【FF14】メイドさんの夢旅行
名前変換はこちら。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
アトラが次に目を覚ましたのは、カロンの自宅の小さなベッドの上だった。突然姿を消したため、カロンは彼女が元の世界に戻ったのかと思っていた。
「どこに行っていたんだい? 心配したんだよ」
カロンはやさしく声をかける。
アトラは昨日の出来事を話し、自分には夢見の力があることを少し照れくさそうに打ち明けた。
「夢見の力があるって……本当に?」
カロンは目を丸くして少し首をかしげた。
「はい。夢の中で行きたい場所に行けるんです」
アトラは小さくうなずく。
「私も君の帰り方を調べていたけれど、わかってよかった。そっかそっか、大躍進だね~」
アトラは聞いたことある言葉選びに「ん?」と、ふと懐かしさと違和感が入り混じる感覚を覚えた。
ついでに、帰る方法を調べてもらっていたことや、お世話になったことにお礼を言わずにいなくなったことも謝った。
「いやいや! 謝らないで。無事に帰れるなら、それに越したことはないのだからね」
「ありがとうございます」
「うんうん。また遊びに来れるのなら、いつでも来てちょうだいね」
やっぱり聞いたことがある会話だと思いつつ、アトラは笑みを浮かべ、再びカロンの手作りの食事を楽しむことにした。
「にしても、すごい力だね。ヴェーネス様の役に立つかもしれないけど、旅人を止めるのはやめておこうかな」
アトラは、カロンが自分を尊重してくれていることに胸が温かくなるのを感じた。
さらに食事まで世話になり、恩返しできないことが申し訳なく思えた。
「私も、カロンさんに近い形で参加するかもしれません」
「えっ、本当?」
アトラの目標は、ディアナの言った「皇帝の勢いを落とす」ことだった。
ハイデリンの活躍を推せば叶うことでもあるので、協力する意思を伝えた。
「そっかあ。それなら私は運び屋で、アトラアティウスちゃんはメッセンジャーってことで、ヴェーネス様を支えられるね」
「はい。ぜひ」
カロンは楽しそうに目を細め、アトラもそれにうなずいた。
ふたりが未来の展望を話していると、カロンの自宅のドアがノックされる。
「朝から失礼する」
カロンが扉を開けると、そこにいたのはエメトセルクだった。
となりには、しょげた様子のアゼムもいる。
「やあ。朝からどうしたのさ、おふたりさん」
「アゼムがそこの異邦人に世話になったのでな」
うながされたアゼムは、アトラに礼を言った。
アゼムが礼を言わされているようで、なんだかかわいそうに思えた。
お礼を言われるためじゃなく、ただアゼムの居場所を見つけられそうだと思っただけだったので、アトラは謙遜して受け取った。
「わざわざよかったのに」
それでも真面目なエメトセルクは「そうはいかない。けじめはつける」と言い、アゼムの首根っこをつかんで連れてきた。
アトラは、二人の関係を眺めながら、現実から少し距離を置いて考えた。
――アゼムとエメトセルクはこうして生きてきたんだなあ……。
「私も、ついこのあいだ所長にお説教されてね。アゼム様の部隊があるならそこに異動させるって言われちゃったよ」
「お断りだ。似たようなのが増えて、困るのはこちらだからな」
「仲間だねえ、アゼム様」
カロンも似たような話を共有する。面倒ごとの気配を察したエメトセルクは、丁重に断った。アゼムは苦笑するばかりで、反省している様子はまったくない。
アトラはふと気になり、エメトセルクの顔を見た。
少し、笑っていた。仕方ない、とでもいうように。
そこでアトラは、自分の勘違いに気づいた。
エメトセルクのことを知っている、アゼムのことを知っている、この世界のことを知っている──そう思っていたけれど、実際にはまだまだ知らないことが多かったのだ。
エメトセルクは、現実の古代の彼の素直な性格も知っている。
アゼムにドキドキハラハラさせられていた時も、皇帝として生きていた時も、そして星海へ渡った後も、光の戦士の旅路を見守りながら人生を楽しんでいた。
そんなシーンが、アトラの頭の中にフラッシュバックする。人は、行動に嘘はつけない。
アトラは、エメトセルクがアゼムや親しい人たちと過ごす時間を、こんなにも愛していることを知らなかった。
そして、まだまだ知らないことのほうが、多いのだと、思った。
きっと、まだまだ知らないことのほうが、多いのだと。
「それで、お前はもう元の世界に帰れるのか。なんでも行きたい場所へ行けるようになったとか」
アトラはぼーっとエメトセルクを見ていた。声をかけられて、ハッとする。
「あ、はい。もう帰れると思います。みなさんには、大変お世話になりました」
ぺこりとお辞儀をする。
「そうか、なら礼をもらっても、手に余るだけか」
――なんと、用意してくれていたのか。アトラの顔が自然と明るくなる。
カロンも興味津々で、話の続きを促した。
「エメトセルク様、アトラアティウスちゃんに何用意したんですか?」
「いいだろう、別に。帰れるとなっては、もらっても困るだけのものだ」
帰れると伝えていたのに、それでも用意されている──その不思議さに、アトラは首を傾げた。
アゼムが最後に自分も気になると呟くと、エメトセルクは長い沈黙とため息の末、ポケットから首飾りを取り出した。
パチン、と小気味よい音が響く。魔法で浮かせた首飾りはゆっくりとアトラの元へ向かい、手前で止まった。
小さなクリスタルの欠片が丈夫な紐に括り付けられ、うっすら青く光る旅人らしい首飾り。アトラには少し大きめに見えた。
「小さくては不便だろうからな」
アトラが首飾りを手に取ると、眩しい光がはじけ、思わず目を閉じた。
ゆっくり開くと、驚いた顔でカロンが、面とフードを外して喜んでいた。
――目の色が、やっぱりディアナさんに似ている。
さらにオレンジ色の光が強く輝き、アトラは思わず息を呑む。
「わあ、すごい! さすがエメトセルク様だね」
「カロンさん、お面……」
「これはねえ、親しい間柄でこそ外すものなのよ」
カロンは嬉しそうに、アトラの手を取った。
アトラの手は小さいが、もうぬいぐるみのように手に収まることはない。二人の目線は以前より近く、アトラはしっかりと床に立っていた。
――ああ、大きくなったんだ……。もう、手のひらに収まるサイズじゃない。
「わあ、これ、エメトセルクさん、これ……」
「だから、帰るなら必要なさそうだと言っただろう」
そう言うエメトセルクの横で、アゼムが「でもすごく喜んでるよ」と肘でつつく。
エメトセルクは鼻で息をつき、「それならいいか」と肩をすくめ、緩んだ表情になる。ついでにアゼムにも肘で軽く返しておいた。
アトラは首飾りが自分の首にかかっていることを確認する。青くきらりと光る小さなクリスタルの欠片。
「エメトセルク様、ありがとうございます」
アトラは深くお辞儀をした。
「礼に礼を言ってどうする」
そう言いつつも、エメトセルクは顔を少し緩め、まんざらでもなさそうだった。
やることはやった、と、エメトセルクとアゼムはカロンの自宅を後にした。
アトラは首飾りを首にかけたまま、クリスタルの部分を手に取る。欠片を傾けるとキラキラ光り、その光がアトラの顔にちりばめられた。
カロンが、何気なく言う。
「私、今後本当にアゼム様のところへ異動になったらってことを考えて、アトラアティウスちゃんには、エメトセルク様を攻略してほしいな」
またもや、どこかで聞いたような話。
どこかの誰かに、皇帝を籠絡してほしいと言われたような。
アトラはすかさず答えた。
「カロンさん、あなたならそんなことする必要ありませんよ」
「え、そお?」
「たぶん、ただあなた自身を生きているだけで大丈夫です」
「どういうこと……?」
カロンは首を傾げ、まだピンと来ていない様子だった。
――アゼム様のように、自分を生きる者には、おのずと道が開かれるのだろう。
「どこに行っていたんだい? 心配したんだよ」
カロンはやさしく声をかける。
アトラは昨日の出来事を話し、自分には夢見の力があることを少し照れくさそうに打ち明けた。
「夢見の力があるって……本当に?」
カロンは目を丸くして少し首をかしげた。
「はい。夢の中で行きたい場所に行けるんです」
アトラは小さくうなずく。
「私も君の帰り方を調べていたけれど、わかってよかった。そっかそっか、大躍進だね~」
アトラは聞いたことある言葉選びに「ん?」と、ふと懐かしさと違和感が入り混じる感覚を覚えた。
ついでに、帰る方法を調べてもらっていたことや、お世話になったことにお礼を言わずにいなくなったことも謝った。
「いやいや! 謝らないで。無事に帰れるなら、それに越したことはないのだからね」
「ありがとうございます」
「うんうん。また遊びに来れるのなら、いつでも来てちょうだいね」
やっぱり聞いたことがある会話だと思いつつ、アトラは笑みを浮かべ、再びカロンの手作りの食事を楽しむことにした。
「にしても、すごい力だね。ヴェーネス様の役に立つかもしれないけど、旅人を止めるのはやめておこうかな」
アトラは、カロンが自分を尊重してくれていることに胸が温かくなるのを感じた。
さらに食事まで世話になり、恩返しできないことが申し訳なく思えた。
「私も、カロンさんに近い形で参加するかもしれません」
「えっ、本当?」
アトラの目標は、ディアナの言った「皇帝の勢いを落とす」ことだった。
ハイデリンの活躍を推せば叶うことでもあるので、協力する意思を伝えた。
「そっかあ。それなら私は運び屋で、アトラアティウスちゃんはメッセンジャーってことで、ヴェーネス様を支えられるね」
「はい。ぜひ」
カロンは楽しそうに目を細め、アトラもそれにうなずいた。
ふたりが未来の展望を話していると、カロンの自宅のドアがノックされる。
「朝から失礼する」
カロンが扉を開けると、そこにいたのはエメトセルクだった。
となりには、しょげた様子のアゼムもいる。
「やあ。朝からどうしたのさ、おふたりさん」
「アゼムがそこの異邦人に世話になったのでな」
うながされたアゼムは、アトラに礼を言った。
アゼムが礼を言わされているようで、なんだかかわいそうに思えた。
お礼を言われるためじゃなく、ただアゼムの居場所を見つけられそうだと思っただけだったので、アトラは謙遜して受け取った。
「わざわざよかったのに」
それでも真面目なエメトセルクは「そうはいかない。けじめはつける」と言い、アゼムの首根っこをつかんで連れてきた。
アトラは、二人の関係を眺めながら、現実から少し距離を置いて考えた。
――アゼムとエメトセルクはこうして生きてきたんだなあ……。
「私も、ついこのあいだ所長にお説教されてね。アゼム様の部隊があるならそこに異動させるって言われちゃったよ」
「お断りだ。似たようなのが増えて、困るのはこちらだからな」
「仲間だねえ、アゼム様」
カロンも似たような話を共有する。面倒ごとの気配を察したエメトセルクは、丁重に断った。アゼムは苦笑するばかりで、反省している様子はまったくない。
アトラはふと気になり、エメトセルクの顔を見た。
少し、笑っていた。仕方ない、とでもいうように。
そこでアトラは、自分の勘違いに気づいた。
エメトセルクのことを知っている、アゼムのことを知っている、この世界のことを知っている──そう思っていたけれど、実際にはまだまだ知らないことが多かったのだ。
エメトセルクは、現実の古代の彼の素直な性格も知っている。
アゼムにドキドキハラハラさせられていた時も、皇帝として生きていた時も、そして星海へ渡った後も、光の戦士の旅路を見守りながら人生を楽しんでいた。
そんなシーンが、アトラの頭の中にフラッシュバックする。人は、行動に嘘はつけない。
アトラは、エメトセルクがアゼムや親しい人たちと過ごす時間を、こんなにも愛していることを知らなかった。
そして、まだまだ知らないことのほうが、多いのだと、思った。
きっと、まだまだ知らないことのほうが、多いのだと。
「それで、お前はもう元の世界に帰れるのか。なんでも行きたい場所へ行けるようになったとか」
アトラはぼーっとエメトセルクを見ていた。声をかけられて、ハッとする。
「あ、はい。もう帰れると思います。みなさんには、大変お世話になりました」
ぺこりとお辞儀をする。
「そうか、なら礼をもらっても、手に余るだけか」
――なんと、用意してくれていたのか。アトラの顔が自然と明るくなる。
カロンも興味津々で、話の続きを促した。
「エメトセルク様、アトラアティウスちゃんに何用意したんですか?」
「いいだろう、別に。帰れるとなっては、もらっても困るだけのものだ」
帰れると伝えていたのに、それでも用意されている──その不思議さに、アトラは首を傾げた。
アゼムが最後に自分も気になると呟くと、エメトセルクは長い沈黙とため息の末、ポケットから首飾りを取り出した。
パチン、と小気味よい音が響く。魔法で浮かせた首飾りはゆっくりとアトラの元へ向かい、手前で止まった。
小さなクリスタルの欠片が丈夫な紐に括り付けられ、うっすら青く光る旅人らしい首飾り。アトラには少し大きめに見えた。
「小さくては不便だろうからな」
アトラが首飾りを手に取ると、眩しい光がはじけ、思わず目を閉じた。
ゆっくり開くと、驚いた顔でカロンが、面とフードを外して喜んでいた。
――目の色が、やっぱりディアナさんに似ている。
さらにオレンジ色の光が強く輝き、アトラは思わず息を呑む。
「わあ、すごい! さすがエメトセルク様だね」
「カロンさん、お面……」
「これはねえ、親しい間柄でこそ外すものなのよ」
カロンは嬉しそうに、アトラの手を取った。
アトラの手は小さいが、もうぬいぐるみのように手に収まることはない。二人の目線は以前より近く、アトラはしっかりと床に立っていた。
――ああ、大きくなったんだ……。もう、手のひらに収まるサイズじゃない。
「わあ、これ、エメトセルクさん、これ……」
「だから、帰るなら必要なさそうだと言っただろう」
そう言うエメトセルクの横で、アゼムが「でもすごく喜んでるよ」と肘でつつく。
エメトセルクは鼻で息をつき、「それならいいか」と肩をすくめ、緩んだ表情になる。ついでにアゼムにも肘で軽く返しておいた。
アトラは首飾りが自分の首にかかっていることを確認する。青くきらりと光る小さなクリスタルの欠片。
「エメトセルク様、ありがとうございます」
アトラは深くお辞儀をした。
「礼に礼を言ってどうする」
そう言いつつも、エメトセルクは顔を少し緩め、まんざらでもなさそうだった。
やることはやった、と、エメトセルクとアゼムはカロンの自宅を後にした。
アトラは首飾りを首にかけたまま、クリスタルの部分を手に取る。欠片を傾けるとキラキラ光り、その光がアトラの顔にちりばめられた。
カロンが、何気なく言う。
「私、今後本当にアゼム様のところへ異動になったらってことを考えて、アトラアティウスちゃんには、エメトセルク様を攻略してほしいな」
またもや、どこかで聞いたような話。
どこかの誰かに、皇帝を籠絡してほしいと言われたような。
アトラはすかさず答えた。
「カロンさん、あなたならそんなことする必要ありませんよ」
「え、そお?」
「たぶん、ただあなた自身を生きているだけで大丈夫です」
「どういうこと……?」
カロンは首を傾げ、まだピンと来ていない様子だった。
――アゼム様のように、自分を生きる者には、おのずと道が開かれるのだろう。