最終章 翔べない天使
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「どういうことだよ、エリス」
「言っても構いませんね。教授?」
説明を求めるエドワードに、エリスは伺いを立てる。
頷くヴィルヘルムに、エドワードとアルフォンスに向けて話し始める。
「賢者の『触媒』を造るための『触媒』は、錬金術師の血肉を、たっぷり啜ったキメラってことよ」
「な・・に?」
「あの女がーーグレタが、私に言ったんだ」
『教授ーー教授の造った羽が未完成だったのは、錬金術師の血肉を喰らったキメラが足りないからですわ。
私が術士を集めましょう。完全な賢者の触媒を完成させるには、もっとたくさんの術師の犠牲が、必要ですねーー』
「私は苦悶した。アルモニを助けるために、名も知らぬ錬金術師たちを犠牲にすることを・・・
しかし、確かにそのキメラたちを使って錬成した触媒は、いままでのものより遥かに出来が良かった。
これなら、アルモニを助けられるかもしれないとーーー」
ーーー誘惑に、勝てなかった
錬金術師は、いつもそうだ。
倫理に反することとわかっていても、自分の実験の成功のために他を犠牲にすることを厭わない。
そしてーー後悔する。
もう取り返しがつかないのに。
愚かだ。
エリスの唇の端が微かに上がる。
「ーーもしかして、街を囲うあの高い塀は、キメラの襲撃を防ぐためじゃなくて、街の中から錬金術師を逃がさないために建てたのか?」
「そうだ・・・夜になると地下工房からキメラを街に放し、術士を捕食させた。
鉱山の入り口を塞いだのは、術師を捕食したキメラを逃がさないためだ。
そのために、旧市街から移った人々とは、住居を分けた。頑丈な扉をつけてな。
あくまで、錬金術師だけを襲うように」
「塀についた黒いシミ・・あれは、やっぱり血痕だったのかーー」
「教授、エドとアルも、キメラに喰わせるつもりだったんですね」
「・・・すまない」
「あなたたちを喰らったキメラなら、さぞかし精度のいい触媒が出来たでしょうね」
「よしてよ、エリス。冗談にならないよ!」
笑えないエリスのジョークに、アルフォンスは声を荒げる。
「ーー!!ヴィルヘルム教授、あれを!!」
窓の外を見た神父が叫ぶ。城の前の広場に、街のゴロツキが集まり何やら叫んでいる。屋敷の中に侵入しようとしている輩もいた。
「軍の連中も、そろそろ来るかもね。姿を隠した方がいいんじゃない?」
「俺とアルで、アイツらを引き付ける。その間に逃げてくれ。行くぞ、アル!!」
「うん!!教授、必ず逃げてください!!」
2人が書斎を飛び出していくと、神父はヴィルヘルムに向き直る。
「ヴィルヘルム教授、騒ぎが収まるまで教会に隠れましょう。今度は、教授もご一緒に。さあ、早く」
「ーーーアルモニを呼んで来よう」
街の入り口では、扉にキメラが体当たりをしていた。
その脇で、ネムダは兵士に激を飛ばす。
「目的はわかっているな!!ヴィルヘルムと小娘を捕らえた者には、昇級と特別ボーナスをくれてやる!!だがよいか、けして殺すな!!必ず生きて捕らえるのだ!!」
扉が壊れると同時に、兵は走り出す。
「全員突撃ーーー!!」
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