【FF14】メイドさんの夢旅行
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「ところで……私はアトラ、つまり元の体の持ち主に、体を返さなきゃいけないんじゃない?」
『光の指先』の施設で記録整理に没頭しながらも、アトラの胸の奥にはずっと引っかかっていた疑問があった。
意を決して口にすると、未来のアトラは書類から視線を外し、腕を組む。
「うーん。中の人も、体の中からずっと見てきたんだ。明日からでも交代すれば、元の生活に戻れるだろうね」
そこで、わざとらしく肩をすくめる。
「――でも、ご覧の通り。私は返していないけど」
「えっ、それ……アトラ本人は何か言ってたの?」
「“秘密の組織とかかっこいいし、父のこともっとこき使ってください”だってさ」
「わお……根深い恨みが見えるんだけど」
軽口のあとで、未来のアトラの声音がすっと落ち着く。
「それにね。異世界の魂と融合しているからこそ、次元を渡れる。アトラと絵理沙を完全に分けたら、その力は失われる。
つまり、交代はできても分裂は不可能――結局、私たちは“アトラ”として生きるしかない」
アトラは言葉を失い、未来の自分の横顔を見つめる。
「私もあんたも、どうしようもなく巻き込まれた存在さ。どこから始まったのかすら分からない。絵理沙である私だって、別の絵理沙に連れてこられたんだからね」
未来のアトラは最後に、柔らかく笑った。
「気負うことはないよ。感謝の気持ちさえ忘れなければ、ね」
「ほ、ほ~……。なんとなく、“どうしようもない”ってことだけは分かった」
「それにね。あんたの中に眠ってるアトラは、まだ意識が戻ってない。ショックで心を閉じて、ずっと活動停止のまま。
だから体を返そうにも、相手が応答してくれないんだ。結局、私たちは“できることをやる”しかないよ」
「そうなんだ……。なんか、知らない情報ばっか出てくるなあ」
「そういえば――あんたがまだ知らないこと、もうひとつあったね。いなくなった父親の件だけど……拉致されてたんだよ」
アトラの手が、書類の上で固まった。
「……は? 拉致!?」
「うん。この時代の“光の指先”で代表をやってもらっててさ。そこでアシエンに目をつけられて、さらわれちゃった。
だからもう家には帰せないんだ。二度目に捕まったら洒落にならないからね」
「そ、そうだったんだ……。じゃあ、お父さんは悪くなかったんじゃ……?」
「本人曰く“せめて連絡くらいはしろよ”とのこと。だから、恨みはまだ根深いね」
「十六歳なら、まあ……怒るのも当然か……」
絵理沙から見れば――アトラの父が光の指先に関わったのは、自分がきっかけを作ったからかもしれない。
そう考えかけて、彼女は唇を噛んで思考を止めた。
余計なことを言えば、今の自分の首を絞めかねない。
それに、もし未来の自分が対策をしなかったのなら、それもまた「やむをえない理由」があったのだろう。
そう胸の中で勝手に締めくくった。
「あ、そうだ。お休みをください」
アトラは未来のアトラに向かって挙手した。
「おや、勤務熱心なあんたが休暇? よほどの用事だね。……ヒロシに会いに行くの?」
未来アトラはにやりと口角を上げた。
「心読んでるでしょ……」
アトラはむっとする。
「読まなくても分かるよ。そういうときぐらいしか自分から動かないじゃん?」
図星を突かれて、アトラはぐうの音も出なかった。
無事に休暇をもらい、アトラは燦々と太陽輝く無人島に来ていた。
この島を離れてからアトラはずいぶん時間が経過しているので懐かしい気持ちだった。
元々の時系列以外の移動先は前回移動した瞬間に指定できるため、ヒロシはアトラと昨日会ったように接してくれた。
「国に居場所を見つけたので、帰国することをお伝えしに来ました。
それで、いくつかお土産を持って帰りたいのです。
一生懸命働きますので、もらって帰ってもいいですか?」
もちろんお気持ちもお渡しいたします!
とアトラが気合を入れてヒロシにお願いするも、彼は「何言ってるの??」と言いたげに首を傾げた。
「欲しいだけ持って帰って。
君にはお世話になったから」
目の前に見える海のように広い心でヒロシはそれ以上のことを快諾してくれたのだった。
「そうだ! 私の能力について話していませんでした。
それを閉じ込めたイデアを……この島で使ってほしいんです!」
アトラは夢見の力で場所も時間も移動できること、夢幻の力で危険のない幻影を生み出せることをヒロシに説明し、ヒュトロダエウスから譲り受けたイデアのクリスタルをヒロシに渡す。魔法が使えるヒロシであれば、問題なく使えるものだ。
夜空を裂くように花火が咲き、海面にその光が映り込む。
きらめく波と夜空が一瞬だけ溶け合って、世界の境界が曖昧になる。
ヒロシはその光景を見上げながら、失われていた記憶を手繰り寄せるように微笑んだ。
2人で夜空を見上げる。
無人島に、もう一つ加えられたエンターテイメント。
ヒロシの来客があるときは、この花火が打ち上げられることとなった。
「きっと、また来るんだろう?」
「ええ、もちろん! 今度は――」
空に散った花火は、再訪を告げる約束のようだった。
これからも島へ訪れることをヒロシと話した後、
アトラはまず一番に皇帝へ手土産を持っていった。
「陛下。お土産です」
文化記録局の書斎に時折顔を出すその時を狙って、アトラは包みを差し出す。
「……なんだこれは」
「“新しい事業”にご融資いただけたということで、ご挨拶に参りました。
蜂蜜とココナッツオイルと……南国リゾートの服一式です」
「……」
皇帝は心当たりを付けたように目を細める。
あの牢屋を埋め尽くしていた、妙に陽気な品々の数々。
どこで、なぜ、誰から……と問いただす気になりかけたが、続きを聞けば頭痛の種になるだろうことはわかっていた。
だからこそ、彼は短く息を吐き、口を閉ざした。
「あ、そうですそうです」
「そうですではない。これは、いらな……」
「英雄殿と作りました」
「……英雄?」
「はい。未来で必ずお会いになりますから、ご心配には及びません」
「輪をかけて気苦労が増えただけだろうが」
結局、なんだかんだ押しに弱い皇帝の懐は、瓶と布でずしりと重くなったのだった。
『光の指先』の施設で記録整理に没頭しながらも、アトラの胸の奥にはずっと引っかかっていた疑問があった。
意を決して口にすると、未来のアトラは書類から視線を外し、腕を組む。
「うーん。中の人も、体の中からずっと見てきたんだ。明日からでも交代すれば、元の生活に戻れるだろうね」
そこで、わざとらしく肩をすくめる。
「――でも、ご覧の通り。私は返していないけど」
「えっ、それ……アトラ本人は何か言ってたの?」
「“秘密の組織とかかっこいいし、父のこともっとこき使ってください”だってさ」
「わお……根深い恨みが見えるんだけど」
軽口のあとで、未来のアトラの声音がすっと落ち着く。
「それにね。異世界の魂と融合しているからこそ、次元を渡れる。アトラと絵理沙を完全に分けたら、その力は失われる。
つまり、交代はできても分裂は不可能――結局、私たちは“アトラ”として生きるしかない」
アトラは言葉を失い、未来の自分の横顔を見つめる。
「私もあんたも、どうしようもなく巻き込まれた存在さ。どこから始まったのかすら分からない。絵理沙である私だって、別の絵理沙に連れてこられたんだからね」
未来のアトラは最後に、柔らかく笑った。
「気負うことはないよ。感謝の気持ちさえ忘れなければ、ね」
「ほ、ほ~……。なんとなく、“どうしようもない”ってことだけは分かった」
「それにね。あんたの中に眠ってるアトラは、まだ意識が戻ってない。ショックで心を閉じて、ずっと活動停止のまま。
だから体を返そうにも、相手が応答してくれないんだ。結局、私たちは“できることをやる”しかないよ」
「そうなんだ……。なんか、知らない情報ばっか出てくるなあ」
「そういえば――あんたがまだ知らないこと、もうひとつあったね。いなくなった父親の件だけど……拉致されてたんだよ」
アトラの手が、書類の上で固まった。
「……は? 拉致!?」
「うん。この時代の“光の指先”で代表をやってもらっててさ。そこでアシエンに目をつけられて、さらわれちゃった。
だからもう家には帰せないんだ。二度目に捕まったら洒落にならないからね」
「そ、そうだったんだ……。じゃあ、お父さんは悪くなかったんじゃ……?」
「本人曰く“せめて連絡くらいはしろよ”とのこと。だから、恨みはまだ根深いね」
「十六歳なら、まあ……怒るのも当然か……」
絵理沙から見れば――アトラの父が光の指先に関わったのは、自分がきっかけを作ったからかもしれない。
そう考えかけて、彼女は唇を噛んで思考を止めた。
余計なことを言えば、今の自分の首を絞めかねない。
それに、もし未来の自分が対策をしなかったのなら、それもまた「やむをえない理由」があったのだろう。
そう胸の中で勝手に締めくくった。
「あ、そうだ。お休みをください」
アトラは未来のアトラに向かって挙手した。
「おや、勤務熱心なあんたが休暇? よほどの用事だね。……ヒロシに会いに行くの?」
未来アトラはにやりと口角を上げた。
「心読んでるでしょ……」
アトラはむっとする。
「読まなくても分かるよ。そういうときぐらいしか自分から動かないじゃん?」
図星を突かれて、アトラはぐうの音も出なかった。
無事に休暇をもらい、アトラは燦々と太陽輝く無人島に来ていた。
この島を離れてからアトラはずいぶん時間が経過しているので懐かしい気持ちだった。
元々の時系列以外の移動先は前回移動した瞬間に指定できるため、ヒロシはアトラと昨日会ったように接してくれた。
「国に居場所を見つけたので、帰国することをお伝えしに来ました。
それで、いくつかお土産を持って帰りたいのです。
一生懸命働きますので、もらって帰ってもいいですか?」
もちろんお気持ちもお渡しいたします!
とアトラが気合を入れてヒロシにお願いするも、彼は「何言ってるの??」と言いたげに首を傾げた。
「欲しいだけ持って帰って。
君にはお世話になったから」
目の前に見える海のように広い心でヒロシはそれ以上のことを快諾してくれたのだった。
「そうだ! 私の能力について話していませんでした。
それを閉じ込めたイデアを……この島で使ってほしいんです!」
アトラは夢見の力で場所も時間も移動できること、夢幻の力で危険のない幻影を生み出せることをヒロシに説明し、ヒュトロダエウスから譲り受けたイデアのクリスタルをヒロシに渡す。魔法が使えるヒロシであれば、問題なく使えるものだ。
夜空を裂くように花火が咲き、海面にその光が映り込む。
きらめく波と夜空が一瞬だけ溶け合って、世界の境界が曖昧になる。
ヒロシはその光景を見上げながら、失われていた記憶を手繰り寄せるように微笑んだ。
2人で夜空を見上げる。
無人島に、もう一つ加えられたエンターテイメント。
ヒロシの来客があるときは、この花火が打ち上げられることとなった。
「きっと、また来るんだろう?」
「ええ、もちろん! 今度は――」
空に散った花火は、再訪を告げる約束のようだった。
これからも島へ訪れることをヒロシと話した後、
アトラはまず一番に皇帝へ手土産を持っていった。
「陛下。お土産です」
文化記録局の書斎に時折顔を出すその時を狙って、アトラは包みを差し出す。
「……なんだこれは」
「“新しい事業”にご融資いただけたということで、ご挨拶に参りました。
蜂蜜とココナッツオイルと……南国リゾートの服一式です」
「……」
皇帝は心当たりを付けたように目を細める。
あの牢屋を埋め尽くしていた、妙に陽気な品々の数々。
どこで、なぜ、誰から……と問いただす気になりかけたが、続きを聞けば頭痛の種になるだろうことはわかっていた。
だからこそ、彼は短く息を吐き、口を閉ざした。
「あ、そうですそうです」
「そうですではない。これは、いらな……」
「英雄殿と作りました」
「……英雄?」
「はい。未来で必ずお会いになりますから、ご心配には及びません」
「輪をかけて気苦労が増えただけだろうが」
結局、なんだかんだ押しに弱い皇帝の懐は、瓶と布でずしりと重くなったのだった。