【FF14】メイドさんの夢旅行
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アトラは影の案内人がいなくなっても、目覚めることはなかった。夢はまだ続いており、どこからか、うっすらと音が聞こえてくる。アトラはその音の方へ、ふんわりとした足取りで歩を進めた。白い靄が景色をぼんやりと覆い、形を捉えることはできない。
「――アゼム。ついにやらかしたか」
はっきりと、人の声だとわかる音が届く。ぼやけていた映像も、徐々に輪郭を持ち始めた。
アトラの目に映ったのは、エメトセルクと、赤い仮面をつけ、落ち着いた黒いローブをまとう男性が会話している光景。場所は見覚えのある会議室だった。
「今回も君が手助けに行くのか?」
「……今回は、奴にわからせるためにも、手を出すわけにはいかない」
エメトセルクはこぶしを握る。
小柄な白いローブの少年が困惑したようにふたりを見ているが、冷静に次の展開へ進めたい意思も示していた。
「この状況じゃ、十四人委員会でも手が出せないね。ラハブレア、どう捉える?」
「あの山をレイブンが囲んで飛んでいるなら、むやみに攻撃はできない。
アゼムがなにかの拍子に呼んだせいだが、地割れの危険性もあるので、地続きのアプローチも難しい」
「空にはレイブン。地面は地割れの予兆。残すは精鋭で動くことか」
白いローブの少年と、ラハブレアと呼ばれる赤い仮面の男性は冷静に分析した。
「こうした状況をなんとかしてきたのが、あいつだというのに……!」
会話を聞き進めるうち、アゼムが行方不明であり、今回の困難も彼が原因であることがわかった。
アトラは一見、他人事のように「それは困ったね」と受け止めた。しかし、夢の中では感情が強く反応する。
無関係ではない――自分にもどうにかできるかもしれない。
そんな思いが湧き上がり、アトラはアゼムを探し出そうと心を動かした。夢の中では、感情が現実と結びつき、場をひとつにしてしまうのだ。
白い靄は濃く漂いながらも、次第に晴れていく。
気が付くと、アトラは川辺に立っていた。
遠くからは滝の轟音が聞こえ、近くでは川がせせらい、冷たい湿気が肌に染みわたる。
小さな虫の鳴き声、木々が風に揺れるささめき――自然の音に包まれて、アトラは思わず深呼吸した。
「これは、目覚めたときの感覚?」
辺りを見回すと、大きな光る道具の横で、人が寝そべっているのを見つけた。
向こうも気付いたらしく、驚きはするものの、のんきに手を振ってくれた。
――君がこんなところにいたら危ないんじゃないか。
聞き覚えのある声に、アトラは思わず息を呑む。アゼムだった。
ああ、本当だった。影の案内人の言っていた「夢でどこでも行ける」という話は……。
アトラは駆け出した。目的は達成されたのだ。次に進むために。
「もう十四人委員会の人たちがカンカンで、あなたのこと探してますよ」
「そうだろうと思った」
「どうしてこんなところに?」
アゼムは隣の魔道具を指さしながら説明する。地割れの予兆が出ていた土地を調査し、補強に必要な情報と魔道具を揃えてこの山に来たという。魔道具に魔力を込めれば地割れを補強し、レイブンを追い払える。そこから山の地割れにみんなで対処すれば、この土地は安全になる。
しかし作業途中で魔力が切れてしまい、少しでも動くとレイブンの群れに気付かれてしまうため、救援を呼ぶこともできず、こうしてゆっくり休んで回復を待っているのだという。
「なんか、レイブンを呼んじゃったのもアゼムさんだって……どうしてですか?」
アゼムは少し笑って答えた。
レイブンの出す毒は土地の補強に使えると、事前に近くの町で確認していたため、大量に呼んだのだという。この毒は植物には影響がなく、人間には効くので、アゼム自身は解毒剤をちゃんと用意していた。
「大胆なことしますねえ」
ふたりは笑い合い、アゼムは空を見上げた。
アトラは、そもそもどうして自分がここにいるのかを説明する。
「眠って夢を見ると、どうやらいろんなところに行けてしまうみたいです。今までは事故のようにあちこちに行っていたんですけど、アゼムさんのところには意図的に来られちゃいました。もしかしたら、もう自分のいた世界に戻れるのかもしれません」
それはいいことだ。おめでとう。
アゼムはアトラを祝福してくれた。
「ありがとうございます。でも一応、エメトセルクさんたちにも伝えてきますね」
「気をつけて。無理はしないで」
アゼムは、いつも自分が言われている言葉を、今度はアトラにかけてくれた。
アトラはもう一度、アゼムの隣に寝そべり、意識を手放す。
雲の中を落ちるような。白い靄をすり抜けていく。
アトラは、会議室の机の上で目が覚める。まだ会議室にいた3人と再会できた。
川辺のマイナスイオンと森林浴で緩んだ気持ちは、かたい机の上によって引き締められる。
「お前、いつのまにそこに?」
エメトセルクが驚いてアトラを見る。ラハブレアと、白いローブの少年も、小さいアトラをのぞき込む。
アトラはどう説明したものか迷った。信用はほとんどない相手。簡単に信じてくれるわけではない。
「……少し、変わった話なんですけど」
アトラは言葉を選びながら続けた。
「今まではさまざまな次元をさまよっていました。最近になって、行きたい場所に行けるようになったんです……」
エメトセルクが眉をひそめ、ラハブレアも少年も視線を鋭くした。緊張が一瞬、空気を支配する。
「それで……アゼムさんに会ってきました。探していたでしょう?」
ラハブレアも白いローブの少年も、そしてエメトセルクも、アゼムの名前に目を丸くする。
アトラは少し息を整え、重要な点だけを絞って話した。
「嘘か本当かは、聞いてから判断してください」
アトラはアゼムから聞いた、レイブンの活用法、土地の補強、魔道具の魔力補充の話を、必要最低限にまとめて伝えた。
「レイブンはわざと呼んで、地割れの危険があるのに避難せず、土地の補強をするために魔道具を使うことにして、作業をしていたら魔道具も自分も魔力不足で川辺で寝ていた、と?」
エメトセルクに改めてまとめられると、なかなかにぶっ飛んだ話だった。アトラは、眉間のしわを深くした彼の視線の前で、少し言葉を詰まらせる。
「……その通りです」
しばらくの沈黙。エメトセルクは眉を寄せ、考え込むように腕を組む。
「……アゼムなら、やりそうなことだね」
「まったくだ」
白いローブの少年も口を開く。「あそこの香辛料、失い難いものだ……」と小声でつぶやく。
それを聞いたラハブレアは眉をひそめつつもうなずく。
エメトセルクの沈黙は、まだ完全な肯定ではないが、少なくとも全面的な否定ではなかった。
アトラは息をつき、肩の力を少し抜く。
意見、満場一致である。
「あのバカ!」
「――アゼム。ついにやらかしたか」
はっきりと、人の声だとわかる音が届く。ぼやけていた映像も、徐々に輪郭を持ち始めた。
アトラの目に映ったのは、エメトセルクと、赤い仮面をつけ、落ち着いた黒いローブをまとう男性が会話している光景。場所は見覚えのある会議室だった。
「今回も君が手助けに行くのか?」
「……今回は、奴にわからせるためにも、手を出すわけにはいかない」
エメトセルクはこぶしを握る。
小柄な白いローブの少年が困惑したようにふたりを見ているが、冷静に次の展開へ進めたい意思も示していた。
「この状況じゃ、十四人委員会でも手が出せないね。ラハブレア、どう捉える?」
「あの山をレイブンが囲んで飛んでいるなら、むやみに攻撃はできない。
アゼムがなにかの拍子に呼んだせいだが、地割れの危険性もあるので、地続きのアプローチも難しい」
「空にはレイブン。地面は地割れの予兆。残すは精鋭で動くことか」
白いローブの少年と、ラハブレアと呼ばれる赤い仮面の男性は冷静に分析した。
「こうした状況をなんとかしてきたのが、あいつだというのに……!」
会話を聞き進めるうち、アゼムが行方不明であり、今回の困難も彼が原因であることがわかった。
アトラは一見、他人事のように「それは困ったね」と受け止めた。しかし、夢の中では感情が強く反応する。
無関係ではない――自分にもどうにかできるかもしれない。
そんな思いが湧き上がり、アトラはアゼムを探し出そうと心を動かした。夢の中では、感情が現実と結びつき、場をひとつにしてしまうのだ。
白い靄は濃く漂いながらも、次第に晴れていく。
気が付くと、アトラは川辺に立っていた。
遠くからは滝の轟音が聞こえ、近くでは川がせせらい、冷たい湿気が肌に染みわたる。
小さな虫の鳴き声、木々が風に揺れるささめき――自然の音に包まれて、アトラは思わず深呼吸した。
「これは、目覚めたときの感覚?」
辺りを見回すと、大きな光る道具の横で、人が寝そべっているのを見つけた。
向こうも気付いたらしく、驚きはするものの、のんきに手を振ってくれた。
――君がこんなところにいたら危ないんじゃないか。
聞き覚えのある声に、アトラは思わず息を呑む。アゼムだった。
ああ、本当だった。影の案内人の言っていた「夢でどこでも行ける」という話は……。
アトラは駆け出した。目的は達成されたのだ。次に進むために。
「もう十四人委員会の人たちがカンカンで、あなたのこと探してますよ」
「そうだろうと思った」
「どうしてこんなところに?」
アゼムは隣の魔道具を指さしながら説明する。地割れの予兆が出ていた土地を調査し、補強に必要な情報と魔道具を揃えてこの山に来たという。魔道具に魔力を込めれば地割れを補強し、レイブンを追い払える。そこから山の地割れにみんなで対処すれば、この土地は安全になる。
しかし作業途中で魔力が切れてしまい、少しでも動くとレイブンの群れに気付かれてしまうため、救援を呼ぶこともできず、こうしてゆっくり休んで回復を待っているのだという。
「なんか、レイブンを呼んじゃったのもアゼムさんだって……どうしてですか?」
アゼムは少し笑って答えた。
レイブンの出す毒は土地の補強に使えると、事前に近くの町で確認していたため、大量に呼んだのだという。この毒は植物には影響がなく、人間には効くので、アゼム自身は解毒剤をちゃんと用意していた。
「大胆なことしますねえ」
ふたりは笑い合い、アゼムは空を見上げた。
アトラは、そもそもどうして自分がここにいるのかを説明する。
「眠って夢を見ると、どうやらいろんなところに行けてしまうみたいです。今までは事故のようにあちこちに行っていたんですけど、アゼムさんのところには意図的に来られちゃいました。もしかしたら、もう自分のいた世界に戻れるのかもしれません」
それはいいことだ。おめでとう。
アゼムはアトラを祝福してくれた。
「ありがとうございます。でも一応、エメトセルクさんたちにも伝えてきますね」
「気をつけて。無理はしないで」
アゼムは、いつも自分が言われている言葉を、今度はアトラにかけてくれた。
アトラはもう一度、アゼムの隣に寝そべり、意識を手放す。
雲の中を落ちるような。白い靄をすり抜けていく。
アトラは、会議室の机の上で目が覚める。まだ会議室にいた3人と再会できた。
川辺のマイナスイオンと森林浴で緩んだ気持ちは、かたい机の上によって引き締められる。
「お前、いつのまにそこに?」
エメトセルクが驚いてアトラを見る。ラハブレアと、白いローブの少年も、小さいアトラをのぞき込む。
アトラはどう説明したものか迷った。信用はほとんどない相手。簡単に信じてくれるわけではない。
「……少し、変わった話なんですけど」
アトラは言葉を選びながら続けた。
「今まではさまざまな次元をさまよっていました。最近になって、行きたい場所に行けるようになったんです……」
エメトセルクが眉をひそめ、ラハブレアも少年も視線を鋭くした。緊張が一瞬、空気を支配する。
「それで……アゼムさんに会ってきました。探していたでしょう?」
ラハブレアも白いローブの少年も、そしてエメトセルクも、アゼムの名前に目を丸くする。
アトラは少し息を整え、重要な点だけを絞って話した。
「嘘か本当かは、聞いてから判断してください」
アトラはアゼムから聞いた、レイブンの活用法、土地の補強、魔道具の魔力補充の話を、必要最低限にまとめて伝えた。
「レイブンはわざと呼んで、地割れの危険があるのに避難せず、土地の補強をするために魔道具を使うことにして、作業をしていたら魔道具も自分も魔力不足で川辺で寝ていた、と?」
エメトセルクに改めてまとめられると、なかなかにぶっ飛んだ話だった。アトラは、眉間のしわを深くした彼の視線の前で、少し言葉を詰まらせる。
「……その通りです」
しばらくの沈黙。エメトセルクは眉を寄せ、考え込むように腕を組む。
「……アゼムなら、やりそうなことだね」
「まったくだ」
白いローブの少年も口を開く。「あそこの香辛料、失い難いものだ……」と小声でつぶやく。
それを聞いたラハブレアは眉をひそめつつもうなずく。
エメトセルクの沈黙は、まだ完全な肯定ではないが、少なくとも全面的な否定ではなかった。
アトラは息をつき、肩の力を少し抜く。
意見、満場一致である。
「あのバカ!」