【FF14】メイドさんの夢旅行
名前変換はこちら。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「さ、てー。改めて聞かせていただこう。お前は何者だ?」
アトラ、ただいま皇帝に怪しまれて拘束状態。
夜勤明けから一度家に帰り、半日休みをもらったアトラ。
午後から出勤すると、皇帝から呼び出され、わざわざご指名とは何事かと駆けつければ、魔導具装置で魔法の鎖に捕らえられ身動きが取れない。
汗がにじみ、足元だけを見続ける。
「い、いったいなんですか。私は犯罪者ですか?」
「予備軍と言ったところか」
皇帝はくるりと背を向け、顔だけ振り返る。
「落ち着いているな、アティウス。昨日、私が何者か、なぜわかっているかのように返事をした?」
――あ、ほんとだ。とんだ馬鹿ですね、私。
「そんな。偉大なる皇帝陛下でいらっしゃる以外の何だとおっしゃるのでしょうか」
冷や汗が流れ、小さな失態で大きな事態を招くのは避けたかった。
皇帝は静かに観察している。
目が合えば、こちらの精神を揺さぶる言葉を投げかけてくるだろう。
「平然と勤めに来たということは、悪意がないのはわかる。考えなしであることもな」
室内には皇帝とアトラだけ。
沈黙が重くのしかかる。
昨日、アトラはエメトセルクの記憶と時が繋がったという嬉しさからつい返事をしたが、それこそが罠だった。というより、アトラがウカツだっただけであった。
アトラはうまい嘘をつける自信もなかった。ディアナの言っていたように、プロではない。
アトラは慎重に発言する。自分がまた、いらぬことを言えばディアナに被害がとんでしまうことを思うと、口が重く感じた。皇帝はただ黙ってアトラを見る。
「皇帝陛下にはご恩があります。尊敬の念を抱くことはあれど、敵意はありません」
皇帝は促すように、ただ沈黙を続ける。
「それで?」とも言いたげに。
アトラは、嘘をつかず、真実だけを話そうと頭を働かせる。
「……陛下が、首飾りのことをお聞きになったとき、きっと私の知っている方なのだとわかったのでございます」
皇帝は沈黙を続ける。気を抜けば隙をつかれて、こちらの精神を揺るがす言葉を投げてくるだろう。
アトラは己を奮い立たせた。罠はすでに張られている。
「正体を知っているな?」と聞きはしたが、彼は自分が誰かを明かしていない。
時系列の話もしていない。
「いつかどこかですれ違った人」を装うことはできるのではないか。そうアトラはあたりを付ける。
「……陛下が、首飾りのことをお聞きになったとき、きっと私の知っている方なのだとわかったのでございます」
皇帝はあからさまに舌打ちをした。
――あっぶねー! 心理戦も囲い込まれてる!
アトラは汗が吹き出る。
心臓が跳ね、言葉を絞り出す。
「目的は、ありません。
いろんな人に会いに行ける力以外、私には何もありません」
たっぷりと沈黙した後、皇帝は息を吐き出した。
「……はあ。そういうことにしておこう。
妙な力を使い、下手なことをするればどうなるか……わかっているな?」
こわいよー。
アトラは震える。
生まれたてのヒヨコのように。
「それから、私のことを誰かに言ったりしたか?」
ディアナに報告するかしまいか、悩みはしたものの、説明が難しく、アトラは結局夢で見たことを誰にも話していなかった。
首を横に振る。
夢で見たことも、誰にも話していない。
「ふむ。とりあえずはいいだろう」
皇帝の眼光が鋭く光る。
「自由に移動する力には利用価値がありそうだ」
アトラは言葉を絞り出す。
「陛下、この秘密は誰にも言いません。
どうか、信じてください。
私の力がもし陛下のお役に立つのなら、忠実に従い、この力を使います」
皇帝はしばらく考え込む。
その目には誠実さが映る。
しかし、この目に揺るがされるわけにはいかないと、冷徹な判断を下す。
「その力、使えるものなら使ってみせろ」
アトラが目を覚ますと、冷たい床の上だった。体のあちこちが痛む。
「あいててて……」
体を確認する。怪我はない。だが、場所は──見覚えのある石造りの床、擦り切れた布のアイアンフレームベッド、簡素なトイレ。目の前には牢屋でよく見る鉄格子がある。
――……牢屋?
状況を理解して、アトラはぶつぶつとつぶやく。
「ふーんなるほどね、こういうことするんだ。ふーん……」
情けなさと悔しさで胸がいっぱいだ。忠誠心を試すための拘束だとしても、頭に血が上った今のアトラには関係ない。
牢屋の外は石畳の廊下。静寂と影が延々と続く。水滴が落ちる音が、さらに冷たさを引き立てる。魔導技術の光で淡く灯る電灯が、かすかな命の灯のように見えた。身体だけでなく、心まで冷え切る。
時間の感覚もなく、昼か夜かもわからない。
暗闇の中で、頭に皇帝ソルの鋭い瞳が浮かぶ。ハッとして首元に手をやる。首飾りはまだ無事だ。ほっとした気持ちでベッドに移動する。
しかし、頭の中の瞳は離れない。どこか寂しさを帯びた複雑な視線も感じる。寒さと相まって胸が締め付けられる。これは自分の気持ちを映しているのか、それとも……。
アトラは体を丸め、擦り切れた布をかける。横になり、夢の続きを見ようと決める。眠れるかどうかはわからないが、やるしかない。
不安もあった。前回の夢見では夜勤中の仮眠中で、体は現実に残ったままだった。寒い牢屋で夢見をすれば、凍死の危険もある。
それでも──皇帝陛下は、この状況でも何とかしろと仰せなのだろう。
アトラ、ただいま皇帝に怪しまれて拘束状態。
夜勤明けから一度家に帰り、半日休みをもらったアトラ。
午後から出勤すると、皇帝から呼び出され、わざわざご指名とは何事かと駆けつければ、魔導具装置で魔法の鎖に捕らえられ身動きが取れない。
汗がにじみ、足元だけを見続ける。
「い、いったいなんですか。私は犯罪者ですか?」
「予備軍と言ったところか」
皇帝はくるりと背を向け、顔だけ振り返る。
「落ち着いているな、アティウス。昨日、私が何者か、なぜわかっているかのように返事をした?」
――あ、ほんとだ。とんだ馬鹿ですね、私。
「そんな。偉大なる皇帝陛下でいらっしゃる以外の何だとおっしゃるのでしょうか」
冷や汗が流れ、小さな失態で大きな事態を招くのは避けたかった。
皇帝は静かに観察している。
目が合えば、こちらの精神を揺さぶる言葉を投げかけてくるだろう。
「平然と勤めに来たということは、悪意がないのはわかる。考えなしであることもな」
室内には皇帝とアトラだけ。
沈黙が重くのしかかる。
昨日、アトラはエメトセルクの記憶と時が繋がったという嬉しさからつい返事をしたが、それこそが罠だった。というより、アトラがウカツだっただけであった。
アトラはうまい嘘をつける自信もなかった。ディアナの言っていたように、プロではない。
アトラは慎重に発言する。自分がまた、いらぬことを言えばディアナに被害がとんでしまうことを思うと、口が重く感じた。皇帝はただ黙ってアトラを見る。
「皇帝陛下にはご恩があります。尊敬の念を抱くことはあれど、敵意はありません」
皇帝は促すように、ただ沈黙を続ける。
「それで?」とも言いたげに。
アトラは、嘘をつかず、真実だけを話そうと頭を働かせる。
「……陛下が、首飾りのことをお聞きになったとき、きっと私の知っている方なのだとわかったのでございます」
皇帝は沈黙を続ける。気を抜けば隙をつかれて、こちらの精神を揺るがす言葉を投げてくるだろう。
アトラは己を奮い立たせた。罠はすでに張られている。
「正体を知っているな?」と聞きはしたが、彼は自分が誰かを明かしていない。
時系列の話もしていない。
「いつかどこかですれ違った人」を装うことはできるのではないか。そうアトラはあたりを付ける。
「……陛下が、首飾りのことをお聞きになったとき、きっと私の知っている方なのだとわかったのでございます」
皇帝はあからさまに舌打ちをした。
――あっぶねー! 心理戦も囲い込まれてる!
アトラは汗が吹き出る。
心臓が跳ね、言葉を絞り出す。
「目的は、ありません。
いろんな人に会いに行ける力以外、私には何もありません」
たっぷりと沈黙した後、皇帝は息を吐き出した。
「……はあ。そういうことにしておこう。
妙な力を使い、下手なことをするればどうなるか……わかっているな?」
こわいよー。
アトラは震える。
生まれたてのヒヨコのように。
「それから、私のことを誰かに言ったりしたか?」
ディアナに報告するかしまいか、悩みはしたものの、説明が難しく、アトラは結局夢で見たことを誰にも話していなかった。
首を横に振る。
夢で見たことも、誰にも話していない。
「ふむ。とりあえずはいいだろう」
皇帝の眼光が鋭く光る。
「自由に移動する力には利用価値がありそうだ」
アトラは言葉を絞り出す。
「陛下、この秘密は誰にも言いません。
どうか、信じてください。
私の力がもし陛下のお役に立つのなら、忠実に従い、この力を使います」
皇帝はしばらく考え込む。
その目には誠実さが映る。
しかし、この目に揺るがされるわけにはいかないと、冷徹な判断を下す。
「その力、使えるものなら使ってみせろ」
アトラが目を覚ますと、冷たい床の上だった。体のあちこちが痛む。
「あいててて……」
体を確認する。怪我はない。だが、場所は──見覚えのある石造りの床、擦り切れた布のアイアンフレームベッド、簡素なトイレ。目の前には牢屋でよく見る鉄格子がある。
――……牢屋?
状況を理解して、アトラはぶつぶつとつぶやく。
「ふーんなるほどね、こういうことするんだ。ふーん……」
情けなさと悔しさで胸がいっぱいだ。忠誠心を試すための拘束だとしても、頭に血が上った今のアトラには関係ない。
牢屋の外は石畳の廊下。静寂と影が延々と続く。水滴が落ちる音が、さらに冷たさを引き立てる。魔導技術の光で淡く灯る電灯が、かすかな命の灯のように見えた。身体だけでなく、心まで冷え切る。
時間の感覚もなく、昼か夜かもわからない。
暗闇の中で、頭に皇帝ソルの鋭い瞳が浮かぶ。ハッとして首元に手をやる。首飾りはまだ無事だ。ほっとした気持ちでベッドに移動する。
しかし、頭の中の瞳は離れない。どこか寂しさを帯びた複雑な視線も感じる。寒さと相まって胸が締め付けられる。これは自分の気持ちを映しているのか、それとも……。
アトラは体を丸め、擦り切れた布をかける。横になり、夢の続きを見ようと決める。眠れるかどうかはわからないが、やるしかない。
不安もあった。前回の夢見では夜勤中の仮眠中で、体は現実に残ったままだった。寒い牢屋で夢見をすれば、凍死の危険もある。
それでも──皇帝陛下は、この状況でも何とかしろと仰せなのだろう。