第5章 エーテルフラウ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「セレネの妹なら、素質があるんじゃーー」
「あの子には、才能がないからだ。挫折するのはわかっている。ただ、それだけのことだよ」
ヴィルヘルムは、早口でエリスの発言を遮り、顔を背けた。
彼らしからぬ態度に、エリスは眉を顰める。
「それはともかくーー驚いたよ、教授にもうひとり、娘がいたなんてな」
「うん。どことなく、セレネと似てる気がするね」
「そうね。セレネを活発にした感じ」
「セレネの話はやめてくれないか。あまり、思い出したくないのでね」
顔を背けたまま、また遮る。どうしても、この話題は避けたいらしい。そうなると、意地でも追究したくなるのが、エドワードの悪い癖だ。
「神父さんからちょっと聞いたぜ。なんか、ワケありみたいだな」
「ワケありなのは、君たちだろう、エドワード君。君の左足は義足だね。オートメイルか?それに、アルフォンス君も、鎧のなかに身体は在るのかね?」
「げっーーなんでそこまで」
「君たちの足音を聞けば、それくらい、すぐに気付く」
呆気なく看破された事実に、エドワードとアルフォンスは慌てふためく。
向き直ったヴィルヘルムは、黙っている2人に、心なしか冷たい声で続けた。
「そうか・・・術師として、最大の禁忌を犯したな」
「に、に、兄さん」
「あぁ、あっさり見抜かれたぞ。ちっくしょ、やっぱタダ者じゃねーな、このオッサン」
アルフォンスは、両手を組んでヴィルヘルムの前に出る。
「あの、教授。出来ればこのこと、師匠には・・」
「イズミには内緒にしているのか。まあ、いいだろう。君たちの問題に、出しゃばる気などないからな」
懇願する鎧姿のアルフォンスに、ヴィルヘルムは自嘲ともとれる笑みを洩らした。
「それより教授。ここへ来るまでに、色々噂を聞きました。教授がこの街を造ったって」
エリスは話題を変えた。この話題は、少々聞き飽きたからだ。
エドワードとアルフォンスはそれに気付かず、こっそり胸を撫で下ろした。
「それは違う。ヒースガルドから逃げて来たみんなと、造ったんだ。確かに、私が中心ではあったが」
「だけど、錬金術師を集めてるんだろ?」
エリスの言葉を否定するヴィルヘルムを、エドワードは怪訝な顔で見る。
「それもーー違う。街の噂を聞いて、行き場をなくした術師たちが、勝手に集まって来ているんだ」
ならーーと、エリスは続ける。
「最初に噂を流したのは、誰なのかしら?」
「最初?」
アルフォンスがエリスを見ると、彼女は視線を上げた。
「えぇ。尾ひれがついたにせよ、誰かが口にしなければ、噂は流れないでしょう?」
「それもそうだな・・」
「それはわからないが・・・逃亡中の犯罪者でもある錬金術師、国家資格を剥奪された術師などが集まってしまって、街の治安は下がる一方で困っている」
考え込むエドワードを横目に、ヴィルヘルムは街の現状を話す。
エドワードたちに絡んできた輩も、そういう者たちなのだろう。
「ヒースガルドも見て来ました。ひどい・・有様でした」
「全部、キメラのせいだよな。誰が何のために、あんなに大量のキメラを放したりしたんだろう」
「・・・私にも、分からないな。ある日突然、あのキメラたちは街に現れた。私も今、調査中なんだよ」
街の様子を思い出したのか、ヴィルヘルムは苦々しい顔をした。
.
