【FF14】メイドさんの夢旅行
名前変換はこちら。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
アトラはまだ眠らず、寒さに耐えながら体を丸めていた。
鼻水を袖で拭い、胸元に隠したリンクパールに手を伸ばす。耳に近づけてみるが、砂嵐のような雑音しか聞こえなかった。
「無理か……」
危ないときに使うよう言われていたのに、隙がなかった。こちらを絶望に追いやった状況にもかかわらず、リンクパールも首飾りも、まだ無事に手元にある。
そもそもここは帝国の牢屋なのだろうか。看守もおらず、ほかの牢屋に人がいる気配もない。
眠れば死ぬかもしれないという不安。自分の不甲斐なさと、この仕打ちへの怒り。アトラは、眠れそうもなかった。
だが、同時に自分には、こういう状況でも生き延びられる「才能」があるらしいと気付く。
白い靄が目前に迫り、そしてすっと抜けていく。
次の瞬間、影の案内人が目の前に立っていた。
「うかつだったね」
夢の中。現実の体とリンクしているのか、冷たい風が肌を突き抜ける。現実の自分は、凍えていないだろうか。
影は、今のアトラが一番聞きたくない言葉を、正確に突いてくる。アトラは黙ったまま、息を吐くように呟いた。
「……考えられなかった」
自分に非がある。真面目で警戒心の強い相手に、馬鹿正直に返事してしまったのだ。
「うん? でもそういう人が放っておけないんじゃん」
「へ?」
「あなたに首飾りをくれた人だよ」
アトラはそっと首元に手を当てる。魔力が感じられるわけではないが、特別なものだと確かに感じる。
「うーん……」
アゼムのように、諦めずになにかを続ける――それが正解なのだろうか。脱出とも、抵抗とも違う。
「夢見の力でなんでもできるのに、どうしたのさ」
影の案内人がふらふら歩きながら言った。その瞬間、周囲は不思議な風景に変わる。現実ではありえない色彩の空、浮かぶ無数の島々。アトラは立ったまま、その異様な景色を見渡す。
「彼に対して、そんな卑怯なことしていいのかな」
「ぶは」
影の案内人は吹き出す。
「彼は、あなたを警戒しているからとはいえ、殺そうともしてるんだよ」
アトラはぎゅっと体を固くした。
「そうだよ、このままじゃ……」
あせっても、なにも解決しないことはわかっている。それでも、どうしたらいいのか見えない。アトラが影の案内人を見上げると、真っ黒な体にサングラス、明るいアロハシャツ、そして浮き輪まで装着していた。
「えっ? アロハ……えっ?」
「考えても無駄な時は、バカンスしかないでしょ。せっかくどこでもいけるようになったんだし」
「八方塞がりな状況で、バカンス?」
あまりにも刹那的だが、一理ある。アトラは肩の力が抜けていくのを感じた。正直、ディアナに夢見のことを説明して助けてもらうべきか、エメトセルクに会いに行って解決策を聞くべきか、何から手をつけるべきかわからなくなっていた。
ならば、心を整理するために、いっそゆっくりできる場所へ行こう。たとえ死を先延ばしにしているとしても、バカンスで悩みを整理してから戻ればいい。古代の世界でも食べて寝て生きていたのだから、戻らないままでもいいかもしれない。
うん、その答えを出すために、やはりバカンス。
影の提案のおかげで力が抜け、あらぬ方向に行ってしまったかもしれないが、アトラは意を決して、案内人の提案に乗ることにした。
「バカンス、しよう! 正直逃げたいのは山々だったし!」
「おお、意外と思い切りが早いな」
影の案内人は若干引きつつも、アトラの手を引っ張った。
「ちゃんとおすすめの場所があるから。こっちこっち」
薄暗い夢は、少しずつ光を帯びてきた。冷たい牢屋の石壁が遠ざかり、見上げれば空は透き通るような青、地面には色とりどりの花が咲き乱れている。アトラは手を引かれるまま、目を細めて周囲を眺めた。
「……ここ、すごい……」
「そうだろ? ここなら、心も体も解放されるってわけさ」
風は柔らかく、香りは甘く、まるで夢の中そのものが息をしているようだ。アトラは深く息を吸い込み、肩の力がすっと抜けていくのを感じた。
目覚め間近、白い靄は、熱い空気に溶けた。
いつのまにか、隣に立っていた影の案内人はいない。
カモメの鳴き声が響く。
極彩色の鳥が飛び、緑が日光を反射する。
エメラルドの海が風と太陽に遊んでキラキラと光る。
思わず腕をかざして、目元に陰をつくる。
「まぶしっ……」
見渡すと、坂の上に続く道が見えたので、アトラはその道を上っていく。白い砂浜から続く細い道は、南国特有の鮮やかな植物に囲まれていた。
「ガレマルドで見ることはない植物ばかりだ」
雪国仕様の服はすぐに熱がこもり、アトラは腕をまくりながら歩く。
南国で定番の尖った葉の植物が風に揺れている。ヤシの木や大きな花が咲き誇るこの場所は、アトラにとって全く見慣れない風景だった。彼女はまだ、ここが夢なのか現実なのか頭では認識できていなかった。肉体は暑く感じていたが、ガレマール地下牢で冷えた体にはちょうどよかった。
坂を上りきると、視界が開け、風通しの良い竹や木材を使った茅葺きの屋根が特徴の壁がない開放的な建物が現れた。
開けた広場は、海風が肌を優しく包み、波の音が耳に心地よく響く。
「ここは……どこなんだろう」
潮風に混じって、どこからともなく甘く透明な香りが漂う。耳を澄ますと、波の音の合間に、見たこともない鳥のさえずりが混ざっていた。色鮮やかな羽の鳥たちは、空だけでなく、建物の屋根や手すりの上も飛び回る。
アトラの足元を見ると、砂は光を反射して虹色に輝き、歩くたびに小さな星屑のように瞬く。花や葉の先端には、微かに光る露の粒が揺れ、太陽の光を受けて淡く七色に光った。
「……まるで夢の中みたい」
しかし、体は確かにここにある。太陽の熱を肌で感じ、風が髪を揺らす。南国の湿った空気が、凍えた体に染み渡るようだった。
アトラは立ち止まり、目の前の景色に見入った。青い空、輝く海、豊かな緑。すべてが新鮮で、どこか幻想的なこの場所に、アトラはしばらく立ち尽くした。
そのとき、広場では小人たちがせわしなく歩き回り、働いている様子が見えた。アトラが目を凝らすと、その小人たちは精巧な魔法人形であることがわかる。
建物から南国風の服装を着た青年が出てきて、アトラに気付いた。
「こんにちは。今日は来客の予定がなかったかと思うけど、何か用か?」
「ええと……国から逃げ出して、リゾートを探していたら、ここにたどり着きまして……」
てっきり観光地だと思っていたアトラは、青年の言葉に耳を疑った。
「え? ここはリゾートじゃないな。今は開拓中の無人島だ」
「えっ?」
ここは無人島で、開拓途中の土地だという。目を見回すと、整えられた土地と働く魔法人形たちの姿。
──これは、あのアーテリスを救った英雄の開拓島……伝説の地だ。
心臓が高鳴り、手のひらに汗を感じる。アトラは驚きと興奮が入り混じる思いで、その光景を食い入るように見つめた。
鼻水を袖で拭い、胸元に隠したリンクパールに手を伸ばす。耳に近づけてみるが、砂嵐のような雑音しか聞こえなかった。
「無理か……」
危ないときに使うよう言われていたのに、隙がなかった。こちらを絶望に追いやった状況にもかかわらず、リンクパールも首飾りも、まだ無事に手元にある。
そもそもここは帝国の牢屋なのだろうか。看守もおらず、ほかの牢屋に人がいる気配もない。
眠れば死ぬかもしれないという不安。自分の不甲斐なさと、この仕打ちへの怒り。アトラは、眠れそうもなかった。
だが、同時に自分には、こういう状況でも生き延びられる「才能」があるらしいと気付く。
白い靄が目前に迫り、そしてすっと抜けていく。
次の瞬間、影の案内人が目の前に立っていた。
「うかつだったね」
夢の中。現実の体とリンクしているのか、冷たい風が肌を突き抜ける。現実の自分は、凍えていないだろうか。
影は、今のアトラが一番聞きたくない言葉を、正確に突いてくる。アトラは黙ったまま、息を吐くように呟いた。
「……考えられなかった」
自分に非がある。真面目で警戒心の強い相手に、馬鹿正直に返事してしまったのだ。
「うん? でもそういう人が放っておけないんじゃん」
「へ?」
「あなたに首飾りをくれた人だよ」
アトラはそっと首元に手を当てる。魔力が感じられるわけではないが、特別なものだと確かに感じる。
「うーん……」
アゼムのように、諦めずになにかを続ける――それが正解なのだろうか。脱出とも、抵抗とも違う。
「夢見の力でなんでもできるのに、どうしたのさ」
影の案内人がふらふら歩きながら言った。その瞬間、周囲は不思議な風景に変わる。現実ではありえない色彩の空、浮かぶ無数の島々。アトラは立ったまま、その異様な景色を見渡す。
「彼に対して、そんな卑怯なことしていいのかな」
「ぶは」
影の案内人は吹き出す。
「彼は、あなたを警戒しているからとはいえ、殺そうともしてるんだよ」
アトラはぎゅっと体を固くした。
「そうだよ、このままじゃ……」
あせっても、なにも解決しないことはわかっている。それでも、どうしたらいいのか見えない。アトラが影の案内人を見上げると、真っ黒な体にサングラス、明るいアロハシャツ、そして浮き輪まで装着していた。
「えっ? アロハ……えっ?」
「考えても無駄な時は、バカンスしかないでしょ。せっかくどこでもいけるようになったんだし」
「八方塞がりな状況で、バカンス?」
あまりにも刹那的だが、一理ある。アトラは肩の力が抜けていくのを感じた。正直、ディアナに夢見のことを説明して助けてもらうべきか、エメトセルクに会いに行って解決策を聞くべきか、何から手をつけるべきかわからなくなっていた。
ならば、心を整理するために、いっそゆっくりできる場所へ行こう。たとえ死を先延ばしにしているとしても、バカンスで悩みを整理してから戻ればいい。古代の世界でも食べて寝て生きていたのだから、戻らないままでもいいかもしれない。
うん、その答えを出すために、やはりバカンス。
影の提案のおかげで力が抜け、あらぬ方向に行ってしまったかもしれないが、アトラは意を決して、案内人の提案に乗ることにした。
「バカンス、しよう! 正直逃げたいのは山々だったし!」
「おお、意外と思い切りが早いな」
影の案内人は若干引きつつも、アトラの手を引っ張った。
「ちゃんとおすすめの場所があるから。こっちこっち」
薄暗い夢は、少しずつ光を帯びてきた。冷たい牢屋の石壁が遠ざかり、見上げれば空は透き通るような青、地面には色とりどりの花が咲き乱れている。アトラは手を引かれるまま、目を細めて周囲を眺めた。
「……ここ、すごい……」
「そうだろ? ここなら、心も体も解放されるってわけさ」
風は柔らかく、香りは甘く、まるで夢の中そのものが息をしているようだ。アトラは深く息を吸い込み、肩の力がすっと抜けていくのを感じた。
目覚め間近、白い靄は、熱い空気に溶けた。
いつのまにか、隣に立っていた影の案内人はいない。
カモメの鳴き声が響く。
極彩色の鳥が飛び、緑が日光を反射する。
エメラルドの海が風と太陽に遊んでキラキラと光る。
思わず腕をかざして、目元に陰をつくる。
「まぶしっ……」
見渡すと、坂の上に続く道が見えたので、アトラはその道を上っていく。白い砂浜から続く細い道は、南国特有の鮮やかな植物に囲まれていた。
「ガレマルドで見ることはない植物ばかりだ」
雪国仕様の服はすぐに熱がこもり、アトラは腕をまくりながら歩く。
南国で定番の尖った葉の植物が風に揺れている。ヤシの木や大きな花が咲き誇るこの場所は、アトラにとって全く見慣れない風景だった。彼女はまだ、ここが夢なのか現実なのか頭では認識できていなかった。肉体は暑く感じていたが、ガレマール地下牢で冷えた体にはちょうどよかった。
坂を上りきると、視界が開け、風通しの良い竹や木材を使った茅葺きの屋根が特徴の壁がない開放的な建物が現れた。
開けた広場は、海風が肌を優しく包み、波の音が耳に心地よく響く。
「ここは……どこなんだろう」
潮風に混じって、どこからともなく甘く透明な香りが漂う。耳を澄ますと、波の音の合間に、見たこともない鳥のさえずりが混ざっていた。色鮮やかな羽の鳥たちは、空だけでなく、建物の屋根や手すりの上も飛び回る。
アトラの足元を見ると、砂は光を反射して虹色に輝き、歩くたびに小さな星屑のように瞬く。花や葉の先端には、微かに光る露の粒が揺れ、太陽の光を受けて淡く七色に光った。
「……まるで夢の中みたい」
しかし、体は確かにここにある。太陽の熱を肌で感じ、風が髪を揺らす。南国の湿った空気が、凍えた体に染み渡るようだった。
アトラは立ち止まり、目の前の景色に見入った。青い空、輝く海、豊かな緑。すべてが新鮮で、どこか幻想的なこの場所に、アトラはしばらく立ち尽くした。
そのとき、広場では小人たちがせわしなく歩き回り、働いている様子が見えた。アトラが目を凝らすと、その小人たちは精巧な魔法人形であることがわかる。
建物から南国風の服装を着た青年が出てきて、アトラに気付いた。
「こんにちは。今日は来客の予定がなかったかと思うけど、何か用か?」
「ええと……国から逃げ出して、リゾートを探していたら、ここにたどり着きまして……」
てっきり観光地だと思っていたアトラは、青年の言葉に耳を疑った。
「え? ここはリゾートじゃないな。今は開拓中の無人島だ」
「えっ?」
ここは無人島で、開拓途中の土地だという。目を見回すと、整えられた土地と働く魔法人形たちの姿。
──これは、あのアーテリスを救った英雄の開拓島……伝説の地だ。
心臓が高鳴り、手のひらに汗を感じる。アトラは驚きと興奮が入り混じる思いで、その光景を食い入るように見つめた。