第5章 エーテルフラウ
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「この花は、エーテルフラウと言って、私の研究ーーすなわち、触媒法に必要な素材なんだ。
自然物の触媒の中では、いちばん高性能な物質でね。
これひとつで、錬成の速度や効率が、飛躍的にアップするんだ」
「へ~こんな花だけで・・」
「・・恐ろしい花だな」
ヴィルヘルムの説明に、アルフォンスは感嘆の声を上げた。
それとは逆に、エドワードはヴィルヘルムの説明を冷静に分析する。
錬成の媒体が自然物ということは、物質が安定していない。
従って、同じ構築式で錬成しても、その都度、効力に差が出る。
用意した構築物以上の錬成が起きれば、リバウンドと呼ばれる現象が術者に起こる。
エドワードは、無意識に左手で右腕を掴んだ。
「そうだな。リバウンドを起こしやすい、危険な触媒でもあるが・・・私の研究には、この花が必要不可欠なんだ。
だが、この花は、栽培や保存が難しい。いつもは自分で摘んでるんだがーー今日は生憎、来客の予定があってね」
「あ、はい、それはもちろん元々、ボクらも教授のお手伝いをするつもりでしたし・・ね、兄さん」
「あぁ。で、どこに生えてるんだ?」
「君たちが、アルモニと出逢った場所。あの辺りに生えているはずだ。 エリス君も行ってくれるかい?」
「え?私もですか?」
「あぁ。ここに残っても退屈だろう。頼んだよ」
「・・はい」
ヴィルヘルムから、摘んだ花を入れる籠を受け取り、エドワードたちは出掛けていった。
3人が居なくなると、書斎にグレタが入って来る。
「素直ないい子たちですね・・・ねぇ、教授?」
くっきりと紅をひいた赤い唇が、意味深長に上がる。その唇から、ヴィルヘルムは目を逸らす。
「君の言う通り、 エリス君も行かせたよ」
「ありがとうございます」
礼を言うグレタの唇が、更に上がった。
「あの子は術師じゃないし、屋敷に残してもーー」
「あとで騒がれたら、面倒でしょ?色々と。さ、準備をしてしまいましょう」
笑みを浮かべたまま、高圧的な態度で後ろの本棚に手を着いた。
一昨日より、随分と短時間でレミニス渓谷へ続く鉱山に着いた。
ヒースガルドを通らずにレミニス渓谷へ行ける道を、ヴィルヘルムが教えたからだ。
鉱山の洞窟に入るなり、エドワードは目をむいた。
「昨日あれだけ倒したのに、な~んでこんなにキメラがいるんだよ!!!」
そう言って、オートメイルを鋼剣に変えると、あっという間にキメラを切り刻んだ。
「まったく・・・さっさと花を摘んで帰るぞ」
「はいはい」
呆気にとられていたアルフォンスと エリスは、消滅していくキメラの間を、スタスタと歩くエドワードを慌てて追った。
「ねぇ、どうしてキメラがいたのかしら?」
「繁殖した・・・ってことはないよね?」
「キメラがか?」
「にしても、早すぎない?数も多いし」
そう会話している間にも、エドワードが“イカ亀”とセンスのないネーミングしたキメラを倒した。
洞窟を抜け、外へ出た。甲殻類のキメラが居なくなったことに、エリスが密かに胸を撫で下ろしていた時ーーー
「ーーーー!!」
洞窟の中で、何かが反響した。
「ねえ、声が聞こえてこない?」
「あの声・・ひょっとしてーー」
「待ってーーっ!!」
3人が振り返ると、洞窟の中に人影が見えた。
「はぁっはぁっ・・・やっと追いついた・・」
「アルモニ!?」
「どうしてこんな所に?」
息を整えたアルモニは、拗ねた顔で口を開いた。
「もう、どうしてじゃないでしょっ。今日こそ錬金術を習おうと思ってたのに、2人とも部屋にいないんだもの。
マーゴットさんに、パパがお使いを頼んだって聞いて、必死に追いかけて来たんだからね」
「・・どうするの?」
「どーもこーもないだろ。アルモニには教えるなって、教授から強く言われてるじゃないか」
エリスの問いに、エドワードは即答した。それを聞いたアルモニは、くしゃりと顔を歪ませる。
「そんなぁ、エドォ!!」
「兄さん、それはあんまりじゃーーー」
「約束は約束だ。いくぞ、アル、エリス」
「ちょっと、兄さん!!」
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