【FF14】メイドさんの夢旅行
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アトラは無人島で日課の瞑想をやったりやらなかったりしながら、昼寝をしては牢屋に戻って記録をした。
島へはしばらく留守にする書置きを残し、見つけやすいように石で抑えた。島の安全を確認し、簡単な食事をとってから、アトラは過去世界へ戻る準備を整えた。
風通しの良い寝床で目を閉じ、深く呼吸を繰り返すうちに、体は心地よい眠りに沈んでいった。
白い靄の中を漂い、やがてアーモロートの自室が姿を現す。
ベッドから身を起こし、首飾りを確認。異常なし。部屋をぐるりと見回して不備もない。
首飾りと古代人のローブ、それにお面を身に着け、カロンに与えられた部屋を出る。
静かな通りを抜けると、アーモロートの街が目の前に広がった。荘厳な塔の窓辺には香草を干す姿があり、通りを行き交う人々。漂う香りは朝の食卓の余韻だろうか。遠くでは子どもらしき影が駆けていく。
風が運ぶ生活の匂いとざわめきが、街に脈打つ息づかいを伝えていた。
「皇帝の勢いを落とす」──その目標にどう近づくべきか。答えはない。手探りで進むしかない。
まずはカロンに挨拶だ。
アニドラス・アナムネーシスに到着し、受付でカロンの所在を尋ねる。
「カロンは帰ってないよ。最近、どういうわけか運びの仕事が多くてね。遠方に出たままだ」
伝言を預かろうかと受付が気遣ってくれたが、アトラは遠慮して礼を述べ、アニドラスを後にした。
ひとまず、日用品を買いそろえることにする。
アーモロートの市民は創造魔法で何でも作れるが、アトラは親切な人に体を大きくしてもらっただけの人の十四分の一。必要な物は市場で手に入れるしかない。
カロンに教えてもらっていた場所──「ポレス市場」。
そこは創造物管理局がイデアの登録を行い、アニドラスが保管庫の役割を担うのに対し、イデアの展示場のような場所だった。
実際に創造したばかりのイデアや、登録前の試作品を披露する場でもある。
広場には簡易のテントが立ち並び、絵理沙の世界で言えばヨーロッパの屋台のようだ。香草の香り、磨き込まれた器具、色とりどりの衣服や小物。長命な人々が作る品は、ありふれた日用品ですら精緻で美しい。だが、彼らはそれに飽きもする──だからこそ、掘り出し物も眠っている。
アトラはそうした宝探しが好きだった。胸を躍らせながら、市場を見て回る。
アーモロートではめずらしい、淡いベージュの石畳が続くポレス市場。アトラは胸を弾ませながら歩き回る。
木の枝をつま弾くと自ら音を奏でる楽器。宙にふわりと浮かぶスノードームのような置物。色がゆっくり移ろい続ける花や、暗闇でほのかに光る丸い苔玉。
市場を進むごとに、誰かの想像力がそのまま形になったような品々が並んでいる。
さらに進めば動物園──「創造生物展覧会」があった。羽を広げるペガサス、小さなゴリラ、水槽でゆったり漂うアンビストマ。人々が穏やかに触れ合い、笑みをこぼしている。
近くの建物では、ずっと続く廊下を歩く体験や、浮遊する小島の探索ができる展示も行われていた。
そろそろ日用品売り場、というところで、張りのある声が市場のざわめきを割って届く。
目をやれば、青空劇場で公演が始まるところだった。
観客席には、アトラと同じような小さな姿の人々が多い。古代人の子供向けなら、自分にも理解できるかもしれない──そう考え、アトラは観劇することにした。
舞台は大きく広いが高さは低く、三人ほど並んで座れる石造りの長椅子が円形にいくつも並んでいる。どこかミィ・ケット音楽堂を思わせる造りだ。アーモロートらしい重厚な石材の質感が、静かな荘厳さを漂わせている。
劇の演目は「星をよりよくする旅」だった。
星に生まれ落ちたばかりの若者が、多くの同志たちと対話を重ね、世界を知っていく物語である。
内容は小さな人向けにわかりやすく作られており、主要都市アーモロートの歴史や、「アーモロートに来たら行っておきたいアナイダアカデミア!」と学校が紹介される場面もあった。さらにエルピスや、アトラの知らない施設までもが解説され、語りと演技で観客の好奇心を引き込んでいく。見ているだけでも楽しく、アトラは思わず身を乗り出した。
舞台の看板には、「人の演技力でどれだけ伝えられるかに挑戦するため、創造魔法の使用は控えめ」と書かれていた。
しかしアトラの目に映ったのは、美しい光で照らし出される舞台、立体映像で動く動物たち、小道具から流れる透き通った音色──どう見ても魔法のオンパレードだ。
「古代人の“控えめ”って、やっぱり全然控えめじゃないなあ」
と、アトラは小さく笑った。
アトラは喉が渇いてきたので、持ってきていた水筒の水を飲む。水筒を持つ人はめずらしいが、ここポレス市場ではさらにおもしろおかしい飲食を楽しむ人が多く、特に目立つことはない。
だが、その仕草が目に入ったのか、隣の人物がじっとこちらを見てきた。
アトラは知り合いかと思い顔をのぞき込む。しかし、黒いローブに銀の仮面──他の誰とも変わらない姿だ。特徴といえば、口元が富士山のようにきゅっと引き結ばれていることくらい。やはり心当たりはない。
その人物は視線を水筒に落とし、それからアトラの目を見て、「あ」と小さく声をもらした。
その声を聞いた瞬間、アトラの胸に記憶がはねた。
「お前……」
知っている声だ。
アトラも「ああ!」と声を上げる。
相手は「しまった」という顔でわずかに目をそらした。
「今日は……内緒のお出かけなんですね」
銀の仮面をつけたその人に、役職名では呼べない。
アトラがそう告げると、わずかな沈黙のあと、低い声が返った。
「………………………………そうしてもらおう」
──エメトセルクは、遠くを見つめていた。
島へはしばらく留守にする書置きを残し、見つけやすいように石で抑えた。島の安全を確認し、簡単な食事をとってから、アトラは過去世界へ戻る準備を整えた。
風通しの良い寝床で目を閉じ、深く呼吸を繰り返すうちに、体は心地よい眠りに沈んでいった。
白い靄の中を漂い、やがてアーモロートの自室が姿を現す。
ベッドから身を起こし、首飾りを確認。異常なし。部屋をぐるりと見回して不備もない。
首飾りと古代人のローブ、それにお面を身に着け、カロンに与えられた部屋を出る。
静かな通りを抜けると、アーモロートの街が目の前に広がった。荘厳な塔の窓辺には香草を干す姿があり、通りを行き交う人々。漂う香りは朝の食卓の余韻だろうか。遠くでは子どもらしき影が駆けていく。
風が運ぶ生活の匂いとざわめきが、街に脈打つ息づかいを伝えていた。
「皇帝の勢いを落とす」──その目標にどう近づくべきか。答えはない。手探りで進むしかない。
まずはカロンに挨拶だ。
アニドラス・アナムネーシスに到着し、受付でカロンの所在を尋ねる。
「カロンは帰ってないよ。最近、どういうわけか運びの仕事が多くてね。遠方に出たままだ」
伝言を預かろうかと受付が気遣ってくれたが、アトラは遠慮して礼を述べ、アニドラスを後にした。
ひとまず、日用品を買いそろえることにする。
アーモロートの市民は創造魔法で何でも作れるが、アトラは親切な人に体を大きくしてもらっただけの人の十四分の一。必要な物は市場で手に入れるしかない。
カロンに教えてもらっていた場所──「ポレス市場」。
そこは創造物管理局がイデアの登録を行い、アニドラスが保管庫の役割を担うのに対し、イデアの展示場のような場所だった。
実際に創造したばかりのイデアや、登録前の試作品を披露する場でもある。
広場には簡易のテントが立ち並び、絵理沙の世界で言えばヨーロッパの屋台のようだ。香草の香り、磨き込まれた器具、色とりどりの衣服や小物。長命な人々が作る品は、ありふれた日用品ですら精緻で美しい。だが、彼らはそれに飽きもする──だからこそ、掘り出し物も眠っている。
アトラはそうした宝探しが好きだった。胸を躍らせながら、市場を見て回る。
アーモロートではめずらしい、淡いベージュの石畳が続くポレス市場。アトラは胸を弾ませながら歩き回る。
木の枝をつま弾くと自ら音を奏でる楽器。宙にふわりと浮かぶスノードームのような置物。色がゆっくり移ろい続ける花や、暗闇でほのかに光る丸い苔玉。
市場を進むごとに、誰かの想像力がそのまま形になったような品々が並んでいる。
さらに進めば動物園──「創造生物展覧会」があった。羽を広げるペガサス、小さなゴリラ、水槽でゆったり漂うアンビストマ。人々が穏やかに触れ合い、笑みをこぼしている。
近くの建物では、ずっと続く廊下を歩く体験や、浮遊する小島の探索ができる展示も行われていた。
そろそろ日用品売り場、というところで、張りのある声が市場のざわめきを割って届く。
目をやれば、青空劇場で公演が始まるところだった。
観客席には、アトラと同じような小さな姿の人々が多い。古代人の子供向けなら、自分にも理解できるかもしれない──そう考え、アトラは観劇することにした。
舞台は大きく広いが高さは低く、三人ほど並んで座れる石造りの長椅子が円形にいくつも並んでいる。どこかミィ・ケット音楽堂を思わせる造りだ。アーモロートらしい重厚な石材の質感が、静かな荘厳さを漂わせている。
劇の演目は「星をよりよくする旅」だった。
星に生まれ落ちたばかりの若者が、多くの同志たちと対話を重ね、世界を知っていく物語である。
内容は小さな人向けにわかりやすく作られており、主要都市アーモロートの歴史や、「アーモロートに来たら行っておきたいアナイダアカデミア!」と学校が紹介される場面もあった。さらにエルピスや、アトラの知らない施設までもが解説され、語りと演技で観客の好奇心を引き込んでいく。見ているだけでも楽しく、アトラは思わず身を乗り出した。
舞台の看板には、「人の演技力でどれだけ伝えられるかに挑戦するため、創造魔法の使用は控えめ」と書かれていた。
しかしアトラの目に映ったのは、美しい光で照らし出される舞台、立体映像で動く動物たち、小道具から流れる透き通った音色──どう見ても魔法のオンパレードだ。
「古代人の“控えめ”って、やっぱり全然控えめじゃないなあ」
と、アトラは小さく笑った。
アトラは喉が渇いてきたので、持ってきていた水筒の水を飲む。水筒を持つ人はめずらしいが、ここポレス市場ではさらにおもしろおかしい飲食を楽しむ人が多く、特に目立つことはない。
だが、その仕草が目に入ったのか、隣の人物がじっとこちらを見てきた。
アトラは知り合いかと思い顔をのぞき込む。しかし、黒いローブに銀の仮面──他の誰とも変わらない姿だ。特徴といえば、口元が富士山のようにきゅっと引き結ばれていることくらい。やはり心当たりはない。
その人物は視線を水筒に落とし、それからアトラの目を見て、「あ」と小さく声をもらした。
その声を聞いた瞬間、アトラの胸に記憶がはねた。
「お前……」
知っている声だ。
アトラも「ああ!」と声を上げる。
相手は「しまった」という顔でわずかに目をそらした。
「今日は……内緒のお出かけなんですね」
銀の仮面をつけたその人に、役職名では呼べない。
アトラがそう告げると、わずかな沈黙のあと、低い声が返った。
「………………………………そうしてもらおう」
──エメトセルクは、遠くを見つめていた。