夢見の旅人
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アトラはヒロシとアイスココアを楽しみ、涼しい夜に別れを告げるために寝床へ沈む。
開拓が進んで、中心施設である「アイランドホール」は木の屋根や布飾りができるほど立派なものになり、ほかの建物も準じてリフォームされた。アトラが間借りしている寝床も、以前より作りがしっかりしている建物になっていた。
アトラは眠り、牢屋の自分へと夢見の力で移動する。
現在の牢屋は、なんということでしょう。
天井には壁から壁へ張り巡らされた連なる電球たちのストリングライト。南国の藁を染めてできたカラフルな絨毯。雪国で活躍間違いなしの古いが現役の暖房器具。板を持ち込みDIYした簡易的な机と椅子。椅子にはクッションもある。机の上には実家の自分の部屋からとってきたライトと日記帳。
天然ゴムでふかふかのベッド。羊毛、羽毛で厚みのあるかけぶとん。冷たい床にも負けないゴムと羊毛のスリッパ。小腹にちょうどいいおやつたち。
牢屋の鉄格子は、廊下の微々たる電灯の光を入れる義理もないほど電球があるので、分厚いカーテンで閉め切って暖房効率を少しだけ上げている。鉄格子を塞げるような大きな板などは運べない。ここでの生活が長引くようなら、小さな板をたくさん貼り付ける壁を創ることを検討している。
アトラはさっそく暖房器具のスイッチを入れた。
徐々に部屋は暖かくなる。
「秘密基地、最高」
もはや牢屋ですらなくなっていた。
劇的底辺ビフォーアフターはともかく、アトラは椅子に座り机の日記帳を開いた。
展望ははっきりしていないが、試したいことは山ほどある。
アトラは書き足したり確認しながら、手帳を眺める。
内容は、瞑想によって夢見の力を、目が覚めていても使えるようになるか試すこと。
瞑想はトランスや、起きていながら寝ている状態を可能にするという文献で知ったので、効果があるかを試す。
無人島の滝や大自然を使わせてもらい、自然の力で瞑想を深める。
これが叶えば、具現化した夢見の力……たとえるなら夢幻の力を使って、何ができるか試行錯誤すること。
次に、古代の世界でエメトセルクに関するヒントを拾い集めるために活動するということ。
優先順位は低いが、アトラのような能力を持った人物について調べるために、オールドシャーレアンの書庫もしくは禁書庫にはいってみること。
そしてこれは定期的にしていることだが、これらの確認作業を記録すること。
もうすでに古代の体験の記録は終わっていた。あとは無人島でどのように過ごしたかを記録する。
これはのちの自分のためになるので、アトラは記録を書き溜めていた。
夢見の力で行き来してわかったことがひとつあった。それはアトラの生きている世界線……つまりはこの牢屋に、アトラの体は固定されていないということ。
ちゃんと体は移動しており、過去や未来関係なく、記憶にある元の時間帯、時間軸に戻れば変わらず存在することができた。
もちろんアトラという存在はガレマールで育った時間軸の人間であることには変わりないので、最終的に帰る場所だとアトラは認識している。
最初の目的である「ガレマール帝国、そして皇帝ソルの勢いを落とすこと」をクリアするには能力の活用が欠かせないだろう。
とはいえ、アトラは自分の価値観、世界が広くなりすぎて、いくらかのんびりした考えになっていた。
あせらないあせらない。ひとやすみひとやすみ。
「でも皇帝に忠誠、誓うっていっちゃったしなあ。皇帝陛下のためにもなることしないとなあ」
といいつつ、またアトラは眠って無人島に行くのだった。
無人島ではある程度の開拓が進んでいたが、ヒロシがラザハンの太守と予定がありしばらく留守にするため、生産は一時ストップとなった。もちろん素材集めや細々とした生産は続けられるが、これ以上の開拓や新規の建設は保留である。
アトラは掃除をしたり、魔法人形に混ざって仕事をするものの、開拓が止まっている状態ではやれることが少ない。おそらくヒロシは第13世界へ渡ったのだとあたりをつけたアトラは、余った時間で無人島での瞑想に取り組んだ。滝行は1回で断念した。誰かの師事を受けなくては、到底できそうになかった。
「なんか面白そうなこと始めたね。私が手を貸そうか」
瞑想では、影の案内人が時々サポートをするようになった。影の案内人が根気よく付き合い、時間を重ねた。
ある時は滝のすぐそば。ある時は崖の先端。ある時は静かに波打つ海岸。
目を閉じて深呼吸をする。滝の轟音が堅い意思を作り、風の音が意識を分散させ、波の音が心地よく耳に届き、アトラはひとつの季節を終えていた。
会社員の研修期間ほどが経ったころ、静かな場所限定ではあるが、アトラは目が覚めた状態で影の案内人と会話できるほどになっていた。
「瞑想って効果あるんだねえ」
アトラはあぐらを組んで座っていた。影の案内人は寝そべっている。
「ちゃんと続けなよ。今は静かな場所だからできてるけど、どんなことが起きてもこの『夢幻』の力を使うには、いつでも平常心でいられるように瞑想を重ねないと実現できないから」
「うん。でも、どこでも渡れる夢見の力が覚醒状態で発動したら、いったいどんなことができるんだろう。何か知ってる?」
「それは、使う本人次第でどうにでもなる能力なら、決まった使い方はないよ」
「う~ん、自由すぎるとかえって、なにしたらいいか悩むね……」
崖の先端でする瞑想は、最初こそ足がすくんでできなかった。しかし、続けているうちに胆力がついたのか、アトラは今や崖の先端で影の案内人と会話をしていた。
「一番は自分の心をちゃんと理解しておくことだね。じゃないと、誰の心もわかろうとしてやれない。皇帝サマとかね」
アトラが皇帝の名前に反応して、影の案内人を見ると、その姿は消えていた。心が揺れてしまったのだろう。アトラは深呼吸をし、いい聞かせた。
「わからない……って言ってても、わかりやしないんだもんね。わかろうとするしかない。自分のことか……」
アトラは立ち上がって伸びをする。無人島に広がる極彩色の世界は、色濃く輝く夕日によって照らされていた。
開拓が進んで、中心施設である「アイランドホール」は木の屋根や布飾りができるほど立派なものになり、ほかの建物も準じてリフォームされた。アトラが間借りしている寝床も、以前より作りがしっかりしている建物になっていた。
アトラは眠り、牢屋の自分へと夢見の力で移動する。
現在の牢屋は、なんということでしょう。
天井には壁から壁へ張り巡らされた連なる電球たちのストリングライト。南国の藁を染めてできたカラフルな絨毯。雪国で活躍間違いなしの古いが現役の暖房器具。板を持ち込みDIYした簡易的な机と椅子。椅子にはクッションもある。机の上には実家の自分の部屋からとってきたライトと日記帳。
天然ゴムでふかふかのベッド。羊毛、羽毛で厚みのあるかけぶとん。冷たい床にも負けないゴムと羊毛のスリッパ。小腹にちょうどいいおやつたち。
牢屋の鉄格子は、廊下の微々たる電灯の光を入れる義理もないほど電球があるので、分厚いカーテンで閉め切って暖房効率を少しだけ上げている。鉄格子を塞げるような大きな板などは運べない。ここでの生活が長引くようなら、小さな板をたくさん貼り付ける壁を創ることを検討している。
アトラはさっそく暖房器具のスイッチを入れた。
徐々に部屋は暖かくなる。
「秘密基地、最高」
もはや牢屋ですらなくなっていた。
劇的底辺ビフォーアフターはともかく、アトラは椅子に座り机の日記帳を開いた。
展望ははっきりしていないが、試したいことは山ほどある。
アトラは書き足したり確認しながら、手帳を眺める。
内容は、瞑想によって夢見の力を、目が覚めていても使えるようになるか試すこと。
瞑想はトランスや、起きていながら寝ている状態を可能にするという文献で知ったので、効果があるかを試す。
無人島の滝や大自然を使わせてもらい、自然の力で瞑想を深める。
これが叶えば、具現化した夢見の力……たとえるなら夢幻の力を使って、何ができるか試行錯誤すること。
次に、古代の世界でエメトセルクに関するヒントを拾い集めるために活動するということ。
優先順位は低いが、アトラのような能力を持った人物について調べるために、オールドシャーレアンの書庫もしくは禁書庫にはいってみること。
そしてこれは定期的にしていることだが、これらの確認作業を記録すること。
もうすでに古代の体験の記録は終わっていた。あとは無人島でどのように過ごしたかを記録する。
これはのちの自分のためになるので、アトラは記録を書き溜めていた。
夢見の力で行き来してわかったことがひとつあった。それはアトラの生きている世界線……つまりはこの牢屋に、アトラの体は固定されていないということ。
ちゃんと体は移動しており、過去や未来関係なく、記憶にある元の時間帯、時間軸に戻れば変わらず存在することができた。
もちろんアトラという存在はガレマールで育った時間軸の人間であることには変わりないので、最終的に帰る場所だとアトラは認識している。
最初の目的である「ガレマール帝国、そして皇帝ソルの勢いを落とすこと」をクリアするには能力の活用が欠かせないだろう。
とはいえ、アトラは自分の価値観、世界が広くなりすぎて、いくらかのんびりした考えになっていた。
あせらないあせらない。ひとやすみひとやすみ。
「でも皇帝に忠誠、誓うっていっちゃったしなあ。皇帝陛下のためにもなることしないとなあ」
といいつつ、またアトラは眠って無人島に行くのだった。
無人島ではある程度の開拓が進んでいたが、ヒロシがラザハンの太守と予定がありしばらく留守にするため、生産は一時ストップとなった。もちろん素材集めや細々とした生産は続けられるが、これ以上の開拓や新規の建設は保留である。
アトラは掃除をしたり、魔法人形に混ざって仕事をするものの、開拓が止まっている状態ではやれることが少ない。おそらくヒロシは第13世界へ渡ったのだとあたりをつけたアトラは、余った時間で無人島での瞑想に取り組んだ。滝行は1回で断念した。誰かの師事を受けなくては、到底できそうになかった。
「なんか面白そうなこと始めたね。私が手を貸そうか」
瞑想では、影の案内人が時々サポートをするようになった。影の案内人が根気よく付き合い、時間を重ねた。
ある時は滝のすぐそば。ある時は崖の先端。ある時は静かに波打つ海岸。
目を閉じて深呼吸をする。滝の轟音が堅い意思を作り、風の音が意識を分散させ、波の音が心地よく耳に届き、アトラはひとつの季節を終えていた。
会社員の研修期間ほどが経ったころ、静かな場所限定ではあるが、アトラは目が覚めた状態で影の案内人と会話できるほどになっていた。
「瞑想って効果あるんだねえ」
アトラはあぐらを組んで座っていた。影の案内人は寝そべっている。
「ちゃんと続けなよ。今は静かな場所だからできてるけど、どんなことが起きてもこの『夢幻』の力を使うには、いつでも平常心でいられるように瞑想を重ねないと実現できないから」
「うん。でも、どこでも渡れる夢見の力が覚醒状態で発動したら、いったいどんなことができるんだろう。何か知ってる?」
「それは、使う本人次第でどうにでもなる能力なら、決まった使い方はないよ」
「う~ん、自由すぎるとかえって、なにしたらいいか悩むね……」
崖の先端でする瞑想は、最初こそ足がすくんでできなかった。しかし、続けているうちに胆力がついたのか、アトラは今や崖の先端で影の案内人と会話をしていた。
「一番は自分の心をちゃんと理解しておくことだね。じゃないと、誰の心もわかろうとしてやれない。皇帝サマとかね」
アトラが皇帝の名前に反応して、影の案内人を見ると、その姿は消えていた。心が揺れてしまったのだろう。アトラは深呼吸をし、いい聞かせた。
「わからない……って言ってても、わかりやしないんだもんね。わかろうとするしかない。自分のことか……」
アトラは立ち上がって伸びをする。無人島に広がる極彩色の世界は、色濃く輝く夕日によって照らされていた。