【FF14】メイドさんの夢旅行
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「……なにがあったんですか?」
「うーん、アゼムがねえ、アーモロートから……去ってしまったのさ」
これ以上は、僕の口から言うわけにはいかないんだけどね――
ヒュトロダエウスは肩をすくめ、意味ありげな笑みを浮かべた。
「お前には、関係のないことだ」
短く言い放ち、エメトセルクは席を立つ。
「私はもう失礼する。お前も帰っていいぞ」
「え? ちょっと、エメトセルク!」
ヒュトロダエウスが引き止めようとするが、エメトセルクは振り返らず、店を後にした。
アトラは呆然と、その背中を見送る。
胸の奥がざわついた。気分を損ねてしまったのだろうか。
言葉の選び方を間違えたのかもしれない。そう思うと、視線を落とすしかなかった。
「すみません。ヒュトロダエウスさん。私のせいで……」
「んー、エメトセルクがちょっと、意地っ張りなだけさ」
ヒュトロダエウスは、むしろ面白がっているように肩をすくめた。
「それに、彼には、ほら――使命があるからね」
「使命……座の、ですか?」
「それもあるけど……気になるなら、追いかけて聞いてみたら?」
アトラは呆然としたまま、エメトセルクの気分を害したことを謝るのを忘れていた。
けれど、ヒュトロダエウスの言葉で気がつく。
次の瞬間、食べ終えた皿を手に取り、勢いよく立ち上がった。
「ありがとうございます、ヒュトロダエウスさん! 行ってきます!」
「うん。いってらっしゃい」
軽く手を振りながら、ヒュトロダエウスはにこりと笑う。
アトラは急いでカウンターにお皿を返す。
旅人は跳んで走った。
――夜のアーモロート。
あの海底都市を思い出す。
この時代では、地上に築かれた都市だ。
今はまるであの海中を移動するかのような、不思議な闇の街。
その中で、アトラはエメトセルクを探す。
幸い、すぐに見つかった。
「エメトセルク様っ!」
アトラは、休暇中のエメトセルクに配慮して役職名を言わなかった。
だが、焦るあまり、つい叫んでしまう。
エメトセルクが足を止めた。その背中に、アトラは必死で声を投げかける。
「すみませんでしたっ!」
勢いよく、90度のお辞儀。
エメトセルクは振り返る。
だが、お辞儀をしたままのアトラには、それが見えない。
「あの、エメトセルク様のことも考えず、ものを言ってすみませんでした!」
「……名を連呼するな。落ち着け、馬鹿者」
呆れた声に、アトラは顔を上げた。
エメトセルクは少し困ったような表情で、眉間にしわを寄せていた。
――う。今度は困らせちゃった。
幸い、夜は人気も少なく、人々の距離もそれなりにあった。
「……私も少々頭に血が上った。旅人の純粋な質問に苛立ったのはこちらの方だ」
エメトセルクは素直に謝った。
アトラは意外に思う。仲良しトリオと自分は関係性が違うことは理解している。それでも、彼の態度がどこか――普段とは違う気がした。
「……何か、あったんですよね」
アトラは、事情を知りたいという思いを隠しきれず、そう尋ねた。
このままエメトセルクが去るかもしれないと思いながらも、わずかな希望を抱いて問いかける。
エメトセルクは、今日何度目かわからないため息をついた。
「この星に、とある危機が迫っている」
「……危機?」
事情を話してもらえるかもしれない、とアトラは期待した。しかし、エメトセルクの声の調子がただならぬものを孕んでいることに気づき、身を引き締める。
「あちこちで災害が報告されている。いや…『災厄』と言うべきか」
「……え?」
アトラの心臓が強く脈を打つ。知っている。それが何を意味するのか。
あの悪夢を。かつて画面越しに見た、地獄の光景を。絵理沙という他人の目を通して感じた、終末の気配を。
「とある地域で獣が暴れ、空は赤く染まり、星が降る。そういう報告が相次いでいる」
エメトセルクの声は冷静だったが、その言葉は揺るぎない事実として重くのしかかる。
「その中、アゼムはそれを解決するために、私が所属する星を導く組織、『十四人委員会』を抜けると言い出した……」
「……」
「重ねて、アゼムの座は空席のままにして、だ」
エメトセルクは拳を握りしめた。
アゼムはすでに、自らの未来を決めていた。
「私は、星をつなぐ希望を選ぶべきだと言った……だが――」
彼は言葉を飲み込み、首を振る。
「お前には関係のない話だ。忘れろ」
災厄はすぐそこまで迫っている。
だから、アゼムは帰ってこない。
アトラは記憶を手繰る。
メーティオンは絶望を降らせている。
心当たりのあるヘルメス――今やファダニエルと名を変えた男は、天脈の関連を調べ上げている頃だろう。
そんな事態になっていたのか。
のんきに暮らしていた自分に、アトラは衝撃を受ける。
もうそこまで進行していたのか。
だからカロンともなかなか会えなかったのか。
エメトセルクがアゼムの話で空気が変わった理由も、今ならわかる。
――その時、脳裏を過る映像。
これは記憶だ。
転生したばかりの頃に見た、夢の記憶。
黒いローブを纏った人々の集団。
その中で、アゼムとエメトセルクが話し合っていた。
理想を語り合っていた――そう思っていた。
――いや、あれ喧嘩だったのか。
古代人の意見のぶつけ合いだと思っていたけど……妙に上品だったな。
冷静にそう考える自分がいた。
だが、災厄が迫っていると知って、驚かないはずもなかった。
「そんな深刻なこと……関係ないわけないじゃないですか」
「お前は異邦人だ。この世界に深く関わる存在ではない。ヒュトロダエウスも、それを思ってお前に話さなかったのだろう」
「確かに……私は外の人間です」
「ならば、なおさらだ。この世界の危機に巻き込まれる前に、故郷へ帰れ。お前ではひとたまりもない」
エメトセルクの声は冷たく響いた。
彼はアトラに恩を感じている。だからこそ、巻き込むつもりはない。
はっきりと突き放し、遠ざけようとしている。
アトラも、それが正しい選択だとわかっていた。
故郷へ帰れば、危険に遭うこともない。
それでも――なぜだか腹の虫はおさまらなかった。
アトラは静かにお辞儀をし、その場を去った。
アーモロートの街は、相変わらず平穏だった。
道行く人々は穏やかに談笑し、変わらぬ日常がそこにある。
――けれど、どこかで終末が始まっている。
ラザハンのように、絶望が迫っている。
アトラは自分の家へと戻った。
帰ってきた。ここは私の帰る場所のひとつだ。
なのに、「帰れ」とはなんだ。
故郷ってなんだ。帰れない故郷だってある。
エメトセルクが伝えたかったことは、理解している。
だが――無性に腹が立った。
「関係ない」? 関係ない、とは?
この世界に喚ばれたのに?
この世界の未来を知っているのに?
こんな思いをするために、ここにいるんじゃない!
この世界に喚ばれた意味が、少しくらいはあるはずだ――!
「うーん、アゼムがねえ、アーモロートから……去ってしまったのさ」
これ以上は、僕の口から言うわけにはいかないんだけどね――
ヒュトロダエウスは肩をすくめ、意味ありげな笑みを浮かべた。
「お前には、関係のないことだ」
短く言い放ち、エメトセルクは席を立つ。
「私はもう失礼する。お前も帰っていいぞ」
「え? ちょっと、エメトセルク!」
ヒュトロダエウスが引き止めようとするが、エメトセルクは振り返らず、店を後にした。
アトラは呆然と、その背中を見送る。
胸の奥がざわついた。気分を損ねてしまったのだろうか。
言葉の選び方を間違えたのかもしれない。そう思うと、視線を落とすしかなかった。
「すみません。ヒュトロダエウスさん。私のせいで……」
「んー、エメトセルクがちょっと、意地っ張りなだけさ」
ヒュトロダエウスは、むしろ面白がっているように肩をすくめた。
「それに、彼には、ほら――使命があるからね」
「使命……座の、ですか?」
「それもあるけど……気になるなら、追いかけて聞いてみたら?」
アトラは呆然としたまま、エメトセルクの気分を害したことを謝るのを忘れていた。
けれど、ヒュトロダエウスの言葉で気がつく。
次の瞬間、食べ終えた皿を手に取り、勢いよく立ち上がった。
「ありがとうございます、ヒュトロダエウスさん! 行ってきます!」
「うん。いってらっしゃい」
軽く手を振りながら、ヒュトロダエウスはにこりと笑う。
アトラは急いでカウンターにお皿を返す。
旅人は跳んで走った。
――夜のアーモロート。
あの海底都市を思い出す。
この時代では、地上に築かれた都市だ。
今はまるであの海中を移動するかのような、不思議な闇の街。
その中で、アトラはエメトセルクを探す。
幸い、すぐに見つかった。
「エメトセルク様っ!」
アトラは、休暇中のエメトセルクに配慮して役職名を言わなかった。
だが、焦るあまり、つい叫んでしまう。
エメトセルクが足を止めた。その背中に、アトラは必死で声を投げかける。
「すみませんでしたっ!」
勢いよく、90度のお辞儀。
エメトセルクは振り返る。
だが、お辞儀をしたままのアトラには、それが見えない。
「あの、エメトセルク様のことも考えず、ものを言ってすみませんでした!」
「……名を連呼するな。落ち着け、馬鹿者」
呆れた声に、アトラは顔を上げた。
エメトセルクは少し困ったような表情で、眉間にしわを寄せていた。
――う。今度は困らせちゃった。
幸い、夜は人気も少なく、人々の距離もそれなりにあった。
「……私も少々頭に血が上った。旅人の純粋な質問に苛立ったのはこちらの方だ」
エメトセルクは素直に謝った。
アトラは意外に思う。仲良しトリオと自分は関係性が違うことは理解している。それでも、彼の態度がどこか――普段とは違う気がした。
「……何か、あったんですよね」
アトラは、事情を知りたいという思いを隠しきれず、そう尋ねた。
このままエメトセルクが去るかもしれないと思いながらも、わずかな希望を抱いて問いかける。
エメトセルクは、今日何度目かわからないため息をついた。
「この星に、とある危機が迫っている」
「……危機?」
事情を話してもらえるかもしれない、とアトラは期待した。しかし、エメトセルクの声の調子がただならぬものを孕んでいることに気づき、身を引き締める。
「あちこちで災害が報告されている。いや…『災厄』と言うべきか」
「……え?」
アトラの心臓が強く脈を打つ。知っている。それが何を意味するのか。
あの悪夢を。かつて画面越しに見た、地獄の光景を。絵理沙という他人の目を通して感じた、終末の気配を。
「とある地域で獣が暴れ、空は赤く染まり、星が降る。そういう報告が相次いでいる」
エメトセルクの声は冷静だったが、その言葉は揺るぎない事実として重くのしかかる。
「その中、アゼムはそれを解決するために、私が所属する星を導く組織、『十四人委員会』を抜けると言い出した……」
「……」
「重ねて、アゼムの座は空席のままにして、だ」
エメトセルクは拳を握りしめた。
アゼムはすでに、自らの未来を決めていた。
「私は、星をつなぐ希望を選ぶべきだと言った……だが――」
彼は言葉を飲み込み、首を振る。
「お前には関係のない話だ。忘れろ」
災厄はすぐそこまで迫っている。
だから、アゼムは帰ってこない。
アトラは記憶を手繰る。
メーティオンは絶望を降らせている。
心当たりのあるヘルメス――今やファダニエルと名を変えた男は、天脈の関連を調べ上げている頃だろう。
そんな事態になっていたのか。
のんきに暮らしていた自分に、アトラは衝撃を受ける。
もうそこまで進行していたのか。
だからカロンともなかなか会えなかったのか。
エメトセルクがアゼムの話で空気が変わった理由も、今ならわかる。
――その時、脳裏を過る映像。
これは記憶だ。
転生したばかりの頃に見た、夢の記憶。
黒いローブを纏った人々の集団。
その中で、アゼムとエメトセルクが話し合っていた。
理想を語り合っていた――そう思っていた。
――いや、あれ喧嘩だったのか。
古代人の意見のぶつけ合いだと思っていたけど……妙に上品だったな。
冷静にそう考える自分がいた。
だが、災厄が迫っていると知って、驚かないはずもなかった。
「そんな深刻なこと……関係ないわけないじゃないですか」
「お前は異邦人だ。この世界に深く関わる存在ではない。ヒュトロダエウスも、それを思ってお前に話さなかったのだろう」
「確かに……私は外の人間です」
「ならば、なおさらだ。この世界の危機に巻き込まれる前に、故郷へ帰れ。お前ではひとたまりもない」
エメトセルクの声は冷たく響いた。
彼はアトラに恩を感じている。だからこそ、巻き込むつもりはない。
はっきりと突き放し、遠ざけようとしている。
アトラも、それが正しい選択だとわかっていた。
故郷へ帰れば、危険に遭うこともない。
それでも――なぜだか腹の虫はおさまらなかった。
アトラは静かにお辞儀をし、その場を去った。
アーモロートの街は、相変わらず平穏だった。
道行く人々は穏やかに談笑し、変わらぬ日常がそこにある。
――けれど、どこかで終末が始まっている。
ラザハンのように、絶望が迫っている。
アトラは自分の家へと戻った。
帰ってきた。ここは私の帰る場所のひとつだ。
なのに、「帰れ」とはなんだ。
故郷ってなんだ。帰れない故郷だってある。
エメトセルクが伝えたかったことは、理解している。
だが――無性に腹が立った。
「関係ない」? 関係ない、とは?
この世界に喚ばれたのに?
この世界の未来を知っているのに?
こんな思いをするために、ここにいるんじゃない!
この世界に喚ばれた意味が、少しくらいはあるはずだ――!