第8章 白い羽根の加護
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翌日。
屋敷は、昨日の騒動など嘘のように静まりかえっていた。
マーゴットは、仕事を辞めたい旨を教授に伝えたかったが、彼はアルモニの部屋から出てこない。
ノックをしてみたが、出てくる様子はなさそうだ。
仕方なく、廊下から一方的に告げた。
グレタの姿も探したが、これまた姿が見えない。
マーゴットは、アルモニの身を案じながらも、荷物を持って屋敷を出た。
小さなスーツケースを転がしながら街を歩いていると、後方から走ってきた車が、泥水を跳ね上げる。
「ーー!!」
咄嗟のことで、避けきれずにグレーのタイトスカートと足に泥水がかかった。立ち止まり、停車した車をキッと睨む。
「大丈夫ですか?」
窓を開けながら声を掛けてきたのは、ロイ・マスタングだ。
彼は車から降りると、一瞬申し訳なさそうな顔をしたが、マーゴットと目が合うと、笑いそうになる。
それを必死に堪え、マスタングは彼女に非礼を詫びる。
「これは失礼しました。クリーニング代は、勿論私が負担いたします。お詫びといってはなんですが、宜しければお乗りになりませんか?
どこへなりと、送らせて頂きます」
紳士らしく、丁寧に頭を下げると、右手を差し出す。
その手をチラリと見るが、睨み付ける顔はそのままに、マーゴットも右手を差し出した。
「そうね。それじゃあ、お願いしようかしら」
マスタングに手を取られ後部座席に座ると、車は何事もなかったように発進する。
やがて、堪えきれなくなったマスタングが、肩を震わせて笑い出す。
「ーーーくっくっくっくっくっくっ」
地味なグレーのスーツに伊達メガネ。こんな、絵に描いたような変装を、真面目な顔でしている。
これが笑わずにいられようか。
「くっくっくっくっくっーー!!」
尚も笑い続けるマスタングに、マーゴットは頬を赤くし、切り口上に訊ねる。
「何か、おかしいですか?少佐」
「いいや、よくお似合いです。中尉」
運転席に座る、アレックス・ルイ・アームストロングは、後部座席を見ずに答えた。
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