【FF14】メイドさんの夢旅行
名前変換はこちら。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
かくして、一行は温泉へと向かうことになった。
日は沈み、暗い中船は使えないため、川沿いを歩いて向かう。
やがて森の合間から、白い湯けむりが立ちのぼるのが見えてきた。
「こんな場所に温泉があるなんて。アゼムもよく来ていたのかもしれませんね」
ヴェーネスが嬉しそうに呟く。エメトセルクも周囲の環境を一瞥し、渋々と頷いた。
「……場所の選定に問題はない。だが、騒がしいのはごめんだぞ」
「大丈夫ですよ。楽しくなりますって」
と、カロンが明るく言いながら、先導するように進んでいく。
たどり着いたのは、岩場を活かした静かな露天風呂だった。
湯の表面には幻想的な光がゆらめき、岩肌は自然のものとは思えないほど滑らかだった。
「うーん、これ造ってますね。段差もきれいに整ってるし……たぶんアゼム様の仕業ですよ」
カロンが目を輝かせる横で、エメトセルクは深いため息をついた。
「まったく……」
「でも、素敵な理由がありそうな気がしますよ」
ヴェーネスはそう言いながら湯をすくい、微笑んだ。
さて、いざ入浴という段になって、エメトセルクが主張する。
「私は混浴などごめんだ!」
「でも仲良くする決まりですから」
ヴェーネスが涼しい顔で湯あみ着を手渡し、カロンは「ほらほら」と腕を引く。
「厭だ厭だ」と抵抗するも、結局押し切られてしまった。
アトラはといえば、小さな湯船にちょこんと浸かり、目玉おやじの温泉シーンを思い出しながらぼんやりと湯気の向こうを眺めていた。
――なんだろうね、この、母ヴェーネス、姉カロン、弟エメトセルク、そしてペットアトラみたいな空気……。
不思議と、嫌ではないのが自分でもおかしかった。
温泉を出て、テントに戻る道すがら。
疲れを癒すはずの入浴だったというのに、エメトセルクは魂まで削り取られたような顔で、どんよりとうなだれていた。
アトラはちらりとそんな彼を見上げ、ほんの少しだけ考える。
(……止めてあげればよかったかな)
だが、あのヴェーネスとカロンの二人を前にして、自分に何ができただろうか。
即答できる。
――無理だ。
心の中で、アトラはそっと合掌した。
やがて一行は、キャンプ地へと戻ってくる。
焚火の柔らかな炎と、星々の光が寄り添うように照らし合い、静かな夜がそこにあった。
山に抱かれた『星見の頂』は、星明かりに染まりながら深い眠りにつこうとしている。
自然と共存するように整えられたテント地には、控えめながら温かい気配が満ちていた。
四人はテント前に腰を下ろし、明日の予定についてぽつぽつと話し合う。
吊るされたランタンが、淡い光を布地に投げかけ、炎の揺らぎとともに彼らの影をゆらゆらと踊らせていた。
アトラはくつろぎながらも、内心ため息をついた。
本音を言えば、アゼムにはひとりで会いに行くつもりだった。
それも、エメトセルクの目の届かないところで――そのつもりでいたのだ。
彼の気持ちを聞き出し、現代に情報として持ち帰る。それで役目は終わり。
ただの使者として、それだけをやるはずだった。
けれど、実際にはエメトセルクが自ら同行を申し出て、今ここにいる。
もはや彼の目を盗んでどうこうする余地などない。
しかも今では、アゼムと直接向き合うのは彼自身のほうがいいのでは、と思うようにさえなっていた。
それが良い結果になるとは限らない。
むしろ関係が悪化する可能性だってある――それでも。
(ここまで来て、何もしないなんて選べるわけがない)
アゼムに「会いに行く」と言った、あの一言が、エメトセルクを動かした。
彼はもう、アゼムに会う覚悟を決めている。
となれば、もはやアトラの出番は、ないのかもしれない。
もうしっかり、役目を終えられたのかもしれない。
(……本人たちでやり取りするなら、私、必要なくない?)
一瞬、そんな冷めた思いがよぎる。
けれど、きっかけを作ったのは自分だ。
だったらせめて、見届ける責任くらいは果たそう。
アトラは、そっと目を閉じた。
話し合いは、自然とエメトセルク、カロン、ヴェーネスの三人の間で進んでいた。
アトラはすっかり「おまかせモード」になって、気が抜けたままぼんやりしていた。
「アトラアティウス。聞いているのか」
突然、エメトセルクの声が飛んできて、アトラはビクッと肩をすくめる。
「……聞いてませんでした。すみません」
エメトセルクは、これ以上ないほど深いため息をついたあと、改めて話を短縮して繰り返した。
「明日の予定はそんなところだ。で、お前の予定はどうなってる」
アトラの目的も計画に組み込むつもりなのだろう。
問いかけに、アトラは少し間を置いてから、小さく笑った。
それは自嘲ではなく、どこか肩の力が抜けたような、そんな笑みだった。
「……なくなっちゃいました。目的」
一瞬、エメトセルクが瞬く。
あまりにもあっさりした答えに、虚を突かれたような顔をする。
「はあ?」
「いや、その……エメトセルク様とアゼム様の心残りをなんとかしたくて来たんですけど。
でも、もうエメトセルク様がここまで来たなら、私が出しゃばる話じゃないなって」
アトラは淡々と、けれどどこか誠実に言葉をつむぐ。
飾らず、取り繕わず、ただ事実だけを口にした。
「正直、もう……仕事、終わった気分です」
エメトセルクは無言のままアトラに視線を向ける。
続きを促すような、静かな眼差しだった。
「でも、きっかけを作ったのは私です。
だから、責任だけは取ります。ここまで来て、投げ出すのは違うと思うんで」
数秒の沈黙。
エメトセルクはじっとアトラを見ていた。
その視線は鋭く冷静だった。
「……なに当たり前の話をしている。つまりお前の予定は、『見届ける』――それで合っているな?」
皮肉とも、本心ともとれるその言葉の真意は読めない。
けれど、アトラにはそれで十分だった。
笑みがあふれて、気持ちありったけに首を縦に振った。
カロンはニヤニヤ笑いながらその様子を眺め、ヴェーネスは微笑む。
静かな夜に、ランタンの光が3人の影をゆらゆらと揺らしていた。
「じゃあ、決まりだな」
エメトセルクは立ち上がる。
その動きは迷いがなく、これまでの彼よりも少しだけ前に進んだように見えた。
「明日はアゼムのいる場所まで行く。……ついて来い、アトラアティウス」
「はい、わかりました」
アトラは立ち上がり、拳を作って胸に当てる。
自分はもう、ただのきっかけ屋だ。
けれど、それでいい。
エメトセルクが歩き出した。
それなら、未来はもう少しマシになる――かもしれない。
焚火はまだ静かに燃えている。星明かりとゆらめく炎のあいだで、エメトセルクがぼそりとつぶやいた。
「……少し、試してみるか」
「……え?」
「例の、お前の“夢幻”と私のエーテルの融合だ」
アトラは目を丸くした。
「いまですか?」
「今が練習には好都合だ」
そう言いながら、エメトセルクは掌に魔力を集める。エーテルの輝きがその指先からにじみ出し、空気がかすかに震える。
「お前の“幻”を、こちらのエーテルで補助する。互いの力を合わせるのが、護りの要だ。……お前を護るすべだ、練習しておくに越したことはない」
その言葉はあくまで実利的な響きを持っていたが、どこか気遣いにも似たものがにじんでいた。
アトラはしばらく黙ったあと、小さく頷いた。
「……はい。よろしくお願いします」
そう言って、彼女はそっと目を閉じる。
まぶたの裏に描かれるのは、現実には存在しないけれど、“あったらいい”と心から願える景色。
そこへ、エメトセルクのエーテルが静かに流れ込んだ。
ぽつ、ぽつと、小さな星々がテントの天幕に灯り始める。
まるで夜空を模したランタンのように、幻想の光が漂い――やがて、エメトセルクの魔力によって補強されると、それはただの幻ではなく、実体を帯びた光へと変わった。
「わあ……!」
アトラは、瞑想状態に入っていなくても、残り続ける幻想に目を見張る。自分が“思ったもの”が、確かにここに存在している。
「音も! 音もつけてみたいです!」
「音?」
エメトセルクが眉をひそめる。
「小さくていいんです。焚火に合うような……お願いします!」
「……その音とやらを聞いてから考える。それが済んだら寝るぞ」
「はーい!」
アトラは再び意識を集中させる。
今度は、暖かなキャンプの夜にふさわしいアコースティックギターの旋律を思い描いた。
エメトセルクは静かに目を閉じ、彼女の想像を慎重に受け取りながら、その音色をエーテルで具現化する。そして、微細なループを固定することで、音が消えずに続いていくよう仕上げた。
やがて、柔らかに揺れるギターの調べが、焚火のはぜる音と溶け合う。
見守っていたカロンとヴェーネスも、穏やかにその幻想に目を細める。
それはもはや、ただの夢でも幻でもなかった。
エメトセルクの補助によって、“想像”が“創造”へと昇華された瞬間だった。
彼女のポケットに収められた記録用クリスタルは、静かに、しかし確かに――
この魔法のような一夜を、記憶し続けていた。
日は沈み、暗い中船は使えないため、川沿いを歩いて向かう。
やがて森の合間から、白い湯けむりが立ちのぼるのが見えてきた。
「こんな場所に温泉があるなんて。アゼムもよく来ていたのかもしれませんね」
ヴェーネスが嬉しそうに呟く。エメトセルクも周囲の環境を一瞥し、渋々と頷いた。
「……場所の選定に問題はない。だが、騒がしいのはごめんだぞ」
「大丈夫ですよ。楽しくなりますって」
と、カロンが明るく言いながら、先導するように進んでいく。
たどり着いたのは、岩場を活かした静かな露天風呂だった。
湯の表面には幻想的な光がゆらめき、岩肌は自然のものとは思えないほど滑らかだった。
「うーん、これ造ってますね。段差もきれいに整ってるし……たぶんアゼム様の仕業ですよ」
カロンが目を輝かせる横で、エメトセルクは深いため息をついた。
「まったく……」
「でも、素敵な理由がありそうな気がしますよ」
ヴェーネスはそう言いながら湯をすくい、微笑んだ。
さて、いざ入浴という段になって、エメトセルクが主張する。
「私は混浴などごめんだ!」
「でも仲良くする決まりですから」
ヴェーネスが涼しい顔で湯あみ着を手渡し、カロンは「ほらほら」と腕を引く。
「厭だ厭だ」と抵抗するも、結局押し切られてしまった。
アトラはといえば、小さな湯船にちょこんと浸かり、目玉おやじの温泉シーンを思い出しながらぼんやりと湯気の向こうを眺めていた。
――なんだろうね、この、母ヴェーネス、姉カロン、弟エメトセルク、そしてペットアトラみたいな空気……。
不思議と、嫌ではないのが自分でもおかしかった。
温泉を出て、テントに戻る道すがら。
疲れを癒すはずの入浴だったというのに、エメトセルクは魂まで削り取られたような顔で、どんよりとうなだれていた。
アトラはちらりとそんな彼を見上げ、ほんの少しだけ考える。
(……止めてあげればよかったかな)
だが、あのヴェーネスとカロンの二人を前にして、自分に何ができただろうか。
即答できる。
――無理だ。
心の中で、アトラはそっと合掌した。
やがて一行は、キャンプ地へと戻ってくる。
焚火の柔らかな炎と、星々の光が寄り添うように照らし合い、静かな夜がそこにあった。
山に抱かれた『星見の頂』は、星明かりに染まりながら深い眠りにつこうとしている。
自然と共存するように整えられたテント地には、控えめながら温かい気配が満ちていた。
四人はテント前に腰を下ろし、明日の予定についてぽつぽつと話し合う。
吊るされたランタンが、淡い光を布地に投げかけ、炎の揺らぎとともに彼らの影をゆらゆらと踊らせていた。
アトラはくつろぎながらも、内心ため息をついた。
本音を言えば、アゼムにはひとりで会いに行くつもりだった。
それも、エメトセルクの目の届かないところで――そのつもりでいたのだ。
彼の気持ちを聞き出し、現代に情報として持ち帰る。それで役目は終わり。
ただの使者として、それだけをやるはずだった。
けれど、実際にはエメトセルクが自ら同行を申し出て、今ここにいる。
もはや彼の目を盗んでどうこうする余地などない。
しかも今では、アゼムと直接向き合うのは彼自身のほうがいいのでは、と思うようにさえなっていた。
それが良い結果になるとは限らない。
むしろ関係が悪化する可能性だってある――それでも。
(ここまで来て、何もしないなんて選べるわけがない)
アゼムに「会いに行く」と言った、あの一言が、エメトセルクを動かした。
彼はもう、アゼムに会う覚悟を決めている。
となれば、もはやアトラの出番は、ないのかもしれない。
もうしっかり、役目を終えられたのかもしれない。
(……本人たちでやり取りするなら、私、必要なくない?)
一瞬、そんな冷めた思いがよぎる。
けれど、きっかけを作ったのは自分だ。
だったらせめて、見届ける責任くらいは果たそう。
アトラは、そっと目を閉じた。
話し合いは、自然とエメトセルク、カロン、ヴェーネスの三人の間で進んでいた。
アトラはすっかり「おまかせモード」になって、気が抜けたままぼんやりしていた。
「アトラアティウス。聞いているのか」
突然、エメトセルクの声が飛んできて、アトラはビクッと肩をすくめる。
「……聞いてませんでした。すみません」
エメトセルクは、これ以上ないほど深いため息をついたあと、改めて話を短縮して繰り返した。
「明日の予定はそんなところだ。で、お前の予定はどうなってる」
アトラの目的も計画に組み込むつもりなのだろう。
問いかけに、アトラは少し間を置いてから、小さく笑った。
それは自嘲ではなく、どこか肩の力が抜けたような、そんな笑みだった。
「……なくなっちゃいました。目的」
一瞬、エメトセルクが瞬く。
あまりにもあっさりした答えに、虚を突かれたような顔をする。
「はあ?」
「いや、その……エメトセルク様とアゼム様の心残りをなんとかしたくて来たんですけど。
でも、もうエメトセルク様がここまで来たなら、私が出しゃばる話じゃないなって」
アトラは淡々と、けれどどこか誠実に言葉をつむぐ。
飾らず、取り繕わず、ただ事実だけを口にした。
「正直、もう……仕事、終わった気分です」
エメトセルクは無言のままアトラに視線を向ける。
続きを促すような、静かな眼差しだった。
「でも、きっかけを作ったのは私です。
だから、責任だけは取ります。ここまで来て、投げ出すのは違うと思うんで」
数秒の沈黙。
エメトセルクはじっとアトラを見ていた。
その視線は鋭く冷静だった。
「……なに当たり前の話をしている。つまりお前の予定は、『見届ける』――それで合っているな?」
皮肉とも、本心ともとれるその言葉の真意は読めない。
けれど、アトラにはそれで十分だった。
笑みがあふれて、気持ちありったけに首を縦に振った。
カロンはニヤニヤ笑いながらその様子を眺め、ヴェーネスは微笑む。
静かな夜に、ランタンの光が3人の影をゆらゆらと揺らしていた。
「じゃあ、決まりだな」
エメトセルクは立ち上がる。
その動きは迷いがなく、これまでの彼よりも少しだけ前に進んだように見えた。
「明日はアゼムのいる場所まで行く。……ついて来い、アトラアティウス」
「はい、わかりました」
アトラは立ち上がり、拳を作って胸に当てる。
自分はもう、ただのきっかけ屋だ。
けれど、それでいい。
エメトセルクが歩き出した。
それなら、未来はもう少しマシになる――かもしれない。
焚火はまだ静かに燃えている。星明かりとゆらめく炎のあいだで、エメトセルクがぼそりとつぶやいた。
「……少し、試してみるか」
「……え?」
「例の、お前の“夢幻”と私のエーテルの融合だ」
アトラは目を丸くした。
「いまですか?」
「今が練習には好都合だ」
そう言いながら、エメトセルクは掌に魔力を集める。エーテルの輝きがその指先からにじみ出し、空気がかすかに震える。
「お前の“幻”を、こちらのエーテルで補助する。互いの力を合わせるのが、護りの要だ。……お前を護るすべだ、練習しておくに越したことはない」
その言葉はあくまで実利的な響きを持っていたが、どこか気遣いにも似たものがにじんでいた。
アトラはしばらく黙ったあと、小さく頷いた。
「……はい。よろしくお願いします」
そう言って、彼女はそっと目を閉じる。
まぶたの裏に描かれるのは、現実には存在しないけれど、“あったらいい”と心から願える景色。
そこへ、エメトセルクのエーテルが静かに流れ込んだ。
ぽつ、ぽつと、小さな星々がテントの天幕に灯り始める。
まるで夜空を模したランタンのように、幻想の光が漂い――やがて、エメトセルクの魔力によって補強されると、それはただの幻ではなく、実体を帯びた光へと変わった。
「わあ……!」
アトラは、瞑想状態に入っていなくても、残り続ける幻想に目を見張る。自分が“思ったもの”が、確かにここに存在している。
「音も! 音もつけてみたいです!」
「音?」
エメトセルクが眉をひそめる。
「小さくていいんです。焚火に合うような……お願いします!」
「……その音とやらを聞いてから考える。それが済んだら寝るぞ」
「はーい!」
アトラは再び意識を集中させる。
今度は、暖かなキャンプの夜にふさわしいアコースティックギターの旋律を思い描いた。
エメトセルクは静かに目を閉じ、彼女の想像を慎重に受け取りながら、その音色をエーテルで具現化する。そして、微細なループを固定することで、音が消えずに続いていくよう仕上げた。
やがて、柔らかに揺れるギターの調べが、焚火のはぜる音と溶け合う。
見守っていたカロンとヴェーネスも、穏やかにその幻想に目を細める。
それはもはや、ただの夢でも幻でもなかった。
エメトセルクの補助によって、“想像”が“創造”へと昇華された瞬間だった。
彼女のポケットに収められた記録用クリスタルは、静かに、しかし確かに――
この魔法のような一夜を、記憶し続けていた。