【FF14】メイドさんの夢旅行
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アトラは決意を固め、行動に移した。
再び牢屋へと戻る。
どれほどの時間が経ったのかはわからない。
だが、待つしかない。
もし誰も来ないのなら、自分から動くまでだ。
アトラはじっと待った。
夢見の力は、いつだって最適なタイミングで自分を導いてくれる。
これまで幾度も経験してきた。
今日こそ、会えるかもしれない。
デュナミスが作用するのなら、なおさら。
もちろん、無期限に放置される可能性もある。
だが、さすがに死体の確認には来るはずだ。
もし、逃げたと思われたなら――確認すら来ないだろう。
それでも、アトラは確信していた。
必ず、来る。
静かすぎて、最初は幻聴かと思った。
ブーツの足音が、ゆっくりと近づいてくる。
瞬間移動で来たわけではないらしい。
カーテンのかかった牢屋の前で、足音が止まる。
「……なんだ、これは」
驚きと困惑の入り混じった声。
その瞬間――アトラは勢いよくカーテンを開けた。
「なっ!?」
目の前に広がるのは、牢屋とは思えない光景。
電飾が輝き、家具が整えられ、ふかふかのカーペットが敷かれ、暖房まで完備されている。
まるで誰かの居住空間のように、完璧な快適さ。
皇帝は目を見開いた。
あまりの異様さに、思わず立場も忘れ、じっとその部屋を見回す。
そして、次の瞬間――
「皇帝陛下! お待ちしておりました」
使用人服に着替えたアトラは、深々と礼をする。
「……どういうことだ、これは!」
皇帝の声が牢内に響く。
もちろん、アトラは説明した。
移動のためではなく、夢見の修行をしていたこと。
修行の成果で物を運べるようになり、その結果、この牢屋が快適な部屋に変わったこと。
そしてここで待っていたのは――全ては、陛下の信頼を得るため。
最後に、アトラは胸を張り、堂々と謝罪した。
「勝手に改造して、申し訳ありません!」
「……いい。結構だ。」
皇帝は疲れたように手で顔を覆った。
「もう部屋に関しては何も聞かない。何も言うな」
眉間の皺は深まり、猫背はさらにひどくなった。
実は、アトラが牢屋に入った直後、皇帝は一度彼女のもとを訪れていた。
しかし――牢屋はもぬけの殻だった。
『逃げたか』
失望? いや、そもそも期待などしていなかった。
だが、それなのに。
たびたび気配を感じる。
しかも、自分の魔力をこめた首飾りが、ちらちらと知らせてくる。
――アトラが、ここにいると。
極めつけは、夢の中 だった。
謎の人物が現れ、こう言ったのだ。
『アトラは牢屋から動いていないよ。この時代はね!』
『……お前は誰だ。何の目的で私の夢にいる』
『観察かな。主に彼女のね』
ふざけた調子で、それだけ言い残すと、そいつは勝手に消えた。
夢の世界では魔法も使えない。
追い払うこともできず、ただ置いて行かれた皇帝は、無性に苛立った。
嫌な予感がして牢屋に来てみれば、案の定だった。
――牢屋は、魔改造されていた。
快適に過ごせる環境が整えられ、部屋の主は逃げられるというのにまた戻ってきている。
「……頭がおかしいんじゃないのか?」
思わず本音が漏れる。
「え……そう言われると、そうですとしか答えられません」
アトラはしばし考え込んでから、正直に答えた。
馬鹿正直な返答に、皇帝はさらに頭を抱える。
「ああ。まったくそうだな。これを私に理解しろというのか?」
「も……申し訳ございません。私にすべての責任があります」
皇帝は、うんざりしたように手をかざした。
「もういい、それ以上喋るな」
アトラは、すっと口を閉じた。
言い訳しても無駄だという、察する程度の自覚はある。
皇帝は深く咳払いをした。
――本当に、どこから話を始めたものか。
「はあ……一応聞いておこう」
ため息混じりに、皇帝は言う。
「その夢見の力で、お前は何をするつもりだ?」
声には、呆れが滲んでいた。
「……いまさら、どうなる話でもあるまい。私は言ったはずだ。お前には関係ないと」
皇帝は、今まで顔を覆っていた手を、ゆっくりと顔に沿うようにおろした。
――その瞬間、赤い光がゆらめく。
「私が敵と見なせば、どうなるかわかっているのだろうな」
彼の顔には、血のように赤く、物々しい紋章が現れる。
それはアシエン・エメトセルクを物語る紋章。
アトラの心臓が跳ねた。
――本気だ。
躊躇いなく、自分を消すつもりかもしれない。
過去の世界で、エメトセルクは「関係ない」と言った。
それは、アトラを「別世界の存在」と思っていたからだ。
だが今――エメトセルクは、アトラがこの時代の存在だったと認識している。
それでもなお、彼の言うことは変わらなかった。
「帝国の繁栄」
「混沌の世界を作ること」
「古代の魂の解放と、世界統合」
そのどれもが、アトラには『関係ない』と告げられた。
エメトセルクには選択肢があった。
アトラを研究対象として飼うこと。
下手なことをする前に処分すること。
あるいは――忠誠を誓うならば、夢見の力を利用し、転生組とまではいかなくとも世界統合の計画に組み込むこともできた。
だが、どの選択肢も取らずに、「関係ない」と切り捨てた。
……けれど、その言葉は逆に、こうも取れた。
――お前はどこへでも行ける。
アトラは、ずっと気づいていた。
逃げるチャンスは、常に与えられていた。
それでも。
今度こそ、殺されようとも。
彼女は、決めたことを告げに来た。
「――皇帝陛下。私、考えたのです」
エメトセルクが訝しむように目を細める。
「陛下の信頼を得るには、エメトセルク様とアゼム様の心残りを解消することなんじゃないかと」
「…………」
絶句。
牢屋の魔改造だけでも十分に呆れ果てていたのに。
そこへきて、脈絡の欠片もない爆弾発言。
エメトセルクの眉間の皺が、ぐっと深まる。
――否、もはやそれだけでは済まなかった。
彼は沈黙のまま、顔を覆う。
そして、深く、深く、ため息をついた。
「……頭が痛い」
「おこがましいのはわかってます。でも私、アゼム様を探す旅に出ます!」
アトラの鼻息荒い宣言に、エメトセルクはふっと瞬きをした。
そして、"本物の哀れみ" を込めた目で彼女を見る。
「……やはり、頭をどこかに打ったのか?」
「えっ?」
「この寒さにやられたのか?」
「いや、私は割と元気――」
「……いやいや。装飾を見るに南国の特産であるから、南で頭がボケたのか。なるほどな」
納得したように頷くエメトセルク。
アトラは言葉を失う。
しかし、彼は追撃を止めない。
「アホすぎる。なりそこない史上最高にバカ」
「史上最高にバカ!?」
とんでもない烙印だった。
衝撃を受けるアトラを横目に、エメトセルクはひらひらと手を振る。ノーセンキュー。
「そんなバカと関わりたくない。しなくていい。いらん」
「そうはいっても、私ではこの程度しか思いつきません」
「そうか。残念だな。頭が」
「言うに事欠いて!」
アトラが反論すると、エメトセルクはわざとらしく肩をすくめ、 「ため息すら惜しい」とでも言いたげな顔 をする。
「皇帝に向かって大声とは、なにかしらの不敬罪ということで刑を重ねてもいいが、どうする?」
「陛下に良い案があるならそれを忠実に実行いたします!」
無駄にキリッとした顔のアトラ。
エメトセルクは 「見なかったことにしようかな……」 という表情になり
「お前……本気なのか……」
と、呟いた。
これは、ピンチな時の「お前……本気なのか!?」ではない。
呆れすぎて言葉が出ない方の 「お前、本気なのか」 である。
アトラは気にせず強行する。
「どうされますか? 放置されますと過去に干渉しに行きます。ご不快であれば私を電気ショックで常に起こすか、処分されることをおすすめいたします」
アトラの提案を聞いたエメトセルクは 「ほう?」 と眉を上げ、指先でこめかみをトントンと叩く。
「無理にでも行くというのか」
試すような声音。
だが、アトラは一切ためらわずに答えた。
「私からすれば、生きていても、死んだ先も地獄です。死んでも、また『別の世界で生きる』という、拷問方法が変わるだけです。どうせ地獄なら、私にとってよりよい地獄にするだけです」
エメトセルクの指が動きを止める。
一瞬、沈黙。
アトラは、絵理沙として一度人生を終えている。
生きる苦しみは、どこに行こうと変わらない。死んだ先でも、15歳の少女に憑依し、人生が詰みかけた。
いまさら、どうなろうと。
アトラにとって、この事実は変わらない。
「地獄でもがいてみせるか。いいだろう。時に」
皇帝は腕を組み、じっとアトラを見据える。
「未来には行ったのか」
「はい」
「そうか」
それだけ。
未来を知ることが、彼に何を思わせたのか。
表情を変えず、エメトセルクは踵を返した。
アトラはその背を見送りながら、何か言うか迷った。
だが、考えるより先に口が動いていた。
「ほんとーに行っちゃいますよー!」
「勝手にしろ!」
返事が聞こえたときには、すでに彼の姿は消えていた。
アトラは肩をすくめ、そそくさと準備を始める。
カチャン。
牢屋の錠前が音を立てて床に落ちた。
再び牢屋へと戻る。
どれほどの時間が経ったのかはわからない。
だが、待つしかない。
もし誰も来ないのなら、自分から動くまでだ。
アトラはじっと待った。
夢見の力は、いつだって最適なタイミングで自分を導いてくれる。
これまで幾度も経験してきた。
今日こそ、会えるかもしれない。
デュナミスが作用するのなら、なおさら。
もちろん、無期限に放置される可能性もある。
だが、さすがに死体の確認には来るはずだ。
もし、逃げたと思われたなら――確認すら来ないだろう。
それでも、アトラは確信していた。
必ず、来る。
静かすぎて、最初は幻聴かと思った。
ブーツの足音が、ゆっくりと近づいてくる。
瞬間移動で来たわけではないらしい。
カーテンのかかった牢屋の前で、足音が止まる。
「……なんだ、これは」
驚きと困惑の入り混じった声。
その瞬間――アトラは勢いよくカーテンを開けた。
「なっ!?」
目の前に広がるのは、牢屋とは思えない光景。
電飾が輝き、家具が整えられ、ふかふかのカーペットが敷かれ、暖房まで完備されている。
まるで誰かの居住空間のように、完璧な快適さ。
皇帝は目を見開いた。
あまりの異様さに、思わず立場も忘れ、じっとその部屋を見回す。
そして、次の瞬間――
「皇帝陛下! お待ちしておりました」
使用人服に着替えたアトラは、深々と礼をする。
「……どういうことだ、これは!」
皇帝の声が牢内に響く。
もちろん、アトラは説明した。
移動のためではなく、夢見の修行をしていたこと。
修行の成果で物を運べるようになり、その結果、この牢屋が快適な部屋に変わったこと。
そしてここで待っていたのは――全ては、陛下の信頼を得るため。
最後に、アトラは胸を張り、堂々と謝罪した。
「勝手に改造して、申し訳ありません!」
「……いい。結構だ。」
皇帝は疲れたように手で顔を覆った。
「もう部屋に関しては何も聞かない。何も言うな」
眉間の皺は深まり、猫背はさらにひどくなった。
実は、アトラが牢屋に入った直後、皇帝は一度彼女のもとを訪れていた。
しかし――牢屋はもぬけの殻だった。
『逃げたか』
失望? いや、そもそも期待などしていなかった。
だが、それなのに。
たびたび気配を感じる。
しかも、自分の魔力をこめた首飾りが、ちらちらと知らせてくる。
――アトラが、ここにいると。
極めつけは、夢の中 だった。
謎の人物が現れ、こう言ったのだ。
『アトラは牢屋から動いていないよ。この時代はね!』
『……お前は誰だ。何の目的で私の夢にいる』
『観察かな。主に彼女のね』
ふざけた調子で、それだけ言い残すと、そいつは勝手に消えた。
夢の世界では魔法も使えない。
追い払うこともできず、ただ置いて行かれた皇帝は、無性に苛立った。
嫌な予感がして牢屋に来てみれば、案の定だった。
――牢屋は、魔改造されていた。
快適に過ごせる環境が整えられ、部屋の主は逃げられるというのにまた戻ってきている。
「……頭がおかしいんじゃないのか?」
思わず本音が漏れる。
「え……そう言われると、そうですとしか答えられません」
アトラはしばし考え込んでから、正直に答えた。
馬鹿正直な返答に、皇帝はさらに頭を抱える。
「ああ。まったくそうだな。これを私に理解しろというのか?」
「も……申し訳ございません。私にすべての責任があります」
皇帝は、うんざりしたように手をかざした。
「もういい、それ以上喋るな」
アトラは、すっと口を閉じた。
言い訳しても無駄だという、察する程度の自覚はある。
皇帝は深く咳払いをした。
――本当に、どこから話を始めたものか。
「はあ……一応聞いておこう」
ため息混じりに、皇帝は言う。
「その夢見の力で、お前は何をするつもりだ?」
声には、呆れが滲んでいた。
「……いまさら、どうなる話でもあるまい。私は言ったはずだ。お前には関係ないと」
皇帝は、今まで顔を覆っていた手を、ゆっくりと顔に沿うようにおろした。
――その瞬間、赤い光がゆらめく。
「私が敵と見なせば、どうなるかわかっているのだろうな」
彼の顔には、血のように赤く、物々しい紋章が現れる。
それはアシエン・エメトセルクを物語る紋章。
アトラの心臓が跳ねた。
――本気だ。
躊躇いなく、自分を消すつもりかもしれない。
過去の世界で、エメトセルクは「関係ない」と言った。
それは、アトラを「別世界の存在」と思っていたからだ。
だが今――エメトセルクは、アトラがこの時代の存在だったと認識している。
それでもなお、彼の言うことは変わらなかった。
「帝国の繁栄」
「混沌の世界を作ること」
「古代の魂の解放と、世界統合」
そのどれもが、アトラには『関係ない』と告げられた。
エメトセルクには選択肢があった。
アトラを研究対象として飼うこと。
下手なことをする前に処分すること。
あるいは――忠誠を誓うならば、夢見の力を利用し、転生組とまではいかなくとも世界統合の計画に組み込むこともできた。
だが、どの選択肢も取らずに、「関係ない」と切り捨てた。
……けれど、その言葉は逆に、こうも取れた。
――お前はどこへでも行ける。
アトラは、ずっと気づいていた。
逃げるチャンスは、常に与えられていた。
それでも。
今度こそ、殺されようとも。
彼女は、決めたことを告げに来た。
「――皇帝陛下。私、考えたのです」
エメトセルクが訝しむように目を細める。
「陛下の信頼を得るには、エメトセルク様とアゼム様の心残りを解消することなんじゃないかと」
「…………」
絶句。
牢屋の魔改造だけでも十分に呆れ果てていたのに。
そこへきて、脈絡の欠片もない爆弾発言。
エメトセルクの眉間の皺が、ぐっと深まる。
――否、もはやそれだけでは済まなかった。
彼は沈黙のまま、顔を覆う。
そして、深く、深く、ため息をついた。
「……頭が痛い」
「おこがましいのはわかってます。でも私、アゼム様を探す旅に出ます!」
アトラの鼻息荒い宣言に、エメトセルクはふっと瞬きをした。
そして、"本物の哀れみ" を込めた目で彼女を見る。
「……やはり、頭をどこかに打ったのか?」
「えっ?」
「この寒さにやられたのか?」
「いや、私は割と元気――」
「……いやいや。装飾を見るに南国の特産であるから、南で頭がボケたのか。なるほどな」
納得したように頷くエメトセルク。
アトラは言葉を失う。
しかし、彼は追撃を止めない。
「アホすぎる。なりそこない史上最高にバカ」
「史上最高にバカ!?」
とんでもない烙印だった。
衝撃を受けるアトラを横目に、エメトセルクはひらひらと手を振る。ノーセンキュー。
「そんなバカと関わりたくない。しなくていい。いらん」
「そうはいっても、私ではこの程度しか思いつきません」
「そうか。残念だな。頭が」
「言うに事欠いて!」
アトラが反論すると、エメトセルクはわざとらしく肩をすくめ、 「ため息すら惜しい」とでも言いたげな顔 をする。
「皇帝に向かって大声とは、なにかしらの不敬罪ということで刑を重ねてもいいが、どうする?」
「陛下に良い案があるならそれを忠実に実行いたします!」
無駄にキリッとした顔のアトラ。
エメトセルクは 「見なかったことにしようかな……」 という表情になり
「お前……本気なのか……」
と、呟いた。
これは、ピンチな時の「お前……本気なのか!?」ではない。
呆れすぎて言葉が出ない方の 「お前、本気なのか」 である。
アトラは気にせず強行する。
「どうされますか? 放置されますと過去に干渉しに行きます。ご不快であれば私を電気ショックで常に起こすか、処分されることをおすすめいたします」
アトラの提案を聞いたエメトセルクは 「ほう?」 と眉を上げ、指先でこめかみをトントンと叩く。
「無理にでも行くというのか」
試すような声音。
だが、アトラは一切ためらわずに答えた。
「私からすれば、生きていても、死んだ先も地獄です。死んでも、また『別の世界で生きる』という、拷問方法が変わるだけです。どうせ地獄なら、私にとってよりよい地獄にするだけです」
エメトセルクの指が動きを止める。
一瞬、沈黙。
アトラは、絵理沙として一度人生を終えている。
生きる苦しみは、どこに行こうと変わらない。死んだ先でも、15歳の少女に憑依し、人生が詰みかけた。
いまさら、どうなろうと。
アトラにとって、この事実は変わらない。
「地獄でもがいてみせるか。いいだろう。時に」
皇帝は腕を組み、じっとアトラを見据える。
「未来には行ったのか」
「はい」
「そうか」
それだけ。
未来を知ることが、彼に何を思わせたのか。
表情を変えず、エメトセルクは踵を返した。
アトラはその背を見送りながら、何か言うか迷った。
だが、考えるより先に口が動いていた。
「ほんとーに行っちゃいますよー!」
「勝手にしろ!」
返事が聞こえたときには、すでに彼の姿は消えていた。
アトラは肩をすくめ、そそくさと準備を始める。
カチャン。
牢屋の錠前が音を立てて床に落ちた。