エピローグ エンディミオンの魔女
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報告書を作成し終わったホークアイは、指を組み、その上に顎をのせた。
そこへ、コーヒーの香りを漂わせながら、フュリー曹長が入ってくる。
「どうしたんですか、ホークアイ中尉。何だか浮かない顔ですね」
事件は片付いたのにと、机にカップを置きながら話しかける。
「ーーーありがとう」
コーヒーをひとくち啜るとカップを置き、タイプライターから紙を取る。
「確かに、事件は片付いたんだけど・・・どうしても、引っ掛かるのよ」
「何がですか?」
「うまく説明できないんだけど・・エリスって女の子がーーね」
「あぁ、エドワード君たちと一緒にいた子ですか?どんな子だったんですか?」
「綺麗だったけど、不思議な雰囲気の子だったわ。エドワード君たちと同じくらいの年に見えるのに、彼らより悠然とした空気を纏っていてーー」
「その子の、どこらへんが気になるんですか?」
「それが・・うまく説明出来ないのよ・・・」
「はぁ・・」
珍しく歯切れの悪いホークアイに、なんと返事をしたものかとフュリーが困惑していると、ホークアイは立ち上がった。
「取りあえず、大佐に報告書を渡してくるわ」
「あ、はいーー」
報告書を持ってマスタング大佐の執務室のドアをノックすると、すぐに入れと低い声が返ってきた。
「失礼します。大佐、ヒースガルドの報告書です」
「あぁ、ご苦労・・・・で、彼女は調べてくれたか?」
「はいーーエリス・ハーディという名は、アメストリスのどの記録にもありませんでした。国外の人物なのかもしれません。
それとなくヴィルヘルム教授にも尋ねたのですが、娘のーーセレネちゃんの友達としか。ただーーー」
「ーーなんだ?」
「一度だけ、グレターーいえ、カミラと話しているのを屋敷で見ました。しかし、距離があったので、会話の内容までは・・・」
わからなかった。でも、親しいように見えなかった。
明らかにカミラはエリスを見下していたが、エリスの方はそれを歯牙にもかけていないようだった。
しかし、あの2人に上下関係があるとしたらーーーエリスは遥か上に居そうに思えた。
「そうか・・鋼のやアルフォンスも、名前しか知らないそうだ。意図的に隠していたのかも知れん。それに、彼女は錬金術師だ」
「何故ですか?」
彼女が術師だとは思いもしなかったホークアイは目を見張る。そんな素振りは微塵も感じなかった。
「同じ匂いを感じたんだ。獣が、仲間の匂いを嗅ぎ付けたようなーーー鋼のは、まるで気付いていないようだったが」
お手上げと言わんばかりに、マスタングは腕を組み、口をへの字に曲げた。
「どうしてもすっきりしない。事件は解決したのに、この不快感はなんだ。どこかに刺が刺さっている。とても小さい。しかし、確実に刺さっている」
「・・・・・」
それは、ホークアイとて同じだ。
いや、事件の渦中にいた彼女の方がより感じている。
だが、それが何なのかーー知る手段がない。
ホークアイは、壁に掛かっている時計を見た。そろそろ、着く頃だ。
「もう、セントラルステーションに着いたでしょうか。エドワード君たちーー」
「あぁーーそうだな」
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