第1章 トレインジャック
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「だとしても、トレインジャックはマズかったね」
「そうだな。これで、あんたは立派は犯罪者だ」
「こんな、大袈裟にするつもりはなかったんだ。もっと、穏便に済ませる筈だった。それを、彼奴がーー」
肩を落とし、項垂れる。
「俺たちはただ、ヒースガルドに行ければ、それで良かったんだ」
呟いた言葉を、 エリスは聞き逃さなかった。
「ヒースガルド?どうして?」
それは2人も同じらしく、意外な顔で男を見た。
「逮捕状が出た時、唯一俺たちの味方をしてくれたのが、上官のガンツ大佐だった。その大佐が教えてくれたんだ。ヒースガルドでは、錬金術師を中心とした自治が、確立しつつるらしい。だから、そこへ逃げ込めと」
「だから、こんな事を・・」
「ヒースガルドでほとぼりを冷まして、無罪を証明するつもりだったんだ・・」
沈黙が落ちた。
テロリストたちの、ただの売名行為のトレインジャックだと思っていたエドワードは、しばらく男を見詰めた。
ふと横を見ると、 エリスもじっと彼を見詰めている。
端麗な顔立ちだが、無表情なその顔からは何を考えているのか、エドワードにはわからなかった。
「なるほどね・・ま、だいたいの事情は分かったよ」
軽いため息と共に、白い手袋の右手で頭を掻く。
「でも、錬金術師を中心とした自治なんて、聞いたこともないね。エリスはある?」
アルフォンスの問いに、無言で首を振る。
「だよな。誰がそんなこと始めたんだ?」
「街の指導者は、かつて『十賢』と呼ばれた偉大な国家錬金術師の独り、『ヴィルヘルム・エイゼルシュタイン教授』だって話しだ」
「えっ!?」
「ヴィルヘルム教授が!?」
「何でも教授は、国中から錬金術師を集めているらしい。詳しい事は、俺も知らないが・・」
自分の罪を少しでも軽くする為か、男は饒舌になる。
「いつ頃から?」
「数ヶ月前からとしかーー」
「数ヶ月前・・・・」
エリスは視線を落とした。
「兄さん、これって一体・・・・」
「さあな、俺にもサッパリだ。本当に、あのヴィルヘルム教授なのか?」
「術師を集めてるって、一体何の為に・・・・」
3人の関心が自分から逸れていると気付いた男は、そっと後ろへ下がり始める。少し距離があくと、踵を返し走り出した。
「あ、逃げた」
「ちょっと、待って!」
「しまった!んにゃろ!待ちやがれっ!!」
男を追って走り出したエリスを、エドワードとアルフォンスも追った。
男を追って扉を開けると、青く塗装された車両が目に飛び込んできた。
蒸気機関車の燃料である石炭と、蒸気を生む大量の水を積んだ炭水車だ。
「もうっ!!待ちなさいよ!!」
エリスは怒鳴ると、車両の脇に掛かっている梯子を掴んだ。
遅れて列車から出て来たエドワードとアルフォンスは、彼女を呼び止める。
「エリス!待てよ!」
「アイツは?」
梯子に片足を掛けて、エリスは首を捻る。
「この上よ」
そういうと、炭水車の上を指差す。炭水車の先は機関車だけだ。機関室を占拠している仲間に、助けを求めに行ったのだろうか。
「アル」
「うん」
アルフォンスが指を組んで屈むと、エドワードは片足を乗せる。
「よっ」
短い掛け声と共に、エドワードを真上に放り上げる。赤いコートがひらめきながら炭水車の屋根の向こうに消えると、自分も後を追おうと梯子を見た。
「エリス!ス、スカートが!」
梯子を上り始めたエリスのワンピースの裾が、盛大にはためいていた。
焦るアルフォンスの声に、エリスは冷静に返事を返す。
「大丈夫よ、スパッツ履いてるし」
「で、でも」
「アルー安心しろ。パンツは見えねーぞ」
炭水車の屋根から顔を覗かせて、エドワードはわざとらしく棒読みで言った。
「兄さん・・(確認済みなんだ)」
上から降ってきた兄の声に、弟が大きな鎧の肩を落としたその時ーー
「うわっーー!!」
「あっ!!」
金属がこすれ合うような音がし、悲鳴が聞こえた。瞬きをした僅かな間の後、黒い影が上から転がり落ちた。
「あれは、さっきの!?」
「死んだの?」
「列車のスピードが落ちてるし、大丈夫だと思うよ」
車両から、身を乗り出したアルフォンスは言った。
エドワードは立ち上がると、前方を睨みつける。
機関車が吐き出す
エリスとアルフォンスが梯子を上りきると、真後ろに流れている煙が真横に靡き、線路が緩やかにカーブしているのが見える。
「へっー!」
ブラウンに近いくすんだ金髪をモヒカン刈りにした黒い軍服の男が、葉巻をくゆらせて立っていた。
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