第4章 錬金術師が自治する街
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「あの晩、悲鳴みたいなのものが、聞こえた気がするんだ」
「誰の悲鳴?」
白く丸いテーブルを見つめて言うと、頭上から声が聞こえた。
振り向けば、こげ茶色の陶器のプレートを持ったエリスが立っている。
エドワードの隣りにプレートを置き、椅子を引いた。
「何を選んだの?」
「卵のサンドイッチとひよこ豆とトマトのサラダよ」
ワンピースが皺にならないように、裾を広げながら座る。
「可愛い朝ご飯だね」
トーストより野菜や果物が多くのっているプレートを見て、アルフォンスは言った。
エドワードは、彼女が選んだ食材に反応する。
「豆・・・」
「何よ」
「いや、別に」
昨日から身長に纏わる単語に過剰な反応を示すエドワードに、少し呆れ顔で尋ねる。
「エドっていくつなの?」
「15だ」
「じゃあ、これからまだ伸びるんじゃない?」
そう言われ、エドワードはパァーと明るい表情になる。
「そっかあ?そうだよな、うん」
「それで?」
「なんだよ」
「誰の悲鳴が聞こえたの?」
「俺たちが、ダブリスに帰る前の日の晩。教授の研究室の方が騒がしくなかったか?」
「え?そう・・・だった・・かな?」
アルフォンスはその時の事を思い出そうとするが、全くと言っていい程記憶がなかった。
「俺も、ねぼけてたからハッキリ覚えてねーけど、研究室の方から聞こえた気がするんだ。多分、女の・・・声」
夕べ見た、夢の中の悲鳴
なぜ急に思い出したのだろう
街に溢れるキメラの姿
壊れた教授の家
それらが、3年前の記憶を呼び起こしたのだろうか
「それが、セレネが死んだことやキメラのことと、関係があるっていうの?」
「ん・・・いや、別にそこまではな。教授に会えば、いろんなことがハッキリするんだろうけどさ。でも、やっぱりこの身体で会うわけにはいかないよ」
「うん・・それは、そうだね・・」
真相を究明しようにも、情報が少な過ぎる。
情報を手に入れる為には、ヴィルヘルムに会わねばならない。
人体錬成したことを知られたくない以上、それは是が非でも避けたい。これ以上の詮索を諦めたエドワードは、思い出したように言った。
「そうだ。謎と言えば、教会でいきなり襲ってきたあの女は、結局何者だったんだ?」
そう問い掛けると、エリスは食べ終わったプレートを持って立ち上がる。
「ごちそうさま。片付けてくるわ」
「あの女の人も謎だよね。兄さん、それ、ボクが返してくるよ」
エドワードが使ったプレートを、アルフォンスは指差した。
「じゃあ行くか」
テラスから歩道に出て、また歩き始める。
「そういやエリス、お前年はいくつーー」
後ろを振り向きかけた時
「エド!危ない!」
「え?うわッーー!!」
ドンッーーと、前から歩いて来た男に、左肩がぶつかった。
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