【FF14】メイドさんの夢旅行
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旅の終着点――あるいは、新たな始まりの地。
一行は、ついにそこへたどり着いた。
アゼムがいるかもしれない場所。
その名は、『星見の頂』。
険しい山脈のような場所ではなく、台形を思わせる平らな山頂。
夜の帳に包まれており、その全貌を見渡すことはまだできない。
だが、空と大地の間に広がるこの静けさには、どこか特別な気配が漂っていた。
焚き火の跡が残る場所に着くと、エメトセルクたちは周囲を見回し、
しばしの安息への準備に入る。
「とりあえず、テントが張れそうな場所へ移動する」
エメトセルクが簡潔に指示し、歩を進める。
「了解です」
カロンが頷き、後に続く。
そして隣を歩くヴェーネスに、ふと気になっていたことを尋ねた。
「驚きました。ヴェーネス様が単独行動なさっているなんて」
「ふふ、そうですね。
ずっと仲間たちと各地を飛び回っていましたから。……少し、羽を伸ばしたくなったんです」
ヴェーネスはそう言って、どこか楽しげに微笑んだ。
懐かしさをたたえながらも、今を生きる人のような瞳。
その目には、変わらぬ強さと、あたたかな優しさが宿っていた。
「……む」
アトラは、ゆっくりと目を覚ました。
まだ体は重く、夢の余韻が少し残っている。
「あ、アトラアティウスちゃん。起きた?
これからキャンプにするから、横になって待っててもいいけど……立てそう?」
「……はい。大丈夫です。立てます」
そう言って、カロンの背からそっと降りる。
まだふらつく足取りのまま、彼にお礼を告げると、寝起きのまま目をこすった。
その瞬間、ふと視線を上げた先で――
ぱちり、と蒼い瞳と目が合った。
ヴェーネス。
その存在を、アトラは知っていた。
忘れるはずもない。けれど、それは――今は胸の奥にそっと仕舞っておく。
「アトラアティウスちゃん。こちら、ヴェーネス様だよ」
カロンが優しく紹介し、ちらりと目配せを送ってくる。
その笑顔と、ヴェーネスのたたえる微笑――
アトラは、それにほんの少し安堵して、小さく頷いた。
「はじめまして。ヴェーネス様。アトラアティウスといいます。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げたその仕草は、ぎこちなくも礼儀正しく。
けれど、その声の奥にあるかすかな震えは、まだ消せていない。
ヴェーネスは、ゆっくりと目を細め、やわらかな笑みで応えた。
「ええ、もちろん。私はヴェーネス。こちらこそ、よろしくお願いしますね――小さな旅人さん」
その声音は、まるで長い旅の果てに灯った、あたたかな焚き火のようだった。
一行は、キャンプの拠点になりそうな開けた場所へとたどり着いた。
立て看板が一本、目立たない場所に立っているのを、エメトセルクが見つける。
「ふむ……」
説明書きを目で追い、最後まで読み終えると、彼は少し眉をひそめた。
「川の船、乗れるみたいですね」
カロンが斜め読みしながら、気になった箇所だけを口にする。
「ふふ。あの子が作ったのかもしれませんね。上流には温泉もあると書かれていますし」
ヴェーネスの言葉に、カロンの目がきらりと光った。
「温泉……! エメトセルク様、行きましょう! 疲れは今のうちに取っておかないと、いざという時に動けませんよ!」
「……無駄にくつろぐ暇などない」
そう言いつつも、エメトセルクはわずかに視線をそらす。
その小さな反応を、ヴェーネスは見逃さない。
彼女はくすりと微笑みながら、穏やかながらもどこか有無を言わせぬ声で言った。
「たまには、いいのではありませんか? エメトセルク。あの子も、そこにいるかもしれません」
アリシオ沼で予定していた日程が思いがけず短縮されたことで、時間にはわずかな余裕がある。
けれど――エメトセルクにとって、ここは慰安旅行の地ではない。
それでも、ヴェーネスの笑顔と、すでに足を進めかけているカロンを見ては、もはや止めようにも遅すぎる。
結局、彼は一言も返さぬまま、小さくため息をついた。
だが、ヴェーネスの有無を言わさぬ笑顔と、もう止められないカロンに、エメトセルクは返事をしないまま肯定するしかなかった。
「……“キャンプ利用には、仮面とフードの取り外しをお願いしています”?」
看板の最後の一文に気づいたアトラが、首をかしげながら読み上げた。
「はあ?」
その言葉に、エメトセルクが反応する。
看板の文字をなぞるように目で追い、眉を寄せる。
怒りというよりは、呆れと困惑をにじませた声が漏れた。
「なぜそんな決まりが……必要あるまい。まったく、無粋だ」
「えーと、なになに……」
カロンが軽い調子で続きを読む。
「“仮面があると目を合わせづらいし、ちゃんと顔を見せ合って話したほうが楽しい”って。
ここは色んな地域や立場の人が集まるから、対話を重んじるために――だそうですよ」
「……ふん」
エメトセルクは鼻を鳴らし、目を伏せた。
言いたいことは山ほどあるが、どれも口にするのが癪だった。
それでも、誰が書いたかは一目瞭然だ。
“あいつらしい”――そう思う自分が、さらに癪に障る。
「……従っておくか。今はな」
彼は不満げに肩をすくめると、フードを下ろし、仮面を外す。
その所作は、まるで“これでもか”というほど渋々だった。
「まるで、エルピスのようですね」
ヴェーネスが穏やかに言うと、カロンがぱっと表情を輝かせる。
「ですね! なんだか、わくわくしてきました!」
ヴェーネスとカロンは、自然な仕草でフードと仮面を外す。
二人の顔があらわになると、その場の空気がほんの少し、やわらいだようにも思えた。
「エーテライトまで設置されてますね。これって、なかなか大変なんじゃないでしょうか」
カロンがそう言いながら、慣れた手つきでクリスタルへの“交感”を済ませる。
続いてヴェーネスも、静かに手をかざした。
「そのはずですが……やってのけてしまうのでしょう。あとで、設置のときの話を聞いておかなくては」
アトラも、カロンに続いて交感を行う。
体内には問題なくエーテルが巡っており、登録自体は無事に完了する。
着ている古代人のフードを外し、仮面をフードの紐に括り付ける。
もっとも、彼女はガレアン族。
種族的にエーテルを扱うことはできないため、通常の転送は使えない。
未来、シャーレアンで開発される新型エーテライトでもないかぎり。
今は封印されているが、アトラには夢見の力がある。
彼女の能力なら、夢を通して人や場所を辿ることが可能だ――そのための“交感”でもある。
後ろから、さりげなくカロンがフォローに入る場面もあったが、特に混乱もなく、一連の流れはスムーズに進んだ。
登録を終えた一行は、キャンプ内の開けた場所へと移動し、テントの設営に取りかかる。
創造魔法とイデアの力を駆使して、次々と構築されていく構造物。
――“テント”と呼ぶには、あまりにも立派だった。
しなやかな布地の質感ながら、その耐久性は石造りにすら劣らない。
さらにヴェーネスが魔法で内部に手を加えると、空間がぐっと広がっていく。
中には調理場、休息用の寝室、果ては浴室まで完備された。
「……もはや屋敷だな」
呆れたようにエメトセルクがぼそりとつぶやく。
「ふふっ、旅は快適であるべきですから。もちろん、工夫が活躍するキャンプも好きですよ」
ヴェーネスが、いたずらを企む子どものような目で笑う。
カロンは腕を組んで周囲を見回し、「快適すぎるのも、悪くないですね!」と満足そうに頷いた。
アトラは、お茶をすするようにのんびりと、その光景を眺めていた。
「エメトセルクも、結局この旅にノリノリだったなあ」と、どこか他人事のように思いながら。
呆れ顔のエメトセルク。張り切るヴェーネスとカロン。
その様子はどこか芝居がかった劇の一場面のようで、現実味が薄かった。
「さすが『星見の頂』というだけありますね」
空を仰ぐカロンのひとことに、他の旅人たちもつられて空を見上げる。
満天の星々が、澄んだ夜空にくっきりと浮かび上がる。
天の川は、どこかの山の頂へと続いているように見えて――まるでその山に、星の川が流れ込んでいるようだった。
女性陣から、自然と感嘆の声がこぼれる。
黒一点のエメトセルクはただ黙って、何かを思案するように星空を見上げていた。
きっとこの楽しい旅も、あっという間に終わってしまうのだろう。
――それでも。
アトラは、談話スペースにそっと腰を下ろす。
くつろぎのために用意されたその場所には、柔らかなクッションと風よけの布、すぐ手の届くところに棚と、優しい光があった。
その小さな空間に身を預けながら、アトラはほのかな喜びを感じていた。
この旅の間だけでも、こんな居場所があるのなら――それで、十分だった。
一行は、ついにそこへたどり着いた。
アゼムがいるかもしれない場所。
その名は、『星見の頂』。
険しい山脈のような場所ではなく、台形を思わせる平らな山頂。
夜の帳に包まれており、その全貌を見渡すことはまだできない。
だが、空と大地の間に広がるこの静けさには、どこか特別な気配が漂っていた。
焚き火の跡が残る場所に着くと、エメトセルクたちは周囲を見回し、
しばしの安息への準備に入る。
「とりあえず、テントが張れそうな場所へ移動する」
エメトセルクが簡潔に指示し、歩を進める。
「了解です」
カロンが頷き、後に続く。
そして隣を歩くヴェーネスに、ふと気になっていたことを尋ねた。
「驚きました。ヴェーネス様が単独行動なさっているなんて」
「ふふ、そうですね。
ずっと仲間たちと各地を飛び回っていましたから。……少し、羽を伸ばしたくなったんです」
ヴェーネスはそう言って、どこか楽しげに微笑んだ。
懐かしさをたたえながらも、今を生きる人のような瞳。
その目には、変わらぬ強さと、あたたかな優しさが宿っていた。
「……む」
アトラは、ゆっくりと目を覚ました。
まだ体は重く、夢の余韻が少し残っている。
「あ、アトラアティウスちゃん。起きた?
これからキャンプにするから、横になって待っててもいいけど……立てそう?」
「……はい。大丈夫です。立てます」
そう言って、カロンの背からそっと降りる。
まだふらつく足取りのまま、彼にお礼を告げると、寝起きのまま目をこすった。
その瞬間、ふと視線を上げた先で――
ぱちり、と蒼い瞳と目が合った。
ヴェーネス。
その存在を、アトラは知っていた。
忘れるはずもない。けれど、それは――今は胸の奥にそっと仕舞っておく。
「アトラアティウスちゃん。こちら、ヴェーネス様だよ」
カロンが優しく紹介し、ちらりと目配せを送ってくる。
その笑顔と、ヴェーネスのたたえる微笑――
アトラは、それにほんの少し安堵して、小さく頷いた。
「はじめまして。ヴェーネス様。アトラアティウスといいます。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げたその仕草は、ぎこちなくも礼儀正しく。
けれど、その声の奥にあるかすかな震えは、まだ消せていない。
ヴェーネスは、ゆっくりと目を細め、やわらかな笑みで応えた。
「ええ、もちろん。私はヴェーネス。こちらこそ、よろしくお願いしますね――小さな旅人さん」
その声音は、まるで長い旅の果てに灯った、あたたかな焚き火のようだった。
一行は、キャンプの拠点になりそうな開けた場所へとたどり着いた。
立て看板が一本、目立たない場所に立っているのを、エメトセルクが見つける。
「ふむ……」
説明書きを目で追い、最後まで読み終えると、彼は少し眉をひそめた。
「川の船、乗れるみたいですね」
カロンが斜め読みしながら、気になった箇所だけを口にする。
「ふふ。あの子が作ったのかもしれませんね。上流には温泉もあると書かれていますし」
ヴェーネスの言葉に、カロンの目がきらりと光った。
「温泉……! エメトセルク様、行きましょう! 疲れは今のうちに取っておかないと、いざという時に動けませんよ!」
「……無駄にくつろぐ暇などない」
そう言いつつも、エメトセルクはわずかに視線をそらす。
その小さな反応を、ヴェーネスは見逃さない。
彼女はくすりと微笑みながら、穏やかながらもどこか有無を言わせぬ声で言った。
「たまには、いいのではありませんか? エメトセルク。あの子も、そこにいるかもしれません」
アリシオ沼で予定していた日程が思いがけず短縮されたことで、時間にはわずかな余裕がある。
けれど――エメトセルクにとって、ここは慰安旅行の地ではない。
それでも、ヴェーネスの笑顔と、すでに足を進めかけているカロンを見ては、もはや止めようにも遅すぎる。
結局、彼は一言も返さぬまま、小さくため息をついた。
だが、ヴェーネスの有無を言わさぬ笑顔と、もう止められないカロンに、エメトセルクは返事をしないまま肯定するしかなかった。
「……“キャンプ利用には、仮面とフードの取り外しをお願いしています”?」
看板の最後の一文に気づいたアトラが、首をかしげながら読み上げた。
「はあ?」
その言葉に、エメトセルクが反応する。
看板の文字をなぞるように目で追い、眉を寄せる。
怒りというよりは、呆れと困惑をにじませた声が漏れた。
「なぜそんな決まりが……必要あるまい。まったく、無粋だ」
「えーと、なになに……」
カロンが軽い調子で続きを読む。
「“仮面があると目を合わせづらいし、ちゃんと顔を見せ合って話したほうが楽しい”って。
ここは色んな地域や立場の人が集まるから、対話を重んじるために――だそうですよ」
「……ふん」
エメトセルクは鼻を鳴らし、目を伏せた。
言いたいことは山ほどあるが、どれも口にするのが癪だった。
それでも、誰が書いたかは一目瞭然だ。
“あいつらしい”――そう思う自分が、さらに癪に障る。
「……従っておくか。今はな」
彼は不満げに肩をすくめると、フードを下ろし、仮面を外す。
その所作は、まるで“これでもか”というほど渋々だった。
「まるで、エルピスのようですね」
ヴェーネスが穏やかに言うと、カロンがぱっと表情を輝かせる。
「ですね! なんだか、わくわくしてきました!」
ヴェーネスとカロンは、自然な仕草でフードと仮面を外す。
二人の顔があらわになると、その場の空気がほんの少し、やわらいだようにも思えた。
「エーテライトまで設置されてますね。これって、なかなか大変なんじゃないでしょうか」
カロンがそう言いながら、慣れた手つきでクリスタルへの“交感”を済ませる。
続いてヴェーネスも、静かに手をかざした。
「そのはずですが……やってのけてしまうのでしょう。あとで、設置のときの話を聞いておかなくては」
アトラも、カロンに続いて交感を行う。
体内には問題なくエーテルが巡っており、登録自体は無事に完了する。
着ている古代人のフードを外し、仮面をフードの紐に括り付ける。
もっとも、彼女はガレアン族。
種族的にエーテルを扱うことはできないため、通常の転送は使えない。
未来、シャーレアンで開発される新型エーテライトでもないかぎり。
今は封印されているが、アトラには夢見の力がある。
彼女の能力なら、夢を通して人や場所を辿ることが可能だ――そのための“交感”でもある。
後ろから、さりげなくカロンがフォローに入る場面もあったが、特に混乱もなく、一連の流れはスムーズに進んだ。
登録を終えた一行は、キャンプ内の開けた場所へと移動し、テントの設営に取りかかる。
創造魔法とイデアの力を駆使して、次々と構築されていく構造物。
――“テント”と呼ぶには、あまりにも立派だった。
しなやかな布地の質感ながら、その耐久性は石造りにすら劣らない。
さらにヴェーネスが魔法で内部に手を加えると、空間がぐっと広がっていく。
中には調理場、休息用の寝室、果ては浴室まで完備された。
「……もはや屋敷だな」
呆れたようにエメトセルクがぼそりとつぶやく。
「ふふっ、旅は快適であるべきですから。もちろん、工夫が活躍するキャンプも好きですよ」
ヴェーネスが、いたずらを企む子どものような目で笑う。
カロンは腕を組んで周囲を見回し、「快適すぎるのも、悪くないですね!」と満足そうに頷いた。
アトラは、お茶をすするようにのんびりと、その光景を眺めていた。
「エメトセルクも、結局この旅にノリノリだったなあ」と、どこか他人事のように思いながら。
呆れ顔のエメトセルク。張り切るヴェーネスとカロン。
その様子はどこか芝居がかった劇の一場面のようで、現実味が薄かった。
「さすが『星見の頂』というだけありますね」
空を仰ぐカロンのひとことに、他の旅人たちもつられて空を見上げる。
満天の星々が、澄んだ夜空にくっきりと浮かび上がる。
天の川は、どこかの山の頂へと続いているように見えて――まるでその山に、星の川が流れ込んでいるようだった。
女性陣から、自然と感嘆の声がこぼれる。
黒一点のエメトセルクはただ黙って、何かを思案するように星空を見上げていた。
きっとこの楽しい旅も、あっという間に終わってしまうのだろう。
――それでも。
アトラは、談話スペースにそっと腰を下ろす。
くつろぎのために用意されたその場所には、柔らかなクッションと風よけの布、すぐ手の届くところに棚と、優しい光があった。
その小さな空間に身を預けながら、アトラはほのかな喜びを感じていた。
この旅の間だけでも、こんな居場所があるのなら――それで、十分だった。