【FF14】メイドさんの夢旅行
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「この奇妙な生物は、なんだ?」
「あ、こんにちは」
赤い仮面のエメトセルクが、視線を合わせてアトラを見下ろした。小柄で、まだ使用人服姿のままのアトラ。
ヒュトロダエウスが確認したように、混ざり合った魂の色は一目でわかる。エメトセルクが覗き込めば、奇妙な存在に見えるのも無理はない。
アトラが挨拶すると、エメトセルクは手をひらりと開き、すぐに腕を組んだ。
「ああ、次元の旅人なんだって。後でアゼムも来るだろうし、有力な情報がないか聞いてみようか」
ヒュトロダエウスが横から説明する。エメトセルクはさらに眉をひそめた。
「星に影響はないんだろうな」
「まさか。これだけエーテルが薄いじゃないか。まったく、真面目だねえ」
「おかげさまでな」
ふたりは軽口を交わしながら、カロンとアトラのすぐ近くの席に腰を下ろした。
ちょうどその時、注文した料理が出来上がったらしく、カロンが取りに向かう。
戻ってきた彼の手には、花の香りのジュースと、バナナと穀物を焼き上げた一皿が乗ったトレー。
トレーを机に置き、さっそく口をつける。
アトラは癖で両手を合わせ、「いただきます」と声に出してから口に含んだ。
「おいしいです」
「それに、いい香りだね」
机の上は、さながら南国の香りで満ちていた。カロンとアトラは並んで、ゆったりと食事を楽しむ。
アトラには一皿が大きかったので、カロンにも分けようとしたが、
「次の食事のためにとっておこう」
と言われ、食べ終わった分だけ残しておくことにした。
やがて、ヒュトロダエウスとエメトセルクの注文した料理もできあがったらしい。ふたりは席を立ち、それぞれの皿を受け取って戻ってくる。
ヒュトロダエウスも花の香りのジュースを手にしていた。
エメトセルクは、スイカやドラゴンフルーツを思わせる強い色合いの果物が盛られた皿を持っている。
(意外と、鮮やかなものを召し上がるんですね……)
そこへ、
「おまたせ」
と声をかけながら、見た目は平凡だが服の陰から冒険を思わせる傷や実用的な筋肉が覗く人物が、ヒュトロダエウスたちの席に加わった。
それぞれが挨拶を交わす。
「やあ。やっと来たね。――今回の旅の話の前に、ちょっと聞いておきたいことがある」
ヒュトロダエウスが、到着したばかりの人物に声をかけた。
「聞いておきたいこと?」
「はい。アゼム様にぜひとも」
「カロン?」
アゼムと呼ばれた人物の視線が、カロンたちのテーブルに向けられる。
「アゼム様、次元の迷子に会ったことがありますか?」
カロンがそう切り出し、アトラが別世界から来たらしいことを説明する。
アゼムは少し考えるような仕草を見せてから、にやりと笑った。
「いるよ。いろんなのにね」
彼は、記憶にある“次元の迷子”たちについて語り出した。
魔導機械と呼ばれる魔道具に乗っていた王子。
記憶喪失で、魔法生物の姿になれる青年。
それから、ボロボロの服を着て探偵業をしていた人物――。
どれも奇妙で、どれもおもしろい話だった。
「ありえない。馬鹿げてる」
「でも、いくつかは君も見た話だろう?」
「信じていない」
エメトセルクが話に割って入り、そこへさらにヒュトロダエウスが軽く突っ込む。
帰還方法について尋ねると、それぞれ“その人に合ったやり方”で元の世界へ戻っていったらしい。
「君は、どうやってここに来たんだっけ?」
「……寝て、目覚めたら、です」
カロンが改めて確認するが、アトラにはやはり心当たりがない。
手がかりが見つからず、カロンは首をかしげた。
「そしたら――また寝てみるしかないか」
「そうですね」
やり取りを終えて、ヒュトロダエウスたち“古代人の仲良しトリオ”に別れを告げる。
店を出ると、夜空はもう深い紺一色に染まっていた。
行き交う人々は静かに討論しながら、それぞれの道へ消えていく。
「アゼム様、またアニドラスに寄ってくれるといいな」
「面白くて楽しい方でしたね」
「うん。――あ、ごめん。君は帰れなくて困っているのに」
「いえ、そんなことないです。いろんな話を聞かせてもらえて、むしろありがたいくらいです。
帰るか帰れないかは……今すぐ解決しなくてもいいかなって。こんなに美しい世界ですし、しばらくは楽しみたいなって」
「え、そう? さすが旅人だね」
「旅人……でしょうか。自覚はないですけど……はい。おかげで、とても楽しいです」
「よかった」
カロンの家に着き、アトラは「お邪魔します」と言って中に入る。
カロンは手際よく簡易ベッドを創り出した。創造魔法の便利さに、アトラは改めて感嘆する。
――そういえば、ヘルメスも用意してくれたな。あのときは気付かなかったけれど、あれも鳥の巣みたいな形だった。
「よく旅に出ていて、アニドラスにも面白い話をしに来てくれるけど、前代アゼム――ヴェーネス様もおもしろい話をしてくれるって言ったじゃない?」
アトラはうなずき、続きを待つように視線を向けた。
「実はね、ヴェーネス様が独自に星の未来のために動いているって話を聞いたんだ。
大きな衛星級の乗り物を創ったり、小さな生物を創るために、あちこち飛び回っているらしい。
私も助力しようかなとは思っているけど……中枢のグループに入るつもりはないんだ。
私はあくまで運び人。自分の希望だけは、自分の手で持っておきたいからね」
アトラは、自分がいる時代の状況をようやくつかみかけていた。
――ヘルメスは、もうファダニエルに就任していて、メーティオンは星の彼方へ飛び立った後。
ヴェーネスが衛星や小さな生物を創っているということは、月とレポリットを製作する段階なのだろう。
アゼムは相変わらず何者にも属さず、気まぐれにヴェーネスを助けたりしなかったりしているのかもしれない。
「運び人の誇りですね」
「立派なものかどうかはわからないけど――そう思える働きはしたいね」
アトラは眠りにつき、白い靄の中に足を踏み入れた。
「やあ」
「出たな、影身」
「フレイ君ではないよ」
夢の中――もう何度か経験したせいか、アトラはこの奇妙な感覚に少し慣れてきていた。
影の案内人は、いつものように両手を広げて迎える。
「もう少しで、君の力がうまく使えるようになりそうだ」
「力って……夢見の力のこと?」
「そう」
「いったいこれは何なの?」
「さあね。パソコンの使い方は分かっても、どうして動くのかは説明できない――そんな感じさ。私にも仕組みはわからない」
靄に包まれた空間は、太陽の光もなく、境界線のない暗さに満ちていた。何もないのに、何かがあるような、輪郭がぼやける世界。
「でも、ひとつ覚えておいてほしい。困ったときは、でたらめに動くよりも、夢見の力を使ってごらん。君は“行きたい場所”に行けるんだから」
「それで解決するの? ……本当なら、かなりのチートだけど」
「その夢見から――どう動くか決めるのは、絵理沙、あんただよ」
「え?」
不意に元の名前を呼ばれ、アトラの胸が跳ねた。目で影を追ったが、その姿はすでに霧に溶け、跡形もなかった。
「あ、こんにちは」
赤い仮面のエメトセルクが、視線を合わせてアトラを見下ろした。小柄で、まだ使用人服姿のままのアトラ。
ヒュトロダエウスが確認したように、混ざり合った魂の色は一目でわかる。エメトセルクが覗き込めば、奇妙な存在に見えるのも無理はない。
アトラが挨拶すると、エメトセルクは手をひらりと開き、すぐに腕を組んだ。
「ああ、次元の旅人なんだって。後でアゼムも来るだろうし、有力な情報がないか聞いてみようか」
ヒュトロダエウスが横から説明する。エメトセルクはさらに眉をひそめた。
「星に影響はないんだろうな」
「まさか。これだけエーテルが薄いじゃないか。まったく、真面目だねえ」
「おかげさまでな」
ふたりは軽口を交わしながら、カロンとアトラのすぐ近くの席に腰を下ろした。
ちょうどその時、注文した料理が出来上がったらしく、カロンが取りに向かう。
戻ってきた彼の手には、花の香りのジュースと、バナナと穀物を焼き上げた一皿が乗ったトレー。
トレーを机に置き、さっそく口をつける。
アトラは癖で両手を合わせ、「いただきます」と声に出してから口に含んだ。
「おいしいです」
「それに、いい香りだね」
机の上は、さながら南国の香りで満ちていた。カロンとアトラは並んで、ゆったりと食事を楽しむ。
アトラには一皿が大きかったので、カロンにも分けようとしたが、
「次の食事のためにとっておこう」
と言われ、食べ終わった分だけ残しておくことにした。
やがて、ヒュトロダエウスとエメトセルクの注文した料理もできあがったらしい。ふたりは席を立ち、それぞれの皿を受け取って戻ってくる。
ヒュトロダエウスも花の香りのジュースを手にしていた。
エメトセルクは、スイカやドラゴンフルーツを思わせる強い色合いの果物が盛られた皿を持っている。
(意外と、鮮やかなものを召し上がるんですね……)
そこへ、
「おまたせ」
と声をかけながら、見た目は平凡だが服の陰から冒険を思わせる傷や実用的な筋肉が覗く人物が、ヒュトロダエウスたちの席に加わった。
それぞれが挨拶を交わす。
「やあ。やっと来たね。――今回の旅の話の前に、ちょっと聞いておきたいことがある」
ヒュトロダエウスが、到着したばかりの人物に声をかけた。
「聞いておきたいこと?」
「はい。アゼム様にぜひとも」
「カロン?」
アゼムと呼ばれた人物の視線が、カロンたちのテーブルに向けられる。
「アゼム様、次元の迷子に会ったことがありますか?」
カロンがそう切り出し、アトラが別世界から来たらしいことを説明する。
アゼムは少し考えるような仕草を見せてから、にやりと笑った。
「いるよ。いろんなのにね」
彼は、記憶にある“次元の迷子”たちについて語り出した。
魔導機械と呼ばれる魔道具に乗っていた王子。
記憶喪失で、魔法生物の姿になれる青年。
それから、ボロボロの服を着て探偵業をしていた人物――。
どれも奇妙で、どれもおもしろい話だった。
「ありえない。馬鹿げてる」
「でも、いくつかは君も見た話だろう?」
「信じていない」
エメトセルクが話に割って入り、そこへさらにヒュトロダエウスが軽く突っ込む。
帰還方法について尋ねると、それぞれ“その人に合ったやり方”で元の世界へ戻っていったらしい。
「君は、どうやってここに来たんだっけ?」
「……寝て、目覚めたら、です」
カロンが改めて確認するが、アトラにはやはり心当たりがない。
手がかりが見つからず、カロンは首をかしげた。
「そしたら――また寝てみるしかないか」
「そうですね」
やり取りを終えて、ヒュトロダエウスたち“古代人の仲良しトリオ”に別れを告げる。
店を出ると、夜空はもう深い紺一色に染まっていた。
行き交う人々は静かに討論しながら、それぞれの道へ消えていく。
「アゼム様、またアニドラスに寄ってくれるといいな」
「面白くて楽しい方でしたね」
「うん。――あ、ごめん。君は帰れなくて困っているのに」
「いえ、そんなことないです。いろんな話を聞かせてもらえて、むしろありがたいくらいです。
帰るか帰れないかは……今すぐ解決しなくてもいいかなって。こんなに美しい世界ですし、しばらくは楽しみたいなって」
「え、そう? さすが旅人だね」
「旅人……でしょうか。自覚はないですけど……はい。おかげで、とても楽しいです」
「よかった」
カロンの家に着き、アトラは「お邪魔します」と言って中に入る。
カロンは手際よく簡易ベッドを創り出した。創造魔法の便利さに、アトラは改めて感嘆する。
――そういえば、ヘルメスも用意してくれたな。あのときは気付かなかったけれど、あれも鳥の巣みたいな形だった。
「よく旅に出ていて、アニドラスにも面白い話をしに来てくれるけど、前代アゼム――ヴェーネス様もおもしろい話をしてくれるって言ったじゃない?」
アトラはうなずき、続きを待つように視線を向けた。
「実はね、ヴェーネス様が独自に星の未来のために動いているって話を聞いたんだ。
大きな衛星級の乗り物を創ったり、小さな生物を創るために、あちこち飛び回っているらしい。
私も助力しようかなとは思っているけど……中枢のグループに入るつもりはないんだ。
私はあくまで運び人。自分の希望だけは、自分の手で持っておきたいからね」
アトラは、自分がいる時代の状況をようやくつかみかけていた。
――ヘルメスは、もうファダニエルに就任していて、メーティオンは星の彼方へ飛び立った後。
ヴェーネスが衛星や小さな生物を創っているということは、月とレポリットを製作する段階なのだろう。
アゼムは相変わらず何者にも属さず、気まぐれにヴェーネスを助けたりしなかったりしているのかもしれない。
「運び人の誇りですね」
「立派なものかどうかはわからないけど――そう思える働きはしたいね」
アトラは眠りにつき、白い靄の中に足を踏み入れた。
「やあ」
「出たな、影身」
「フレイ君ではないよ」
夢の中――もう何度か経験したせいか、アトラはこの奇妙な感覚に少し慣れてきていた。
影の案内人は、いつものように両手を広げて迎える。
「もう少しで、君の力がうまく使えるようになりそうだ」
「力って……夢見の力のこと?」
「そう」
「いったいこれは何なの?」
「さあね。パソコンの使い方は分かっても、どうして動くのかは説明できない――そんな感じさ。私にも仕組みはわからない」
靄に包まれた空間は、太陽の光もなく、境界線のない暗さに満ちていた。何もないのに、何かがあるような、輪郭がぼやける世界。
「でも、ひとつ覚えておいてほしい。困ったときは、でたらめに動くよりも、夢見の力を使ってごらん。君は“行きたい場所”に行けるんだから」
「それで解決するの? ……本当なら、かなりのチートだけど」
「その夢見から――どう動くか決めるのは、絵理沙、あんただよ」
「え?」
不意に元の名前を呼ばれ、アトラの胸が跳ねた。目で影を追ったが、その姿はすでに霧に溶け、跡形もなかった。