【FF14】メイドさんの夢旅行
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謁見室。
アトラは、再び皇帝エメトセルクの前に立たされていた。
護衛の軍人は部屋の外で待機している。
皇帝の手で静かに掲げられたのは、一通の報告書。
「光の指先」――つまり、スパイとの接触を疑う内容。
皇帝はその報告書をひらひらと揺らしながら言った。
「不思議だな。君は忠誠心を見せていたように思えたが……まさか、裏では別の主に仕えていたとは?」
皮肉めいた声音。だが、その目はまっすぐアトラを射抜いていた。
報告書からすれば内容はディアナの活動を示すもの。
アトラは「光の指先」に所属していたわけではない。
しかし、接触はしているのなら、自分と関連性はある。
「……違います」
アトラは、声を震わせないように努めながら答えた。
「私は、務めを果たしたかった。それだけです」
——強がり半分、意地半分。
どうせ捕まるなら、気位ぐらいは保ってやる。
皇帝ソルは鼻で笑った。
「それだけ、だと?」
皇帝が片眉を上げる。
次の瞬間。
彼はアトラの胸元へ手を伸ばし、彼女の大切なネックレスを引きちぎった。
「っ……」
ネックレスがなくなった胸元を、アトラはとっさに押さえた。
魔法によって身体の規模を古代人に合わせるための、大切な品。
それだけではない。
それは、古代の世界でアトラが星のために活動したことを認めてもらった証。
——没収された……。
それだけではない。
「自分がこの場で何をされてもおかしくない」と、ようやく理解した。
「ディアナ・エイル・イクティス……」
皇帝は、まるで冷え切った刃のような声で名前を呼ぶ。
アトラはおそらくその話じゃないかと思っていたが、ディアナの名が挙げられて、ピクリと体が反応してしまう。
「彼女は工作員だ。
家族や友人と連絡を取ることを許されないはずの職業。
それなのに、なぜ貴様は彼女を“友人”と呼ぶ?」
皇帝の金の瞳が、アトラを貫いた。
「そして、つい最近まで工作員の存在すら知らなかった……?」
アトラは息を呑む。
……まずい。
皇帝は、まるでアトラの内側を覗き込むように、一歩、近づいた。
「正直に言えば……拷問はしない」
アトラの胸に一瞬、安堵のようなものが走る。
だが、次の言葉でそれは覆される。
「代わりに、お前を研究所に送る」
研究所。
プリシラ侍従長が言っていた、給仕をしているだけでも恐ろしいとされていた場所。
「そこでは、人の体がどれだけ耐えられるか、
どんな薬にどう反応するか……様々な実験が行われている」
皇帝は楽しげな口調で言う。
「……人体の限界を知る、良い機会だろう?」
アトラは喉を詰まらせた。
拷問よりたちが悪い。
研究材料になったら、二度と人間には戻れない。
夢見の力も、おそらく利用されることだろう。
震える指先を握りしめ、アトラは皇帝を睨み返した。
――その瞬間。
アトラの内に渦巻いていた想いが、“夢幻の力”となってあふれ出した。
「ッ……!」
空間が揺れた。
光が広がり、波紋のように謁見室を包む。
そこに現れたのは――
空は晴れ渡り、大地は緑を芽吹かせた。
青い川はどこまでも続き、建物が立ち並び、人々が行き交う。
街には魔法が息づき、善なるエネルギーが満ちていた。
人々は穏やかに暮らし、愛と共に生きていく。
創られた街の広場に、2人は立っていた。
そこは活気あふれる通路の上。
古代人と現代人が語り合い、共に机を囲み、肩を並べて働く都市。
幻影の中で、誰もが笑っていた。
荘厳で美しく、広大な世界が広がっていた。
アーモロート。
陽の光が降り注ぐ市場に、小さな露天と大きな露天が並ぶ。
道のあちこちには、大きなベンチと小さなベンチが点在している。
それらはどこか不釣り合いで、不思議な光景を作り出していた。
「この討論に参加していかないのかい?」
皇帝の耳元で、不意に声がした。
何が起きているのか確かめるために、彼は歩を進める。
そこでは、古代人と分かたれた人が言葉を交わしていた。
「古代人ってのは気長だね。そんなヒマ、こっちにはないよ!」
商人の格好をした分かたれし人が、自分の十四倍もの体躯を持つ古代人に向かって肩をすくめる。
「定命の君たちは、せっかちすぎなのさ。」
古代人はのんびりと笑う。
「しょうがないだろう、命が短いんだから」
商人はふてくされながらも、どこか楽しげに言った。
「それにしても……君たちは数が多いね」
古代人は苦笑しながらも、その様子をどこか微笑ましげに見つめる。
そして、商人もつられて笑みを浮かべると、「じゃあ、またな!」と軽快に去っていった。
そんな風に、2つの種族はごく自然に語らっていた。
まるで、それが当たり前のことのように。
市場には、そんな穏やかな時間が流れていた。
みんな、どこか楽しそうに。
――ああ、そっか。これが、私の理想なんだ。
アトラはその光景を見つめ、はっとする。
これは、自分の願望なのだと気づいてしまった。
明らかに、当時のアーモロートの風景ではない。
――もし、これが現実になったとしたら?
戻らぬ古代人。
彼らの存在を疎ましく思うだろう、分かたれた人々。
そんな2つが交われば、きっと争いが起きる。
一緒に生きることなど、到底不可能だろう。
――わかっている。わかっているんだ、そんなこと。
それでも、願ってしまう。
たとえ叶わぬと知っていても、願わずにはいられない。
こんな、ある意味むごい夢を。
(だから、私は意地でもアゼム様に会いたかった。
エメトセルク様のことを、どう思っていたのか。
それを知るために。
夢であり、願ったことだから)
エメトセルクは、言葉を失ったままその景色を見つめていた。
どこか懐かしげに。
どこか、恐れるように。
「やめろ」
皇帝の声が響く。
それは叱責ではなかった。
「え?」
「とぼけるな。この妙な術の話だ」
「おかしいですね。私は魔法なんて使えませんよ」
アトラは淡々と告げる。
魔法ではない――?
皇帝の眉がわずかに動いた。
確かに、魔力の発動は感じられなかった。
皇帝ソルは、エーテルや魂を感じ取れるその目で真実を視る。
現実は、何も変わっていないのだ。
では、何が起きた?
皇帝は自問し――過去の記憶が蘇った。
――空に弾ける花火。
幻影と決定的に異なるのは、これは"心"にのみ作用する力だということ。
人は、現実には存在しない"夢"で泣き、恐れ、歓喜する。
アトラの"夢幻"の力は、それと同じ。
皇帝は静かに息を吐いた。
「……夢幻か」
その言葉を口にすると、奥歯を噛みしめ、舌打ちする。
過去に知っていた力。
それは、かつてアトラが見せた幻影の記憶。
ただの気まぐれな夢だと思っていた記憶――
だが、違った。
その時、幻影の奥から、声が響く。
『何をしている』
エメトセルクの姿をした幻影が、アトラに向かって言う。
かつての、もっと若く、自由だった頃の声。
心底呆れたように、こう続けた。
『早くしろ。あいつを探しに行くんだろう
私はもう準備ができているからな』
皇帝はその言葉に、目を見開いた。
アトラも驚くが、確かにそうだったと、ゆっくりとうなずく。
(ああ、やっぱりエメトセルク様は行く気だったんだな。
うん。一緒に行くと言ってもらってはないけど、伝わってはいたから。)
「はい。ともにアゼム様を探しに参りましょう――これ以上お待たせするわけにはいきませんから」
その声は穏やかで、強く、揺るぎがなかった。
幻影の楽園が、静かに霧散していく。
夢のような、けれど確かに心に刻まれる一瞬だった。
皇帝エメトセルクは、しばし沈黙したままアトラを見つめていた。
「そうか。今から、行くのか」
あいつに会いに。
手元には、アトラのネックレス。
古代人と同じ姿になれる魔法の装飾品。
それ以上に、彼女の「居場所」だったもの。
エメトセルクが、世話になったお礼にと彼女に贈ったもの。
幻影でも、過去でもないエメトセルクは、無言のままアトラに歩み寄る。
そして、それをアトラの手にそっと押し戻した。
「……もう一度託す」
アトラは、胸元でその重みを受け止める。
確かな温もりが、じんわりと手に広がった。
「……ありがとうございます」
「だが、勘違いするなよ」
皇帝の声が、少しだけ鋭さを取り戻す。
「私は、まだお前を信じきってはいない。希望を抱いたわけでもない。ただ……」
エメトセルクは、わずかに肩の力を抜いて、静かに言った。
「……工作員の件は、しばらく保留としておこう」
それは、赦しではなかった。
だが、もう一度だけ彼女に与えられた“灯火”だった。
瞳は、まさしく皇帝のものだった。
そこにあるのは、迷いなく人を利用する者の眼差し――ただ、それだけだ。
「もし私が死んだら、労働保険は適用されますか」
「必ず私の下へ帰ってこい。特別手当の方をくれてやる」
部下はしっかり丁寧に利用するようだ。
アトラは深く頭を下げる。
アトラはネックレスを首にかけると、静かに謁見の間をあとにした。
その心には、確かに「灯り」が宿っていた。
その背を、エメトセルクは長く見送っていた。
アトラは、再び皇帝エメトセルクの前に立たされていた。
護衛の軍人は部屋の外で待機している。
皇帝の手で静かに掲げられたのは、一通の報告書。
「光の指先」――つまり、スパイとの接触を疑う内容。
皇帝はその報告書をひらひらと揺らしながら言った。
「不思議だな。君は忠誠心を見せていたように思えたが……まさか、裏では別の主に仕えていたとは?」
皮肉めいた声音。だが、その目はまっすぐアトラを射抜いていた。
報告書からすれば内容はディアナの活動を示すもの。
アトラは「光の指先」に所属していたわけではない。
しかし、接触はしているのなら、自分と関連性はある。
「……違います」
アトラは、声を震わせないように努めながら答えた。
「私は、務めを果たしたかった。それだけです」
——強がり半分、意地半分。
どうせ捕まるなら、気位ぐらいは保ってやる。
皇帝ソルは鼻で笑った。
「それだけ、だと?」
皇帝が片眉を上げる。
次の瞬間。
彼はアトラの胸元へ手を伸ばし、彼女の大切なネックレスを引きちぎった。
「っ……」
ネックレスがなくなった胸元を、アトラはとっさに押さえた。
魔法によって身体の規模を古代人に合わせるための、大切な品。
それだけではない。
それは、古代の世界でアトラが星のために活動したことを認めてもらった証。
——没収された……。
それだけではない。
「自分がこの場で何をされてもおかしくない」と、ようやく理解した。
「ディアナ・エイル・イクティス……」
皇帝は、まるで冷え切った刃のような声で名前を呼ぶ。
アトラはおそらくその話じゃないかと思っていたが、ディアナの名が挙げられて、ピクリと体が反応してしまう。
「彼女は工作員だ。
家族や友人と連絡を取ることを許されないはずの職業。
それなのに、なぜ貴様は彼女を“友人”と呼ぶ?」
皇帝の金の瞳が、アトラを貫いた。
「そして、つい最近まで工作員の存在すら知らなかった……?」
アトラは息を呑む。
……まずい。
皇帝は、まるでアトラの内側を覗き込むように、一歩、近づいた。
「正直に言えば……拷問はしない」
アトラの胸に一瞬、安堵のようなものが走る。
だが、次の言葉でそれは覆される。
「代わりに、お前を研究所に送る」
研究所。
プリシラ侍従長が言っていた、給仕をしているだけでも恐ろしいとされていた場所。
「そこでは、人の体がどれだけ耐えられるか、
どんな薬にどう反応するか……様々な実験が行われている」
皇帝は楽しげな口調で言う。
「……人体の限界を知る、良い機会だろう?」
アトラは喉を詰まらせた。
拷問よりたちが悪い。
研究材料になったら、二度と人間には戻れない。
夢見の力も、おそらく利用されることだろう。
震える指先を握りしめ、アトラは皇帝を睨み返した。
――その瞬間。
アトラの内に渦巻いていた想いが、“夢幻の力”となってあふれ出した。
「ッ……!」
空間が揺れた。
光が広がり、波紋のように謁見室を包む。
そこに現れたのは――
空は晴れ渡り、大地は緑を芽吹かせた。
青い川はどこまでも続き、建物が立ち並び、人々が行き交う。
街には魔法が息づき、善なるエネルギーが満ちていた。
人々は穏やかに暮らし、愛と共に生きていく。
創られた街の広場に、2人は立っていた。
そこは活気あふれる通路の上。
古代人と現代人が語り合い、共に机を囲み、肩を並べて働く都市。
幻影の中で、誰もが笑っていた。
荘厳で美しく、広大な世界が広がっていた。
アーモロート。
陽の光が降り注ぐ市場に、小さな露天と大きな露天が並ぶ。
道のあちこちには、大きなベンチと小さなベンチが点在している。
それらはどこか不釣り合いで、不思議な光景を作り出していた。
「この討論に参加していかないのかい?」
皇帝の耳元で、不意に声がした。
何が起きているのか確かめるために、彼は歩を進める。
そこでは、古代人と分かたれた人が言葉を交わしていた。
「古代人ってのは気長だね。そんなヒマ、こっちにはないよ!」
商人の格好をした分かたれし人が、自分の十四倍もの体躯を持つ古代人に向かって肩をすくめる。
「定命の君たちは、せっかちすぎなのさ。」
古代人はのんびりと笑う。
「しょうがないだろう、命が短いんだから」
商人はふてくされながらも、どこか楽しげに言った。
「それにしても……君たちは数が多いね」
古代人は苦笑しながらも、その様子をどこか微笑ましげに見つめる。
そして、商人もつられて笑みを浮かべると、「じゃあ、またな!」と軽快に去っていった。
そんな風に、2つの種族はごく自然に語らっていた。
まるで、それが当たり前のことのように。
市場には、そんな穏やかな時間が流れていた。
みんな、どこか楽しそうに。
――ああ、そっか。これが、私の理想なんだ。
アトラはその光景を見つめ、はっとする。
これは、自分の願望なのだと気づいてしまった。
明らかに、当時のアーモロートの風景ではない。
――もし、これが現実になったとしたら?
戻らぬ古代人。
彼らの存在を疎ましく思うだろう、分かたれた人々。
そんな2つが交われば、きっと争いが起きる。
一緒に生きることなど、到底不可能だろう。
――わかっている。わかっているんだ、そんなこと。
それでも、願ってしまう。
たとえ叶わぬと知っていても、願わずにはいられない。
こんな、ある意味むごい夢を。
(だから、私は意地でもアゼム様に会いたかった。
エメトセルク様のことを、どう思っていたのか。
それを知るために。
夢であり、願ったことだから)
エメトセルクは、言葉を失ったままその景色を見つめていた。
どこか懐かしげに。
どこか、恐れるように。
「やめろ」
皇帝の声が響く。
それは叱責ではなかった。
「え?」
「とぼけるな。この妙な術の話だ」
「おかしいですね。私は魔法なんて使えませんよ」
アトラは淡々と告げる。
魔法ではない――?
皇帝の眉がわずかに動いた。
確かに、魔力の発動は感じられなかった。
皇帝ソルは、エーテルや魂を感じ取れるその目で真実を視る。
現実は、何も変わっていないのだ。
では、何が起きた?
皇帝は自問し――過去の記憶が蘇った。
――空に弾ける花火。
幻影と決定的に異なるのは、これは"心"にのみ作用する力だということ。
人は、現実には存在しない"夢"で泣き、恐れ、歓喜する。
アトラの"夢幻"の力は、それと同じ。
皇帝は静かに息を吐いた。
「……夢幻か」
その言葉を口にすると、奥歯を噛みしめ、舌打ちする。
過去に知っていた力。
それは、かつてアトラが見せた幻影の記憶。
ただの気まぐれな夢だと思っていた記憶――
だが、違った。
その時、幻影の奥から、声が響く。
『何をしている』
エメトセルクの姿をした幻影が、アトラに向かって言う。
かつての、もっと若く、自由だった頃の声。
心底呆れたように、こう続けた。
『早くしろ。あいつを探しに行くんだろう
私はもう準備ができているからな』
皇帝はその言葉に、目を見開いた。
アトラも驚くが、確かにそうだったと、ゆっくりとうなずく。
(ああ、やっぱりエメトセルク様は行く気だったんだな。
うん。一緒に行くと言ってもらってはないけど、伝わってはいたから。)
「はい。ともにアゼム様を探しに参りましょう――これ以上お待たせするわけにはいきませんから」
その声は穏やかで、強く、揺るぎがなかった。
幻影の楽園が、静かに霧散していく。
夢のような、けれど確かに心に刻まれる一瞬だった。
皇帝エメトセルクは、しばし沈黙したままアトラを見つめていた。
「そうか。今から、行くのか」
あいつに会いに。
手元には、アトラのネックレス。
古代人と同じ姿になれる魔法の装飾品。
それ以上に、彼女の「居場所」だったもの。
エメトセルクが、世話になったお礼にと彼女に贈ったもの。
幻影でも、過去でもないエメトセルクは、無言のままアトラに歩み寄る。
そして、それをアトラの手にそっと押し戻した。
「……もう一度託す」
アトラは、胸元でその重みを受け止める。
確かな温もりが、じんわりと手に広がった。
「……ありがとうございます」
「だが、勘違いするなよ」
皇帝の声が、少しだけ鋭さを取り戻す。
「私は、まだお前を信じきってはいない。希望を抱いたわけでもない。ただ……」
エメトセルクは、わずかに肩の力を抜いて、静かに言った。
「……工作員の件は、しばらく保留としておこう」
それは、赦しではなかった。
だが、もう一度だけ彼女に与えられた“灯火”だった。
瞳は、まさしく皇帝のものだった。
そこにあるのは、迷いなく人を利用する者の眼差し――ただ、それだけだ。
「もし私が死んだら、労働保険は適用されますか」
「必ず私の下へ帰ってこい。特別手当の方をくれてやる」
部下はしっかり丁寧に利用するようだ。
アトラは深く頭を下げる。
アトラはネックレスを首にかけると、静かに謁見の間をあとにした。
その心には、確かに「灯り」が宿っていた。
その背を、エメトセルクは長く見送っていた。