【FF14】メイドさんの夢旅行
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ディアナの提案から、数日後。
一体、皇帝陛下にどう話しかけたものかと、アトラは考えていた。これといったキッカケも、これから先の計画も特に練っていない。
アトラは人気のない廊下の床掃除をしていた。
廊下のT字路に差し掛かる。
フラワースタンドの上に花瓶が置かれており、温室で育てられた贅沢の象徴である花が飾られていた。
その上には、威光を感じるほどのおおきな国旗が垂れ下がっている。
血のつながりを表す鎖のシンボル。
アトラは、その国旗を前にしたことにより、ここがファイナルファンタジーXIVの世界で、この身に起きている現実なのだと改めて実感した。
ひざを折り、身を屈めた。
「皇帝陛下のご英断とご尽力により、この国が支えられておりますこと、深く尊敬いたします」
ディアナの協力には、皇帝の前へでる必要がある。
練習も兼ねて、国旗によって敬服した気持ちを国旗を通して皇帝陛下に申し上げる。
皇族の方々に会うこともあるだろうと、裏方の仕事をする傍ら、先輩方に城の最低限のマナーを教えてもらうことがあった。
実際には、あこがれていたファイナルファンタジーの世界に入れただけでなく、なんとか無事に生きている今日を、この世界に自身を連れてきた存在に祈ったとも言える。
誰が連れてきたのかは、わかりもしない事であった。
「君のような若者がめずらしい」
重たく威厳を感じる声がして、アトラは周囲を確認する。
そこには、魔導城で過ごす格好をした、見覚えのある人が立っていた。
アトラは静寂そのものの空間で、まさかの人物に息を忘れた。
「君の挨拶がどれほど本心からのものか、興味深いものだな」
星のように煌めく金色の瞳が、こちらを試すように流し目を送る。
彼はゆっくりと、取るに足らない小物を、追い詰めるつもりもなく、弄ぶように歩を進めてくる。
戦慄と、確かな尊敬。
アトラの胸に、それらは渦巻いた。
「皇帝陛下、お、お目にかかれてこう、えいです……」
とっさに礼をするものの、初めての皇族……しかもその頂点である皇帝ソル・ゾス・ガルヴァスを前にアトラは緊張してまう。
自分でもわかるほどぎこちない挨拶になった。
――こんなとこでもハードモードかよ!
アトラは転生したての境遇を、彷彿とさせるできごとだと感じた。心の準備もないうちに、現実から襲ってくる。
「それで? なぜ国旗に対して挨拶していたんだ。皇帝陛下ならこちらにいるが」
金色の瞳が横から覗き込む。軽口に見えて、その奥に探るような光があった。
――これはきっと、視られている。
アトラの背筋に冷たいものが走る。とっさに口を開くが、言葉が出てこない。
皇帝は一拍置いて、ふっと口角を上げた。
「冗談だ。そう固くなるな」
それこそ冗談じゃない。
アトラは吹き出た汗をこっそりと拭った。
「名は何という?」
「はい。アトラと申します。陛下」
皇帝ソルは、アトラを改めて見た。
「……そのうち、お前を呼ぶことになるかもしれん。今日は失礼しよう」
初対面の時とも、先程の驚きとも違う態度で、皇帝ソルはなにやら急いで去っていった。
「いったい、なんだったの……というか、呼ぶって、なにかしちゃった?」
アトラは息を吐き、震える指先で額の汗を拭った。
転生チート主人公が言いそうなセリフを言ったところで、欲しいパワフルなチートは手に入らなかった。
アトラはしばらく力が抜けて、動けそうになかった。
アトラの元を去ったあと、皇帝ソルは自室に戻り、側近を呼びつける。
いわく。
「愛国心が強く、皇族のそばで働くのにふさわしい使用人を見つけた。名はアトラという。
彼女の出自を調査し、必要な教育を施し、皇室の使用人として働けるようにしてやってくれ」
と言い渡した。
側近はすぐ業務に取り掛かり、部屋を後にする。
皇帝ソルは、窓の外で降り続ける雪を見てつぶやく。
「あんな魂の色も、混ざりも見たことがない。あれはいったい何なんだ。
知っているはずなのに、思い出せない……何なんだ、この感覚は」
その顔には、警戒の色が濃く現れていた。
一体、皇帝陛下にどう話しかけたものかと、アトラは考えていた。これといったキッカケも、これから先の計画も特に練っていない。
アトラは人気のない廊下の床掃除をしていた。
廊下のT字路に差し掛かる。
フラワースタンドの上に花瓶が置かれており、温室で育てられた贅沢の象徴である花が飾られていた。
その上には、威光を感じるほどのおおきな国旗が垂れ下がっている。
血のつながりを表す鎖のシンボル。
アトラは、その国旗を前にしたことにより、ここがファイナルファンタジーXIVの世界で、この身に起きている現実なのだと改めて実感した。
ひざを折り、身を屈めた。
「皇帝陛下のご英断とご尽力により、この国が支えられておりますこと、深く尊敬いたします」
ディアナの協力には、皇帝の前へでる必要がある。
練習も兼ねて、国旗によって敬服した気持ちを国旗を通して皇帝陛下に申し上げる。
皇族の方々に会うこともあるだろうと、裏方の仕事をする傍ら、先輩方に城の最低限のマナーを教えてもらうことがあった。
実際には、あこがれていたファイナルファンタジーの世界に入れただけでなく、なんとか無事に生きている今日を、この世界に自身を連れてきた存在に祈ったとも言える。
誰が連れてきたのかは、わかりもしない事であった。
「君のような若者がめずらしい」
重たく威厳を感じる声がして、アトラは周囲を確認する。
そこには、魔導城で過ごす格好をした、見覚えのある人が立っていた。
アトラは静寂そのものの空間で、まさかの人物に息を忘れた。
「君の挨拶がどれほど本心からのものか、興味深いものだな」
星のように煌めく金色の瞳が、こちらを試すように流し目を送る。
彼はゆっくりと、取るに足らない小物を、追い詰めるつもりもなく、弄ぶように歩を進めてくる。
戦慄と、確かな尊敬。
アトラの胸に、それらは渦巻いた。
「皇帝陛下、お、お目にかかれてこう、えいです……」
とっさに礼をするものの、初めての皇族……しかもその頂点である皇帝ソル・ゾス・ガルヴァスを前にアトラは緊張してまう。
自分でもわかるほどぎこちない挨拶になった。
――こんなとこでもハードモードかよ!
アトラは転生したての境遇を、彷彿とさせるできごとだと感じた。心の準備もないうちに、現実から襲ってくる。
「それで? なぜ国旗に対して挨拶していたんだ。皇帝陛下ならこちらにいるが」
金色の瞳が横から覗き込む。軽口に見えて、その奥に探るような光があった。
――これはきっと、視られている。
アトラの背筋に冷たいものが走る。とっさに口を開くが、言葉が出てこない。
皇帝は一拍置いて、ふっと口角を上げた。
「冗談だ。そう固くなるな」
それこそ冗談じゃない。
アトラは吹き出た汗をこっそりと拭った。
「名は何という?」
「はい。アトラと申します。陛下」
皇帝ソルは、アトラを改めて見た。
「……そのうち、お前を呼ぶことになるかもしれん。今日は失礼しよう」
初対面の時とも、先程の驚きとも違う態度で、皇帝ソルはなにやら急いで去っていった。
「いったい、なんだったの……というか、呼ぶって、なにかしちゃった?」
アトラは息を吐き、震える指先で額の汗を拭った。
転生チート主人公が言いそうなセリフを言ったところで、欲しいパワフルなチートは手に入らなかった。
アトラはしばらく力が抜けて、動けそうになかった。
アトラの元を去ったあと、皇帝ソルは自室に戻り、側近を呼びつける。
いわく。
「愛国心が強く、皇族のそばで働くのにふさわしい使用人を見つけた。名はアトラという。
彼女の出自を調査し、必要な教育を施し、皇室の使用人として働けるようにしてやってくれ」
と言い渡した。
側近はすぐ業務に取り掛かり、部屋を後にする。
皇帝ソルは、窓の外で降り続ける雪を見てつぶやく。
「あんな魂の色も、混ざりも見たことがない。あれはいったい何なんだ。
知っているはずなのに、思い出せない……何なんだ、この感覚は」
その顔には、警戒の色が濃く現れていた。