【FF14】メイドさんの夢旅行
名前変換はこちら。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おや?」
アトラは体をびくりと跳ねさせた。声のした方向に目を向けると、仮面とフードを身に着けた人物がこちらをじっと見つめている。ゆっくりと、確かめるように、距離を詰めてくる。
「なにかのイデアが発現しちゃったのかなあ……ん。んん?」
声や体のシルエットから、近づいてきたのが女性であることがわかった。足元は一段低く、しかし体格はヘルメスのように大きく、この世界の古代人らしい迫力があった。どうやら、ここは古代の世界で間違いないらしい。
アトラはふと足元を確認する。床ではなく、机の上に立っていたのだ。今も机の上にいることに気づく。
それでも、古代人の身長には届かない。
その瞬間、絵理沙としての記憶がかすめる――この整然と並ぶクリスタル群は、女性が言った「イデア」なのだろうと。
「もしかして、魂持ちかな? よっぽどじゃないと、偶然で創れるとは思えないけど……」
女性はアトラをじっと観察し、机のそばの椅子に腰を下ろした。
アトラはその動きを追うように向き直る。
「こんにちは。私はカロン。よろしく」
「こ、こんにちは……あっ、アトラ・アティウスといいます」
カロンは軽く手を挙げて挨拶した。アトラは咄嗟にお辞儀を返す。
「名前もあるのか。挨拶もなしにごめんね。
てっきり創造生物が偶然出現したのかと思って観察しちゃったけど……これだけはっきり目が合うなら、魂持ちの子かな。それに、イデアじゃないみたいだね」
「魂は、あると思います」
「ふんふん……一度、例の局長さんに確認してもらおうかな」
カロンは周囲に並ぶイデアを収納したクリスタルを眺める。どうやら、イデアを点検して問題がないか確認しているらしい。
アトラはハッとして、カロンに声をかけた。
「あ、あの!」
「うん?」
アトラは、ヘルメスのときのように手間をかけさせないよう、自分から事情を話すことにした。
アトラは、元いた世界があること、寝て起きたら見知らぬ場所にいたこと――アトラを取り巻く現実も、すべて話した。
「そんなわけで、帰る方法もわからなくて困ってるんです」
夢見の力……夢の中に出てきた影が発動させた力。
ガレマールに帰るのかと思いきや、ここも過去である古代。
アトラはどうすればいいのか、起きてることが想定外すぎて困っていた。
話を聞いて一拍、カロンはこぶしを手のひらで打った。
「よし。とりあえずおもしろそうだし、ウチで預かろうかな!」
落ち着いているのに、意外ととんでもないことを言い出す人だ。
アトラは、カロンに両手で抱えられ、あれよあれよという間に連れ去られた。
「わっ、わっ! こ、これから私が危険な生物か調べるんですか?」
アトラがそう言うと、カロンは豪快に笑った。
「あっはっは! 危険なもんですか! あっはっは! あ。でもちゃんと確認はします」
意味はよくわからないが、「冗談よせやい」とでも言うような、馬鹿にされたような雰囲気の笑いだった。アトラは押し黙ったが、確認してくれるとのことなので、とりあえず安心した。
向こうから来る人物が、カロンを呼び止める。
「あれ、カロン。もう帰るのかい。仕事は始まったばかりだよ」
「緊急事態だよ。次元の旅人を拾っちゃった。よくわかんないから、専門家に見てもらわなくちゃ」
「じゃあ預けたら仕事に戻ってくるのかい?」
「もしかしたら休むかも! いってきまーす」
そう告げて、カロンはさわやかにその場を後にする。
「それでもアニドラスの職員か!?」
その人物によって、アトラは自分の目覚めた場所が、絵理沙のときに見た「アニドラス・アナムネーシス」であることを知った。
カロンは移動を続けて、街に出た。
「ようこそ。ここは私たちの輝ける主要都市、アーモロートさ」
カロンの両腕に抱えられたアトラは、街の景色に目を奪われた。
燦々と降り注ぐ太陽の光。さわやかに吹き抜ける風。それらが活かされるように計算されて作られた、繁栄した街の立派な建造物たち。
人々はフードとローブ、仮面を一様に身に着け、言葉を交わしながら行き交っている。
「すごいですね……」
本物のアーモロートを目にして、アトラは思わず言葉を失った。その様子に、カロンは満足そうに微笑む。
「このまま創造物管理局へ行こう。運が良ければ会えるかも」
ほどなく、カロンの足は創造物管理局にたどり着いた。創造物を抱える者や、登録に訪れた者たちで、建物の中は人であふれかえっている。
カロンは迷わず受付まで歩き、要望を伝えた。
「局長はいらっしゃいますか?」
「局長ですか? 今は出ていたと思いますが……」
受付の人は、そろそろ帰ってくるとでも言いたげに言葉を切った。その視線の先に、噂の人物がいた。
「おや。イデアからイデアへ飛んで運んでの君が、イデアではなくワタシ用があるなんて、めずらしいね」
カロンが振り向くと、フードの隙間からさらりと紫色の髪をのぞかせた人物が立っていた。
鋭い瞳でアトラをじっと見つめる。
慈愛の温かさはなく、ただ面白がっている。
けれど、その奥には少しだけ影のあるような気配も漂っていた。
アトラは思わず背筋を伸ばす。
「ヒュトロダエウス局長、ひとつ頼みたいことがあります」
カロンは一呼吸置き、局長ことヒュトロダエウスの目の前にアトラを差し出した。
「この子、どうやら次元の迷子らしくて。なにか視えるものがないかと思ってね」
「やれやれ……仕事とは関係なさそうだが、キミ同様おもしろそうだ。視てみようか」
ヒュトロダエウスはそう言うと、意識をアトラに集中させた。
少し間を置いた後、彼はカロンに向かって口を開いた。
「なんだか、知っているような色もあるけど、知らない色も混ざっているね」
「混ざっている?」
「うん。ひょっとすると、アーテリスのものではないものも混ざっているかもしれない。次元を彷徨っているのは、そういう特性も関係しているのかもね」
「なるほど」
その間、アトラは物言わぬ人形のようにしていたが、話はもちろん耳に入っていた。傍観者に徹する。
ヒュトロダエウスの話は興味深かった。そして、心当たりもあった。
つまり、アトラは地球からの転生者であり、絵理沙としての魂と、アトラ自身の魂が混ざっている状態にある――アトラ自身も、この事実を初めて知った。
「ありがとう、ヒュトロダエウス局長。このお礼は、またいずれ」
カロンは礼を尽くして膝を折る。
ヒュトロダエウスは何でもないようにほほえみ、返事をした。
「いえいえ。いつも君の仕事の速さには助かっているし、おもしろいことも多くて、楽しませてもらっているから、例には及ばないよ」
満足そうに、カロンは息を吐いた。
アトラは、ひと段落ついた様子に安心して気を抜いていたところだった。
「それで、君はどんなところから来たんだい?」
今度はヒュトロダエウスに、自分のいた世界の話をすることとなったアトラであった。
アトラは体をびくりと跳ねさせた。声のした方向に目を向けると、仮面とフードを身に着けた人物がこちらをじっと見つめている。ゆっくりと、確かめるように、距離を詰めてくる。
「なにかのイデアが発現しちゃったのかなあ……ん。んん?」
声や体のシルエットから、近づいてきたのが女性であることがわかった。足元は一段低く、しかし体格はヘルメスのように大きく、この世界の古代人らしい迫力があった。どうやら、ここは古代の世界で間違いないらしい。
アトラはふと足元を確認する。床ではなく、机の上に立っていたのだ。今も机の上にいることに気づく。
それでも、古代人の身長には届かない。
その瞬間、絵理沙としての記憶がかすめる――この整然と並ぶクリスタル群は、女性が言った「イデア」なのだろうと。
「もしかして、魂持ちかな? よっぽどじゃないと、偶然で創れるとは思えないけど……」
女性はアトラをじっと観察し、机のそばの椅子に腰を下ろした。
アトラはその動きを追うように向き直る。
「こんにちは。私はカロン。よろしく」
「こ、こんにちは……あっ、アトラ・アティウスといいます」
カロンは軽く手を挙げて挨拶した。アトラは咄嗟にお辞儀を返す。
「名前もあるのか。挨拶もなしにごめんね。
てっきり創造生物が偶然出現したのかと思って観察しちゃったけど……これだけはっきり目が合うなら、魂持ちの子かな。それに、イデアじゃないみたいだね」
「魂は、あると思います」
「ふんふん……一度、例の局長さんに確認してもらおうかな」
カロンは周囲に並ぶイデアを収納したクリスタルを眺める。どうやら、イデアを点検して問題がないか確認しているらしい。
アトラはハッとして、カロンに声をかけた。
「あ、あの!」
「うん?」
アトラは、ヘルメスのときのように手間をかけさせないよう、自分から事情を話すことにした。
アトラは、元いた世界があること、寝て起きたら見知らぬ場所にいたこと――アトラを取り巻く現実も、すべて話した。
「そんなわけで、帰る方法もわからなくて困ってるんです」
夢見の力……夢の中に出てきた影が発動させた力。
ガレマールに帰るのかと思いきや、ここも過去である古代。
アトラはどうすればいいのか、起きてることが想定外すぎて困っていた。
話を聞いて一拍、カロンはこぶしを手のひらで打った。
「よし。とりあえずおもしろそうだし、ウチで預かろうかな!」
落ち着いているのに、意外ととんでもないことを言い出す人だ。
アトラは、カロンに両手で抱えられ、あれよあれよという間に連れ去られた。
「わっ、わっ! こ、これから私が危険な生物か調べるんですか?」
アトラがそう言うと、カロンは豪快に笑った。
「あっはっは! 危険なもんですか! あっはっは! あ。でもちゃんと確認はします」
意味はよくわからないが、「冗談よせやい」とでも言うような、馬鹿にされたような雰囲気の笑いだった。アトラは押し黙ったが、確認してくれるとのことなので、とりあえず安心した。
向こうから来る人物が、カロンを呼び止める。
「あれ、カロン。もう帰るのかい。仕事は始まったばかりだよ」
「緊急事態だよ。次元の旅人を拾っちゃった。よくわかんないから、専門家に見てもらわなくちゃ」
「じゃあ預けたら仕事に戻ってくるのかい?」
「もしかしたら休むかも! いってきまーす」
そう告げて、カロンはさわやかにその場を後にする。
「それでもアニドラスの職員か!?」
その人物によって、アトラは自分の目覚めた場所が、絵理沙のときに見た「アニドラス・アナムネーシス」であることを知った。
カロンは移動を続けて、街に出た。
「ようこそ。ここは私たちの輝ける主要都市、アーモロートさ」
カロンの両腕に抱えられたアトラは、街の景色に目を奪われた。
燦々と降り注ぐ太陽の光。さわやかに吹き抜ける風。それらが活かされるように計算されて作られた、繁栄した街の立派な建造物たち。
人々はフードとローブ、仮面を一様に身に着け、言葉を交わしながら行き交っている。
「すごいですね……」
本物のアーモロートを目にして、アトラは思わず言葉を失った。その様子に、カロンは満足そうに微笑む。
「このまま創造物管理局へ行こう。運が良ければ会えるかも」
ほどなく、カロンの足は創造物管理局にたどり着いた。創造物を抱える者や、登録に訪れた者たちで、建物の中は人であふれかえっている。
カロンは迷わず受付まで歩き、要望を伝えた。
「局長はいらっしゃいますか?」
「局長ですか? 今は出ていたと思いますが……」
受付の人は、そろそろ帰ってくるとでも言いたげに言葉を切った。その視線の先に、噂の人物がいた。
「おや。イデアからイデアへ飛んで運んでの君が、イデアではなくワタシ用があるなんて、めずらしいね」
カロンが振り向くと、フードの隙間からさらりと紫色の髪をのぞかせた人物が立っていた。
鋭い瞳でアトラをじっと見つめる。
慈愛の温かさはなく、ただ面白がっている。
けれど、その奥には少しだけ影のあるような気配も漂っていた。
アトラは思わず背筋を伸ばす。
「ヒュトロダエウス局長、ひとつ頼みたいことがあります」
カロンは一呼吸置き、局長ことヒュトロダエウスの目の前にアトラを差し出した。
「この子、どうやら次元の迷子らしくて。なにか視えるものがないかと思ってね」
「やれやれ……仕事とは関係なさそうだが、キミ同様おもしろそうだ。視てみようか」
ヒュトロダエウスはそう言うと、意識をアトラに集中させた。
少し間を置いた後、彼はカロンに向かって口を開いた。
「なんだか、知っているような色もあるけど、知らない色も混ざっているね」
「混ざっている?」
「うん。ひょっとすると、アーテリスのものではないものも混ざっているかもしれない。次元を彷徨っているのは、そういう特性も関係しているのかもね」
「なるほど」
その間、アトラは物言わぬ人形のようにしていたが、話はもちろん耳に入っていた。傍観者に徹する。
ヒュトロダエウスの話は興味深かった。そして、心当たりもあった。
つまり、アトラは地球からの転生者であり、絵理沙としての魂と、アトラ自身の魂が混ざっている状態にある――アトラ自身も、この事実を初めて知った。
「ありがとう、ヒュトロダエウス局長。このお礼は、またいずれ」
カロンは礼を尽くして膝を折る。
ヒュトロダエウスは何でもないようにほほえみ、返事をした。
「いえいえ。いつも君の仕事の速さには助かっているし、おもしろいことも多くて、楽しませてもらっているから、例には及ばないよ」
満足そうに、カロンは息を吐いた。
アトラは、ひと段落ついた様子に安心して気を抜いていたところだった。
「それで、君はどんなところから来たんだい?」
今度はヒュトロダエウスに、自分のいた世界の話をすることとなったアトラであった。