【FF14】メイドさんの夢旅行
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アトラは皇帝と長く過ごしすぎ、すっかり夜になってから寮へ駆け戻った。
ベッドに身を投げるなり、意識はあっという間に沈んでいく。
白い霧の中へ落ちた瞬間、目を開けると、そこはいつもの夢の空間だった。
「やっほー。調子はどう?」
聞き慣れた声に、アトラは反射的に眉をひそめる。
影の案内人は相変わらず飄々と笑っていた。
「どうだったもなにも……夢見の力、あんたに取り上げられたんだけど」
苛立ちが胸を押し上げる。
「不機嫌だねぇ」
あっけらかんと言われて、アトラは唇をとがらせる。
「私の計画、やりにくいんだってば! ……あんた、何がしたいの?
夢見が使えなきゃ、ディアナさんが無事かどうかもわからないじゃん」
「ああ、その件は私が対処しとく。悪いようにはしないさ」
「対処する、って……」
アトラの不安をよそに、影の案内人は話を続ける。
「あんたには指導が必要だからね。いいから、自分の役目に集中しな」
その声色は愉快そうで、それでいて奥に冷たさを秘めていた。
アトラは黙ったまま、影を見据える。
「先生とか……師匠気取りってわけ?」
「ふ。なんでもいいよ。夢見の力は、無制限じゃない。扱うには導きがいるのさ。
あんたにはその資格がある。だから接触してる。それだけ」
「資格?」
「うん。だって目的は同じでしょ?」
その瞬間、黒くぼやけた顔の奥で、にっこりと口元だけが浮かび上がった気がした。
アトラはぞくりとする。
「同じ? 聞いたこともないんだけど」
「力ってのは、ピンチを経験しないと磨かれないし、進めないんだよ。
夢のような力だって、現実を越えるには代償がいる」
「……それが何に関係あるの」
「全部は言わないさ。自分で考えなさ~い」
言うことはもっともだが、言い方が癪に障るアトラだった。
「ていうかさ……どうすんのよ、これ」
アトラは手を広げて訴えた。
「夢見が使えないんじゃ、どうにもならないでしょ。行けって言うけど、このまま行くしかないの?」
「だから〜、夢幻の力があるじゃん?」
影の案内人は、まるで気にも留めていない調子で肩を揺らす。
「これで空を飛べるんならそうしますけど!
あれって、幻じゃん」
言い返すアトラの声に、影の案内人がふと問いかける。
「ヒュトロダエウスには会えた?」
「ヒュトロダエウス? なんで?」
「ま、過去に行ってみればわかるっしょ〜。次の穴にいってらっしゃ~い」
ひらひらと手を振る仕草と共に、夢の空間にひびが走る。
世界の色が滲み、形が歪んでいく。
アトラはため息をつきながら肩を落とした。
けれど、どうせ抗ったところで夢は終わる。それならやってみるしかない。
「私をアリスっていいいたいわけね。それなら、あんたはチェシャ猫ってところね」
皮肉を込めたつもりだったが、影の案内人は気にした様子もない。
むしろ嬉しそうに肩をすくめ、にやりと笑った気配だけが残った。
「それならさっさと、穴に落ちちゃいなよ〜」
その言葉と同時に、アトラの足元が崩れ落ちる。
世界はひっくり返り、夢は容赦なく閉じられた。
夢の世界の雲が崩れ落ちると同時に、アトラの意識はふっと浮かび、次の瞬間――
そこはもう、古代だった。
――あ。みんなにお別れの挨拶していかなかったな。
だけど、ここは過去の世界、アーモロートの街。
置いてきた心残りは、もう取りに戻れない。
夢見の力にさえ慣れていないころ……振り出しに戻ったようだった。
アトラは支度をして、旅の準備に向けて外へ歩き出す。
透き通った空気の匂い、地に響く静かな鼓動が広がったような緑。
何度も訪れたはずなのに、胸の奥が少し震える。
(まずは旅の準備だ)
夢からの転移が現実だったと確かめるように、アトラは足元の石畳を踏みしめる。
広がる街並みは、荘厳でどこか仄暗い。それでも、自分がここを何度も歩いたことを、足が覚えていた。
そこへ――
「……ずいぶん、のんびりしていたな」
不意にかけられた声に、アトラは振り向いた。
影のような気配をまとって現れたのは、彼――エメトセルクだった。
ローブの裾をなびかせながら、彼は一歩、こちらへと近づく。
「さて。アゼムを探しに行くんだろう?」
問いかけというより、確認。まるで当然のように。
「だったら、私も行こう。偶然にも目的が一致している」
――ありがた院。
エメトセルクは冷静な調子で言いながら、やる気に満ちていた。
それは彼が既に旅の準備を進めていた証だった。
「……あの、いつからそんな気だったのですか?」
「お前が一人でアゼムを探しに行くと無謀なことを言いだした時だ。
――何、準備などすぐに整う」
それはつまり、アトラが何も準備していないことを、あっさり見透かされているということだった。
「……ア、その、よろしくお願いします……?」
アトラは予想がついていたものの、エメトセルクがあまりにも堂々としているために深く聞けなかった。
それでも――そう、旅が始まる。それだけで、胸の奥が少しだけ灯った気がした。
エメトセルクは時間が惜しいとばかりに歩き出す。
アトラもそれに続いて歩きだし、エメトセルクの背に声をかけた。
「それで、準備って何を?」
「当然、最低限の移動と通信の手段。
あとは――食料。お前は食事でエーテルを摂取しているのだろう」
「へへ、お手数かけます」
「前回の滞在では、バナナと穀物だったか」
「……よく覚えてますね?」
アトラは、自分の方こそエメトセルクが何を飲んでいたのか覚えていなかった。
「当然だろう。お前のような不規則型と行くなら、こちらが完璧に記録しておかねばならない」
エメトセルクは指でこめかみをトントンとしながら答えた。
アトラは感嘆を漏らした。
ある程度の準備を終えると、次はアゼムの居場所を探る番になった。
手がかりはほとんどなく、アトラは木陰でひと息つく。
エメトセルクは何か思案している様子で、次の行き先を決めたらしい。
「アゼム様、どこに行っちゃったんでしょう……」
「……。あいつはなにがあろうと、アゼムだからな」
その名を聞いた瞬間、アトラは思わずエメトセルクを見上げた。
エメトセルクも気づいたようだったが、何も言わない。
もう座を降りているはずなのに、エメトセルクはなお彼を「アゼム」と呼ぶ。
アトラはその名しか知らない。
だがエメトセルクが真の名を呼ばないのは、彼を「アゼムの座」であった者として信じているからだ。
しばらくして、アトラが小さく息を吐いた。
「……わたし、まだアゼム様のこと、よく知らないんでした」
人となりを知ることができれば、居場所の予測がある程度はついたかもしれない。
「それはこれから知ればいい。――先に、創造物管理局に行っておくか」
ベッドに身を投げるなり、意識はあっという間に沈んでいく。
白い霧の中へ落ちた瞬間、目を開けると、そこはいつもの夢の空間だった。
「やっほー。調子はどう?」
聞き慣れた声に、アトラは反射的に眉をひそめる。
影の案内人は相変わらず飄々と笑っていた。
「どうだったもなにも……夢見の力、あんたに取り上げられたんだけど」
苛立ちが胸を押し上げる。
「不機嫌だねぇ」
あっけらかんと言われて、アトラは唇をとがらせる。
「私の計画、やりにくいんだってば! ……あんた、何がしたいの?
夢見が使えなきゃ、ディアナさんが無事かどうかもわからないじゃん」
「ああ、その件は私が対処しとく。悪いようにはしないさ」
「対処する、って……」
アトラの不安をよそに、影の案内人は話を続ける。
「あんたには指導が必要だからね。いいから、自分の役目に集中しな」
その声色は愉快そうで、それでいて奥に冷たさを秘めていた。
アトラは黙ったまま、影を見据える。
「先生とか……師匠気取りってわけ?」
「ふ。なんでもいいよ。夢見の力は、無制限じゃない。扱うには導きがいるのさ。
あんたにはその資格がある。だから接触してる。それだけ」
「資格?」
「うん。だって目的は同じでしょ?」
その瞬間、黒くぼやけた顔の奥で、にっこりと口元だけが浮かび上がった気がした。
アトラはぞくりとする。
「同じ? 聞いたこともないんだけど」
「力ってのは、ピンチを経験しないと磨かれないし、進めないんだよ。
夢のような力だって、現実を越えるには代償がいる」
「……それが何に関係あるの」
「全部は言わないさ。自分で考えなさ~い」
言うことはもっともだが、言い方が癪に障るアトラだった。
「ていうかさ……どうすんのよ、これ」
アトラは手を広げて訴えた。
「夢見が使えないんじゃ、どうにもならないでしょ。行けって言うけど、このまま行くしかないの?」
「だから〜、夢幻の力があるじゃん?」
影の案内人は、まるで気にも留めていない調子で肩を揺らす。
「これで空を飛べるんならそうしますけど!
あれって、幻じゃん」
言い返すアトラの声に、影の案内人がふと問いかける。
「ヒュトロダエウスには会えた?」
「ヒュトロダエウス? なんで?」
「ま、過去に行ってみればわかるっしょ〜。次の穴にいってらっしゃ~い」
ひらひらと手を振る仕草と共に、夢の空間にひびが走る。
世界の色が滲み、形が歪んでいく。
アトラはため息をつきながら肩を落とした。
けれど、どうせ抗ったところで夢は終わる。それならやってみるしかない。
「私をアリスっていいいたいわけね。それなら、あんたはチェシャ猫ってところね」
皮肉を込めたつもりだったが、影の案内人は気にした様子もない。
むしろ嬉しそうに肩をすくめ、にやりと笑った気配だけが残った。
「それならさっさと、穴に落ちちゃいなよ〜」
その言葉と同時に、アトラの足元が崩れ落ちる。
世界はひっくり返り、夢は容赦なく閉じられた。
夢の世界の雲が崩れ落ちると同時に、アトラの意識はふっと浮かび、次の瞬間――
そこはもう、古代だった。
――あ。みんなにお別れの挨拶していかなかったな。
だけど、ここは過去の世界、アーモロートの街。
置いてきた心残りは、もう取りに戻れない。
夢見の力にさえ慣れていないころ……振り出しに戻ったようだった。
アトラは支度をして、旅の準備に向けて外へ歩き出す。
透き通った空気の匂い、地に響く静かな鼓動が広がったような緑。
何度も訪れたはずなのに、胸の奥が少し震える。
(まずは旅の準備だ)
夢からの転移が現実だったと確かめるように、アトラは足元の石畳を踏みしめる。
広がる街並みは、荘厳でどこか仄暗い。それでも、自分がここを何度も歩いたことを、足が覚えていた。
そこへ――
「……ずいぶん、のんびりしていたな」
不意にかけられた声に、アトラは振り向いた。
影のような気配をまとって現れたのは、彼――エメトセルクだった。
ローブの裾をなびかせながら、彼は一歩、こちらへと近づく。
「さて。アゼムを探しに行くんだろう?」
問いかけというより、確認。まるで当然のように。
「だったら、私も行こう。偶然にも目的が一致している」
――ありがた院。
エメトセルクは冷静な調子で言いながら、やる気に満ちていた。
それは彼が既に旅の準備を進めていた証だった。
「……あの、いつからそんな気だったのですか?」
「お前が一人でアゼムを探しに行くと無謀なことを言いだした時だ。
――何、準備などすぐに整う」
それはつまり、アトラが何も準備していないことを、あっさり見透かされているということだった。
「……ア、その、よろしくお願いします……?」
アトラは予想がついていたものの、エメトセルクがあまりにも堂々としているために深く聞けなかった。
それでも――そう、旅が始まる。それだけで、胸の奥が少しだけ灯った気がした。
エメトセルクは時間が惜しいとばかりに歩き出す。
アトラもそれに続いて歩きだし、エメトセルクの背に声をかけた。
「それで、準備って何を?」
「当然、最低限の移動と通信の手段。
あとは――食料。お前は食事でエーテルを摂取しているのだろう」
「へへ、お手数かけます」
「前回の滞在では、バナナと穀物だったか」
「……よく覚えてますね?」
アトラは、自分の方こそエメトセルクが何を飲んでいたのか覚えていなかった。
「当然だろう。お前のような不規則型と行くなら、こちらが完璧に記録しておかねばならない」
エメトセルクは指でこめかみをトントンとしながら答えた。
アトラは感嘆を漏らした。
ある程度の準備を終えると、次はアゼムの居場所を探る番になった。
手がかりはほとんどなく、アトラは木陰でひと息つく。
エメトセルクは何か思案している様子で、次の行き先を決めたらしい。
「アゼム様、どこに行っちゃったんでしょう……」
「……。あいつはなにがあろうと、アゼムだからな」
その名を聞いた瞬間、アトラは思わずエメトセルクを見上げた。
エメトセルクも気づいたようだったが、何も言わない。
もう座を降りているはずなのに、エメトセルクはなお彼を「アゼム」と呼ぶ。
アトラはその名しか知らない。
だがエメトセルクが真の名を呼ばないのは、彼を「アゼムの座」であった者として信じているからだ。
しばらくして、アトラが小さく息を吐いた。
「……わたし、まだアゼム様のこと、よく知らないんでした」
人となりを知ることができれば、居場所の予測がある程度はついたかもしれない。
「それはこれから知ればいい。――先に、創造物管理局に行っておくか」