第5章 エーテルフラウ
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「ところで君たち、今日の宿がまだ、決まっていないそうだね。路線が復旧するまで、ここに居ても構わんよ」
「本当ですか?すみません、お世話になります!」
ヴィルヘルムの申し出に、アルフォンスは飛びついた。
彼には悪いが、治安の悪い街の宿屋には、泊まりたくなかったからだ。
「部屋まで案内させよう。すまない、誰かいないか?」
ドアを開けて声を掛けると、すぐに2人の女性が姿を現した。
「はい」
「お呼びでしょうか、教授」
「あぁ、2人とも居たのか。ちょうど良かった、来てくれ」
入って来た女性は、ヴィルヘルムの横に並んだ。
「紹介しよう。私の研究助手を務めるグレタと、秘書を務めるマーゴットだ。こちらは、国家錬金術師のエドワード君と弟のアルフォンス君だ」
「こんにちは、宜しくね」
にっこりと笑い、グレタはエドワードに手を差し出した。グレタは、長い漆黒の髪を後頭部で一度シニヨンにし、残りを鳥の尾のように美しく流していた。
服は、明るいコーラルレッドのスーツに白いブラウス。スカートから出ている脚も細く、エドワードは彼女の白い手を握りながら、美しさに見とれてしまった。
「あ・・・ど、どうも、はじめまして・・・」
一方、メガネを掛け地味なグレーのスーツに水色のシャツを着たマーゴットは、ぎこちない笑みをエドワードたちに向けた。
彼女は挨拶もそこそこに、顔が見えないように俯いてしまう。
「・・・・?」
そんな彼女が気になるのか、エドワードはじっと見つめた。
「では、マーゴット。3人を空いている部屋に案内してやってくれ」
「は、はい。では、こちらにーー」
ヴィルヘルムの指示に、マーゴットはそそくさと応接間を出た。
部屋へ案内される途中、廊下の窓からドーム状の屋根が見えた。
マーゴットに尋ねると、ヴィルヘルムの研究室だと、答えが返ってきた。
屋敷の中の部屋は、使われていないものが殆どだった。
ヴィルヘルムとアルモニのふたりでは、使い切れないのも当然だろう。マーゴットは、その中のひとつのドアを開ける。
「では、ご滞在中は、この部屋をお使いください。エリスさんは、隣の部屋を。
窓からの見晴らしも良く、部屋の場所も覚えやすいかと思います」
「ありがとう、マーゴットさん」
エリスに名前を呼ばれると、彼女は何故か顔を赤くする。
「何かご所望などありましたら、いつでもなんなりと。それでは、失礼いたします」
頭を下げて立ち去ろうとするマーゴットを、エドワードは呼び留める。
「あ、ちょっと待ってよ、お姉さん。あんたさ、俺とどこかで会った事ない?」
「兄さんもそう思う?ボクも、なんだかこの人とは、始めて会った気がしないんだ」
マーゴットの、美しく長い金髪。メガネの奥の、優しいブラウンの瞳。ピンと伸びた背筋に、無駄のないキビキビとした動き。
どこかで見たと云うより、よく会っている気がする。それを思い出そうとすると、同時にムカムカする気持ちが湧いてくるのはナゼだろうーー?
「えっ!?さ、さあ、そうでしょうか?気のせいだと思いますが」
ふたりに凝視され、マーゴットは顔を背ける。
「そっかなあ・・・」
「よ、よくある顔ですからーーそれでは、失礼いたします」
そそくさと立ち去る彼女を見送ると、まっいっかーーと呟いてエドワードとアルフォンスは部屋に入った。
隣りの部屋に入ったエリスは、ベッドの上にトランクを放り投げる。
「メイドもいないのね・・・」
不自由ではないが、不便な滞在になりそうだ。エリスはそう、独り言ちた。
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