【FF14】メイドさんの夢旅行
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霧が晴れた三人の前に現れたのは――明らかに「異常」としか言いようのない光景だった。
湿地一帯には、色とりどりの苔が広がっている。
その色は虹のように鮮やかで、自然のものとは思えないほど人工的なグラデーションを描いていた。
エメトセルクは軽く息を吐き、目を細めて沼地の向こうを見据える。
観光用と思しき桟橋が、沼の上をまっすぐ延びている。
青空は水面に反射し、雲と空が上下にひっくり返ったような錯覚すら与えた。
苔は小さな花を咲かせ、その花々はまるで夜空の星のように湿地を飾っている。
入口には、虹色の苔で編まれたアーチが掲げられていた。
まるで自然そのものが、自らの“装飾”を誇示しているかのように――。
「……全き自然だったはずの沼地が、とんでもないになっているな」
エメトセルクは深く嘆息しながら言った。
「どう見ても、人の手が入ってますね」
カロンが肩をすくめる。
アトラは「まさか自分の夢幻のせいで!?」と身構えたが、カロンの一言でどうやら話が違うということがわかる。
三人は顔をしかめつつ、違和感の正体を確かめるべく、ゆるやかな丘を下っていった。
三人は看板に近付き、文字を読み上げる。
『研究者とその協力者たちの手によって――ついに!
幻覚の原因が取り除かれました。
結果、本来の姿が明らかに。
虹のような苔が咲き誇る、この幻想的な湿地が姿を現したというわけです。
協力者は前代アゼム様、アリスティディス様――』
「英雄が現れるところは、活気にあふれる、か……」
アトラは、すでにおおよその答えに行き着いていた。
――アゼム。
彼が例によって“何かのついで”に、ここも通ったのだろう。
そしてまた例によって、誰かに“ちょっと調べてきて”と頼まれたに違いない。
結果、人の流れが生まれ、道が整備され、幻覚は取り除かれた。
そう、沼地そのものが、“おつかい”に巻き込まれたのだ。
英雄が動けば、世界も動く。
その影響力の大きさを、またひとつ思い知らされる――。
カロンが沼地の入り口に立てられた看板を読み上げ、それをきっかけに、アトラの脳裏には“世界の不思議発見風”のナレーションがよぎった。
「自然な行いに反する、が……」
「この沼地、本当はこんな姿だったんですね」
かつての荒れた沼地を知るエメトセルクとカロンは、しばし無言でその光景を見渡した。
虹色の苔は風に揺れ、水面には流れる雲が映る。
まるで、長い眠りから目覚めた世界のようだった。
二人の顔には驚きとともに、どこか安堵のようなものが浮かんでいる。
「霧があったのは私たちが通ってきたところだけだったか。
幻よりも、真実のほうが、ずっと自然に生きているな」
エメトセルクの言葉に、アトラは静かに息をのんだ。
夢は、ときに甘く、美しい“痛み止め”。
夢幻の力も。
かつてこの地を覆っていた幻――泥と雨との風景――その裏に隠されていたもの。
それは、「希望」だったのかもしれない。
星は、夜にこそ瞬く。
夜があるから、星が見える。
ならばこの沼も、昼の光のもとに広がる“星々”のようなものを、ずっと守ってきたのかもしれない。
――人々の希望を、密かに包みながら。
それは考えすぎかもしれない。
でも――この想いはどこまでも自然で、なぜかすっと、自分の中に馴染んでいった。
アトラ達は、ひときわ背の高い小花の群生地に足を踏み入れる。
アトラの胸ほどの高さにまで伸びた白い花は、風に揺れた。
小さな手を伸ばす。
茎はやわらかく、簡単に花は手に取られた。
「おい。遊んでいる場合か」
「あ、もう一本だけ」
アトラは小さな花束を作る。希望の象徴を手に入れたように感じらた。
星々のような白い花、象徴する希望はまるでアゼムの足跡のように。
カロンは周囲を見回し、興味津々といった様子で笑った。
「人が集まる理由も納得ですね。ずいぶん便利そうだ」
まだテントも混在しているが、拠点となる石造りの施設は堅固に築かれ、周囲の環境に溶け込むよう設計されている。
桟橋は枝分かれし、水面を傷つけることなく、岩場と建物を優しく繋いでいた。
「自然との距離は……まあ、悪くないな」
エメトセルクの視線は、木材や石材、建物の色調へと鋭く向けられている。
耐水性や景観への配慮――そこには、自然と共存しようとする知恵があった。
かつて幻で覆われていたこの地に、いまは調和と営みの風景が広がっていた。
夕日は彼らの歩みを黄金に染め、空はすぐに群青へと変わっていく。
星が瞬きはじめる空の下、施設群の屋根は日差しも影も巧みに遮り、まるで自然への祈りのような静けさをたたえていた。
「宿泊施設があるなら、泊まっていこう」
エメトセルクが当然のように言い、カロンが肩をすくめる。
「幻覚対策の野営を考えてたんですけどね。杞憂でした」
「この様子なら、テレポより徒歩を選ぶ旅人も増えるな」
宿泊施設は、苔に覆われた屋根と白い壁を持つ静かな水上家屋だった。
まるで沼に産み落とされた巨大な卵のようだ。
中へ入ると、ひやりとした空気が肌を撫でる。
床は滑りにくく、調湿された空間には過度な湿気も匂いもない。
だが、中央には澄んだ水が静かに流れていた。
(建物内に、小川がある……)
アトラはその川をまじまじと見つめた。
その縁には研究道具が置かれ、ここが旅の宿であると同時に、静かな学び舎であることを物語っていた。
三人は受付で部屋を取り、ロビーにある円卓とソファに腰を下ろした。
柔らかな灯りが差し込む中、明日の予定を確認し合う。
「沼地を抜ければ、森に入る」
地図を指先でなぞりながら、エメトセルクが言う。
「幻覚の心配はない……今のところは、な」
「んふ。まだ警戒モードなんですね」
カロンが肩をすくめる。だが、それももっともだった。
明日は『星見の頂』の手前まで進み、明日には目的地に到達する。
その道筋を思い描きながら、誰もが心の片隅で“旅の終わり”を想像していた。
――と、そこへひとりの宿泊客がずいっと会話に割って入ってきた。
ローブの胸元には、苔色のブローチ。首からは地形図をプリントした小さなスクロール。
明らかにここで研究している学者らしい。
「おや、お三方、あちらに向かわれるのかね? ならぜひ知っておいてほしい。
この沼地は『アリシオ沼』――“真実の沼”と呼ばれているんだよ! どうだい、ぴったりだと思わないかね!?」
興奮のあまり、学者のローブの裾が水路にぽちゃんと落ちる。だが本人はまるで気にせず、勢いよく続ける。
「開拓したのは、あの元・十四人委員会の一員だ!
信じられるか? 偉大なる――アゼム殿だ!」
「……アゼム。あいつ、何やってるんだ」
分かっていたことだが、エメトセルクは体の前で腕を組み、呆れ声を漏らす。
その嘆きは、虚しくロビーの空気に吸い込まれていった。
「おっと!? これはこれは、当代のエメトセルク殿でしたか!」
学者は目を丸くしたが、驚いたのも束の間、ぺこりと礼をして、まるで「用は済んだ」と言わんばかりに、さっさと立ち去っていく。
エメトセルクは溜息をつき、こめかみを揉んだ。
「……なんなんだ、あの無遠慮な礼儀正しさは」
カロンがくつくつと笑う。
「大物は大物に動じないってことじゃないですかねえ」
アトラは隣に座るエメトセルクの横顔をちらりと見て、小さく思った。
(エメトセルク様……絶対“アゼム系の厄介”引き寄せ体質だよなあ)
湿地一帯には、色とりどりの苔が広がっている。
その色は虹のように鮮やかで、自然のものとは思えないほど人工的なグラデーションを描いていた。
エメトセルクは軽く息を吐き、目を細めて沼地の向こうを見据える。
観光用と思しき桟橋が、沼の上をまっすぐ延びている。
青空は水面に反射し、雲と空が上下にひっくり返ったような錯覚すら与えた。
苔は小さな花を咲かせ、その花々はまるで夜空の星のように湿地を飾っている。
入口には、虹色の苔で編まれたアーチが掲げられていた。
まるで自然そのものが、自らの“装飾”を誇示しているかのように――。
「……全き自然だったはずの沼地が、とんでもないになっているな」
エメトセルクは深く嘆息しながら言った。
「どう見ても、人の手が入ってますね」
カロンが肩をすくめる。
アトラは「まさか自分の夢幻のせいで!?」と身構えたが、カロンの一言でどうやら話が違うということがわかる。
三人は顔をしかめつつ、違和感の正体を確かめるべく、ゆるやかな丘を下っていった。
三人は看板に近付き、文字を読み上げる。
『研究者とその協力者たちの手によって――ついに!
幻覚の原因が取り除かれました。
結果、本来の姿が明らかに。
虹のような苔が咲き誇る、この幻想的な湿地が姿を現したというわけです。
協力者は前代アゼム様、アリスティディス様――』
「英雄が現れるところは、活気にあふれる、か……」
アトラは、すでにおおよその答えに行き着いていた。
――アゼム。
彼が例によって“何かのついで”に、ここも通ったのだろう。
そしてまた例によって、誰かに“ちょっと調べてきて”と頼まれたに違いない。
結果、人の流れが生まれ、道が整備され、幻覚は取り除かれた。
そう、沼地そのものが、“おつかい”に巻き込まれたのだ。
英雄が動けば、世界も動く。
その影響力の大きさを、またひとつ思い知らされる――。
カロンが沼地の入り口に立てられた看板を読み上げ、それをきっかけに、アトラの脳裏には“世界の不思議発見風”のナレーションがよぎった。
「自然な行いに反する、が……」
「この沼地、本当はこんな姿だったんですね」
かつての荒れた沼地を知るエメトセルクとカロンは、しばし無言でその光景を見渡した。
虹色の苔は風に揺れ、水面には流れる雲が映る。
まるで、長い眠りから目覚めた世界のようだった。
二人の顔には驚きとともに、どこか安堵のようなものが浮かんでいる。
「霧があったのは私たちが通ってきたところだけだったか。
幻よりも、真実のほうが、ずっと自然に生きているな」
エメトセルクの言葉に、アトラは静かに息をのんだ。
夢は、ときに甘く、美しい“痛み止め”。
夢幻の力も。
かつてこの地を覆っていた幻――泥と雨との風景――その裏に隠されていたもの。
それは、「希望」だったのかもしれない。
星は、夜にこそ瞬く。
夜があるから、星が見える。
ならばこの沼も、昼の光のもとに広がる“星々”のようなものを、ずっと守ってきたのかもしれない。
――人々の希望を、密かに包みながら。
それは考えすぎかもしれない。
でも――この想いはどこまでも自然で、なぜかすっと、自分の中に馴染んでいった。
アトラ達は、ひときわ背の高い小花の群生地に足を踏み入れる。
アトラの胸ほどの高さにまで伸びた白い花は、風に揺れた。
小さな手を伸ばす。
茎はやわらかく、簡単に花は手に取られた。
「おい。遊んでいる場合か」
「あ、もう一本だけ」
アトラは小さな花束を作る。希望の象徴を手に入れたように感じらた。
星々のような白い花、象徴する希望はまるでアゼムの足跡のように。
カロンは周囲を見回し、興味津々といった様子で笑った。
「人が集まる理由も納得ですね。ずいぶん便利そうだ」
まだテントも混在しているが、拠点となる石造りの施設は堅固に築かれ、周囲の環境に溶け込むよう設計されている。
桟橋は枝分かれし、水面を傷つけることなく、岩場と建物を優しく繋いでいた。
「自然との距離は……まあ、悪くないな」
エメトセルクの視線は、木材や石材、建物の色調へと鋭く向けられている。
耐水性や景観への配慮――そこには、自然と共存しようとする知恵があった。
かつて幻で覆われていたこの地に、いまは調和と営みの風景が広がっていた。
夕日は彼らの歩みを黄金に染め、空はすぐに群青へと変わっていく。
星が瞬きはじめる空の下、施設群の屋根は日差しも影も巧みに遮り、まるで自然への祈りのような静けさをたたえていた。
「宿泊施設があるなら、泊まっていこう」
エメトセルクが当然のように言い、カロンが肩をすくめる。
「幻覚対策の野営を考えてたんですけどね。杞憂でした」
「この様子なら、テレポより徒歩を選ぶ旅人も増えるな」
宿泊施設は、苔に覆われた屋根と白い壁を持つ静かな水上家屋だった。
まるで沼に産み落とされた巨大な卵のようだ。
中へ入ると、ひやりとした空気が肌を撫でる。
床は滑りにくく、調湿された空間には過度な湿気も匂いもない。
だが、中央には澄んだ水が静かに流れていた。
(建物内に、小川がある……)
アトラはその川をまじまじと見つめた。
その縁には研究道具が置かれ、ここが旅の宿であると同時に、静かな学び舎であることを物語っていた。
三人は受付で部屋を取り、ロビーにある円卓とソファに腰を下ろした。
柔らかな灯りが差し込む中、明日の予定を確認し合う。
「沼地を抜ければ、森に入る」
地図を指先でなぞりながら、エメトセルクが言う。
「幻覚の心配はない……今のところは、な」
「んふ。まだ警戒モードなんですね」
カロンが肩をすくめる。だが、それももっともだった。
明日は『星見の頂』の手前まで進み、明日には目的地に到達する。
その道筋を思い描きながら、誰もが心の片隅で“旅の終わり”を想像していた。
――と、そこへひとりの宿泊客がずいっと会話に割って入ってきた。
ローブの胸元には、苔色のブローチ。首からは地形図をプリントした小さなスクロール。
明らかにここで研究している学者らしい。
「おや、お三方、あちらに向かわれるのかね? ならぜひ知っておいてほしい。
この沼地は『アリシオ沼』――“真実の沼”と呼ばれているんだよ! どうだい、ぴったりだと思わないかね!?」
興奮のあまり、学者のローブの裾が水路にぽちゃんと落ちる。だが本人はまるで気にせず、勢いよく続ける。
「開拓したのは、あの元・十四人委員会の一員だ!
信じられるか? 偉大なる――アゼム殿だ!」
「……アゼム。あいつ、何やってるんだ」
分かっていたことだが、エメトセルクは体の前で腕を組み、呆れ声を漏らす。
その嘆きは、虚しくロビーの空気に吸い込まれていった。
「おっと!? これはこれは、当代のエメトセルク殿でしたか!」
学者は目を丸くしたが、驚いたのも束の間、ぺこりと礼をして、まるで「用は済んだ」と言わんばかりに、さっさと立ち去っていく。
エメトセルクは溜息をつき、こめかみを揉んだ。
「……なんなんだ、あの無遠慮な礼儀正しさは」
カロンがくつくつと笑う。
「大物は大物に動じないってことじゃないですかねえ」
アトラは隣に座るエメトセルクの横顔をちらりと見て、小さく思った。
(エメトセルク様……絶対“アゼム系の厄介”引き寄せ体質だよなあ)