【FF14】メイドさんの夢旅行
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翌朝。アトラはしっかり休んだ身体にバッグを背負い、エメトセルクは颯爽と支度を終え、カロンも大きなバックパックを担いで、二日目の旅を始めた。
「うって変わって、今日は雨か」
昨日の晴れ渡った沼地とは対照的に、『星見の頂』に向かう森は雨に煙っていた。
山からの水とアリシア沼の湿気が混ざるこの一帯は、もともと雨の多い地なのだろう。
葉先が銀のしずくを垂らし、土はしっとりと香りを立てていた。
カロンが濡れた葉に触れ、ぽたりと一滴が指先に転がる。
「植物が、まるで生き返ったみたいですね。地衣類も……ほら、こんなに」
「お前、それ菌類だぞ。触りすぎるなよ」
「はーい」
雨音と川のせせらぎが混ざり、遠くで鳥が一声鳴いた。
アトラは耳をすませ、その音に聞き入る。
ふたりのやり取りも、森の雨音に溶けていくようだった。
ふと足元を見やれば、木の根を縫うように細い流れが幾筋も走り、銀のリボンのようにきらめいている。
「このまま沼地になりそうな雨ですね」
「まったくだ」
雨は降り続き、森は瑞々しく息づいていた。
劇的な出来事はなくとも、旅は静かに、確かに進んでいく。
……途中、カロンが足を滑らせて泥に転び、予定より早く野宿になったことを除けば。
それでも、三人は深い夜になる前に、『星見の頂』のふもとへとたどり着こうとしていた。
「テレポは便利だが……こうして足で歩くと、見逃していたものがよく見える」
エメトセルクが呟くと、カロンが楽しげに応じた。
「徒歩で正解でしたね。こんなに観察対象が多いなんて、思いもしませんでした」
「あいつの真似事のようで気は進まなかったが……悪くない」
ふたりはどこか満足げだが、アトラにはいまひとつピンとこない。
思い当たるのは、自分が一度も“乗り物”に乗っていないということだった。
「……そういえば、使い魔に乗ってませんでしたね」
アトラの疑問に、エメトセルクが淡々と答える。
「沼地では霧も深く、視界も悪かった。おまけに雷もあった。使い魔を飛ばすには危険すぎる」
「まさか、あんなにあっさり抜けられるとは。
ここも雨だし、いつ危険があるかもわからないし、まだ警戒するに越したことはないかな」
カロンは楽しげに記録媒体を手にする。
「なるほど……」
アトラは気付いていないが、エメトセルクなら、雷すら魔力で薙ぎ払える。
――それでも、彼は“歩く”ことを選んだ。
アトラという“イレギュラー”のために。
どれだけ備えても、脆いものは壊れる。
だからこそ、彼は可能な限り「壊さない」選択をとった。
カロンも、それを察している。察して、あえて言わない。
……何も知らず、気づいていないのは、アトラだけだ。
エメトセルクは、その無知を「都合がいい」として、黙っていた。
守るべきものは、鈍いくらいがちょうどいい。
「あとわずかだな」
エメトセルクが低く呟いた。
そうして三人は慎重に歩みを進めていた。
山の空気は澄んでいて、吸い込むたびに肺が清められるようだった。
一行は静かに歩みを進める。
やがて、一行は山の中腹にたどり着いた。
目的地――『星見の頂』は、もう目前だ。
「……ん?」
カロンがふいに立ち止まり、目を細めて周囲を見渡す。
「なにかあったか」
エメトセルクも足を止め、眉をわずかにひそめる。
次の瞬間。
二人の口から、ぴたりと重なる声がもれた。
「「あ……!」」
きょとんとしていたアトラも、二人の視線を追って目をやる。
「……げっ」
視界の先にあったのは――黒い影。
甲高い鳴き声が、山の静けさを切り裂いた。
空気が変わる。
三人の意識が、即座に一点へと集中する。
風を裂く音が、頭上から迫った。
ふわり、ふわりと、黒い羽が宙に舞い落ちる。
その羽を辿るようにして空を仰げば――
そこには、巨大な怪鳥がいた。
漆黒の翼を大きく広げ、
ぎらつく双眸でこちらを睨みつけている。
まるで、とうに獲物に目星をつけていたかのように。
「雨だというのに、血気盛んなことだ」
怪鳥の鋭い鳴き声が、山中に響き渡った。
エメトセルクは即座に愛馬の召喚を試みた。
――が、状況が状況。エメトセルクの愛馬は森の中では不向きだった。
すぐには呼び出せないと察し、舌打ちを落とす。
カロンと目が合う。
エメトセルクの視線に意図を読み取ると、カロンは躊躇なくアトラの腕をつかんで駆け出した。
「こっち!」
逃げるための時間を稼ぐ。それが今の最優先だった。
けれど、逃走には不利な地形だ。
この森では、使い魔の召喚も飛行も困難。
空は蔦と枝に覆われ、陽も差さぬほどに暗く、
怪鳥はこの森に慣れているのか、器用に枝の間を滑るように飛ぶ。
泥に足を取られ、視界も悪い。
木の上に逃げる選択肢も、アトラを連れていては無理があった。
「どうします!?」
カロンが叫ぶ。判断を、エメトセルクにゆだねる。
逃げ切ることは可能だ。
だが、カロンがサポートに回れば、エメトセルクが反撃の布石を打てる。
その判断を、彼に預けた。
「安置が見つかるまで走れ! お前も隙を見て逃げろ!」
エメトセルクはカロンのサポートによってできた隙から、アトラの危険が迫ることを考慮し、自分が囮になることを暗に伝える。
カロンは即座にうなずき、隙を見てアトラを誘導し離脱。
即座にうなずき、カロンはアトラを引き連れて茂みに逸れた。
「アトラちゃん!」
「はい!」
アトラも察していた。
今の自分は足手まといなのだと。
せめて、戦う者の足を引っ張らないように。
ぬかるむ足元を見つめながら、それでも彼女は、
ちらりと――エメトセルクの背を振り返る。
雨の中、怪鳥の影と向き合う彼の姿が、わずかに滲んで見えた。
「エメトセルク様……」
だが、すぐに顔を前に向け直す。
よそ見は、命取りだ。
エメトセルクは、怪鳥の動きに合わせて目を走らせた。
岩陰、枝の密度、風の流れ――
使える地形を瞬時に選別していく。
そして、目の前に広がったのは、
降りしきる雨を呑み込むような、黒々とした湖だった。
……ここまで来れば、勝算はある。
魔法で捕らえることも、退けることも、どうとでもできる。
だが彼は、すぐには動かなかった。
無闇に手を出せば、生態系そのものが狂う。
人々が、星を善くしようと作ってきた様々な創造。
壊すわけにはいかなかった。
一拍、呼吸をおく。
手筈は整った――はずだった。
エメトセルクは読み違えた。
「敵はひとつきり」だと。
「うって変わって、今日は雨か」
昨日の晴れ渡った沼地とは対照的に、『星見の頂』に向かう森は雨に煙っていた。
山からの水とアリシア沼の湿気が混ざるこの一帯は、もともと雨の多い地なのだろう。
葉先が銀のしずくを垂らし、土はしっとりと香りを立てていた。
カロンが濡れた葉に触れ、ぽたりと一滴が指先に転がる。
「植物が、まるで生き返ったみたいですね。地衣類も……ほら、こんなに」
「お前、それ菌類だぞ。触りすぎるなよ」
「はーい」
雨音と川のせせらぎが混ざり、遠くで鳥が一声鳴いた。
アトラは耳をすませ、その音に聞き入る。
ふたりのやり取りも、森の雨音に溶けていくようだった。
ふと足元を見やれば、木の根を縫うように細い流れが幾筋も走り、銀のリボンのようにきらめいている。
「このまま沼地になりそうな雨ですね」
「まったくだ」
雨は降り続き、森は瑞々しく息づいていた。
劇的な出来事はなくとも、旅は静かに、確かに進んでいく。
……途中、カロンが足を滑らせて泥に転び、予定より早く野宿になったことを除けば。
それでも、三人は深い夜になる前に、『星見の頂』のふもとへとたどり着こうとしていた。
「テレポは便利だが……こうして足で歩くと、見逃していたものがよく見える」
エメトセルクが呟くと、カロンが楽しげに応じた。
「徒歩で正解でしたね。こんなに観察対象が多いなんて、思いもしませんでした」
「あいつの真似事のようで気は進まなかったが……悪くない」
ふたりはどこか満足げだが、アトラにはいまひとつピンとこない。
思い当たるのは、自分が一度も“乗り物”に乗っていないということだった。
「……そういえば、使い魔に乗ってませんでしたね」
アトラの疑問に、エメトセルクが淡々と答える。
「沼地では霧も深く、視界も悪かった。おまけに雷もあった。使い魔を飛ばすには危険すぎる」
「まさか、あんなにあっさり抜けられるとは。
ここも雨だし、いつ危険があるかもわからないし、まだ警戒するに越したことはないかな」
カロンは楽しげに記録媒体を手にする。
「なるほど……」
アトラは気付いていないが、エメトセルクなら、雷すら魔力で薙ぎ払える。
――それでも、彼は“歩く”ことを選んだ。
アトラという“イレギュラー”のために。
どれだけ備えても、脆いものは壊れる。
だからこそ、彼は可能な限り「壊さない」選択をとった。
カロンも、それを察している。察して、あえて言わない。
……何も知らず、気づいていないのは、アトラだけだ。
エメトセルクは、その無知を「都合がいい」として、黙っていた。
守るべきものは、鈍いくらいがちょうどいい。
「あとわずかだな」
エメトセルクが低く呟いた。
そうして三人は慎重に歩みを進めていた。
山の空気は澄んでいて、吸い込むたびに肺が清められるようだった。
一行は静かに歩みを進める。
やがて、一行は山の中腹にたどり着いた。
目的地――『星見の頂』は、もう目前だ。
「……ん?」
カロンがふいに立ち止まり、目を細めて周囲を見渡す。
「なにかあったか」
エメトセルクも足を止め、眉をわずかにひそめる。
次の瞬間。
二人の口から、ぴたりと重なる声がもれた。
「「あ……!」」
きょとんとしていたアトラも、二人の視線を追って目をやる。
「……げっ」
視界の先にあったのは――黒い影。
甲高い鳴き声が、山の静けさを切り裂いた。
空気が変わる。
三人の意識が、即座に一点へと集中する。
風を裂く音が、頭上から迫った。
ふわり、ふわりと、黒い羽が宙に舞い落ちる。
その羽を辿るようにして空を仰げば――
そこには、巨大な怪鳥がいた。
漆黒の翼を大きく広げ、
ぎらつく双眸でこちらを睨みつけている。
まるで、とうに獲物に目星をつけていたかのように。
「雨だというのに、血気盛んなことだ」
怪鳥の鋭い鳴き声が、山中に響き渡った。
エメトセルクは即座に愛馬の召喚を試みた。
――が、状況が状況。エメトセルクの愛馬は森の中では不向きだった。
すぐには呼び出せないと察し、舌打ちを落とす。
カロンと目が合う。
エメトセルクの視線に意図を読み取ると、カロンは躊躇なくアトラの腕をつかんで駆け出した。
「こっち!」
逃げるための時間を稼ぐ。それが今の最優先だった。
けれど、逃走には不利な地形だ。
この森では、使い魔の召喚も飛行も困難。
空は蔦と枝に覆われ、陽も差さぬほどに暗く、
怪鳥はこの森に慣れているのか、器用に枝の間を滑るように飛ぶ。
泥に足を取られ、視界も悪い。
木の上に逃げる選択肢も、アトラを連れていては無理があった。
「どうします!?」
カロンが叫ぶ。判断を、エメトセルクにゆだねる。
逃げ切ることは可能だ。
だが、カロンがサポートに回れば、エメトセルクが反撃の布石を打てる。
その判断を、彼に預けた。
「安置が見つかるまで走れ! お前も隙を見て逃げろ!」
エメトセルクはカロンのサポートによってできた隙から、アトラの危険が迫ることを考慮し、自分が囮になることを暗に伝える。
カロンは即座にうなずき、隙を見てアトラを誘導し離脱。
即座にうなずき、カロンはアトラを引き連れて茂みに逸れた。
「アトラちゃん!」
「はい!」
アトラも察していた。
今の自分は足手まといなのだと。
せめて、戦う者の足を引っ張らないように。
ぬかるむ足元を見つめながら、それでも彼女は、
ちらりと――エメトセルクの背を振り返る。
雨の中、怪鳥の影と向き合う彼の姿が、わずかに滲んで見えた。
「エメトセルク様……」
だが、すぐに顔を前に向け直す。
よそ見は、命取りだ。
エメトセルクは、怪鳥の動きに合わせて目を走らせた。
岩陰、枝の密度、風の流れ――
使える地形を瞬時に選別していく。
そして、目の前に広がったのは、
降りしきる雨を呑み込むような、黒々とした湖だった。
……ここまで来れば、勝算はある。
魔法で捕らえることも、退けることも、どうとでもできる。
だが彼は、すぐには動かなかった。
無闇に手を出せば、生態系そのものが狂う。
人々が、星を善くしようと作ってきた様々な創造。
壊すわけにはいかなかった。
一拍、呼吸をおく。
手筈は整った――はずだった。
エメトセルクは読み違えた。
「敵はひとつきり」だと。