【FF14】メイドさんの夢旅行
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『――絵理沙』
名前を呼ばれた瞬間、時が止まったように感じた。
内側のどこかが、ぴり、と震える。
あの、影の案内人だ。
『夢幻ってやつ、使いどきなんじゃない? 見せてごらんよ、君の"世界"を』
「え……」
一瞬、疑いがよぎる。
だが、それが本能的な警戒なのか、過去の記憶が疼いているのか、自分でもわからない。
ただ――今はそれを確かめている暇はない。
怪鳥の咆哮が、現実を引き裂くように響く。
ヴェーネスが体勢を立て直すが、その隙を狙って、怪鳥は一閃、こちらへ向きを変える。
「っ!」
アトラは深く息を吸い、瞳を閉じた。
自分の内側にある“もうひとつの世界”へと意識を沈めていく。
柔らかい、けれど底知れない靄のようなもの。
それが、“夢幻”――彼女だけの力。
怪鳥はエメトセルクの漆黒の槍を雨と浴びても、ヴェーネスの剣撃を浴びても、なお執拗に飛翔を続けていた。
アトラは必死に夢幻の力を操り、思いつく限りの幻を次々に編み上げた。
燃え盛る炎。雷鳴とともに閃く稲妻。怪鳥のすぐ傍に落ちる雷光――。
その光景に、エメトセルクとヴェーネスも小さく息を呑み、様子を見守るように一歩引く。
だが、怪鳥の瞳は一瞬だけ濁ったものの、すぐにその奥底に宿した殺意を取り戻した。
「これは……?」
ヴェーネスの口から、驚き混じりの声が漏れる。
エーテルをまとわぬまま、自然現象のように怪鳥を襲う“それ”の異質さが、彼女の感覚に引っかかったのだ。
すかさず体勢を切り替えたエメトセルクが、短く説明を返す。
「アトラアティウスの使う幻覚だ。現実には干渉しない」
「こんなに鮮やかで……? 雷の振動も、熱も、幻覚?」
「錯覚だ。視覚だけでなく、五感すべてに干渉する。“あるように”感じさせるだけだ」
「……なるほど。使いようによっては、厄介ですが――」
(なんで……効かない……!)
焦燥と疲労に追い立てられ、アトラの手が震え始める。
幻は不安定に揺らぎ、まるで意識の乱れを映すかのようだった。
そんなときだった。
ふいに、穏やかでありながら、どこか皮肉を含んだ声が耳を打つ。
「高く飛ぶものほど、地に落ちるのは怖いでしょう?」
ヴェーネスが、まるで他愛のないおしゃべりのように呟いた。
アトラは、ハッと目を見開く。
落ちる――そう、それだ。恐怖。それを“感じさせればいい”。
考えるより早く、アトラは怪鳥に「落下する感覚」を送り込んだ。
怪鳥の視界が、ぐらりと傾ぐ。
空は見えない。遥か下、地面がどこまでも広がる。
――落ちる。翼はあるのに、風を捉えられない。
どれだけ羽ばたいても、高さは奪われ、速度だけが増していく。
それは完全な“錯覚”――だが、知覚にとっては“現実”だった。
突然の錯覚に、怪鳥は混乱し、暴れるように翼をばたつかせ――ついには、その飛翔を自ら崩していった。
「では、フィナーレといきましよう」
ヴェーネスがこのチャンスを逃すことはない。
その声とともに、眩い光が彼女の掌に集まり――次の瞬間、会心の一撃が怪鳥の胸元を貫いた。
続いて、エメトセルクが指を鳴らす。
現実そのものをねじ伏せるような圧倒的なエーテルの奔流が、怪鳥を正面から叩き落とす。
「冥 っていろ」
その一言は、まるで呪いのように響いた。
言葉と同時に、怪鳥の身体が激しく地へ叩きつけられ――そして、アトラの世界もまた、崩れ落ちていく。
――共感覚って、きつ……!
アトラは怪鳥と感覚を同調させたまま、虚空に引きずり込まれるようなめまいを覚える。
意識も、体も、まるで自分のものではないように重くなっていった。
視界がぐるりと回り、力が抜ける。
地面が遠く、そして近く――やがて、何も見えなくなる。
「おや、無茶するねえ……」
遠くで、カロンの呆れた声が聞こえた。けれど、もう返す力はなかった。
「だが、よくやった」
エメトセルクの声は、妙に静かで、どこか優しかった。
「お疲れさま。あとは、私たちが引き受けますよ」
ヴェーネスの声は、まるで子どもを寝かしつける母親のように柔らかく、あたたかい。
アトラは、もう何も言わず、ただ静かに――夢の底へ沈んでいった。
ヴェーネスはカロンに向き直る。
「やはり、カロンでしたか。久しぶりですね。お元気でしたか? 最近はあの子の手伝いをしているとか」
「はい。本当にお久しぶりです。おかげさまで。
アゼム様は、相変わらず面白いことばかりしていますよ。行き当たりばったりなのに、なぜか道理が通っているというか……」
くすり、と笑うその声は、どこか誇らしげでもあった。
ヴェーネスは目を細める。
「あの子らしいわ」
まるで遠い昔の出来事を思い返すように、ゆっくりと瞬きをした。
「あなたが、支えてくれているおかげですね」
カロンはその言葉に、ほんの一瞬、目を伏せた。
「……いえ。自分が、そうしていたいだけです」
ヴェーネスは小さく笑い、
「それも、あの子が選んだあなたらしいわ」
と、優しく告げた。
「ところで……ヴェーネス様は、『星見の頂』には何かご用が?」
「ええ……あの子に、アゼムの座にあったとき開発した魔法術式のことで、相談しようと思ったのです」
何でもないことのように語りながら、その口元にかすかな笑みがのぞく。
ヴェーネスもアゼムが『星見の頂』にいると踏んでいるようだった。
「もっとも、それはついでのようなものですけれど。あの子の顔を、少しだけ見たくなったんです」
そう言って、ヴェーネスはわずかに目を細めた。
その表情は、どこか懐かしさを帯びた穏やかなものだった。
ヴェーネスは、カロンが背負っているアトラの存在に気づく。
彼女の目が少し見開かれ、すぐに和らいだ微笑が浮かぶ。
カロンが代わりに名を伝える。
「こちら、アトラアティウスちゃんです。さっきの幻覚、夢幻の力を使った本人です」
「こちらが。見事な技でしたね。今はよく眠っている」
その声色には、好奇の色はない。ただ、純粋な優しさと親しみがこもっていた。
まるで迷子を見つけた大人のような、包み込むような声音だった。
――ああ、面倒だ。
エメトセルクはすでに、額に手を当てたい気分だった。
だが、ここまで来て無視することもできず、渋々と口を開く。
「……エーテルは扱えんが、基点さえあればエーテライトなしでどこへでも行ける。
幻を見せる“夢見”の力を持っている。……異邦の旅人だ」
ヴェーネスは「まあ」と目を細め、どこか慈しむようにアトラを見つめた。
「なんて素敵な旅人なのでしょう。夢幻に、夢見?
もし時間が許すのなら……少し聞かせていただきたいですね」
声は穏やかで、優しく。
夕陽を背にしたヴェーネスの微笑みは、茜色の空に溶けるように、やわらかく輝いていた。
「みなさんも、旅の途中ですか?」
ヴェーネスの問いかけに、カロンがぱっと表情を明るくする。
「はい! 私たちも実は、アゼム様にお会いするために旅をしているんです」
「まあ、それは奇遇ですね」
ヴェーネスの目元がさらにやわらぐ。
その光景を見て、エメトセルクは胸の奥に、じわりとした胸騒ぎを覚えた。
嫌な予感――それは、もはや予感ではない。確信に近かった。
「目的が同じ……ということなら――」
その先の言葉を聞かずとも、エメトセルクにはもうわかっていた。
まるで罠にかかった獣のように、肩を落とす。
「私も、旅の一行に加えていただけますか?」
ヴェーネスはいつもの穏やかな口調のまま。
けれど断れない雰囲気をまとわせて、そう告げた。
名前を呼ばれた瞬間、時が止まったように感じた。
内側のどこかが、ぴり、と震える。
あの、影の案内人だ。
『夢幻ってやつ、使いどきなんじゃない? 見せてごらんよ、君の"世界"を』
「え……」
一瞬、疑いがよぎる。
だが、それが本能的な警戒なのか、過去の記憶が疼いているのか、自分でもわからない。
ただ――今はそれを確かめている暇はない。
怪鳥の咆哮が、現実を引き裂くように響く。
ヴェーネスが体勢を立て直すが、その隙を狙って、怪鳥は一閃、こちらへ向きを変える。
「っ!」
アトラは深く息を吸い、瞳を閉じた。
自分の内側にある“もうひとつの世界”へと意識を沈めていく。
柔らかい、けれど底知れない靄のようなもの。
それが、“夢幻”――彼女だけの力。
怪鳥はエメトセルクの漆黒の槍を雨と浴びても、ヴェーネスの剣撃を浴びても、なお執拗に飛翔を続けていた。
アトラは必死に夢幻の力を操り、思いつく限りの幻を次々に編み上げた。
燃え盛る炎。雷鳴とともに閃く稲妻。怪鳥のすぐ傍に落ちる雷光――。
その光景に、エメトセルクとヴェーネスも小さく息を呑み、様子を見守るように一歩引く。
だが、怪鳥の瞳は一瞬だけ濁ったものの、すぐにその奥底に宿した殺意を取り戻した。
「これは……?」
ヴェーネスの口から、驚き混じりの声が漏れる。
エーテルをまとわぬまま、自然現象のように怪鳥を襲う“それ”の異質さが、彼女の感覚に引っかかったのだ。
すかさず体勢を切り替えたエメトセルクが、短く説明を返す。
「アトラアティウスの使う幻覚だ。現実には干渉しない」
「こんなに鮮やかで……? 雷の振動も、熱も、幻覚?」
「錯覚だ。視覚だけでなく、五感すべてに干渉する。“あるように”感じさせるだけだ」
「……なるほど。使いようによっては、厄介ですが――」
(なんで……効かない……!)
焦燥と疲労に追い立てられ、アトラの手が震え始める。
幻は不安定に揺らぎ、まるで意識の乱れを映すかのようだった。
そんなときだった。
ふいに、穏やかでありながら、どこか皮肉を含んだ声が耳を打つ。
「高く飛ぶものほど、地に落ちるのは怖いでしょう?」
ヴェーネスが、まるで他愛のないおしゃべりのように呟いた。
アトラは、ハッと目を見開く。
落ちる――そう、それだ。恐怖。それを“感じさせればいい”。
考えるより早く、アトラは怪鳥に「落下する感覚」を送り込んだ。
怪鳥の視界が、ぐらりと傾ぐ。
空は見えない。遥か下、地面がどこまでも広がる。
――落ちる。翼はあるのに、風を捉えられない。
どれだけ羽ばたいても、高さは奪われ、速度だけが増していく。
それは完全な“錯覚”――だが、知覚にとっては“現実”だった。
突然の錯覚に、怪鳥は混乱し、暴れるように翼をばたつかせ――ついには、その飛翔を自ら崩していった。
「では、フィナーレといきましよう」
ヴェーネスがこのチャンスを逃すことはない。
その声とともに、眩い光が彼女の掌に集まり――次の瞬間、会心の一撃が怪鳥の胸元を貫いた。
続いて、エメトセルクが指を鳴らす。
現実そのものをねじ伏せるような圧倒的なエーテルの奔流が、怪鳥を正面から叩き落とす。
「
その一言は、まるで呪いのように響いた。
言葉と同時に、怪鳥の身体が激しく地へ叩きつけられ――そして、アトラの世界もまた、崩れ落ちていく。
――共感覚って、きつ……!
アトラは怪鳥と感覚を同調させたまま、虚空に引きずり込まれるようなめまいを覚える。
意識も、体も、まるで自分のものではないように重くなっていった。
視界がぐるりと回り、力が抜ける。
地面が遠く、そして近く――やがて、何も見えなくなる。
「おや、無茶するねえ……」
遠くで、カロンの呆れた声が聞こえた。けれど、もう返す力はなかった。
「だが、よくやった」
エメトセルクの声は、妙に静かで、どこか優しかった。
「お疲れさま。あとは、私たちが引き受けますよ」
ヴェーネスの声は、まるで子どもを寝かしつける母親のように柔らかく、あたたかい。
アトラは、もう何も言わず、ただ静かに――夢の底へ沈んでいった。
ヴェーネスはカロンに向き直る。
「やはり、カロンでしたか。久しぶりですね。お元気でしたか? 最近はあの子の手伝いをしているとか」
「はい。本当にお久しぶりです。おかげさまで。
アゼム様は、相変わらず面白いことばかりしていますよ。行き当たりばったりなのに、なぜか道理が通っているというか……」
くすり、と笑うその声は、どこか誇らしげでもあった。
ヴェーネスは目を細める。
「あの子らしいわ」
まるで遠い昔の出来事を思い返すように、ゆっくりと瞬きをした。
「あなたが、支えてくれているおかげですね」
カロンはその言葉に、ほんの一瞬、目を伏せた。
「……いえ。自分が、そうしていたいだけです」
ヴェーネスは小さく笑い、
「それも、あの子が選んだあなたらしいわ」
と、優しく告げた。
「ところで……ヴェーネス様は、『星見の頂』には何かご用が?」
「ええ……あの子に、アゼムの座にあったとき開発した魔法術式のことで、相談しようと思ったのです」
何でもないことのように語りながら、その口元にかすかな笑みがのぞく。
ヴェーネスもアゼムが『星見の頂』にいると踏んでいるようだった。
「もっとも、それはついでのようなものですけれど。あの子の顔を、少しだけ見たくなったんです」
そう言って、ヴェーネスはわずかに目を細めた。
その表情は、どこか懐かしさを帯びた穏やかなものだった。
ヴェーネスは、カロンが背負っているアトラの存在に気づく。
彼女の目が少し見開かれ、すぐに和らいだ微笑が浮かぶ。
カロンが代わりに名を伝える。
「こちら、アトラアティウスちゃんです。さっきの幻覚、夢幻の力を使った本人です」
「こちらが。見事な技でしたね。今はよく眠っている」
その声色には、好奇の色はない。ただ、純粋な優しさと親しみがこもっていた。
まるで迷子を見つけた大人のような、包み込むような声音だった。
――ああ、面倒だ。
エメトセルクはすでに、額に手を当てたい気分だった。
だが、ここまで来て無視することもできず、渋々と口を開く。
「……エーテルは扱えんが、基点さえあればエーテライトなしでどこへでも行ける。
幻を見せる“夢見”の力を持っている。……異邦の旅人だ」
ヴェーネスは「まあ」と目を細め、どこか慈しむようにアトラを見つめた。
「なんて素敵な旅人なのでしょう。夢幻に、夢見?
もし時間が許すのなら……少し聞かせていただきたいですね」
声は穏やかで、優しく。
夕陽を背にしたヴェーネスの微笑みは、茜色の空に溶けるように、やわらかく輝いていた。
「みなさんも、旅の途中ですか?」
ヴェーネスの問いかけに、カロンがぱっと表情を明るくする。
「はい! 私たちも実は、アゼム様にお会いするために旅をしているんです」
「まあ、それは奇遇ですね」
ヴェーネスの目元がさらにやわらぐ。
その光景を見て、エメトセルクは胸の奥に、じわりとした胸騒ぎを覚えた。
嫌な予感――それは、もはや予感ではない。確信に近かった。
「目的が同じ……ということなら――」
その先の言葉を聞かずとも、エメトセルクにはもうわかっていた。
まるで罠にかかった獣のように、肩を落とす。
「私も、旅の一行に加えていただけますか?」
ヴェーネスはいつもの穏やかな口調のまま。
けれど断れない雰囲気をまとわせて、そう告げた。