最終章 翔べない天使
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「聡明な君たちのことだ、本当はもう、ほとんど気づいてしまっているんだろうが・・・どこまで知ったんだね?」
「アルモニはーーあいつは、あんたの娘なんかじゃない」
エドワードに核心をつかれ、ヴィルヘルムはアルフォンスとエリスを見る。
驚いているのは、神父だけだ。諦めたように、目を伏せる。
「そうか・・やはり見たのだね、アルモニのアレを・・」
エドワードとアルフォンスは頷く。
「教授、アルモニは何者なんだ?まさか、アイツまで教授が作ったキメラだなんて、言わないよなっ!」
「・・・・」
「教授は、触媒法が専門ですよね。なのに、何故キメラなんかーー本当は、なんの研究をしてるんです?」
話すといいつつ、やはり躊躇ってしまう。しかし、やっと決心がついたように、エドワードたちを真っ直ぐに見る。
「私の研究なら、君たちはもう、その成果を見ているじゃないか。アルモニの背中に生えていたモノーーあれが、私の研究の全てだよ」
「え・・?」
「あの羽が、教授の研究の成果ーー?」
「君たちも、賢者の触媒のことは、多少知識があるだろう。
賢者の石にも匹敵する力があるという、伝説の物質だ。
錬成の成果を上げ、理論以上の再構築をも可能にする。
アルモニの羽は、ただの羽じゃない。あれが、賢者の触媒だよ」
「なんだって!?」
「それじゃ教授は、賢者の触媒を完成させたってことですか?」
「完成させたーーじゃないわ。完成させていたーーよ。そうですよね、教授」
エリスが、冷めた眼でヴィルヘルムを一瞥する。
「限りなく完成品に近い、未完成品だ。とても、不安定なモノーーだったがね」
「教授が・・人の手が作り出した・・・」
「あれが出来た日のことは忘れもしない。君たちや、イズミがダブリスに帰る前の晩のことだ。
あの晩、私はようやく、賢者の触媒の試作品を完成させた。そしてすぐに、それの実験を始めた」
その日を思いだし、両手を組む。震える指を、押さえるために。
「簡単な実験のはずだった。私が造った賢者の触媒が、どれだけの効果を持つのかーーー見たかった。
研究室にはセレネが居た。娘のセレネは、幼かったが私の優秀な助手でもあった。
錬金術の実験は、危険なことも多い。些細なミスが、命取りになることもある。
そしてーー事故は起こった。錬成に使った代価物と、触媒との相性が悪かったんだ。
実験は失敗し、リバウンドが起こった」
「リバウンド・・・」
「あとは・・想像がつくだろう。リバウンドを受けたのは、セレネだった。
セレネの身体は、崩れ始めた。セレネは悲鳴をあげながら、段々とセレネでなくなっていくんだ。
あんなにひどいリバウンドは、初めて見た。それでも私は諦めなかった。それが、よくなかったんだろうな。
すぐに私はリバウンドを止めに入った。だが、止まらなかった・・・」
「功を焦りましたね、教授」
「そうかもしれない・・もっと慎重に錬成物を選べば、たとえリバウンドが起こったとしても、ここまでにはならなかったかもしれない。
だから私は、もう一度、賢者の触媒を使った。このままでは、確実にセレネは死ぬ。
セレネを助けるためには、触媒に頼るしかなかったんだ。
触媒の力は確かだった。リバウンドは止まり、セレネを元の姿に戻してやった。だが私は・・異変に気づかなかった」
「異変?」
「あぁ。元の姿に戻って尚も、セレネは別の何かに変わろうとしていた。
未完成な賢者の触媒は、既に暴走を始めていたんだ。瞬きをした後には、もう、セレネはいなかったよ。
代わりに目の前に現れたのがーーー」
「アルモニーーー」
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