第3章 ヒースガルド
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「本当に、この街はキメラの巣窟になったみたいね」
放り出してあったトランクを持つと、改めて辺りを見渡した。
エドワードも自分のトランクを拾い上げる。
「じゃあ、やっぱり教授は・・」
「滅多なこと言わないでってばっ!教授は、セレネと2人でどこかに避難しているかもしれないじゃないか」
決して悪い方へ考えないアルフォンスに、エリスは笑顔を向ける。
「そうよね。そういえば、湖の先に教会があったわ。もしかしたら、そこに街の人たちと避難しているのかも」
「よし、いってみるか」
住宅街を抜けると、湖から街へと続いている用水路が見えた。
ヒースガルドは辺境の地ではあるが、こういった設備はよく整えられていた。
「この水路に沿って行けば、教会に着く筈よ」
しばらくは何事もなく歩いていたのだが、湖のほとりに近づいた時、アルフォンスが歓声を上げる。
「うわぁ、きれいな魚だね。兄さん、 エリス 」
「こんなの初めてよ。黄色のフグが舞ってるわ」
ヒラヒラと昆虫のような羽をつけた、黄色のハコフグが数匹飛んでいる。
前から見ると魚だが、身体の後ろは蜜蜂のような針が見える。魚と蜂を合成したキメラなのだろう。
「へぇ~・・・・・って、フワフワ浮きやがって、ふざけんなこのやろう!!」
目を吊り上げて、直ぐ傍に立ち枯れていた木に両手をつける。
枯れ木は見る見る形を変え、輪切りの状態で積み上げられた。
もう一本あった枯れ木から木槌を錬成すると、積み上げた木を下から叩いた。
「おりゃあ!!」
叩かれた輪切りの木がキメラに当たり、地上にボトボトと落下していく。
それを眺めながら、エリスが思い出したように口を開いた。
「だるま落としね」
「だるま落とし?」
「東の島国にある、子供のオモチャよ」
「へぇ~」
「ハァハァハァ・・・」
粗方倒し終えると流石に息が上がったのか、両膝に手を置いて整うのを待った。
「兄さん、そろそろーー」
「・・・むっ!?おいアル、あれを見ろ!!」
「えっ、何?またキメラ!?」
「違う、人影が見えたんだ。きっとあの小娘だ!」
「あの女の子が?」
「そういえば、すっかり忘れてたよ」
「やっぱり、教会に向かっていたのね」
「追うぞ!!」
茜色の空の下、ひとり佇む影があった。
「ーーほら見て。キレイでしょ、このお花。あたしが摘んできたの。たった1人でよ、すごいでしょ。 この花、いつもの実験に使うらしいんだけど・・でも、いいよね」
そう言うとしゃがみ込み、手にしていた花を一輪手向ける。
ほんのわずか淋しげな顔をすると、勢いよく立ち上がる。
「それじゃあまた来るから。バイバイ、お姉ちゃん」
手を振ると、くるりと踵を返した。急ぎ足で立ち去る影を隠すように、空は闇に染まり始める。
「アル、エリス、こっちだ!確かにこっちの方に来たぞ!!」
湖畔から続く荒れ果てた石畳を、エドワードは指差した。
しかし、エリスは走り疲れたのか、遥か後方にいる。
隣にアルフォンスの姿も見えた。エドワードはふたりを待たずに先へ進んだ。
「待ってよ、エド!」
「まったくもう・・何もそんなに本気で走らなくても」
立ち止まって息を整えるエリスの横で、アルフォンスはボヤいた。
石畳の先に、壊れたーーというより無理矢理引きちぎられたような門が、蝶番のおかげで辛うじて建っていた。
「あれ?いない?」
先に行ったはずの兄の姿が見えず、アルフォンスはキョロキョロと辺りを見渡した。
「くそ、見失った!どこに隠れた小娘ーー!!」
門の中から怒鳴り声が聞こえた。アルフォンスとエリスも中へ入って行く。
しばらく進むと、デコボコとした場所に出た。そこには枯れた樹木や、踏みつけられた草花がある。
以前は手入れの行き届いた庭園だったのだろうが、ここにもキメラが現れたのだろう。
やはり、見間違いだったのだろうか。
荒れ果てた庭を走り回るエドワードを見て、アルフォンスはため息をつく。
「もういいかげんあきらめなよ。こんな鬼ごっこをしてる場合じゃないでしょ。
あの女の子のことは気になるけど、今は、教授たちの無事を確かめる方が先決だよ。
それに、この街の列車が使えなかったら、セントラルに行く方法も見つけないと」
「それはわかってっけど・・だけどあいつは、このエドワード・エルリックの頭の上をだなっーー!!」
立ち止まったエドワードは、いち度は諦めかけたが、坑道の崖上から少女が落ちてきた時のことを思い出したのか、頭を掻き毟る。
くどくどと文句を言うエドワードに
「ねえ、エドって女の子にもてないでしょ」
「アハハ・・・」
そうだとも言えず、笑って誤魔化した。
.
