第8章 白い羽根の加護
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ホークアイはメガネを外すと、いつもの軍人としての顔に戻る。
数週間前、イーストシティ一帯で起こっていたゴーレムによる騒動。
あの事件と平行して、この案件も報告されていた。
マスタングは、どちらも調べていたのだが、ゴーレム事件の方が緊急だと判断し、そちらを優先した。
ホークアイは、シャムシッドから戻るとすぐに、ノイエ・ヒースガルドに向けて出発し、マーゴットと名乗り、ヴィルヘルムの元に潜入したのだ。
エドワードがイーストシティを出発する際、誰も見送りに来なかったとをぼやいていたが、それはマスタングたちがこちらの事件の対応に忙殺されていたためだ。
「いつまで笑っているおつもりですか、大佐」
「あぁーーすまんすまん。それでは、早速報告を聞こうか」
「はいーー先日お渡しした報告書にも書きましたが、ネムダ准将とヴィルヘルム教授の関係は裏が取れました。
准将は、教授の違法行為を黙認する見返りに、非合法な軍事用キメラを作らせています」
「あのキメラか・・」
屋敷で見た、醜悪なキメラを思い返す。あんなものを、軍施設内に飼っているとはーー
「そのようです。そして、夕べの騒ぎも含め、一連のキメラ事件の全てに准将が関与していることは、まず疑う余地はありません」
「そうか、予想が当たったな。ヴィルヘルム教授が関わっているのは、さすがに半信半疑だったのだが・・」
「准将の軍の私物化の方ですが、それもひどくなってますね。無断で徴兵してる可能性もあります」
「国家憲兵隊の責任者でありながら、そこまで軍備を強化する目的は、いったい何なんでしょうな」
ホークアイの報告に、アームストロングが疑問を挟む。
「ただの自己満足か、もしくは権力争いのトップに立ちたいんだろうかーーふん、あんな小物に何が出来る。それよりも、注目するべきは教授に付いている助手だ。グレタと云ったか、彼女の正体はつかめたか?」
グレタと名乗る女が危険だと、ホークアイから最初の報告書が届いたとき、直感したのだが
「いいえ・・怪しい動きを見せてはいるのですがーーなかなか尻尾を出しませんね。
しかし、キメラの合成法を教授に吹き込んだのはおそらく彼女です。
彼女がこの事件に無関係とは、とても考えられません」
「中尉、グレタというのは偽名だろうが、念のため軍の記録を調べてみてくれ。何か出てくるかもしれん。私は錬金術関係の記録から、ヴィルヘルム教授を調べ直してみよう」
「わかりました」
「教授が術師を集めているのも気になるところだ。キメラ事件と、どう関係しているかわからんがーー」
詰まる所、この事件に関しては何もわかっていない。
ネムダの目的など、たかがしれている。阻止することなど容易い。
だが、キメラ錬成の目的は、ネムダに提供するためだけなのか?
ネムダとヴィルヘルム教授を結びつけたのはグレタだろう。
ヒースガルドに溢れてしまったキメラに軍が介入し、ことの顛末が知れ、ネムダに交換条件を持ちかけられたとしてーー
それ以前から、キメラを錬成していた教授の目的は何だ?
「術師といえば、エルリック兄弟は今頃どうしているでしょうな。本当に良かったのですか、大佐。あの兄弟とエリス殿を准将に引き渡して」
アームストロングの心配に、マスタングは笑う。
「はは、少佐はわかってないな」
「は?と、仰いますと?」
「良いも何も、ただ黙って大人しく捕まっているような彼らじゃないだろう。彼らのことだ。きっと私の期待以上に大暴れしてくれるに違いないよ」
「なんとーー」
「・・・まったく、エドワード君が知ったら怒りますよ」
「それも半分計算のうちだよ、中尉。今頃は私の思惑に気づいて、悔しがっている頃かもしれんな」
端から楊動に利用するつもりだったのだ。ホークアイは額をおさえる。
その時、思い出したようにマスタングはアームストロングに訊ねる。
「あぁ、少佐。そういえば兄弟と一緒にいたエリスという少女。あの娘はいつから兄弟と一緒にいるんだ?」
「エリス殿は、セントラルへ向かう列車で同じ車両に乗り合わせましてな。事故に巻き込まれてから、兄弟と行動を共にしておるようで」
「大佐、エリスちゃんがどうかしましたか?」
「いやーー私より鋼を選ぶとは、変わった娘だと思ってな」
「は?」
事の顛末を聞いたホークアイは、呆れ顔でマスタングを見た。
.
