【FF14】メイドさんの夢旅行
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「君の夢幻がイデアになったよ!」
そんなヒュトロダエウスの報告に、アトラは飛び跳ねるように創造物管理局へ向かった。
アーモロートに帰った翌日、アトラは記録用クリスタルをヒュトロダエウスに渡していた。
影の案内人からは何の連絡もなく、アトラは元の時系列に戻ることはなく、アーモロートで日々を過ごす。
そんなか飛び込んできた、うれしい報告だった。
空はオレンジとネイビーに染まり、夕暮れの風がアトラの背中をそっと押すようだった。
アトラは息を弾ませながら、創造物管理局の扉をくぐった。
忙しいはずのエメトセルクも、アーモロートに戻っていたカロンも、アトラの到着を待っていてくれた。
「え! お二人とも来てたんですか!?」
アトラはうれしさのあまり、息を切らしながら駆け寄った。
「どうしても見たかったからね!」
アトラは、カロンがヴェーネスの荷運びもしているという話を風の噂で聞いていた。
「私は忙しい。確認した後は仕事に戻る」
エメトセルクは相変わらず忙しそうだった。
もうそろそろアーモロートに、まもなく災厄が迫ってくる頃だ。
その対応に追われている。
アトラは災厄後の存在だ。
できることは少ない。
未来は変えられない。でもきっと、英雄が歩む道を見届けることならできる。
いそいそとイデアを持ち運ぶヒュトロダエウスが三人の元へと向かってきていた。
エメトセルクと同じく、エーテルの流れが見えるヒュトロダエウスは、三人が揃ったのをすぐに察知して、イデアを運んできていた。
「さあ、花火の再演といこうじゃないか。
広場を貸し切りにしてもらったから、そこで使ってみよう」
「花火にしたんですか?」
イデアは記録されただけでは終わりじゃない。
そこに魔力を込める人と、どういう形にするか決める技術も必要とする。
アトラは、それを作ったのはヒュトロダエウスか、創造物管理局の誰かなのかと尋ねた。
「あの花火を見たことある、親切な人に協力してもらってね。
もちろん、君の旅の記録も、その人じゃなきゃ再現できなかったからね。完璧さ」
花火を見たことがある。
旅の道中の夢幻の監督も……。
アトラには思い当たる人物が一人しかいなかった。
バッと振り返ってエメトセルクを見ると、ちょうど同じタイミングで、彼はそっぽを向いた。
それだけで、誰が協力者かは一目瞭然だった。
アトラはなおのこと、イデアを見るのが楽しみだった。
四人が広場へと移動する。
到着して、イデアをヒュトロダエウスが起動させる。
「どんな仕上がりか楽しみだね」
「ヒュトロダエウス局長、私も手伝いましょうか」
カロンがヒュトロダウスの横から声をかける。
「ああ、そんなにエーテルを使うものではないから大丈夫だよ。
ワタシにだって余裕なくらいさ」
イデアが展開されていく。
ひとつ、静かに音がした――音というにはあまりにも静かで、風の吐息にすら満たない。
空間が微かに震えた。
光の脈動が地から走り、天へ向かって流れていく。
それはやがて、宵闇の空を静かに裂くように現れた一筋の光となった。
何かが始まるのだろうと、見守ろうと立ち止まる人たちが、広場の外周に集まる。
空の一点に、淡く青白い星が灯った。
その星が、まるで息を吸い込むように瞬き――次の瞬間、大きな音で爆ぜた。
人々から吐息が漏れる。
そこに現れたのは、ただの火の花ではない。
まるで星そのものが咲いたような光の花弁たち。
色彩は花ではなく、霧とオーロラの中間のような淡く流動的な輝きで、
花弁一枚一枚がゆっくりと揺れながら、空へ、虚空へと広がっていく。
見上げる人の目には、それがそれぞれ違った形に見えた。
アトラには、それはカロンの背に揺れた旅装束の裾のように、
エメトセルクには、それはまだ戻らない誰かの肩越しに見た黄昏のように。
その光の一つひとつに、「記憶」を引き出された。
アトラは光に触れていく。
楽しかった語らい。
選び取った言葉。
あの夜に交わした沈黙。
誰かの笑顔と、すれ違った思い出の断片。
名前もない感情が、光の形になって、そっと咲いていた。
花は咲くたびに、少しずつ色や形を変える。
あるものは笛のような音を鳴らし、
あるものは誰かの声が微かに聞こえるようでもあった。
やがて、花々は夜の空に消えていく。
記録は残らない。
けれど、感情だけが確かにそこに在った。
アトラはそっと目を閉じた。
この光が、今、誰かの心に何かを遺したなら――
それだけで、もう十分だった。
しばらく誰も言葉を発さない。光に触れた人々の間にも、まだ感情の名残が漂っていた。
アトラは小さく息を吐いた。
「……すごい、ものですね……」
「君の“夢幻”のおかげだよ」
ヒュトロダエウスが笑って、イデアの残骸に視線を落とす。
そこには、すでに魔力の光を失った透明なクリスタルがあった。
イデアについて質問したと思う人々もいたが、今回はテストであること、登録許可を得ていないことをヒュトロダエウスが周囲に伝える。
「そういうわけでね、アティウス」
「はい」
「このイデアをぜひとも保管させてほしいんだ」
「もちろん! こちらこそ、よろしくお願いします」
そのやり取りを見ていた人々が小さくまばらに拍手する。
災厄の恐怖に少しずつ迫られている人々の心にも、響くものがあった。
「今このような時だからこそ……心の癒しになるものが必要になる。
忘れてはいけない、君の旅も、ワタシたちが出会ったものも、光も、そういうもの全部が――」
そこでふと、ヒュトロダエウスの視線がアトラの背後を向いた。
「……エメトセルク、キミもそうだろ?」
「……まあ、そうだな」
不承不承、といった様子で、エメトセルクが腕を組みながらうなずいた。
「今さら小細工に頼る気はないが……未来に何かを“つなぐ”手段としては、悪くない」
「珍しく素直ですねえ」
すかさずカロンが茶々を入れる。
「黙れカロン。お前も仕事中じゃないのか」
「これは大事な文化活動ですってば!」
アトラは小さく笑って、再びイデアを見る。
「私の、旅の記録が……残るんですか?」
ヒュトロダエウスは穏やかに答える。
「君の残した光が、どこかの誰かの心で、また咲くかもしれない。
私たち創造物管理局の仕事のひとつさ」
「……なんだか、それって」
アトラはそっと目を伏せて、つぶやいた。
「本当に、花みたいですね。すぐに散るけど、咲いたことだけが確かに、心に残る」
「うん、それが“夢幻”の力なんだと思う」
その言葉に、アトラは小さくうなずいた。
彼女の脳裏には、エルピスの花。
満開の希望。メーティオンに贈られた花。
薄く涙がにじむ。
あの花をこの過去へ贈れるなら、こんなに嬉しいことはない。
「じゃあはい、これ」
ヒュトロダエウスから、アトラの手に小型のイデアが渡される。
「キミはこれを発現させるエーテル操作ができないけど……
記念に持っておいて欲しいんだ」
アトラはうれしさに、笑った。
「はい! ありがとうございます」
花火の光は、まだ少し人々を照らしていた。
そんなヒュトロダエウスの報告に、アトラは飛び跳ねるように創造物管理局へ向かった。
アーモロートに帰った翌日、アトラは記録用クリスタルをヒュトロダエウスに渡していた。
影の案内人からは何の連絡もなく、アトラは元の時系列に戻ることはなく、アーモロートで日々を過ごす。
そんなか飛び込んできた、うれしい報告だった。
空はオレンジとネイビーに染まり、夕暮れの風がアトラの背中をそっと押すようだった。
アトラは息を弾ませながら、創造物管理局の扉をくぐった。
忙しいはずのエメトセルクも、アーモロートに戻っていたカロンも、アトラの到着を待っていてくれた。
「え! お二人とも来てたんですか!?」
アトラはうれしさのあまり、息を切らしながら駆け寄った。
「どうしても見たかったからね!」
アトラは、カロンがヴェーネスの荷運びもしているという話を風の噂で聞いていた。
「私は忙しい。確認した後は仕事に戻る」
エメトセルクは相変わらず忙しそうだった。
もうそろそろアーモロートに、まもなく災厄が迫ってくる頃だ。
その対応に追われている。
アトラは災厄後の存在だ。
できることは少ない。
未来は変えられない。でもきっと、英雄が歩む道を見届けることならできる。
いそいそとイデアを持ち運ぶヒュトロダエウスが三人の元へと向かってきていた。
エメトセルクと同じく、エーテルの流れが見えるヒュトロダエウスは、三人が揃ったのをすぐに察知して、イデアを運んできていた。
「さあ、花火の再演といこうじゃないか。
広場を貸し切りにしてもらったから、そこで使ってみよう」
「花火にしたんですか?」
イデアは記録されただけでは終わりじゃない。
そこに魔力を込める人と、どういう形にするか決める技術も必要とする。
アトラは、それを作ったのはヒュトロダエウスか、創造物管理局の誰かなのかと尋ねた。
「あの花火を見たことある、親切な人に協力してもらってね。
もちろん、君の旅の記録も、その人じゃなきゃ再現できなかったからね。完璧さ」
花火を見たことがある。
旅の道中の夢幻の監督も……。
アトラには思い当たる人物が一人しかいなかった。
バッと振り返ってエメトセルクを見ると、ちょうど同じタイミングで、彼はそっぽを向いた。
それだけで、誰が協力者かは一目瞭然だった。
アトラはなおのこと、イデアを見るのが楽しみだった。
四人が広場へと移動する。
到着して、イデアをヒュトロダエウスが起動させる。
「どんな仕上がりか楽しみだね」
「ヒュトロダエウス局長、私も手伝いましょうか」
カロンがヒュトロダウスの横から声をかける。
「ああ、そんなにエーテルを使うものではないから大丈夫だよ。
ワタシにだって余裕なくらいさ」
イデアが展開されていく。
ひとつ、静かに音がした――音というにはあまりにも静かで、風の吐息にすら満たない。
空間が微かに震えた。
光の脈動が地から走り、天へ向かって流れていく。
それはやがて、宵闇の空を静かに裂くように現れた一筋の光となった。
何かが始まるのだろうと、見守ろうと立ち止まる人たちが、広場の外周に集まる。
空の一点に、淡く青白い星が灯った。
その星が、まるで息を吸い込むように瞬き――次の瞬間、大きな音で爆ぜた。
人々から吐息が漏れる。
そこに現れたのは、ただの火の花ではない。
まるで星そのものが咲いたような光の花弁たち。
色彩は花ではなく、霧とオーロラの中間のような淡く流動的な輝きで、
花弁一枚一枚がゆっくりと揺れながら、空へ、虚空へと広がっていく。
見上げる人の目には、それがそれぞれ違った形に見えた。
アトラには、それはカロンの背に揺れた旅装束の裾のように、
エメトセルクには、それはまだ戻らない誰かの肩越しに見た黄昏のように。
その光の一つひとつに、「記憶」を引き出された。
アトラは光に触れていく。
楽しかった語らい。
選び取った言葉。
あの夜に交わした沈黙。
誰かの笑顔と、すれ違った思い出の断片。
名前もない感情が、光の形になって、そっと咲いていた。
花は咲くたびに、少しずつ色や形を変える。
あるものは笛のような音を鳴らし、
あるものは誰かの声が微かに聞こえるようでもあった。
やがて、花々は夜の空に消えていく。
記録は残らない。
けれど、感情だけが確かにそこに在った。
アトラはそっと目を閉じた。
この光が、今、誰かの心に何かを遺したなら――
それだけで、もう十分だった。
しばらく誰も言葉を発さない。光に触れた人々の間にも、まだ感情の名残が漂っていた。
アトラは小さく息を吐いた。
「……すごい、ものですね……」
「君の“夢幻”のおかげだよ」
ヒュトロダエウスが笑って、イデアの残骸に視線を落とす。
そこには、すでに魔力の光を失った透明なクリスタルがあった。
イデアについて質問したと思う人々もいたが、今回はテストであること、登録許可を得ていないことをヒュトロダエウスが周囲に伝える。
「そういうわけでね、アティウス」
「はい」
「このイデアをぜひとも保管させてほしいんだ」
「もちろん! こちらこそ、よろしくお願いします」
そのやり取りを見ていた人々が小さくまばらに拍手する。
災厄の恐怖に少しずつ迫られている人々の心にも、響くものがあった。
「今このような時だからこそ……心の癒しになるものが必要になる。
忘れてはいけない、君の旅も、ワタシたちが出会ったものも、光も、そういうもの全部が――」
そこでふと、ヒュトロダエウスの視線がアトラの背後を向いた。
「……エメトセルク、キミもそうだろ?」
「……まあ、そうだな」
不承不承、といった様子で、エメトセルクが腕を組みながらうなずいた。
「今さら小細工に頼る気はないが……未来に何かを“つなぐ”手段としては、悪くない」
「珍しく素直ですねえ」
すかさずカロンが茶々を入れる。
「黙れカロン。お前も仕事中じゃないのか」
「これは大事な文化活動ですってば!」
アトラは小さく笑って、再びイデアを見る。
「私の、旅の記録が……残るんですか?」
ヒュトロダエウスは穏やかに答える。
「君の残した光が、どこかの誰かの心で、また咲くかもしれない。
私たち創造物管理局の仕事のひとつさ」
「……なんだか、それって」
アトラはそっと目を伏せて、つぶやいた。
「本当に、花みたいですね。すぐに散るけど、咲いたことだけが確かに、心に残る」
「うん、それが“夢幻”の力なんだと思う」
その言葉に、アトラは小さくうなずいた。
彼女の脳裏には、エルピスの花。
満開の希望。メーティオンに贈られた花。
薄く涙がにじむ。
あの花をこの過去へ贈れるなら、こんなに嬉しいことはない。
「じゃあはい、これ」
ヒュトロダエウスから、アトラの手に小型のイデアが渡される。
「キミはこれを発現させるエーテル操作ができないけど……
記念に持っておいて欲しいんだ」
アトラはうれしさに、笑った。
「はい! ありがとうございます」
花火の光は、まだ少し人々を照らしていた。