夢見の旅人
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アーモロートの街並み
アトラは無人島で日課の瞑想をやったりやらなかったりしながら、昼寝をしては牢屋に戻って記録をした。
島へはしばらく留守にする書置きを残し、見つけやすいように石で抑えた。島の安全を確認し、簡単な食事をとってから、アトラは過去世界へ戻る準備を整えた。
風通しの良い静かな寝床で目を閉じ、深い呼吸を繰り返す。やがて、疲れた体が心地よい眠りに引き込まれていった。
夢の中で緩やかに漂いながら、次第に過去世界の風景が現れてきた。目を開ければ、そこはアーモロートの自室の風景。
ベッドから上半身を起こして、首飾りを確認する。今日も手元にある。
カロンに与えてもらった部屋をぐるりと見回って、不備が起きていないかチェックする。
異常はみられなかったので、アトラは首飾りと、ここで暮らしていくために作ってもらった古代人のローブ、そしてお面をつけて部屋を出る。
静かな通りにあるアーモロートの自宅から歩いてしばらく。賑やかなアーモロートの街がアトラを出迎えた。
荘厳な建物が建ち並び、アトラはそれらを通り過ぎてゆく。風のにおいが人の生活を物語り、ざわめき声が人の活気を感じさせ、輝く太陽が命を照らす街。
「皇帝の勢いを落とす」というゴールに辿り着くためにはなにからはじめたら良いのか。手当たり次第にやってみるしかない。
まずはカロンにあいさつをしに行く。
アニドラス·アナムネーシスに到着し、受付にてカロンの所在を聞いてみる。
「カロンは帰ってないよ。最近、どうしてか運びの仕事が多くてね。遠方に出たままだよ」
受付の人物は、「カロンに伝言を伝えるか?」と気遣ってくれたが、アトラは遠慮して礼を言い、アニドラスを後にした。
ウリエンジェが提唱してすっかり暁では定着していた呼び名「ヴェーネス派」。美しい金星の名を冠する輝かしい響き。
アトラはそのヴェーネス派に助力という形で参加しようかと考えてカロンに話を通すつもりでいる。
しかし、忙しくしているとなると、話をするのは難しいだろう。このことは一時保留とした。
アトラはとりあえず、日用品を買いそろえることにした。
創造魔法でなんでも揃えられるアーモロートの市民たちとは違い、アトラは親切な人に大きくしてもらっただけの、人の14分の1だ。
そんなアーモロートにも日用品が売っている場所がある。
アトラはカロンに前もって聞いていたその場所にたどり着く。
「ポレス市場」だ。
「人がいっぱい」
ポレス市場には人がたくさん訪れていた。
創造物管理局がイデアの登録所、アニドラスが保管庫。そしてここポレス市場は、イデアの展示場のような場所だ。
実際に自分たちが作ったイデアや、イデア登録する前の創造魔法を披露する場所で、何でも揃っている。
立ち並ぶ簡易的なテントは絵理沙の世界で言う、ヨーロッパの屋台を思わせる。
ありふれたのものに飽きてしまうほど長生きをする人々なので、アトラの望むものがあるかは、掘り出してみないとわからない。もちろん、ありふれたものにも、敬意あるのが古代人の全体的な特徴でもある。
アトラはそのあるかわからない、でもあるかもしれない、お宝探しが好き。さっそく市場を見て回る。
アーモロートにはめずらしい、ベージュの石畳が続くポレス市場。アトラは市場を見て回る。
自らが音を奏でる木製の楽器。宙に浮かぶスノードームのようなもの。色が変わり続ける花。暗闇で光るまりも。
進めば動物園がある。ここでの名前は「創造生物展覧会」だ。ペガサスや小さなゴリラ。水槽にたゆたうアンビストマと触れ合える。
近くの建物では、ずっと続く廊下の体験や、小さな浮かぶ島の体験ができる設営がされていた。
次に進めば日用品売り場に差し掛かるというところで、張りのある声が聞こえてくる。
アトラがそちらに目をやると、青空劇場が公演される様子がわかった。
近くに行ってみれば、席には小さい人々が多く座っており、古代人の子供向けなら少しはわかるかも? とアトラは観劇させてもらうことにした。
アトラは席を見つけ、座って劇を見始める。劇場と席は、大きく広いが低い舞台で、席は3人は座れそうな長椅子が舞台を囲むようにいくつも並ぶ。ちょうど、ミィ・ケット音楽堂のような設営になっていた。舞台も椅子も石材でできており、いかにもアーモロートらしい。
劇の内容は「星をよりよくする旅」という演目だった。
星に生まれ落ちたばかりの若者が、星にたくさん存在する同志たちと対話しながら世界を知る。
小さな人向けの内容になっており、主要都市アーモロートの歴史から、「アーモロートに来たら行っておきたい、アナイダアカデミア!」と学校が紹介される。エルピスやその他のアトラが知らない施設の説明もあり、わかりやすく知的好奇心を誘うような語りと演技で観客を引き込んで魅せてくる。分かたれし人のこどもには難しい内容かもしれないが、アトラは見ているだけでも楽しかった。
人の演技力で、どれだけ伝えられるかに挑戦するのが美学であるらしく、創造魔法の使用は控えめであると看板には書いてある。
が、アトラには美しい光のライトアップする魔法、立体映像で動く動物たち、小道具から流れる美しい音色という創造魔法のオンパレードであると感じた。古代人の「魔法控えめ」は自分には言葉通りではない、と思った。
アトラは喉が渇いてきたので、持ってきていた水筒の水を飲む。水筒を持つ人はめずらしいのでアーモロートでは目立つ行為だが、ここポレス市場ではさらにおもしろおかしいものを食べたり飲んだりしている人であふれているので、目立つことはない。
しかし、その行為が目に入ったのか、アトラの隣に座っていた人が、アトラをじっと見てきた。
アトラは知り合いかと思い顔を見るが、思い当たる人がいない。
黒いローブに身を包み、誰もが銀のお面をつけている。その人物も例に漏れない姿。特徴といえば口元が富士山型に引き結ばれていることくらいか。やはりアトラには判断がつかなかった。
しかし、相手は不思議そうに水筒を見てくる。そのあと、アトラの目を見て、「あ」と口を開ける。
「お前……」
アトラは誰なのか、知っている声でわかった。
アトラも「ああ!」と声を上げる。
相手は「しまった」という顔で口が開く。
アトラはおそるおそる言葉をかけた。
「今日は、内緒のお出かけなんですね」
知っている人の面は、赤ではない。ここアーモロートでの一般人と同じ、銀のお面だった。
「では、役職名でお呼びできませんね」
「………………………………そうしてもらおう」
エメトセルクは、遠くを見つめた。
アトラは無人島で日課の瞑想をやったりやらなかったりしながら、昼寝をしては牢屋に戻って記録をした。
島へはしばらく留守にする書置きを残し、見つけやすいように石で抑えた。島の安全を確認し、簡単な食事をとってから、アトラは過去世界へ戻る準備を整えた。
風通しの良い静かな寝床で目を閉じ、深い呼吸を繰り返す。やがて、疲れた体が心地よい眠りに引き込まれていった。
夢の中で緩やかに漂いながら、次第に過去世界の風景が現れてきた。目を開ければ、そこはアーモロートの自室の風景。
ベッドから上半身を起こして、首飾りを確認する。今日も手元にある。
カロンに与えてもらった部屋をぐるりと見回って、不備が起きていないかチェックする。
異常はみられなかったので、アトラは首飾りと、ここで暮らしていくために作ってもらった古代人のローブ、そしてお面をつけて部屋を出る。
静かな通りにあるアーモロートの自宅から歩いてしばらく。賑やかなアーモロートの街がアトラを出迎えた。
荘厳な建物が建ち並び、アトラはそれらを通り過ぎてゆく。風のにおいが人の生活を物語り、ざわめき声が人の活気を感じさせ、輝く太陽が命を照らす街。
「皇帝の勢いを落とす」というゴールに辿り着くためにはなにからはじめたら良いのか。手当たり次第にやってみるしかない。
まずはカロンにあいさつをしに行く。
アニドラス·アナムネーシスに到着し、受付にてカロンの所在を聞いてみる。
「カロンは帰ってないよ。最近、どうしてか運びの仕事が多くてね。遠方に出たままだよ」
受付の人物は、「カロンに伝言を伝えるか?」と気遣ってくれたが、アトラは遠慮して礼を言い、アニドラスを後にした。
ウリエンジェが提唱してすっかり暁では定着していた呼び名「ヴェーネス派」。美しい金星の名を冠する輝かしい響き。
アトラはそのヴェーネス派に助力という形で参加しようかと考えてカロンに話を通すつもりでいる。
しかし、忙しくしているとなると、話をするのは難しいだろう。このことは一時保留とした。
アトラはとりあえず、日用品を買いそろえることにした。
創造魔法でなんでも揃えられるアーモロートの市民たちとは違い、アトラは親切な人に大きくしてもらっただけの、人の14分の1だ。
そんなアーモロートにも日用品が売っている場所がある。
アトラはカロンに前もって聞いていたその場所にたどり着く。
「ポレス市場」だ。
「人がいっぱい」
ポレス市場には人がたくさん訪れていた。
創造物管理局がイデアの登録所、アニドラスが保管庫。そしてここポレス市場は、イデアの展示場のような場所だ。
実際に自分たちが作ったイデアや、イデア登録する前の創造魔法を披露する場所で、何でも揃っている。
立ち並ぶ簡易的なテントは絵理沙の世界で言う、ヨーロッパの屋台を思わせる。
ありふれたのものに飽きてしまうほど長生きをする人々なので、アトラの望むものがあるかは、掘り出してみないとわからない。もちろん、ありふれたものにも、敬意あるのが古代人の全体的な特徴でもある。
アトラはそのあるかわからない、でもあるかもしれない、お宝探しが好き。さっそく市場を見て回る。
アーモロートにはめずらしい、ベージュの石畳が続くポレス市場。アトラは市場を見て回る。
自らが音を奏でる木製の楽器。宙に浮かぶスノードームのようなもの。色が変わり続ける花。暗闇で光るまりも。
進めば動物園がある。ここでの名前は「創造生物展覧会」だ。ペガサスや小さなゴリラ。水槽にたゆたうアンビストマと触れ合える。
近くの建物では、ずっと続く廊下の体験や、小さな浮かぶ島の体験ができる設営がされていた。
次に進めば日用品売り場に差し掛かるというところで、張りのある声が聞こえてくる。
アトラがそちらに目をやると、青空劇場が公演される様子がわかった。
近くに行ってみれば、席には小さい人々が多く座っており、古代人の子供向けなら少しはわかるかも? とアトラは観劇させてもらうことにした。
アトラは席を見つけ、座って劇を見始める。劇場と席は、大きく広いが低い舞台で、席は3人は座れそうな長椅子が舞台を囲むようにいくつも並ぶ。ちょうど、ミィ・ケット音楽堂のような設営になっていた。舞台も椅子も石材でできており、いかにもアーモロートらしい。
劇の内容は「星をよりよくする旅」という演目だった。
星に生まれ落ちたばかりの若者が、星にたくさん存在する同志たちと対話しながら世界を知る。
小さな人向けの内容になっており、主要都市アーモロートの歴史から、「アーモロートに来たら行っておきたい、アナイダアカデミア!」と学校が紹介される。エルピスやその他のアトラが知らない施設の説明もあり、わかりやすく知的好奇心を誘うような語りと演技で観客を引き込んで魅せてくる。分かたれし人のこどもには難しい内容かもしれないが、アトラは見ているだけでも楽しかった。
人の演技力で、どれだけ伝えられるかに挑戦するのが美学であるらしく、創造魔法の使用は控えめであると看板には書いてある。
が、アトラには美しい光のライトアップする魔法、立体映像で動く動物たち、小道具から流れる美しい音色という創造魔法のオンパレードであると感じた。古代人の「魔法控えめ」は自分には言葉通りではない、と思った。
アトラは喉が渇いてきたので、持ってきていた水筒の水を飲む。水筒を持つ人はめずらしいのでアーモロートでは目立つ行為だが、ここポレス市場ではさらにおもしろおかしいものを食べたり飲んだりしている人であふれているので、目立つことはない。
しかし、その行為が目に入ったのか、アトラの隣に座っていた人が、アトラをじっと見てきた。
アトラは知り合いかと思い顔を見るが、思い当たる人がいない。
黒いローブに身を包み、誰もが銀のお面をつけている。その人物も例に漏れない姿。特徴といえば口元が富士山型に引き結ばれていることくらいか。やはりアトラには判断がつかなかった。
しかし、相手は不思議そうに水筒を見てくる。そのあと、アトラの目を見て、「あ」と口を開ける。
「お前……」
アトラは誰なのか、知っている声でわかった。
アトラも「ああ!」と声を上げる。
相手は「しまった」という顔で口が開く。
アトラはおそるおそる言葉をかけた。
「今日は、内緒のお出かけなんですね」
知っている人の面は、赤ではない。ここアーモロートでの一般人と同じ、銀のお面だった。
「では、役職名でお呼びできませんね」
「………………………………そうしてもらおう」
エメトセルクは、遠くを見つめた。
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