第4章 錬金術師が自治する街
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
電柱に激突したゲルプが、頭を抑えながら起き上がった。
「くっ・・ダメだ兄貴、ここはひとまず逃げよう」
ふらつく足取りで、ブラオを助け起こす。ロートも、口の中から流れ出た血を拭い立ち上がる。
「くそ、覚えてやがれ!!」
捨て台詞を残すと、ヨロヨロと立ち去って行く。
「逃げた」
「お~、悪党の基本だね」
追うのもバカらしいと、エドワードは肩を竦めた。
「偶には違うセリフも聞きたいね。それにしても、ガラの悪い連中が多いね。この街」
「まったくだ。早いとこおさらばして、セントラルへ行こうぜ」
置きっぱなしだったトランクを手にすると、エリスが駆け寄って来た。
「エド、アルーー」
「すごぉぉぉおおおおい!!ちょっと、すごいじゃないの!!あんたってば、チビのくせに!!!」
風のごとくエリスを追い抜いた少女が、“禁句”を叫んだ。
「だあああっ!!誰だ!今、チビって言ったヤツは!?」
顔を上げたエドワードは、少女と目が合った。
「お前かっ!!この小娘、やっと見つけたぞ!!」
「知らなかった、あんたたちって錬金術師だったのね!?」
「うん、実はそうなんだよ」
「俺を無視すんなーーっ!!」
拳を振り上げるエドワードに、少女は擦り寄った。
「教えて」
「は?」
突然の発言に、3人は目を丸くする。
「お願い、あたしに錬金術、教えて!おチビちゃん、国家資格持ってるすごい術師なんでしょ!?
あたしがんばるから、だから、錬金術教えてよ!!」
「そんな急に教えてって言われてもねえ・・兄さん」
「おい小娘、それが人にものを頼む態度か、おい」
戸惑うアルフォンスと対照的に、エドワードは怒りを露わにした。
「なによ、ちゃんと頭を下げてるじゃない、おチビちゃん」
「だあーーっ!!だから、俺をチビ呼ばわりするんじゃねえーーっ!!!!」
尚も続く“禁句”に、怒りが頂点に達した。その様子を、少女は笑い飛ばす。
「あははっ。だってあたし、あんたたちの名前知らないもん」
「俺はエドワード!エドワード・エルリックだ!!」
「ボクは、弟のアルフォンス・エルリック。よろしくね」
「エリス・ハーディよ」
名を告げる3人に、口元が綻ぶ。「エドワードに、アルフォンスに、エリスね。あたしはーー」
「アルモニってんだろ」
「え?なんで、あたしの名前知ってんの?」
エドワードに名を呼ばれたアルモニは、目を丸くする。
「教会にいた、神父さんから聞いたんだよ」
「この街のこともーーね」
アルフォンとエリスが補足するが、彼女はそれどころではないらしい。
「ふ~ん、そっか。それで、2人ともあたしに錬金術を教えてくれるの?」
「その前に、俺に何か言うことがあるんじゃないか?」
「言うこと?」
渋い顔のエドワードに、アルモニは首を傾げて考えを巡らせた。
「・・・あっ!そうだよね!助けてくれてありがとう。これでいい?錬金術教えてくれる?」
にっこり笑って頭を下げるが、エドワードの表情は変わらない。
「待てよ。もうひとつ、すっご~~~~~く大事なことを忘れてないか?」
「もう・・・兄さん、いいかげんにしなよ」
「執念深いのねえ」
「この件に関しちゃあ、ゆずれないんでね」
呆れる2人をよそに、プイッと横を向く。
「何か忘れてる?あ、あれかな、親睦を深める握手とか?」
はいっと、差し出された右手を、エドワードは軽く叩いた。
「ちがうだろっ!!昨日、俺の上に落ちてきたことをあやまれって言ってんだっ!!」
「うあ・・・まだそんなこと言ってんの?あんた男のクセに、ちっさいことにこだわってるから、いつまでも豆なのよ」
ウンザリした顔で言うと、エドワードの怒りは頂点に達した。
「ちっさい言うな!豆とか言うなっ!!!!行くぞ、アル、エリス!!こんな見ず知らずの礼儀知らずに、教えることなんて何もねーよ」
「あ、ちょっと兄さん!」
「わ!わ!待って、おチビーーじゃなかった、待ってよエドワード!」
踵を返して、スタスタと歩く彼の腕を掴む。
「ごめん、あやまる。だから、あたしに錬金術教えて」
腕に縋りつきながら、アルモニはエドワードを必死に引き留めた。
.
