【FF14】メイドさんの夢旅行
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風を切る、異様な音。
翼の奔流が背後から押し寄せる。
先ほどの怪鳥が通り過ぎた音に紛れ、
別の気配が、接近していたのだ。
気づいた時には遅かった。
おそらく、二十羽以上の怪鳥の群れ。
冷や汗が、背筋をすべる。
だが、表情は変えない。
――感情に、飲まれるわけにはいかない。
やむを得ない。
「……黙って蹂躙される趣味はない。こればかりは、仕方ないか」
エメトセルクは空間に向かって手を掲げ、杖を創造した。
次いで、詠唱を開始する。
まるで、息を吸うように。
焦りも怒りも、微塵もない。
ただ静かに、冷たく、魔力が巡る。
それは“戦うための呼吸”。
もはや思考すら介さない、習慣の領域だった。
光を吸い込むほどの漆黒――数多の黒槍が形を成す。
槍先は、湖上に迫る怪鳥の群れへと向けられていた。
開けた湖なら――多少の被害は、抑えられる。
あと一息。群れを引きつけ、魔法を放つ、ただそれだけだった。
その時だった。
「――そこです!」
気合いに満ちた声が、頭上から落ちてくる。
叩きつけるような一声に、大気そのものが震えた。
次の瞬間。白い閃光が、空を裂いて降り注ぐ。
空間ごと雨粒が弾け、世界が一瞬、沈黙する。
光は、雨雲さえも断ち割った。
裂け目から、天の陽が降り注ぐ。
飛沫は七色に砕け、その光を受け止める――湖面。
空と水が、虹を架ける。
一条ではない、二重の虹だ。
湖はそれをすべて、静かに映していた。
二重に広がる虹の光と、白い閃光。
まるで、この世そのものが「誰かの降臨」を祝福しているかのように。
そして、現れた。
虹と閃光をまといながら、蒼く煌めくクリスタルの剣を携えた人影。
その姿は、光そのものだった。
眩しく、冷たく、そして――神々しい。
エメトセルクは空を見上げた。
「……やれやれ。派手にやってくれるな」
そう呟くと、掲げていた黒杖を音もなく解除した。
渾身の一撃を受けた怪鳥の群れは、大きくよろめき、いくつもが地に墜ちた。
脳震盪を起こしたかのように、鈍く、重たい音を響かせながら――次々と崩れ落ちる。
倒れ伏したまま、もはや微動だにしない。
いつの間にか、空を覆っていた雨雲は散り、降り続いていた雨も止んでいた。
澄みわたる空の果て、太陽は――地平線のすぐ上で、光を惜しむように揺れていた。
「……間に合ったようですね」
白いローブを纏った女性が、ゆったりと振り返る。
夕陽に照らされたその姿は、柔らかく、けれど目が眩むほどに輝いていた。
「わあっ、ヴェーネス様!」
カロンとアトラがエメトセルクに追いつき、カロンがはじけるように声を上げる。
(この人が――星の意思を築いた人。)
アトラは、目を奪われたまま、瞬きも忘れていた。
ヴェーネスと呼ばれた女性は、カロンの声にやさしく目を細める。
なにもなかったかのように、静かに微笑んだ。
その指先にはまだ、光の粒が――静かに、名残を惜しむように、瞬いていた。
「あら。エメトセルクではないですか。あなたとは……なにか、縁があるのかもしれませんね」
「……? 何の話だ」
エメトセルクは眉をひそめた。問い返しながらも、胸の奥に、微かなざらつきが残る。
理由はわからない。ただ、何かが引っかかる。それが何なのか、今の彼にはわからなかった。
──思い出せるはずがない。
ヘルメスが扱った『カイロス』によって、エメトセルクは、エルピスで出会ったときのヴェーネスとの記憶をすべて焼き払われている。
エルピスで交わした言葉も、交差した視線も――もう、彼の中にはない。
それでも。
託されたもの、交わされた想いは、名もなき灰のように彼の内にわずかに残っていた。
それを、彼はまだ知る由もない。
ヴェーネスはその様子に、わずかに目を細め、
「ふふ。……なんでもありません。今は」
そう静かに言った。
その微笑みは、まるで、終わった夢の続きを――今も見ている者のようだった。
エメトセルクは言葉を返そうとしたが、胸のうちに残る微かな違和感に、喉がつかえた。
その問いは、結局、口にすることができなかった。
切り裂くような鳴き声が、晴れわたった空にこだまする。
先ほどの怪鳥の群れのなかでも、ひときわ巨大な個体が、一行へと急降下を仕掛けてくる。
その緊迫を断ち切ったのは、意外にも穏やかな声だった。
「……随分と自己主張が激しいじゃないか」
エメトセルクは首を振り、再び杖を構える。
「ヴェーネス。どうする? ここまで執拗に来るなら、一思いに星海へ還してやっても構わないが……」
「いえ。見たことのないイデアですね。――試しに、手合わせしてみましょうか」
「癪だが同感だ。敵意を向けたこと、後悔させてやるとしよう」
軽口を交わしながらも、ふたりの内に宿るエーテルは、すでに鋭く研ぎ澄まされていた。
気迫が周囲の空気をわずかに震わせる。
ふたりは、同時に一歩を踏み出す。
その動きに、怪鳥がわずかにたじろぐ――が、すぐに咆哮をあげて翼を大きく広げ、反撃の構えを見せた。
「カロン、下がっていろ」
エメトセルクの言葉が、アトラのことを指しているとすぐに察し、カロンは頷いてアトラの肩をつかむ。
もはや慣れたものだった。
「こっちでじっとしててね」
そう短く告げると、木立の陰へと素早く身を滑らせる。
簡易的な結界を張り、その内側からアトラはふたりの戦いをじっと見守った。
エメトセルクとヴェーネスは、怪鳥の攻撃を軽やかにいなしながら反撃に転じる。
闇と光――対照的なエーテルが、互いに干渉しながらも決して混じらず、まるで螺旋のように絡み合い、怪鳥を追い詰めていく。
だが、怪鳥も古代人相手にひるまない。
鋭い双眸にエーテルが灯り、空間がねじ曲がるような幻惑を放つ。
周囲の景色が歪み、時の流れすら滲むように見える――ふたりの動きが鈍ったかに、見えた。
「面倒だな」
エメトセルクは舌打ちし、幻惑を見切るためのエーテルを集中させる。
ヴェーネスも即座に反応し、澄んだ魔力で歪曲を浄化していく。
その混乱の中。
アトラの耳に、くすりと笑う声が届いた。
翼の奔流が背後から押し寄せる。
先ほどの怪鳥が通り過ぎた音に紛れ、
別の気配が、接近していたのだ。
気づいた時には遅かった。
おそらく、二十羽以上の怪鳥の群れ。
冷や汗が、背筋をすべる。
だが、表情は変えない。
――感情に、飲まれるわけにはいかない。
やむを得ない。
「……黙って蹂躙される趣味はない。こればかりは、仕方ないか」
エメトセルクは空間に向かって手を掲げ、杖を創造した。
次いで、詠唱を開始する。
まるで、息を吸うように。
焦りも怒りも、微塵もない。
ただ静かに、冷たく、魔力が巡る。
それは“戦うための呼吸”。
もはや思考すら介さない、習慣の領域だった。
光を吸い込むほどの漆黒――数多の黒槍が形を成す。
槍先は、湖上に迫る怪鳥の群れへと向けられていた。
開けた湖なら――多少の被害は、抑えられる。
あと一息。群れを引きつけ、魔法を放つ、ただそれだけだった。
その時だった。
「――そこです!」
気合いに満ちた声が、頭上から落ちてくる。
叩きつけるような一声に、大気そのものが震えた。
次の瞬間。白い閃光が、空を裂いて降り注ぐ。
空間ごと雨粒が弾け、世界が一瞬、沈黙する。
光は、雨雲さえも断ち割った。
裂け目から、天の陽が降り注ぐ。
飛沫は七色に砕け、その光を受け止める――湖面。
空と水が、虹を架ける。
一条ではない、二重の虹だ。
湖はそれをすべて、静かに映していた。
二重に広がる虹の光と、白い閃光。
まるで、この世そのものが「誰かの降臨」を祝福しているかのように。
そして、現れた。
虹と閃光をまといながら、蒼く煌めくクリスタルの剣を携えた人影。
その姿は、光そのものだった。
眩しく、冷たく、そして――神々しい。
エメトセルクは空を見上げた。
「……やれやれ。派手にやってくれるな」
そう呟くと、掲げていた黒杖を音もなく解除した。
渾身の一撃を受けた怪鳥の群れは、大きくよろめき、いくつもが地に墜ちた。
脳震盪を起こしたかのように、鈍く、重たい音を響かせながら――次々と崩れ落ちる。
倒れ伏したまま、もはや微動だにしない。
いつの間にか、空を覆っていた雨雲は散り、降り続いていた雨も止んでいた。
澄みわたる空の果て、太陽は――地平線のすぐ上で、光を惜しむように揺れていた。
「……間に合ったようですね」
白いローブを纏った女性が、ゆったりと振り返る。
夕陽に照らされたその姿は、柔らかく、けれど目が眩むほどに輝いていた。
「わあっ、ヴェーネス様!」
カロンとアトラがエメトセルクに追いつき、カロンがはじけるように声を上げる。
(この人が――星の意思を築いた人。)
アトラは、目を奪われたまま、瞬きも忘れていた。
ヴェーネスと呼ばれた女性は、カロンの声にやさしく目を細める。
なにもなかったかのように、静かに微笑んだ。
その指先にはまだ、光の粒が――静かに、名残を惜しむように、瞬いていた。
「あら。エメトセルクではないですか。あなたとは……なにか、縁があるのかもしれませんね」
「……? 何の話だ」
エメトセルクは眉をひそめた。問い返しながらも、胸の奥に、微かなざらつきが残る。
理由はわからない。ただ、何かが引っかかる。それが何なのか、今の彼にはわからなかった。
──思い出せるはずがない。
ヘルメスが扱った『カイロス』によって、エメトセルクは、エルピスで出会ったときのヴェーネスとの記憶をすべて焼き払われている。
エルピスで交わした言葉も、交差した視線も――もう、彼の中にはない。
それでも。
託されたもの、交わされた想いは、名もなき灰のように彼の内にわずかに残っていた。
それを、彼はまだ知る由もない。
ヴェーネスはその様子に、わずかに目を細め、
「ふふ。……なんでもありません。今は」
そう静かに言った。
その微笑みは、まるで、終わった夢の続きを――今も見ている者のようだった。
エメトセルクは言葉を返そうとしたが、胸のうちに残る微かな違和感に、喉がつかえた。
その問いは、結局、口にすることができなかった。
切り裂くような鳴き声が、晴れわたった空にこだまする。
先ほどの怪鳥の群れのなかでも、ひときわ巨大な個体が、一行へと急降下を仕掛けてくる。
その緊迫を断ち切ったのは、意外にも穏やかな声だった。
「……随分と自己主張が激しいじゃないか」
エメトセルクは首を振り、再び杖を構える。
「ヴェーネス。どうする? ここまで執拗に来るなら、一思いに星海へ還してやっても構わないが……」
「いえ。見たことのないイデアですね。――試しに、手合わせしてみましょうか」
「癪だが同感だ。敵意を向けたこと、後悔させてやるとしよう」
軽口を交わしながらも、ふたりの内に宿るエーテルは、すでに鋭く研ぎ澄まされていた。
気迫が周囲の空気をわずかに震わせる。
ふたりは、同時に一歩を踏み出す。
その動きに、怪鳥がわずかにたじろぐ――が、すぐに咆哮をあげて翼を大きく広げ、反撃の構えを見せた。
「カロン、下がっていろ」
エメトセルクの言葉が、アトラのことを指しているとすぐに察し、カロンは頷いてアトラの肩をつかむ。
もはや慣れたものだった。
「こっちでじっとしててね」
そう短く告げると、木立の陰へと素早く身を滑らせる。
簡易的な結界を張り、その内側からアトラはふたりの戦いをじっと見守った。
エメトセルクとヴェーネスは、怪鳥の攻撃を軽やかにいなしながら反撃に転じる。
闇と光――対照的なエーテルが、互いに干渉しながらも決して混じらず、まるで螺旋のように絡み合い、怪鳥を追い詰めていく。
だが、怪鳥も古代人相手にひるまない。
鋭い双眸にエーテルが灯り、空間がねじ曲がるような幻惑を放つ。
周囲の景色が歪み、時の流れすら滲むように見える――ふたりの動きが鈍ったかに、見えた。
「面倒だな」
エメトセルクは舌打ちし、幻惑を見切るためのエーテルを集中させる。
ヴェーネスも即座に反応し、澄んだ魔力で歪曲を浄化していく。
その混乱の中。
アトラの耳に、くすりと笑う声が届いた。