最終章 翔べない天使
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扉がノックされた。
「パパーー?」
机に向かっていたアルモニは、立ち上がり、扉を細く開く。
「ーーー!?」
「やっと見つけたわ、アルモニお嬢様」
扉に掛けられた細い指と赤い唇に、思わず後ずさる。
「グレーータ、さん?」
グレタは部屋に入ると、後ろ手に扉を閉める。
「アルモニお嬢様、申し訳ないんですが、出来れば無抵抗で、捕まっていただきたいんですけど」
「な、何を言っているの?」
わけが分からない。ただ、彼女は危険な存在だと直感した。
ゆったりと迫る彼女に、踵を返す。
「いや・・来ないでーー!!」
窓から逃げようとするアルモニを、後ろから羽交い締めにする。
「まったく、最後まで私には懐かなかったわねえ・・ま、いいけど」
忌々し気に呟くと、薬を染み込ませた布を口に当てる。
「パパーー!!」
「アルモニ、軍が来る。パパと一緒に逃げーーーアルモニ?」
部屋を見渡したヴィルヘルムは、困惑する。
「いない・・」
アルモニの机に近寄る。コップに、摘んできたエーテルフラウが差してある。それを手に取り
「いったいどこへーー」
そこへ、エリスが入ってくる。
「教授、あれ・・・」
エリスが指差した先には、これ見よがしに白衣が脱ぎ捨ててあった。それを拾い上げる。
「これは、グレタの白衣・・・くっあの女がアルモニをーーー!!」
ヴィルヘルムは部屋を飛び出し、城の上部へと走って行った。
それを見送っていると、マーゴットが走って来る。
「エリスちゃんーー!!」
「アルモニなら、いないわ」
「え?どこへ?」
「さあ。グレタが拐っていったわ」
侵入してきた街の錬金術師たちに、エドワードとアルフォンスは苦戦していた。
「ちっきしょうーーさっきから、ちっとも相手の数が減らねえ」
「ヒースガルドの兵士も来たしね」
「やるしかねーか、くるぞアル!!」
襲ってくる術師たちや、兵士に向かっていこうとした、その時
「手こずっているようだな、鋼のーー!!」
「ーー!?」
術師たちの背後に火柱が上がり、ヒースガルド兵が吹っ飛ぶ。立ち昇った黒い煙が消えると、ロイ・マスタングが現れた。
「戦いには合理性が求められる。数でおしてくる相手に個で相対していては、いつかは疲弊して、力尽きることになる!!」
「大佐!!」
「・・・」
キザな登場に苦笑いするエドワードの耳に、暑苦しい声が響く。
「そして、戦いには美しさも必要だ!!」
錬成陣が刻まれた手甲が地面を地面に突き立てる。
瞬時に地面が揺らぎ、術師たちを撥ね飛ばす。
「アームストロング少佐も!!」
「美しき体型には美しき技を、美しき技には美しき力が宿る。
見よ、我がアームストロング家に代々伝わる芸術的錬金法をーー」
いつのまに脱いだのか、逞しい上半身を晒し、次々とポージングする。
「もうっ、そんなつまらない講釈はいいですから、さっさと用件を伝えて下さい!!」
「むうーー」
横から一喝され、名残惜しげに口をつぐむ。
「ホークアイ中尉まで」
「ーーーもしかして・・あの・・わかっちゃう?」
ホークアイと呼ばれ、まだマーゴットの姿のままの彼女は、頬を赤く染め口ごもる。
「あ・・ハハーー」
変装に自信があったのだろうか、ひきつった笑いを浮かべる。
見破るのに時間が掛かったことは、内緒にしようと心に誓った。
ホークアイは咳払いをし、軍人の顔になる。
「ん、んんーーっ。大変よ、エドワード君。アルモニちゃんが拐われたわ」
「えっ!?」
「なんだってーーいったい誰が!?」
「助手のグレタよ。たぶん、まだ城の中にいるって、教授が」
「エリス!!」
ホークアイの後ろからエリスが現れる。
「ここは私たちに任せて、早く行ってあげて!きっと待っているわ」
マスタングとアームストロングは、頷いて2人を促す。
「兄さん」
「ああ、行くぞ!!」
3人に軽く会釈をし、屋敷に向かう。
「待ってーー」
エリスも後を追った。
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