最終章 翔べない天使
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翌朝、ノイエ・ヒースガルド駅にエドワードとアルフォンス、アームストロングはいた。
事件も終息し、あとは復旧した列車に乗り、予定通り中央へ向かうだけだ。
屋敷へ行くついでに見送りに来たマスタングに、アームストロングが話しかける。
「調査は、終わったのですか?」
「調査も何も、肝心の研究所は消失してしまっているんだ、調べようがない。
賢者の触媒の錬成が、成功したという証拠もない。中央には、適当に誤魔化すさ」
詳細を報告すれば、ヴィルヘルムがキメラ錬成に加担していたことが、明るみにでるだろう。
そうすれば、キメラ錬成の真の目的、何より賢者の触媒の確たる証拠であるアルモニの墓を暴けと中央から命令が下るかもしれない。
旧市街の教会に墓は作ったが、当然、中はカラッポだ。
たとえカラの墓でも、暴くのは忍びない。
マスタングの気遣いに、アームストロングはふっと笑う。
「ふんーーまた、鋼のがいじけていたら、叱ってやろうと思ったが・・今回は、私の出番はないらしいな」
「しかし、今回のことといいマリィ殿のことといい、悲劇ですなぁ・・・あの子たちの心の痛み、我輩には手に取るようにわかりますぞ」
そこへ、ホークアイがやって来る。
「大佐ーー先程、ネムダ准将を捕らえたとの報告がーー」
「そうか、ご苦労。戻ったら、あれの取り調べか・・・」
うんざりするマスタングに、ホークアイは窓口で切符を購入しているエドワードたちを見る。
「エドワード君のお陰で、また忙しくなりますね、東方司令部は」
「エドワード・エルリックが行く先では、必ず何かしら事件が起きますからな」
「まあいい。今回は、ヒースガルドのキメラ事件のみならず、国家憲兵を指揮する将校の不正を暴いたのだ。
あの子たちには、また辛い結末になったが、これも彼らの功績だ。少尉ーー」
「わかりました。報告書には、記録しません」
「頼むぞ」
会話が一区切りした時、駅から出てきたアルフォンスがホークアイの姿を見つけ、駆け寄る。
「あ、ホークアイ中尉!」
アルフォンスの嬉しそうな声に、優しい笑みを向ける。
「エドワード君、アルフォンス君、気をつけてね」
「はい、中尉もお元気で」
「あら、エリスちゃんは?」
エリスの姿が見えないことに気付き、辺りを見渡す。
エドワードはアルフォンスと顔を見合わせた後、肩をすくめた。
「気付いたら、いなかったんだ」
屋敷を出るまでは確かにいたのにーーと、アルフォンスは呟く。
「まあ、もともと、同じ列車に乗り合わせただけだしな」
「なんだ、エドワード・エルリック。フラれたのか?」
「なーーっ!んなこたぁねえよ!!」
ムキになって言い返すと、マスタングがニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。
「鋼の、今度は女性の扱いも教えてやろうーーどうした?」
考え込むエドワードに、問い掛ける。
「いや・・・そういや、俺たち、エリスのこと何も知らないなってーー」
「そういえばそうだね・・エリス・ハーディって名前だけで、年もわからない」
改めて、エリスの情報の少なさに気付く。しかし、彼女自身、自分に向けられた質問をうまくはぐらかしていたように思える。
後ろ暗いことがあるようには見えないが、詮索されたくなかったのだろうか。
「・・・彼女は、錬金術師ではないのか?」
「え?エリスが?アル、エリスが錬金術を使ってるところ、見たことあるか?」
「ううん、見たこともないし、聞いたこともないよ」
首を振るふたりに、マスタングは腕時計を見る。
「そうかーー鋼の、そろそろ時間ではないか」
「あーーいけね、行くぞ、アル」
「それじゃ、大佐。色々ご迷惑をおかけして、どうもすいませんでした」
アルフォンスがペコリと頭を下げる。
「あぁ、気にするな。ここから先は管轄外だから、何をやらかしてもかまわんぞ」
「ぬおっ!?何を仰います、大佐っ!!」
「はははは、では、引き続き中央までの護衛を頼んだぞ」
「承知」
アームストロングとエドワードは敬礼して、踵を返す。
「ーーっと、忘れるところだった。鋼の」
振り返ったエドワードに、胸のポケットから白い封筒を取り出し、差し出す。
「君へのーーラブレターだ」
「ぁあ?何の冗談だ、それは」
渋々受け取るエドワードに、差出人を告げる。
「アルモニからの手紙だ。教授と一緒にアトリエに入る前に、君に渡すように頼まれていた」
「ーーアルモニの!?」
「列車の中で読むといい。確かに渡したぞ」
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