最終章 翔べない天使
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屋上の中央には、巨大な水晶の柱が錬成され、そこにアルモニがくくりつけられていた。
「アルモニ!!ーーーグレタ。お前は、始めから私を裏切るつもりで、近づいて来たんだな?」
アルモニはまだ眠り薬の効き目が切れずに眠っている。
ヴィルヘルムは、グレタを睨む。
「ふふふ・・ま、そういうことですわ。手段は選ばなくていいとのことだったのでね。
それにしても、今ごろになってやっと気づくなんて、『十賢』とまで称された錬金術師さまにしては、勘のお鈍いことで」
「貴様、ネムダと手を組んで、何を企んでいるんだ!!」
「手を組む?アハハハーーっ!!笑わせないでくださいな。誰があんなバカな男と手を組むもんですか。
あなたに羽を造らせるために、利用していただけよ。
あれだけの術師が行方不明になれば、当然、軍も動き出すわ。
焔の錬金術師でも動き出したら、やっかいだし。それもこれも、あなたがオリジナルの羽をすんなり出さないからよ。
そうすれば、あんなにたくさん、殺さなくてすんだのにねえ」
「やはり、それが目的か・・アルモニを、私の娘を返せーー!!」
「娘?これは、あなたが錬成したキメラでしょう?まぁいいわ。賢者の羽を取り出したら、すぐに返して差し上げますわ。その時、この子が生きていたらね」
その時、ドタバタと足音がし、エドワードたちが到着した。
「ヴィルヘルム教授ーーアルモニ!!」
「兄さん、あの女の人、教会でボクたちを襲ったカミラって人だよね?!あの人が助手のグレタ?!」
現れたエドワードたちに、カミラは勝ち誇り、笑う。
「この姿で逢うのは2度めね。カミラよ、忘れちゃった?グレタは偽名なの。こっちの方が美人でしょう?」
「そんなこたあどうでもいい!!さっさとアルモニを返しやがれ!!」
「あなたたちも物好きねえ。自分達を、キメラに喰わせようとしていたヤツの肩を持つなんて。
やっぱり、術師だから利用しようなんて考えないで、3人まとめて殺しておくべきだったわね」
「おいーー」
「動かないでって、言ってるでしょう!!」
「エド、水晶を見て」
「水晶?」
「台座に描いた錬成陣を、光の屈折を利用して水晶内に出現させてる。すぐに発動出来るわよ。
・・・
あなたでは、間に合わない」
「くっーー!!」
「そうそう、大人しく見ていてちょうだい」
「やめろ!やめてくれ!!」
「さぁ・・最後の仕上げにいくわよ。これで、賢者の触媒は私の物ーー」
右手が愛おし気にアルモニの頬を撫でる。しかし、カミラの顔は醜く歪む。
「いよいよだわ。いよいよーー」
期待に震える声が囁いたその時、薬の切れたアルモニが、うっすらと目を開けた。
ぼやけていた視界がハッキリしてくる。
「パパ・・エドーーーっ!!」
頬を撫でていた手が髪を掴んだ。そのまま乱暴に引き上げ、顔を覗き込む。
「さあーー私に賢者の触媒を!!」
錬成陣を描いた左掌を、アルモニの額に押し当てた。
「ァアアアアアアアアーーっ!!!!!」
内なる衝撃に、アルモニのまなじりは裂けんばかりに見開かれ、悲鳴が響き渡った。
カミラの錬成が、残り少ない賢者の触媒の力を、解放していく。
「やめろーーーっ!!!」
堪り兼ねたヴィルヘルムが飛び出す。手には、アルモニの部屋に飾られていたエーテルフラウ。
ヴィルヘルムの手から放たれたエーテルフラウは、弧を描いてカミラの元へーーー
「ヒイイイイイイイーー!!」
花が身体に触れた瞬間、アルモニの悲鳴にカミラの悲鳴が重なった。
「その花の触媒効果、お前が私の助手なら、よく知っているはずだ!!」
その間も、賢者の触媒は力の解放を続ける。
その証拠に、アルモニの背中から純白の片翼が拡がる。
羽の力は、全てカミラに向かう。
その力に耐えられず、細胞は壊れ、カミラの容姿はみるみる変貌していく。
彼女がもっとも忌み嫌う、醜悪な姿に。
リバウンドにたまりかね、アルモニから離れ、両手で顔を覆い後ずさる。
「お、おいーーー」
「ううう・・顔が・・顔がぁーーーイヤだ・・イ ヤだ・・永遠の美貌はーーすぐそこなのに・・・私の・・永遠の・・・賢者の触媒・・・賢者の触媒をーーー!!ぎゃああああああっっっ!!!!」
断末魔の叫びを最後に、カミラは屋上から墜ちた。
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