夢見の旅人
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過去から未来へ
まさか未来の英雄の開拓無人島についてしまうとはね。
アトラはそのまま無人島に滞在していた。
ヒロシと名乗った青年(!!)は、アトラにリムサ・ロミンサへ送ろうと提案してくれたが、アトラは帝国の地下牢から命からがら逃げてきたことを伝え、開拓を手伝うのでこの島に少しだけ滞在させてほしいとお願いした。嘘はついてない。
アトラはリゾート気分で牢屋に別れを告げてきたが、ヒロシはそういうことならかまわない、と真剣に受け止めてくれた。
それと一緒に帝国は保護を受けられるようになったこともヒロシは伝えてくれるが、アトラは食い下がり、権力者に目をつけられていてやはり帰ることはできないと伝える。嘘はついてない。
働くと言ったからには、アトラは懸命に働いた。のんびりとした開拓には、アトラが申し訳なくなるほどの食事と、休憩にはココナッツジュースその他トロピカルな水分補給がついていた。魔法人形がかいがいしく世話を焼いてくれる。
爽やかな風が吹く常夏は、アトラの白い肌を焼いた。夜は星空と涼しい風のなかハンモックやワラを敷いた木の床で寝る。健全健康な日々を送っていた。
ヒロシは常に島にいる訳ではないので、唯一の島民としてアトラは精を出した。
魔法人形たちと協力して、ヒロシが快適に過ごせるよう休憩所を作り込んだりなどもした。
日々を過ごすなかで影の案内人が「そろそろ次の手を考えても……いいんじゃない? ねぇ……」と言いづらそうに打診してくるぐらいには満喫していた。
「麻を30束と種を探してこなきゃだからあとでね」
アトラは立派な島民でもあった。
鉱物を採って運ぶなどの重労働は無理だったが、植物を運ぶ重労働はできたので微々たるものであったが素材集めもする。グラナリーオフィスの開拓団に加えてもらい素材採取をしたり、危険なモンスターがいない地域はひとりで採取を行った。
この島は定期的な来客を予定しているために、宿泊施設を設置される段階にはアトラは皇室でのスキルを発揮し、万全整えた。
とはいえ、魔法人形が万能過ぎてあまり仕事はないのも現実だった。
アトラは開拓用に服を新調することにした。集めた素材で開拓工房に服をつくってもらう。長袖ワイシャツに作業ズボンにブーツ。開拓者というより立派な農家だった。
また別の日にはミニオンと戯れたりごはんが必要な子には食べさせたり。
アトラは人間なので、魔法人形にはない味覚を使って時々魔法人形たちが作る料理の味見を担当したり。
「正直、厚待遇すぎる。帰りたくない。いやお母さんおいてかないためにも牢屋脱出したいけどね?」
夢の中で影の案内人はうなだれてため息をついた。
「ま、まあ、いいんじゃない。おすすめしたの、私だからね……」
心底あきれられた。
「次はプール作ろうよって話になってるんだ。ゲーム内の無人島開拓ではプールなかったけど、リゾートにするなら欲しいよねって話してて。まあ私は石とか運べないから、布材とか種とかが私の限界なんだけど」
「オタク早口……ゲームとかメタいことも言うじゃん……」
「隠すことでもないでしょあんたには」
アトラは影の案内人の正体を知らないものの、こちらのことを知っているならと開き直って話した。
「というか、思い付いたことがあったの。聞いて」
「お、おう」
影の案内人が圧されつつ、アトラは続ける。
「実は、無人島で作った防寒着を着て牢屋に行けるんじゃないかと思って。さっそく暖房アイテムも身につけて牢屋に戻ってみたわけ」
「とんでもないことするねあんた」
「そしたらちゃんとあったかい服のまま牢屋にいたわけ。ほんと誰も来ないもんだから、いま牢屋のなかすごい充実しちゃってて。使われてない封鎖された牢屋だってわかったときは腹立ったけど、まじでそれが功を奏したわ」
「へ、へー……」
アトラの斜め上の行動に、影の案内人は思考停止した。
アトラの言っていたことはすべて事実だった。
アトラは身に付けていた首飾りをヒントに、身に付けていたものを夢見の力で移動させることができるとわかってから、牢屋に無人島で働きとともに交換してもらった生活用品を持ち込んでいた。
城勤めでもなければ母もいない状況で、アトラは完全に絵理沙に戻っていた。
「さすがにでっかいものとか身に付けらんないものは無理なのね。こないだモアイ像と寝てみたけどだめだったわ。皇帝の度肝抜きたかったのに」
「バカでしょ。てかそんなに移動してたの知らなかったわ」
「確かにその間あんたを見かけなかったわ。めっちゃ楽しいよ。カバンは余裕でイケた。ヒロシさんが古くて要らなくなった暖房器具を寒い夜に使ってねってくださったの。それを基にして新しい暖房器具を魔法人形さんたちが作ってくれたから、古い方は牢屋に持ってって、超快適。豊かな土地とリゾートはすべてを解決する」
「そういうつもりでリゾート紹介したわけないじゃん??」
「違うの……?」
マジかよこいつ。影の案内人はあきれてしまい、しばらく言葉を繋げられなかった。
アトラがほかの理由を考えてうなるものの、影の案内人は肩をすくめて口を開いた
「リゾートにいて気持ちが落ち着けば、状況を変えるいい案が思い浮かぶんじゃないかな。くらいのつもりだったよ」
「新しい人生の提案ではなかったのね」
「ほんとあんた変わってるよね。なんで無人島開拓のコンセプト通りに突っ走っちゃってんの」
アトラはもはや第二の人生……いや、第三の人生を歩んでいた。第一の絵理沙の人生より充実していた。
「『わたし、こんなことしてていいのかな……』ってそろそろ言い出してほしいよ」
「我が世の春だよ。こんなことしかしていたくないよ」
「皇帝への忠誠はどうしたんだよ」
「やっぱり特産品の献上かな?」
「それお土産じゃん。ノリが友達かよ」
「蜂蜜とココナッツと南国ファッションフルセットは基本よね? バスボムとかも作っちゃおうかなあ。重曹とクエン酸だっけ?」
アトラのなかに変わらず皇帝を尊敬する気持ちはある。
それに、夢見の力を試運転する絶好の機会ともなっていたので、アトラはむしろ貢献できる準備が整えられつつあると言えた。
「この力でお仕えできる日々が楽しみだなあ。いつ牢屋に訪問するんだろう」
「牢屋で待ち構えるのおかしいって。牢屋には来ないでしょ。捕らえられたのに皇帝の前に平然と現れるとか、そういう能力の使い方を期待してたでしょあれは」
「!」
「それでもなお皇帝のもとへ戻ってくる忠犬なのかを確かめるってことでしょ」
「……!!」
アトラは、皇帝の意図を全くもって勘違いしていたことに、いまさら気付いたのだった。
まさか未来の英雄の開拓無人島についてしまうとはね。
アトラはそのまま無人島に滞在していた。
ヒロシと名乗った青年(!!)は、アトラにリムサ・ロミンサへ送ろうと提案してくれたが、アトラは帝国の地下牢から命からがら逃げてきたことを伝え、開拓を手伝うのでこの島に少しだけ滞在させてほしいとお願いした。嘘はついてない。
アトラはリゾート気分で牢屋に別れを告げてきたが、ヒロシはそういうことならかまわない、と真剣に受け止めてくれた。
それと一緒に帝国は保護を受けられるようになったこともヒロシは伝えてくれるが、アトラは食い下がり、権力者に目をつけられていてやはり帰ることはできないと伝える。嘘はついてない。
働くと言ったからには、アトラは懸命に働いた。のんびりとした開拓には、アトラが申し訳なくなるほどの食事と、休憩にはココナッツジュースその他トロピカルな水分補給がついていた。魔法人形がかいがいしく世話を焼いてくれる。
爽やかな風が吹く常夏は、アトラの白い肌を焼いた。夜は星空と涼しい風のなかハンモックやワラを敷いた木の床で寝る。健全健康な日々を送っていた。
ヒロシは常に島にいる訳ではないので、唯一の島民としてアトラは精を出した。
魔法人形たちと協力して、ヒロシが快適に過ごせるよう休憩所を作り込んだりなどもした。
日々を過ごすなかで影の案内人が「そろそろ次の手を考えても……いいんじゃない? ねぇ……」と言いづらそうに打診してくるぐらいには満喫していた。
「麻を30束と種を探してこなきゃだからあとでね」
アトラは立派な島民でもあった。
鉱物を採って運ぶなどの重労働は無理だったが、植物を運ぶ重労働はできたので微々たるものであったが素材集めもする。グラナリーオフィスの開拓団に加えてもらい素材採取をしたり、危険なモンスターがいない地域はひとりで採取を行った。
この島は定期的な来客を予定しているために、宿泊施設を設置される段階にはアトラは皇室でのスキルを発揮し、万全整えた。
とはいえ、魔法人形が万能過ぎてあまり仕事はないのも現実だった。
アトラは開拓用に服を新調することにした。集めた素材で開拓工房に服をつくってもらう。長袖ワイシャツに作業ズボンにブーツ。開拓者というより立派な農家だった。
また別の日にはミニオンと戯れたりごはんが必要な子には食べさせたり。
アトラは人間なので、魔法人形にはない味覚を使って時々魔法人形たちが作る料理の味見を担当したり。
「正直、厚待遇すぎる。帰りたくない。いやお母さんおいてかないためにも牢屋脱出したいけどね?」
夢の中で影の案内人はうなだれてため息をついた。
「ま、まあ、いいんじゃない。おすすめしたの、私だからね……」
心底あきれられた。
「次はプール作ろうよって話になってるんだ。ゲーム内の無人島開拓ではプールなかったけど、リゾートにするなら欲しいよねって話してて。まあ私は石とか運べないから、布材とか種とかが私の限界なんだけど」
「オタク早口……ゲームとかメタいことも言うじゃん……」
「隠すことでもないでしょあんたには」
アトラは影の案内人の正体を知らないものの、こちらのことを知っているならと開き直って話した。
「というか、思い付いたことがあったの。聞いて」
「お、おう」
影の案内人が圧されつつ、アトラは続ける。
「実は、無人島で作った防寒着を着て牢屋に行けるんじゃないかと思って。さっそく暖房アイテムも身につけて牢屋に戻ってみたわけ」
「とんでもないことするねあんた」
「そしたらちゃんとあったかい服のまま牢屋にいたわけ。ほんと誰も来ないもんだから、いま牢屋のなかすごい充実しちゃってて。使われてない封鎖された牢屋だってわかったときは腹立ったけど、まじでそれが功を奏したわ」
「へ、へー……」
アトラの斜め上の行動に、影の案内人は思考停止した。
アトラの言っていたことはすべて事実だった。
アトラは身に付けていた首飾りをヒントに、身に付けていたものを夢見の力で移動させることができるとわかってから、牢屋に無人島で働きとともに交換してもらった生活用品を持ち込んでいた。
城勤めでもなければ母もいない状況で、アトラは完全に絵理沙に戻っていた。
「さすがにでっかいものとか身に付けらんないものは無理なのね。こないだモアイ像と寝てみたけどだめだったわ。皇帝の度肝抜きたかったのに」
「バカでしょ。てかそんなに移動してたの知らなかったわ」
「確かにその間あんたを見かけなかったわ。めっちゃ楽しいよ。カバンは余裕でイケた。ヒロシさんが古くて要らなくなった暖房器具を寒い夜に使ってねってくださったの。それを基にして新しい暖房器具を魔法人形さんたちが作ってくれたから、古い方は牢屋に持ってって、超快適。豊かな土地とリゾートはすべてを解決する」
「そういうつもりでリゾート紹介したわけないじゃん??」
「違うの……?」
マジかよこいつ。影の案内人はあきれてしまい、しばらく言葉を繋げられなかった。
アトラがほかの理由を考えてうなるものの、影の案内人は肩をすくめて口を開いた
「リゾートにいて気持ちが落ち着けば、状況を変えるいい案が思い浮かぶんじゃないかな。くらいのつもりだったよ」
「新しい人生の提案ではなかったのね」
「ほんとあんた変わってるよね。なんで無人島開拓のコンセプト通りに突っ走っちゃってんの」
アトラはもはや第二の人生……いや、第三の人生を歩んでいた。第一の絵理沙の人生より充実していた。
「『わたし、こんなことしてていいのかな……』ってそろそろ言い出してほしいよ」
「我が世の春だよ。こんなことしかしていたくないよ」
「皇帝への忠誠はどうしたんだよ」
「やっぱり特産品の献上かな?」
「それお土産じゃん。ノリが友達かよ」
「蜂蜜とココナッツと南国ファッションフルセットは基本よね? バスボムとかも作っちゃおうかなあ。重曹とクエン酸だっけ?」
アトラのなかに変わらず皇帝を尊敬する気持ちはある。
それに、夢見の力を試運転する絶好の機会ともなっていたので、アトラはむしろ貢献できる準備が整えられつつあると言えた。
「この力でお仕えできる日々が楽しみだなあ。いつ牢屋に訪問するんだろう」
「牢屋で待ち構えるのおかしいって。牢屋には来ないでしょ。捕らえられたのに皇帝の前に平然と現れるとか、そういう能力の使い方を期待してたでしょあれは」
「!」
「それでもなお皇帝のもとへ戻ってくる忠犬なのかを確かめるってことでしょ」
「……!!」
アトラは、皇帝の意図を全くもって勘違いしていたことに、いまさら気付いたのだった。