【FF14】メイドさんの夢旅行
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「お久しぶりです!」
「お前、なぜここにいる」
星がきらめき瞬く星海。
たゆたう魂のひとつ、エメトセルクはありえない来客に驚愕した。
「私は次元移動中、すべてが夢として認識されているようです。
生者ではなく幻として判別され、この死後の世界にたどり着けてしまいました。
ここは時間さえも関係ない場所ですからね。
あとは“冥王様”の許しを得るだけですよ」
アトラは夢見の力を使い、ある確認のために星海に来ていた。来ること自体、可能だったのだ。
「星海の手前で話したのは何だったんだ……?」
エメトセルクの疑問は、深い海のように静かに星海に溶けていく。
薄紫の髪を揺らす人物は、にこにことアトラを歓迎した。
「なんてぶっ飛んでるんだ、アトラアティウス!」
「ヒュトロダエウスさん!」
アトラも全力で応える。
「ヒュトロダエウスさんに確認したことがあったので、来たんですよ」
アトラは約束していたクリスタルの記録を取り出し、解説する。
「また記録を使って“夢幻”を閉じ込めてみました。見てみてください」
「おやおや。ワタシはもう局長でもないというのに……
でも完成品にはすごーく興味があるよ!
海に溶ける前に、ぜひ見せてもらおう。
ほら、エメトセルクも」
そそくさと距離を取ろうとするエメトセルクを、ヒュトロダエウスが素早く言葉で捕らえた。
「やめろやめろ。巻き込まれるのはごめんだ」
「エメトセルクのあれは面倒ごとは厭だけど、見てみたいって意味だよ。ワタシは面倒ごとに巻き込まれるエメトセルクがぜひとも見たいな」
「ラジャー!」
「変な入れ知恵をするな!」
夢幻の記録は、古代の世界を景色ごと閉じ込めたものだった。
人通りは、空気は、建物は――すべて現実通りか。
アトラはヒュトロダエウスに見てもらい、アドバイスを聞きながら、「こうしたほうがいい」「ああしたほうがいい」と記録を修正する。
エメトセルクも知識を遺憾なく発揮し、クリスタルの記録の精度は、アトラの想定を大きく上回った。
夢幻のささやかなお披露目が終わり、アトラは近況をちらほら報告する。
アゼムやカロンの魂の活躍はまだ続いていると。
一方で、ヒュトロダエウスからは、ヴェーネスの魂は早々に海に溶けてしまったことも伝えられた。
アトラはヴェーネスのことに関して「やはり」と思っていたものの、喪失感は大きかった。
自身の時代ではまだヴェーネスは健在であったが、意志疎通が難しくなるほど力は弱っているはずだ。
ハイデリンへの支援を考えていると、ヒュトロダエウスが話を切り出した。
「アトラアティウス……いや、アトラ、と呼んでもいいのかな」
「もちろんです。なんでしょうか」
「君の旅の記録を見たよ。あの時はイデアを渡して、花火の鑑賞をしてたらいなくなってしまうんだもの。伝えておきたくて」
ヒュトロダエウスは、その言葉を大切に扱うようにつなげる。
「よい旅をありがとう。アゼムの辛さも、エメトセルクの辛さも、キミが払っていてくれていたんだね……君は、すごいな」
アトラはキョトンとする。
おせっかいが役に立ったのかどうか、今でもわからない。そこまでのことが、果てしてできたのかどうか。
アゼムもエメトセルクも、自分たちで運命を選んでいたのだから。
「そうであれば、こんなに幸せなことはありません。私でよかったのなら」
「フフ。面白かったよ。特にエメトセルクの影に啖呵を切るところなんて……!」
ヒュトロダエウスが喉でくつくつ笑う。
アトラは頭に疑問符が浮かぶが、すぐに思い出して慌てた。
「え? あ。わああーっ! そ、それエメトセルク様に見せてないですよね!?」
「ええ!? み、見てるに……プフ、見てるに決まっているだろう! ワタシの記録媒体を覗かなくたって、彼だって仕事で記録装置を持ち歩いてたんだから!」
「うわああーーーっ!!」
アトラはのけぞり、思う存分恥ずかしさを発散させた。
ヒュトロダエウスは霊体で存在しないはずの腹筋がひきつっているように見え、腹を抑えて笑っていた。
「というか、あのイデアを形にする協力者はほかでもないエメトセルクだよ?」
黒い涙の湖に飲み込まれた時……あれもすべて記録されており、聞かれていたのだ。
これはもう、アトラも観念するしかなかった。
「キミが実はハーデスの名前を知っていたことも、もうひとつの名前が絵理沙なことも、その時にはすでに知っていたからね」
「え?」
アトラは思い当たる。星海の手前の狭間。
お互い名前を教え合っていたが、実のところ、お互いに知っていたということ。
それをエメトセルクだけは知っていた様子だったことに、アトラは今更気が付いた。
「それも含めてイデアにいれようと思ったけれど……君に渡したクリスタルには記録してないから安心していい」
「本体のイデア、どこすか。現代のアニドラス・アナムネーシスに保存でもしてあろうものなら、かっさらいにいきます」
「ははは。フフフ。もちろん、教えておこう、アトラ。いざというときのために記録というのは……複数残しておくものさ」
「のおぉう!」
「観念することだな」
エメトセルクが後ろからずずんと立ちはだかる。
「勝手に人の記憶を掘り返して、勝手に首を突っ込んで……疲れないのか?」
「うっ……す、すみません」
「……あの時のことを言うのなら、影に噛みついたのは、まあ……悪くなかった。
悪くなかったおかげで、見たくもなかったものまで見せられたがな」
隣で手を叩いて笑う寸前のヒュトロダエウスがニコニコしながらエメトセルクの顔を覗き込む。
「もう、素直じゃないなあ。“ありがとう”と言えばいいのに」
「笑わせるな」
1ミリも笑ってないエメトセルクは、ため息をこぼす。隣でくつくつ笑うヒュトロダエウスに肩をすくめた。
それを見たアトラは、エメトセルクの警戒心が解けたことを理解し、肩の力をそっと抜いた。
――こうして、あの時の小さな波乱も、今では思い出話のひとつに変わったのだ。
記録の中に閉じ込められた景色と、言葉と、笑い声。どれも消えずに、静かに時の中で輝いている。
アトラは深く息を吸い込み、星海を見渡す。
まだ終わらぬ魂たちの活躍も、喪失も、すべてはこの世界の一部だと、心の中で静かに噛みしめる。
それぞれの思いを胸に、三人はそれぞれの道を歩み始める――だが、この時の記憶だけは、確かに三人の心に温かく残ったままだった。
「お前、なぜここにいる」
星がきらめき瞬く星海。
たゆたう魂のひとつ、エメトセルクはありえない来客に驚愕した。
「私は次元移動中、すべてが夢として認識されているようです。
生者ではなく幻として判別され、この死後の世界にたどり着けてしまいました。
ここは時間さえも関係ない場所ですからね。
あとは“冥王様”の許しを得るだけですよ」
アトラは夢見の力を使い、ある確認のために星海に来ていた。来ること自体、可能だったのだ。
「星海の手前で話したのは何だったんだ……?」
エメトセルクの疑問は、深い海のように静かに星海に溶けていく。
薄紫の髪を揺らす人物は、にこにことアトラを歓迎した。
「なんてぶっ飛んでるんだ、アトラアティウス!」
「ヒュトロダエウスさん!」
アトラも全力で応える。
「ヒュトロダエウスさんに確認したことがあったので、来たんですよ」
アトラは約束していたクリスタルの記録を取り出し、解説する。
「また記録を使って“夢幻”を閉じ込めてみました。見てみてください」
「おやおや。ワタシはもう局長でもないというのに……
でも完成品にはすごーく興味があるよ!
海に溶ける前に、ぜひ見せてもらおう。
ほら、エメトセルクも」
そそくさと距離を取ろうとするエメトセルクを、ヒュトロダエウスが素早く言葉で捕らえた。
「やめろやめろ。巻き込まれるのはごめんだ」
「エメトセルクのあれは面倒ごとは厭だけど、見てみたいって意味だよ。ワタシは面倒ごとに巻き込まれるエメトセルクがぜひとも見たいな」
「ラジャー!」
「変な入れ知恵をするな!」
夢幻の記録は、古代の世界を景色ごと閉じ込めたものだった。
人通りは、空気は、建物は――すべて現実通りか。
アトラはヒュトロダエウスに見てもらい、アドバイスを聞きながら、「こうしたほうがいい」「ああしたほうがいい」と記録を修正する。
エメトセルクも知識を遺憾なく発揮し、クリスタルの記録の精度は、アトラの想定を大きく上回った。
夢幻のささやかなお披露目が終わり、アトラは近況をちらほら報告する。
アゼムやカロンの魂の活躍はまだ続いていると。
一方で、ヒュトロダエウスからは、ヴェーネスの魂は早々に海に溶けてしまったことも伝えられた。
アトラはヴェーネスのことに関して「やはり」と思っていたものの、喪失感は大きかった。
自身の時代ではまだヴェーネスは健在であったが、意志疎通が難しくなるほど力は弱っているはずだ。
ハイデリンへの支援を考えていると、ヒュトロダエウスが話を切り出した。
「アトラアティウス……いや、アトラ、と呼んでもいいのかな」
「もちろんです。なんでしょうか」
「君の旅の記録を見たよ。あの時はイデアを渡して、花火の鑑賞をしてたらいなくなってしまうんだもの。伝えておきたくて」
ヒュトロダエウスは、その言葉を大切に扱うようにつなげる。
「よい旅をありがとう。アゼムの辛さも、エメトセルクの辛さも、キミが払っていてくれていたんだね……君は、すごいな」
アトラはキョトンとする。
おせっかいが役に立ったのかどうか、今でもわからない。そこまでのことが、果てしてできたのかどうか。
アゼムもエメトセルクも、自分たちで運命を選んでいたのだから。
「そうであれば、こんなに幸せなことはありません。私でよかったのなら」
「フフ。面白かったよ。特にエメトセルクの影に啖呵を切るところなんて……!」
ヒュトロダエウスが喉でくつくつ笑う。
アトラは頭に疑問符が浮かぶが、すぐに思い出して慌てた。
「え? あ。わああーっ! そ、それエメトセルク様に見せてないですよね!?」
「ええ!? み、見てるに……プフ、見てるに決まっているだろう! ワタシの記録媒体を覗かなくたって、彼だって仕事で記録装置を持ち歩いてたんだから!」
「うわああーーーっ!!」
アトラはのけぞり、思う存分恥ずかしさを発散させた。
ヒュトロダエウスは霊体で存在しないはずの腹筋がひきつっているように見え、腹を抑えて笑っていた。
「というか、あのイデアを形にする協力者はほかでもないエメトセルクだよ?」
黒い涙の湖に飲み込まれた時……あれもすべて記録されており、聞かれていたのだ。
これはもう、アトラも観念するしかなかった。
「キミが実はハーデスの名前を知っていたことも、もうひとつの名前が絵理沙なことも、その時にはすでに知っていたからね」
「え?」
アトラは思い当たる。星海の手前の狭間。
お互い名前を教え合っていたが、実のところ、お互いに知っていたということ。
それをエメトセルクだけは知っていた様子だったことに、アトラは今更気が付いた。
「それも含めてイデアにいれようと思ったけれど……君に渡したクリスタルには記録してないから安心していい」
「本体のイデア、どこすか。現代のアニドラス・アナムネーシスに保存でもしてあろうものなら、かっさらいにいきます」
「ははは。フフフ。もちろん、教えておこう、アトラ。いざというときのために記録というのは……複数残しておくものさ」
「のおぉう!」
「観念することだな」
エメトセルクが後ろからずずんと立ちはだかる。
「勝手に人の記憶を掘り返して、勝手に首を突っ込んで……疲れないのか?」
「うっ……す、すみません」
「……あの時のことを言うのなら、影に噛みついたのは、まあ……悪くなかった。
悪くなかったおかげで、見たくもなかったものまで見せられたがな」
隣で手を叩いて笑う寸前のヒュトロダエウスがニコニコしながらエメトセルクの顔を覗き込む。
「もう、素直じゃないなあ。“ありがとう”と言えばいいのに」
「笑わせるな」
1ミリも笑ってないエメトセルクは、ため息をこぼす。隣でくつくつ笑うヒュトロダエウスに肩をすくめた。
それを見たアトラは、エメトセルクの警戒心が解けたことを理解し、肩の力をそっと抜いた。
――こうして、あの時の小さな波乱も、今では思い出話のひとつに変わったのだ。
記録の中に閉じ込められた景色と、言葉と、笑い声。どれも消えずに、静かに時の中で輝いている。
アトラは深く息を吸い込み、星海を見渡す。
まだ終わらぬ魂たちの活躍も、喪失も、すべてはこの世界の一部だと、心の中で静かに噛みしめる。
それぞれの思いを胸に、三人はそれぞれの道を歩み始める――だが、この時の記憶だけは、確かに三人の心に温かく残ったままだった。