【FF14】メイドさんの夢旅行
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空にはデュナミスによって転じた異形が流れ飛び、日の光は一筋だって見えない。
暗雲がどこまでも続き、降りしきる隕石で森が燃え上がる。
アトラたちは煙と異形を避けながら、足早に目的地を目指す。
異形の数は少ない。旅の途中でたまに見かける創造生物ほどの数だ。
アトラは顔を青ざめさせた。創造生物が、もう「そう」なってしまったのだとしたら――この世界は、もう崩壊が進みすぎているかもしれない。
ちくりと、旅を楽しんでいた罪悪感が胸を刺す。
異形のものと戦闘があり、古代人たちは対処していく。
アトラの幻は効きそうな相手ではなく、対処もできそうにない敵だった。
「あそこです!」
カロンが発見すると同時に、エメトセルクが眉をひそめ、エーテルの異常に気づいて目を向ける。
湖は、黒い涙で満たされていた。
まるで誰かの絶望が、地上に静かに溢れ出したかのように――その表面は不気味なほど静かで、底知れぬ何かを隠していた。
上空からそれを確認し、四人は思わず足を止めた。
「では、手筈通り。私が気を引き付けます」
「おい。急すぎるんじゃないのか。もう少し様子を見るべきだ」
ヴェーネスは盾と剣を構えて、今にも湖に突っ込んでいきそうだった。
エメトセルクが、ヴェーネスの前を遮る。
「ええ。私もできるならそうしたい。でも……エーテルではない“何か”が、あの子を、アゼムのエーテルを覆っているように視えませんか? ――感じるのです。かすかだけれど、彼のエーテルを」
ヴェーネスは唇を噛み、ほんのわずかに視線を落とした。
けれど、すぐに顔を上げ、決意の色を宿した目で前を見据える。
エメトセルクは驚愕に目を見開き、湖を凝視する。
その目に、確かに友のエーテルがかすかに感じられた。
「アゼム……!」
その名を呼んだ声に、かつての友を思う熱が滲んでいた。
エメトセルクの焦りから、カロンもアトラも状況を察する。
私たちの旅の目的が、あの湖にあると。
「……やむを得ない。後方から援護する」
「では、行きますよ」
「私も行けます!」
エメトセルク、ヴェーネス、カロンは心構えを決める。
アトラは――
「……はい」
小さく、返事をした。
待ち受ける何かに怯えるように。
息を呑み、唇をかすかに噛んだ。
ヴェーネスが使い魔アルゴスと共に湖へ下降する。
それに使い魔に乗った三人が続き、湖へは、風を裂くようにしてすぐ辿り着いた。
寄ってくる異形はもういない。
そこまでの数はいないようだ。
みなが使い魔から降りる。油断はせずに。
使い魔たちは次の出番まで、消えていなくなる。
ヴェーネスが盾を前に構えたまま、湖へ近づく。
「いるのですか、アゼム!?」
当然、返事はなかった。
むしろ、その声を吸い込んで、湖は黒泥のように、重たく濁った光沢を放っている。
「何かしてみますか。このままじゃ埒が明きません」
カロンが格闘武器を構え待機する。
だがその目は、どこか焦っていた。
「いいえ、私が撃ち込みます――」
ヴェーネスが言った瞬間。
湖面が一瞬で、静かに膨れ上がった。
まるで黒い心臓が脈打つように、波紋が歪み、膨張する。
次の瞬間、重力すら歪めるような勢いで――湖は立ち上がり、黒い泥の濁流とともに四人を一気に呑み込んだ。
***
「絵理沙」
アトラはビクッと体を震わせた。
気が付けば、あたり一面、光のない虚空に立っていた。
振り返ると、真っ黒な影がそこにいた。
声はやさしく、けれど底のない冷たさを含んでいた。
その影が、なんとなくなんなのかがわかってしまう。
「ねぇ、どうして……そんなふうに、自分ばかり我慢するの?」
影が問う。
アトラは、視線を落としたまま口を開く。
「……だって、お母さんは病気で、私が働くしかなかったから」
「それが本当に、あなたのしたいことだったの?
あなたは、どうしたいの。好きなことすればいいじゃない」
アトラは泣きそうになる。
自分がしたいことはこれだ。ずっとそう言ってる。
しかし、ため息が聞こえた。
「答えたくないからって、言い訳ばっかり」
アトラには理由がわかっている。
この人は、自分のせいで私が犠牲になっていることに罪悪感があって、その気持ちを晴らすために私にこんな問いかけをして、更には文句を言うのだと。
「聞いてくれないならもういいよ」
アトラがあっさりそういうと、影はさらりと霧散する。
しかし、また新たな影がアトラの前に現れる。
「お前には関係ない」
猫背の影が、背中を向いているのがわかる。
終末が来ようと、お前には関係ない。
そう言い放った古代人が確かにいた。
だが、ここぞとばかりに言い放つ。その気持ちは燃え上がった。
「なにが『関係ない』だよ……! アゼム様は、あんたと関係なくなんかないだろ!」
アトラはギリッと猫背の影を見る。
「私には関係ないし、あなたがくれたクリスタルも、あなたは必要ないだろうって言った。
だけど、あんたは会いに行けよ! 会いたいんだろ! 話すことなくても! ヴェーネス様だって、きっとそうだ!」
アトラの胸元で、クリスタルがびくりと震え、共鳴するように光を放った。
影はゆらめいて膝をついた。
災厄によって、人として初めて躓いた古代人たち。頑健で聡明。
アトラの目には、それは弱さを知らない赤子のように映った。
アトラは、女として生まれ、小柄なまま生き、弱さが当たり前すぎて、立ち止まる原因にならなかった。
きっとそれは、今を生きるエオルゼアの人たちだってそうだ。
食べるものが草しかなくても、木の皮にかじりついてでも、生きてやる。
それでも死ぬなら、笑って死んでやる――!
私は、強さ担当の生き物じゃない。だからこそ、声を上げる。
「“関係ない”って、その言葉こそ、関係ないんだよ!
自分の不満をわかってるなら、ちゃんと……ちゃんと、会いに行きなよ!
……私、言っちゃったからには、一緒に行くから!」
アトラは思わず、胸元のクリスタルを握りしめる。
熱を帯びたそれは、まるで彼女の本音に呼応するようだった。
とんでもないお節介にアトラは気恥ずかしくなる。
「会いたい……!」
影が、その姿を取り戻す。
膝をついた、エメトセルク。
アトラはハッとして駆けよるが、目は虚ろなままだった。
暗雲がどこまでも続き、降りしきる隕石で森が燃え上がる。
アトラたちは煙と異形を避けながら、足早に目的地を目指す。
異形の数は少ない。旅の途中でたまに見かける創造生物ほどの数だ。
アトラは顔を青ざめさせた。創造生物が、もう「そう」なってしまったのだとしたら――この世界は、もう崩壊が進みすぎているかもしれない。
ちくりと、旅を楽しんでいた罪悪感が胸を刺す。
異形のものと戦闘があり、古代人たちは対処していく。
アトラの幻は効きそうな相手ではなく、対処もできそうにない敵だった。
「あそこです!」
カロンが発見すると同時に、エメトセルクが眉をひそめ、エーテルの異常に気づいて目を向ける。
湖は、黒い涙で満たされていた。
まるで誰かの絶望が、地上に静かに溢れ出したかのように――その表面は不気味なほど静かで、底知れぬ何かを隠していた。
上空からそれを確認し、四人は思わず足を止めた。
「では、手筈通り。私が気を引き付けます」
「おい。急すぎるんじゃないのか。もう少し様子を見るべきだ」
ヴェーネスは盾と剣を構えて、今にも湖に突っ込んでいきそうだった。
エメトセルクが、ヴェーネスの前を遮る。
「ええ。私もできるならそうしたい。でも……エーテルではない“何か”が、あの子を、アゼムのエーテルを覆っているように視えませんか? ――感じるのです。かすかだけれど、彼のエーテルを」
ヴェーネスは唇を噛み、ほんのわずかに視線を落とした。
けれど、すぐに顔を上げ、決意の色を宿した目で前を見据える。
エメトセルクは驚愕に目を見開き、湖を凝視する。
その目に、確かに友のエーテルがかすかに感じられた。
「アゼム……!」
その名を呼んだ声に、かつての友を思う熱が滲んでいた。
エメトセルクの焦りから、カロンもアトラも状況を察する。
私たちの旅の目的が、あの湖にあると。
「……やむを得ない。後方から援護する」
「では、行きますよ」
「私も行けます!」
エメトセルク、ヴェーネス、カロンは心構えを決める。
アトラは――
「……はい」
小さく、返事をした。
待ち受ける何かに怯えるように。
息を呑み、唇をかすかに噛んだ。
ヴェーネスが使い魔アルゴスと共に湖へ下降する。
それに使い魔に乗った三人が続き、湖へは、風を裂くようにしてすぐ辿り着いた。
寄ってくる異形はもういない。
そこまでの数はいないようだ。
みなが使い魔から降りる。油断はせずに。
使い魔たちは次の出番まで、消えていなくなる。
ヴェーネスが盾を前に構えたまま、湖へ近づく。
「いるのですか、アゼム!?」
当然、返事はなかった。
むしろ、その声を吸い込んで、湖は黒泥のように、重たく濁った光沢を放っている。
「何かしてみますか。このままじゃ埒が明きません」
カロンが格闘武器を構え待機する。
だがその目は、どこか焦っていた。
「いいえ、私が撃ち込みます――」
ヴェーネスが言った瞬間。
湖面が一瞬で、静かに膨れ上がった。
まるで黒い心臓が脈打つように、波紋が歪み、膨張する。
次の瞬間、重力すら歪めるような勢いで――湖は立ち上がり、黒い泥の濁流とともに四人を一気に呑み込んだ。
***
「絵理沙」
アトラはビクッと体を震わせた。
気が付けば、あたり一面、光のない虚空に立っていた。
振り返ると、真っ黒な影がそこにいた。
声はやさしく、けれど底のない冷たさを含んでいた。
その影が、なんとなくなんなのかがわかってしまう。
「ねぇ、どうして……そんなふうに、自分ばかり我慢するの?」
影が問う。
アトラは、視線を落としたまま口を開く。
「……だって、お母さんは病気で、私が働くしかなかったから」
「それが本当に、あなたのしたいことだったの?
あなたは、どうしたいの。好きなことすればいいじゃない」
アトラは泣きそうになる。
自分がしたいことはこれだ。ずっとそう言ってる。
しかし、ため息が聞こえた。
「答えたくないからって、言い訳ばっかり」
アトラには理由がわかっている。
この人は、自分のせいで私が犠牲になっていることに罪悪感があって、その気持ちを晴らすために私にこんな問いかけをして、更には文句を言うのだと。
「聞いてくれないならもういいよ」
アトラがあっさりそういうと、影はさらりと霧散する。
しかし、また新たな影がアトラの前に現れる。
「お前には関係ない」
猫背の影が、背中を向いているのがわかる。
終末が来ようと、お前には関係ない。
そう言い放った古代人が確かにいた。
だが、ここぞとばかりに言い放つ。その気持ちは燃え上がった。
「なにが『関係ない』だよ……! アゼム様は、あんたと関係なくなんかないだろ!」
アトラはギリッと猫背の影を見る。
「私には関係ないし、あなたがくれたクリスタルも、あなたは必要ないだろうって言った。
だけど、あんたは会いに行けよ! 会いたいんだろ! 話すことなくても! ヴェーネス様だって、きっとそうだ!」
アトラの胸元で、クリスタルがびくりと震え、共鳴するように光を放った。
影はゆらめいて膝をついた。
災厄によって、人として初めて躓いた古代人たち。頑健で聡明。
アトラの目には、それは弱さを知らない赤子のように映った。
アトラは、女として生まれ、小柄なまま生き、弱さが当たり前すぎて、立ち止まる原因にならなかった。
きっとそれは、今を生きるエオルゼアの人たちだってそうだ。
食べるものが草しかなくても、木の皮にかじりついてでも、生きてやる。
それでも死ぬなら、笑って死んでやる――!
私は、強さ担当の生き物じゃない。だからこそ、声を上げる。
「“関係ない”って、その言葉こそ、関係ないんだよ!
自分の不満をわかってるなら、ちゃんと……ちゃんと、会いに行きなよ!
……私、言っちゃったからには、一緒に行くから!」
アトラは思わず、胸元のクリスタルを握りしめる。
熱を帯びたそれは、まるで彼女の本音に呼応するようだった。
とんでもないお節介にアトラは気恥ずかしくなる。
「会いたい……!」
影が、その姿を取り戻す。
膝をついた、エメトセルク。
アトラはハッとして駆けよるが、目は虚ろなままだった。