【FF14】メイドさんの夢旅行
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「おはよう、アトラ・ダス・アティウス」
柔らかな声が、夢の底から響いた。
その響きに、アトラは静かに目を細める。
――夢か。なんだか懐かしい声だ。
振り返れば、そこに立っていたのは影の案内人。
「ああ、久しぶり。どうしたのさ。
過去の世界にいたとき、私の体が突然消えていくのにはびっくりしたよ」
アトラは肩をすくめて影の案内人を見る。
「大昔の過去への干渉は、後々大きな問題になりかねないからね。
しっかり管理させてもらったよ」
影の案内人は悪びれる様子もない。
「そう言えば、もう“ダス”だったっけ。出世したじゃない」
影の案内人は、少しふざけたように笑ってみせた。
アトラは苦笑して肩をすくめる。
「書斎係ってだけなんだけどね。でも、性に合ってて助かるよ」
「それでも“皇帝の直轄”なんでしょう? ま、あの皇帝が書斎整理の名目であんたに職を与えた時点で、答えは出てたようなもんだけど」
何かを知っている口ぶり。アトラはその含みを問い返すことなく、静かにうなずいた。
――そう。
思えばあの頃は、影の案内人の言葉にすがるしかなかった。
だが今は、違う。自分で考え、自分で決めることができる。
だからこそ、この夢に来た彼女の言葉に、今は少しの余裕を持って向き合える。
「……ところで」
「うん?」
「あんたの正体についてなんだけどさ。今まで使った夢見の力、ほとんどあんたがサポートしてたんだよね?」
アトラの問いに、影の案内人は口元に手を当て、ふふと笑う。
「まあ、皇帝があれだけアーテリスの文化底上げに傾けば、ディアナたちが危惧してた“世界崩壊”の線は消えるしね。
それどころか支援の幅を広げるって言うじゃないか。表では世界統一って言ってても、別の目標に動き出してるのは目に見えてるよね。そんなわけで、夢見も夢幻も、あの局面を越えたら用済みさ」
彼女の口ぶりは軽いが、そこには安堵と、どこか誇らしげな響きが混じっていた。
「え? ディアナ……さん、って……」
「本当は、あんた自身が決めるまで待とうかと思ってた。でも、こうして呼ばれたってことは――もう、答え出たんでしょ?」
アトラは黙って目を閉じる。
――誰かの命令でもなく、誰かの期待でもなく。
私は、自分の目で見て、記録して、選んだ。
あの日々のすべてが、自分の意思の積み重ねだったと、今なら言える。
「……あのさ、夢見の力って、私はもう使えないの?」
「戻しておいたわよ。あんたが一番必要とした瞬間に封じたの、覚えてる? あれ、修行だったんだから」
「そ、そうなんだ! 結果的に……良かった。あの時も、その後も。……その、助かりました」
影の案内人はアトラの肩に手を置いた。
「さて、聞きたいことがないなら帰りますけど?」
「……ちょ、ちょっと待って。まだあんたの正体について聞いてない!」
「ええ~? 焦んなくても大丈夫だって。アトラ・ダス・アティウス――そして、絵理沙」
影の案内人の、夜の闇を染めた墨のような輪郭が、静かに――しかし確かに、滲みから鮮明さへと変わっていく。
それはまるで、長い時間をかけて蓄積された“影”そのものが、真実を語る準備を整えたかのようだった。
アトラはその姿を見ていた。
夢の中だと分かっていても、心がどこか現実と遠ざかっていく。
――これはただの“夢”じゃない。
まるで、鏡が自分を映し返しているような錯覚。
そして。
その“影”が形を成した時、目の前に立っていたのは――
「……わ、私?」
驚きと、なぜか直感的な納得が、同時に胸を打った。
少し年を重ねた顔立ち。視線に宿る確信と、静かな覚悟。
確かに自分に似ている。だが、今の自分では到底持ち得ない“重み”が、そこにはあった。
「うん。そう。種明かし、しとく。これからあんたが通る道なんだし」
未来の“自分”は、あっさりと、けれど優しく語りかけた。
アトラは息を呑む。
信じたい。でも、信じきれない。
――だから見つめる。
この目で、確かめなければならない。
「私はアトラ。
私は“あんたの未来”。
夢見の力で過去であるあんたの夢に干渉してる。
だから――あんたもそのうち、誰かの夢に干渉できるようになる」
静かに、明確に告げられる“真実”。
アトラの心が、次第にざわついていく。
「絵理沙――あんたをこの世界、アーテリスに呼んだのも、私。
文字が読めるようになってたのは、私の夢幻の力でサポートしたから。
『光の指先』を立ち上げたのも、私。
ディアナに頼んであんたを魔導城に招いたのも、私。
そろそろ私は消えるけど……まだ質問、ある?」
予想をはるかに超える情報量に、アトラは思わずのけぞった。
「え、ええっ!? ちょ、ちょっと待って……ええーっ!?!」
夢の中とは思えない声が響いた。
言葉にならない混乱。心の中の思考が全部、雪崩のように崩れていく。
だけどその中心に、確かに一本、筋が通っていた。
――この人は、私なんだ。
未来の私。
そして私は、この人に“導かれて”ここまで来たんだ。
それでも――アトラの中に、ひとつ“納得”のようなものが落ちた。
未来の自分を名乗る彼女が、あまりにもアトラ自身について詳しかったこと。
目覚めたら異世界にいたというあの日。
それすら夢見の力の移動であり、最初からすべてが夢見の力によって仕組まれていたとしたら……?
『光の指先』のディアナが接触してきたこと。
そこから少しずつ、世界が動き出したこと。
皇帝の正体をほのめかした時も、彼女はまるで“それを最初から知っていた”かのようだったこと。
それらすべての断片が――まるで、一枚のパズルのように繋がっていく。
最初はただの“夢”だと思っていた。
だけどその夢が、アトラが見てきた世界そのものの“骨格”だったのだとしたら?
アトラは息を呑んだ。
納得したはずだったのに、理解が追いつかない。
感覚がまるで現実と一致していかない。
「だとして……どーゆーこと!?」
つい、叫んでいた。
頭では理屈が分かった。でも、心が全然納得していなかった。
――というか。
その理屈、どこまで遡れるのよ……?
じゃあこの“輪廻”の、一番最初に私を喚んだのは誰?
夢見の力をくれたのは、誰?
夢の中から干渉してきたのは、どの“私”?
もしかしてこの物語、始まりから終わりまで、ぜんぶ“私”が仕組んでた……?
思考がループし、ぐるぐると渦を巻く。
まるで自分が誰かの夢に閉じ込められているかのようにすら感じた。
「そーゆーこと。
じゃ、質問ないなら私いなくなるね」
「あ、いやいやいや!
あるって! ありまくりだって!」
アトラは目をむく。さっきから“何その雑な説明!”の連続だ。
「それでも私も忙しいから帰んなきゃ。
ディアナも父さんも待ってるし」
「……え?
と、とーさん!?」
「うん。いま一緒に活動してんの」
「死んだと思ってた!!
唐突な新キャラすぎない!?」
アトラは思わず地団駄を踏む。
彼女の中で、積み重ねてきた理解が一気にぐらつく。
自分の知っている物語は、まだ“全部”じゃなかったということだ。
未来のアトラ――いや、“影の案内人”は、どこか楽しげに微笑む。
「まあ、また質問したいなら、未来のあんた――つまり私、の夢に出てきたらいいじゃん。
夢見の力は戻してあるし、もう大人なんだから、自分で探しなよ」
言葉がやけに軽い。
だけどその言葉の向こうにあるもの――“あらゆる時間と記憶を知る者の重さ”を、アトラは感じ取ってしまっていた。
「……言うだけは言ったから。じゃあね」
「えっ、あ……」
本当に、もう彼女が去ってしまうのだとアトラは悟る。
唐突な別れは、最近もあったものだ。
後悔がないように、言葉を投げた。
「ありがとう! 喚んでくれて!」
影の案内人――未来のアトラはフッと笑う。
「大変だけど、頑張ってね〜」
夢は、唐突に終わりを告げる。
遠くに声が響く。
「ディアナに協力してくれたお礼は、ちゃんと用意しておくから~」
落ちた穴は、夢オチだった。
しかし、すべて現実だった。
ぱたり、と静かにまぶたが閉じた。
夢の中の世界が、すうっと引いていくように消えていく。
まるで、湖に映っていた“もうひとりの自分”が水面に還っていくような――そんな感覚。
アトラは、静かにまばたきをした。
現実に戻ってきたはずなのに、世界は少しだけ鮮明に見えた。
夢の余韻が、まだ胸の奥に残っている。
柔らかな声が、夢の底から響いた。
その響きに、アトラは静かに目を細める。
――夢か。なんだか懐かしい声だ。
振り返れば、そこに立っていたのは影の案内人。
「ああ、久しぶり。どうしたのさ。
過去の世界にいたとき、私の体が突然消えていくのにはびっくりしたよ」
アトラは肩をすくめて影の案内人を見る。
「大昔の過去への干渉は、後々大きな問題になりかねないからね。
しっかり管理させてもらったよ」
影の案内人は悪びれる様子もない。
「そう言えば、もう“ダス”だったっけ。出世したじゃない」
影の案内人は、少しふざけたように笑ってみせた。
アトラは苦笑して肩をすくめる。
「書斎係ってだけなんだけどね。でも、性に合ってて助かるよ」
「それでも“皇帝の直轄”なんでしょう? ま、あの皇帝が書斎整理の名目であんたに職を与えた時点で、答えは出てたようなもんだけど」
何かを知っている口ぶり。アトラはその含みを問い返すことなく、静かにうなずいた。
――そう。
思えばあの頃は、影の案内人の言葉にすがるしかなかった。
だが今は、違う。自分で考え、自分で決めることができる。
だからこそ、この夢に来た彼女の言葉に、今は少しの余裕を持って向き合える。
「……ところで」
「うん?」
「あんたの正体についてなんだけどさ。今まで使った夢見の力、ほとんどあんたがサポートしてたんだよね?」
アトラの問いに、影の案内人は口元に手を当て、ふふと笑う。
「まあ、皇帝があれだけアーテリスの文化底上げに傾けば、ディアナたちが危惧してた“世界崩壊”の線は消えるしね。
それどころか支援の幅を広げるって言うじゃないか。表では世界統一って言ってても、別の目標に動き出してるのは目に見えてるよね。そんなわけで、夢見も夢幻も、あの局面を越えたら用済みさ」
彼女の口ぶりは軽いが、そこには安堵と、どこか誇らしげな響きが混じっていた。
「え? ディアナ……さん、って……」
「本当は、あんた自身が決めるまで待とうかと思ってた。でも、こうして呼ばれたってことは――もう、答え出たんでしょ?」
アトラは黙って目を閉じる。
――誰かの命令でもなく、誰かの期待でもなく。
私は、自分の目で見て、記録して、選んだ。
あの日々のすべてが、自分の意思の積み重ねだったと、今なら言える。
「……あのさ、夢見の力って、私はもう使えないの?」
「戻しておいたわよ。あんたが一番必要とした瞬間に封じたの、覚えてる? あれ、修行だったんだから」
「そ、そうなんだ! 結果的に……良かった。あの時も、その後も。……その、助かりました」
影の案内人はアトラの肩に手を置いた。
「さて、聞きたいことがないなら帰りますけど?」
「……ちょ、ちょっと待って。まだあんたの正体について聞いてない!」
「ええ~? 焦んなくても大丈夫だって。アトラ・ダス・アティウス――そして、絵理沙」
影の案内人の、夜の闇を染めた墨のような輪郭が、静かに――しかし確かに、滲みから鮮明さへと変わっていく。
それはまるで、長い時間をかけて蓄積された“影”そのものが、真実を語る準備を整えたかのようだった。
アトラはその姿を見ていた。
夢の中だと分かっていても、心がどこか現実と遠ざかっていく。
――これはただの“夢”じゃない。
まるで、鏡が自分を映し返しているような錯覚。
そして。
その“影”が形を成した時、目の前に立っていたのは――
「……わ、私?」
驚きと、なぜか直感的な納得が、同時に胸を打った。
少し年を重ねた顔立ち。視線に宿る確信と、静かな覚悟。
確かに自分に似ている。だが、今の自分では到底持ち得ない“重み”が、そこにはあった。
「うん。そう。種明かし、しとく。これからあんたが通る道なんだし」
未来の“自分”は、あっさりと、けれど優しく語りかけた。
アトラは息を呑む。
信じたい。でも、信じきれない。
――だから見つめる。
この目で、確かめなければならない。
「私はアトラ。
私は“あんたの未来”。
夢見の力で過去であるあんたの夢に干渉してる。
だから――あんたもそのうち、誰かの夢に干渉できるようになる」
静かに、明確に告げられる“真実”。
アトラの心が、次第にざわついていく。
「絵理沙――あんたをこの世界、アーテリスに呼んだのも、私。
文字が読めるようになってたのは、私の夢幻の力でサポートしたから。
『光の指先』を立ち上げたのも、私。
ディアナに頼んであんたを魔導城に招いたのも、私。
そろそろ私は消えるけど……まだ質問、ある?」
予想をはるかに超える情報量に、アトラは思わずのけぞった。
「え、ええっ!? ちょ、ちょっと待って……ええーっ!?!」
夢の中とは思えない声が響いた。
言葉にならない混乱。心の中の思考が全部、雪崩のように崩れていく。
だけどその中心に、確かに一本、筋が通っていた。
――この人は、私なんだ。
未来の私。
そして私は、この人に“導かれて”ここまで来たんだ。
それでも――アトラの中に、ひとつ“納得”のようなものが落ちた。
未来の自分を名乗る彼女が、あまりにもアトラ自身について詳しかったこと。
目覚めたら異世界にいたというあの日。
それすら夢見の力の移動であり、最初からすべてが夢見の力によって仕組まれていたとしたら……?
『光の指先』のディアナが接触してきたこと。
そこから少しずつ、世界が動き出したこと。
皇帝の正体をほのめかした時も、彼女はまるで“それを最初から知っていた”かのようだったこと。
それらすべての断片が――まるで、一枚のパズルのように繋がっていく。
最初はただの“夢”だと思っていた。
だけどその夢が、アトラが見てきた世界そのものの“骨格”だったのだとしたら?
アトラは息を呑んだ。
納得したはずだったのに、理解が追いつかない。
感覚がまるで現実と一致していかない。
「だとして……どーゆーこと!?」
つい、叫んでいた。
頭では理屈が分かった。でも、心が全然納得していなかった。
――というか。
その理屈、どこまで遡れるのよ……?
じゃあこの“輪廻”の、一番最初に私を喚んだのは誰?
夢見の力をくれたのは、誰?
夢の中から干渉してきたのは、どの“私”?
もしかしてこの物語、始まりから終わりまで、ぜんぶ“私”が仕組んでた……?
思考がループし、ぐるぐると渦を巻く。
まるで自分が誰かの夢に閉じ込められているかのようにすら感じた。
「そーゆーこと。
じゃ、質問ないなら私いなくなるね」
「あ、いやいやいや!
あるって! ありまくりだって!」
アトラは目をむく。さっきから“何その雑な説明!”の連続だ。
「それでも私も忙しいから帰んなきゃ。
ディアナも父さんも待ってるし」
「……え?
と、とーさん!?」
「うん。いま一緒に活動してんの」
「死んだと思ってた!!
唐突な新キャラすぎない!?」
アトラは思わず地団駄を踏む。
彼女の中で、積み重ねてきた理解が一気にぐらつく。
自分の知っている物語は、まだ“全部”じゃなかったということだ。
未来のアトラ――いや、“影の案内人”は、どこか楽しげに微笑む。
「まあ、また質問したいなら、未来のあんた――つまり私、の夢に出てきたらいいじゃん。
夢見の力は戻してあるし、もう大人なんだから、自分で探しなよ」
言葉がやけに軽い。
だけどその言葉の向こうにあるもの――“あらゆる時間と記憶を知る者の重さ”を、アトラは感じ取ってしまっていた。
「……言うだけは言ったから。じゃあね」
「えっ、あ……」
本当に、もう彼女が去ってしまうのだとアトラは悟る。
唐突な別れは、最近もあったものだ。
後悔がないように、言葉を投げた。
「ありがとう! 喚んでくれて!」
影の案内人――未来のアトラはフッと笑う。
「大変だけど、頑張ってね〜」
夢は、唐突に終わりを告げる。
遠くに声が響く。
「ディアナに協力してくれたお礼は、ちゃんと用意しておくから~」
落ちた穴は、夢オチだった。
しかし、すべて現実だった。
ぱたり、と静かにまぶたが閉じた。
夢の中の世界が、すうっと引いていくように消えていく。
まるで、湖に映っていた“もうひとりの自分”が水面に還っていくような――そんな感覚。
アトラは、静かにまばたきをした。
現実に戻ってきたはずなのに、世界は少しだけ鮮明に見えた。
夢の余韻が、まだ胸の奥に残っている。