最終章 翔べない天使
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「そんな・・まさか・・そんなことってーー」
ヴィルヘルムの告白に、アルフォンスは狼狽する。
「分かったかい?これが真相だよ。私しか知らない、アルモニにも話したことない、あの子の秘密だ。
私はセレネの、大人しすぎる性格を心配していた。
引っ込み思案な性格を直し、明るい子に育って欲しいと思っていた」
「だから、暴走した触媒ーー羽がセレネをアルモニに・・・かよ」
「すごいわね、リバウンドを止めるほど高品質・・・でもセレネは、内気な女神のままでよかったのに」
「あぁ・・その通りだ・・・」
エリスは、セレネの控えめだが、柔らかな優しい笑みを思い出す。
あの笑顔が、好きだったのに。
責めの言葉を、ヴィルヘルムは素直に受け入れた。
「アルモニは、キメラなのかと訊いたね。セレネが代価となった存在という意味なら、アルモニはそうだ」
「だからキメラは、アルモニを襲わなかったんですね。」
「仲間ーーってわかったのか」
鉱山で始めて逢った時から、いちばんの疑問だった。キメラは、アルモニの中の、自分達と同じ血の匂いを嗅ぎとっていたのだろう。
「ーーーーなに?何なの?今の話ーーあたしが、そんな・・・あたしの小さい頃の記憶は?
全部、セレネお姉ちゃんの記憶なのーーー?
ちがうよ、セレネお姉ちゃんは、死んだあたしのお姉ちゃんだもん。
だって、お姉ちゃんに遊んでもらったこと・・」
廊下で聞いていたアルモニは、必死に思い出す。その記憶の中に浮かんできたのはーーー
「ーーーセレネ、またね」
エリスーー?
自分に手を振るエリスが見えた。エリスとは、エドワードたちと一緒に逢ったのが最初なのに。
そんなことーーそんなことないーーそんなことないーーー!!!
「うそ・・うそだよ・・こんなの、こんなのうそっ!!」
「羽の研究は、まだ続けている。最初は、セレネを取り戻すためだったが、今ではもっと、別の理由だ」
「アルモニのためーーだよな」
「その通りだ。アルモニの羽を見たのなら、その時のあの子の衰弱ぶりも、目の当たりにしただろう。
羽の力で生まれたあの子は、羽の力で生きている。
つまり、羽の力が他に向けば、あの子は身体が保てない」
「そうか、それでわかった。アルモニに錬金術を使うのを禁止していたのは、そういう理由だったんだな」
「教授、羽の力自体も、もう残り少ないんじゃない?」
「あぁーー羽の力が尽きては、アルモニは生きられない。寿命がーー迫っているんだよ」
「そんな・・・」
「分かっている。そんなことはさせない。成長していくアルモニを見て、私はやっと気がついたんだ。
セレネは・・もういない。もう戻らない。だが、アルモニはーーーあの子は生きている。
アルモニも、私の娘なんだ」
ヴィルヘルムは天井を見上げる。2階には、アルモニの部屋がある。
「ーー私は、あの子を幸せにしてやりたい。そのために賢者の触媒を、一日でも早く完成させたい。アルモニを、普通の女の子にしてやりたいんだ」
「そのために、たくさんの錬金術師を殺したのね」
「殺した?エリス、何を!?」
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