エスプレッソ・クレイジーフォーク
「はぁー推しを幸せにしたい!」
あるところに普通よりちょっと強火のオタク人間がいました。強火オタクは今日もアイドルのライブを全身で味わい大騒ぎ。ちょうど、そのライブが終わって家に帰ったところでした。強火オタクはベッドに寝転がり、スマホをタップします。
「尊み深し……次のライブも楽しみだな♪」
推しの次に大好きなスマホをタップしていると、強火オタクがびっくりするような記事がその目に飛び込んできました。
内容は、強火オタクが推しているアイドルが公共の場で自殺しようとしていた記事でした。それもトラックの前に飛び出し、民衆への迷惑行為だということもあってSNSも炎上していました。
「は? じ、自殺……? うそ。うそうそうそ。そんな、そんな……。なんで!? どうして……。」
強火オタクは押し寄せる感情の大きな波に心をさらわれて、まともに話せなくなってしまいました。
月に影が映り、その影がだんだんと強火オタクの部屋へと飛んできました。
「こんばんは。救いが欲しい人間さん。」
強火オタクのもとへ悪魔がやってきました。窓は勝手にカラリと開きます。
「私の力で誰でも幸せにできるよ。」
強火オタクはいきなりの来客に混乱してしまいます。でもそれどころでもないのです。推しが入院してて、目の前には不審人物。
「あんた誰よ!」
「いいのかい? 推しが不幸なままで。」
「は? なんで、そんなこと知って……ってそうじゃない! それを聞いてどうしようってのよ!」
「悪魔だからさ。悪魔だから、君の願いを叶えられる。絶望にいる人に手を貸す。君の魂さえもらえたらね?」
悪魔はコウモリみたいな羽を背中で広げて見せました。きっちりと営業用のスーツを着て、髪もオールバックにびっちりと固めています。さらには真っ赤な角としっぽがはえています。悪魔は怪しく笑って強火オタクを見ました。
「契約をしよう。推しを失いたくはないだろう?」
強火オタクと悪魔の目がぱちりと合って、静かになりました。強火オタクは半歩悪魔に近づきます。だけれど、推しアイドルの顔が頭に浮かびました。ほかのメンバーに対してヤンデレで、普段は不愛想だけど笑うと無邪気でとびきり可愛くて、「みんなのためにも自分のためにもがんばりたい」と言っていた推しのことを。
「無理やり幸福になっても、笑顔になっても、虚しいだけだよ。」
強火オタクは拳を壁に叩きつけて言いました。
「こっちはねえ!」
悪魔は契約成立するのかとワクワクして待っていると、その雲行きは怪しくなりました。
「落ち込んで不幸になっても、そんな自分に打ち勝って立ち上がっておのれの力で幸福を知って、心から勝ち誇った気持ちで笑顔になる推しが見たいんだよ! 無理やりに幸せになった推しは見たくないんだよ! というか、不甲斐ない。自分が推しを支えられなかった自分の頼りなさに心底がっかりしてる。変わらなきゃ。推しを支えられるファンに、オタクに!! 遠征も増やして、アンチ対策して、ガチャ回してSNSで活動報告を工夫してやる。やってみせる!!」
悪魔はポカーンと口を開けてしまいます。思っていたより、主張の強い人間に圧倒されてしまいました。
「うんうん。だったら、推しを支えられる自分に変わる契約にしようじゃないか。」
「お前の人間の推し方が私にとって解釈違いなんだってずっと言ってんだろが! てめえの本拠地に帰んな!」
解釈違いの話を、悪魔は今初めて聞きましたが、深追いはしないことにしました。むしろ「ほう、そういう考えもあるのか」と解釈を改めて、強火オタクよりも柔軟に人間搾取活動「人活」を始めることにしました。
まず悪魔は効果的だと感じた「ガチャ」の精度をあげることにしました。悪魔はホビー会社を設立。運営も順調に進み、売り上げも魂回収もうまく行きました。
むしろ人間が自ら魂を捧げに来る様子にビビり、拍子抜けしました。ガチャをエサに契約でいただいた魂はホビー会社の社員にして働かせました。
悪魔は強火オタクの元へもう一度訪問しました。ビジネスアイデアをくれたお礼のご挨拶です。
「あなたのおかげで大成功しました。お礼にどうぞ」
菓子折りと、強火オタクの推しグループとコラボした新作の箱ガチャをボックスで渡すと、強火オタクは菓子折りだけもらってボックスを悪魔に返します。
「タダで受け取れません。グッズのお金は出させてください。」
悪魔は、やっぱり人間がわからないのでした。
あるところに普通よりちょっと強火のオタク人間がいました。強火オタクは今日もアイドルのライブを全身で味わい大騒ぎ。ちょうど、そのライブが終わって家に帰ったところでした。強火オタクはベッドに寝転がり、スマホをタップします。
「尊み深し……次のライブも楽しみだな♪」
推しの次に大好きなスマホをタップしていると、強火オタクがびっくりするような記事がその目に飛び込んできました。
内容は、強火オタクが推しているアイドルが公共の場で自殺しようとしていた記事でした。それもトラックの前に飛び出し、民衆への迷惑行為だということもあってSNSも炎上していました。
「は? じ、自殺……? うそ。うそうそうそ。そんな、そんな……。なんで!? どうして……。」
強火オタクは押し寄せる感情の大きな波に心をさらわれて、まともに話せなくなってしまいました。
月に影が映り、その影がだんだんと強火オタクの部屋へと飛んできました。
「こんばんは。救いが欲しい人間さん。」
強火オタクのもとへ悪魔がやってきました。窓は勝手にカラリと開きます。
「私の力で誰でも幸せにできるよ。」
強火オタクはいきなりの来客に混乱してしまいます。でもそれどころでもないのです。推しが入院してて、目の前には不審人物。
「あんた誰よ!」
「いいのかい? 推しが不幸なままで。」
「は? なんで、そんなこと知って……ってそうじゃない! それを聞いてどうしようってのよ!」
「悪魔だからさ。悪魔だから、君の願いを叶えられる。絶望にいる人に手を貸す。君の魂さえもらえたらね?」
悪魔はコウモリみたいな羽を背中で広げて見せました。きっちりと営業用のスーツを着て、髪もオールバックにびっちりと固めています。さらには真っ赤な角としっぽがはえています。悪魔は怪しく笑って強火オタクを見ました。
「契約をしよう。推しを失いたくはないだろう?」
強火オタクと悪魔の目がぱちりと合って、静かになりました。強火オタクは半歩悪魔に近づきます。だけれど、推しアイドルの顔が頭に浮かびました。ほかのメンバーに対してヤンデレで、普段は不愛想だけど笑うと無邪気でとびきり可愛くて、「みんなのためにも自分のためにもがんばりたい」と言っていた推しのことを。
「無理やり幸福になっても、笑顔になっても、虚しいだけだよ。」
強火オタクは拳を壁に叩きつけて言いました。
「こっちはねえ!」
悪魔は契約成立するのかとワクワクして待っていると、その雲行きは怪しくなりました。
「落ち込んで不幸になっても、そんな自分に打ち勝って立ち上がっておのれの力で幸福を知って、心から勝ち誇った気持ちで笑顔になる推しが見たいんだよ! 無理やりに幸せになった推しは見たくないんだよ! というか、不甲斐ない。自分が推しを支えられなかった自分の頼りなさに心底がっかりしてる。変わらなきゃ。推しを支えられるファンに、オタクに!! 遠征も増やして、アンチ対策して、ガチャ回してSNSで活動報告を工夫してやる。やってみせる!!」
悪魔はポカーンと口を開けてしまいます。思っていたより、主張の強い人間に圧倒されてしまいました。
「うんうん。だったら、推しを支えられる自分に変わる契約にしようじゃないか。」
「お前の人間の推し方が私にとって解釈違いなんだってずっと言ってんだろが! てめえの本拠地に帰んな!」
解釈違いの話を、悪魔は今初めて聞きましたが、深追いはしないことにしました。むしろ「ほう、そういう考えもあるのか」と解釈を改めて、強火オタクよりも柔軟に人間搾取活動「人活」を始めることにしました。
まず悪魔は効果的だと感じた「ガチャ」の精度をあげることにしました。悪魔はホビー会社を設立。運営も順調に進み、売り上げも魂回収もうまく行きました。
むしろ人間が自ら魂を捧げに来る様子にビビり、拍子抜けしました。ガチャをエサに契約でいただいた魂はホビー会社の社員にして働かせました。
悪魔は強火オタクの元へもう一度訪問しました。ビジネスアイデアをくれたお礼のご挨拶です。
「あなたのおかげで大成功しました。お礼にどうぞ」
菓子折りと、強火オタクの推しグループとコラボした新作の箱ガチャをボックスで渡すと、強火オタクは菓子折りだけもらってボックスを悪魔に返します。
「タダで受け取れません。グッズのお金は出させてください。」
悪魔は、やっぱり人間がわからないのでした。
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