夢見の旅人
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「この、奇妙な生物はなんだ?」
「あ、こんにちは」
エメトセルクはアトラに視線を合わせてそう言った。小柄で、まだ使用人服を着ているアトラ。
ヒュトロダエウスに確認してもらったように、混ざった魂の色。エメトセルクが違和感を感じて視てみれば、奇妙な生物に見えるに違いなかった。
アトラが挨拶をすると、エメトセルクは手をひらっと一度開き、それから腕を組んだ。
「ああ、次元の旅人なんだって。後でアゼムも来るだろうから、有力な情報がないか、聞いてみようか」
ヒュトロダエウスがエメトセルクに説明した。エメトセルクはさらに眉を歪めた。
「星に影響はないんだろうな」
「まさか。こんなにエーテルも薄いじゃないか。まったく真面目だねえ」
「おかげさまでな」
ヒュトロダエウスとエメトセルクは、カロンとアトラのすぐ近くの席についた。
そうこうしていると、アトラたちが頼んだものが出来上がったらしいので、カロンが取りに行った。
カロンが戻ると、その手には花の香りジュースと、バナナと穀物の焼き物が乗ったトレーを持っていた。
トレーを机に置いて、さっそく口をつける。
アトラは、癖で両手を合わせ「いただきます」と言って、口に含む。
「いい香り」
「おいしいです」
机の上はさながら南国の香り。ふたりはおいしそうに食べて飲んだ。
食事がアトラには大きいので、カロンにも食べてもらうよう頼んだが、「次の食事のためにとっておこう」と言われ食べ終わったら残しておくことにした。
ヒュトロダエウスとエメトセルクの注文したものも完成したようで、ふたりは席を立って取りに行く。
ヒュトロダエウスも花の香りのジュースを頼んだようで、席に戻ってくるとその手にあった。
エメトセルクはスイカのようなドラゴンフルーツのような、色の強い果物を盛った皿を持って席に着いた。
――意外と、強い色のものを召し上がるんですね。
おまたせ。
そう言って見た目は平凡ながら服の陰に見える冒険を思わせる傷や実用的な筋肉が見える人物が、ヒュトロダエウスたちの席に現れた。
それぞれが挨拶をして、アゼムもアトラたちのテーブルにも挨拶をする。
「アゼム様、次元の迷子の人に会ったことがありますか?」
カロンの質問に、アゼムは覚えにあることを話してくれた。
魔導機械と呼ばれる魔道具に乗っていた王子や、記憶喪失の魔法生物になれる人。
ボロボロの服で探偵業をやっている人などについて、実に奇妙でおもしろい話。
「ありえない。馬鹿げてる」
「でもいくつか君も見た話だよね?」
「信じていない」
話の間にエメトセルクのつっこみが入って、そこへさらにヒュトロダエウスのつっこみが入る。
帰る方法について聞くと、それぞれその人に合った方法で帰っていったとのこと。
「君はどうやってここに来たんだっけ」
「寝て目覚めたら、です」
カロンが改めて質問してみたが、アトラにも心当たりはなかった。手がかりが見つからず、カロンは首をかしげた。
「そしたら、また寝てみるしかないか」
「そうですね」
ヒュトロダエウスたち古代人なかよしトリオに別れを告げて、カロンとアトラは店を後にする。
夜も更けて、空は紺一色になっていた。
行きかう人たちは、静かに討論し、去っていく。
「アゼム様、またアニドラスに寄ってくれるといいな」
「面白い楽しい話ばかりの方でしたね」
「うん。あ、ごめんね。君は帰れなくて困っているのに」
「いえ、そんなことないです。帰る帰れないは、今は解決しなくていいかなって。こんなにも美しい世界だから、しばらくは楽しみたいなって」
「え、そう? さすが旅人」
「はい。おかげで、とっても楽しいです」
「よかった」
カロンの家について、アトラはお邪魔しますと言って入室する。
カロンは簡易的なベッドをアトラに作った。創造魔法の便利さを目の当たりにするアトラ。ヘルメスも用意してくれたっけ。あのときは気が付かなかったけれど、鳥の巣みたいな形状だった。
「よく旅に出ていて、アニドラスにも面白い話をしに来てくれるけど、前代アゼムであるヴェーネス様もおもしろい話をしてくれると言ったじゃない?」
アトラはうなずいて話の続きを期待する目を向ける。
「実は、ヴェーネス様が独自に星の未来のために活動しているっていう話を聞いたんだ。大きな衛星級の乗り物を創ったり、小さな生物を創るために、またあっちこっち飛び回っているんだとか。私も助力をしようかなと思っていてね。とはいえ、中枢のグループになるつもりはないんだ。私は運び人。自分の希望だけは、自分で持っておきたいから」
アトラは、自分がいる状況をうっすらと理解した。
ヘルメスは、おそらくもうファダニエルに就任していて、メーティオンは星の彼方へと飛んで行った後なのだと。
ヴェーネスが大きな衛星や小さな生物を創造するということは、月とレポリットを製作する段階になったのだろう。
アゼムは相変わらず、なににも属さないままヴェーネスに協力したりしなかったり、しているのかもしれない。
「運び人の誇りですね」
「立派なものかどうかはわからないけど、そう思える働きをしようと思っているよ」
「やあ」
「でたな、影身」
「フレイ君ではないよ」
夢の中。アトラは何度か味わったことがある感覚に慣れてきていた。
影の案内人はアトラに向かって両手を広げた。
「もうちょっとで君の力がうまく使えるようになりそうだよ」
「力って、夢見の力?」
「そう」
「いったいこれはなんなの?」
「さあね。パソコンの使い方は分かっても、パソコンがなぜ動くのかはわからない。みたいな話で、私にもよくわからない」
夢の中は、太陽が差さない暗さでありながら、なにもない真っ白な空間で、なにもかもがあいまいな感覚になる空間だった。
「でも知っておいてほしい。なにか困ったときは、でたらめに動くより、夢見の力を使ってみてよ。行きたいところに行けるんだから」
「それで解決するの? それが本当なら、なかなかのチートだと思うけど」
「その夢見から、あとはどうするのかを決めるのは絵理沙、あんただからね」
「え?」アトラが元の名前を呼ばれて驚き、影を追ったものの、その姿はすでになかった。
「あ、こんにちは」
エメトセルクはアトラに視線を合わせてそう言った。小柄で、まだ使用人服を着ているアトラ。
ヒュトロダエウスに確認してもらったように、混ざった魂の色。エメトセルクが違和感を感じて視てみれば、奇妙な生物に見えるに違いなかった。
アトラが挨拶をすると、エメトセルクは手をひらっと一度開き、それから腕を組んだ。
「ああ、次元の旅人なんだって。後でアゼムも来るだろうから、有力な情報がないか、聞いてみようか」
ヒュトロダエウスがエメトセルクに説明した。エメトセルクはさらに眉を歪めた。
「星に影響はないんだろうな」
「まさか。こんなにエーテルも薄いじゃないか。まったく真面目だねえ」
「おかげさまでな」
ヒュトロダエウスとエメトセルクは、カロンとアトラのすぐ近くの席についた。
そうこうしていると、アトラたちが頼んだものが出来上がったらしいので、カロンが取りに行った。
カロンが戻ると、その手には花の香りジュースと、バナナと穀物の焼き物が乗ったトレーを持っていた。
トレーを机に置いて、さっそく口をつける。
アトラは、癖で両手を合わせ「いただきます」と言って、口に含む。
「いい香り」
「おいしいです」
机の上はさながら南国の香り。ふたりはおいしそうに食べて飲んだ。
食事がアトラには大きいので、カロンにも食べてもらうよう頼んだが、「次の食事のためにとっておこう」と言われ食べ終わったら残しておくことにした。
ヒュトロダエウスとエメトセルクの注文したものも完成したようで、ふたりは席を立って取りに行く。
ヒュトロダエウスも花の香りのジュースを頼んだようで、席に戻ってくるとその手にあった。
エメトセルクはスイカのようなドラゴンフルーツのような、色の強い果物を盛った皿を持って席に着いた。
――意外と、強い色のものを召し上がるんですね。
おまたせ。
そう言って見た目は平凡ながら服の陰に見える冒険を思わせる傷や実用的な筋肉が見える人物が、ヒュトロダエウスたちの席に現れた。
それぞれが挨拶をして、アゼムもアトラたちのテーブルにも挨拶をする。
「アゼム様、次元の迷子の人に会ったことがありますか?」
カロンの質問に、アゼムは覚えにあることを話してくれた。
魔導機械と呼ばれる魔道具に乗っていた王子や、記憶喪失の魔法生物になれる人。
ボロボロの服で探偵業をやっている人などについて、実に奇妙でおもしろい話。
「ありえない。馬鹿げてる」
「でもいくつか君も見た話だよね?」
「信じていない」
話の間にエメトセルクのつっこみが入って、そこへさらにヒュトロダエウスのつっこみが入る。
帰る方法について聞くと、それぞれその人に合った方法で帰っていったとのこと。
「君はどうやってここに来たんだっけ」
「寝て目覚めたら、です」
カロンが改めて質問してみたが、アトラにも心当たりはなかった。手がかりが見つからず、カロンは首をかしげた。
「そしたら、また寝てみるしかないか」
「そうですね」
ヒュトロダエウスたち古代人なかよしトリオに別れを告げて、カロンとアトラは店を後にする。
夜も更けて、空は紺一色になっていた。
行きかう人たちは、静かに討論し、去っていく。
「アゼム様、またアニドラスに寄ってくれるといいな」
「面白い楽しい話ばかりの方でしたね」
「うん。あ、ごめんね。君は帰れなくて困っているのに」
「いえ、そんなことないです。帰る帰れないは、今は解決しなくていいかなって。こんなにも美しい世界だから、しばらくは楽しみたいなって」
「え、そう? さすが旅人」
「はい。おかげで、とっても楽しいです」
「よかった」
カロンの家について、アトラはお邪魔しますと言って入室する。
カロンは簡易的なベッドをアトラに作った。創造魔法の便利さを目の当たりにするアトラ。ヘルメスも用意してくれたっけ。あのときは気が付かなかったけれど、鳥の巣みたいな形状だった。
「よく旅に出ていて、アニドラスにも面白い話をしに来てくれるけど、前代アゼムであるヴェーネス様もおもしろい話をしてくれると言ったじゃない?」
アトラはうなずいて話の続きを期待する目を向ける。
「実は、ヴェーネス様が独自に星の未来のために活動しているっていう話を聞いたんだ。大きな衛星級の乗り物を創ったり、小さな生物を創るために、またあっちこっち飛び回っているんだとか。私も助力をしようかなと思っていてね。とはいえ、中枢のグループになるつもりはないんだ。私は運び人。自分の希望だけは、自分で持っておきたいから」
アトラは、自分がいる状況をうっすらと理解した。
ヘルメスは、おそらくもうファダニエルに就任していて、メーティオンは星の彼方へと飛んで行った後なのだと。
ヴェーネスが大きな衛星や小さな生物を創造するということは、月とレポリットを製作する段階になったのだろう。
アゼムは相変わらず、なににも属さないままヴェーネスに協力したりしなかったり、しているのかもしれない。
「運び人の誇りですね」
「立派なものかどうかはわからないけど、そう思える働きをしようと思っているよ」
「やあ」
「でたな、影身」
「フレイ君ではないよ」
夢の中。アトラは何度か味わったことがある感覚に慣れてきていた。
影の案内人はアトラに向かって両手を広げた。
「もうちょっとで君の力がうまく使えるようになりそうだよ」
「力って、夢見の力?」
「そう」
「いったいこれはなんなの?」
「さあね。パソコンの使い方は分かっても、パソコンがなぜ動くのかはわからない。みたいな話で、私にもよくわからない」
夢の中は、太陽が差さない暗さでありながら、なにもない真っ白な空間で、なにもかもがあいまいな感覚になる空間だった。
「でも知っておいてほしい。なにか困ったときは、でたらめに動くより、夢見の力を使ってみてよ。行きたいところに行けるんだから」
「それで解決するの? それが本当なら、なかなかのチートだと思うけど」
「その夢見から、あとはどうするのかを決めるのは絵理沙、あんただからね」
「え?」アトラが元の名前を呼ばれて驚き、影を追ったものの、その姿はすでになかった。