。ねずこ、禰豆子。とても良い響きである。どこぞの師範よりは雲泥の差があるだろうネーミングセンスの持ち主だ。不遜なことを思いながら、私は禰豆子の頬にそっと手を伸ばして当てる。
まだ私の手は6歳のちっちゃい手だけど、いつか誰かを支えられる大きな手となるだろう。禰豆子は可愛いくて美人な子に育って誰かに襲われるかもしれない。
だけどそんなことをする輩がいたらお姉ちゃんが絶対に守ってみせるから。あとは日本一、いや世界一の美女として育てたい。ふふふと笑っているとお母さんも笑い始める。「素敵な笑い方ね」と褒められた。少し恥ずかしくなった。
そのまま禰豆子を眺めていると頭に優しい温もりが加わった。見ればお母さんが私の頭を撫でていた。
「燈火。禰豆子がもう少し大きくなったら家族みんなでお出かけしようか」
「お母さんほんと!?」
嬉しくなって大声で言ってしまったあとに失態に気づく。慌てて自身の口を押さえて禰豆子を見た。禰豆子はまだすやすやと母の腕の中で寝ていた。
危ない……。最近体に精神が引っ張られるせいで子供っぽくなってきている。今度から気を付けなければと注意しつつお母さんの言葉を催促した。お母さんは私の頭を撫でながら話し始めた。
「お母さんとお父さんね、燈火とまだ1度もお出かけしてないことに気付いたの。燈火はまだ小さいのに炭治郎や禰豆子のことを気遣ってくれて本当に嬉しかった。____だからそのご褒美として受け取ってくれないかしら」
だめ? と聞くお母さんにゆるゆると首を振る。
「ううん。全然駄目なんかじゃない」
ありがとうと言ったとき何故だか涙が出た。稽古が辛かった。弟妹を守ると言っても理由1つで頑張るのは辛かった。両親はかまってくれなくて寂しかった。悲しかった。
ポロポロと泣き出す私にお母さんも泣き出してくる。お母さんの涙は綺麗で透明な雫だった。
「燈火、ありがとう」
「う"ん"……」
お母さんと一緒に静かに泣いた。途中でお父さんも居間に入ってきて、私とお母さんを温かく包み込んだ。