最終章 翔べない天使
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「来たか・・」
アトリエの前で、マスタングと軍服に着替えたホークアイ、アームストロングがエドワードたちを待っていた。
「ーーーアルモニは!?」
立ち止まるなり訊ねるエドワードに、中だと眼で合図する。
「サンキュ!!」
「待ちたまえ」
「見てわからないか!?急いでるんだ!!」
「報告なら、後でします」
「待てと言っている」
苛立つエドワードとアルフォンスを、再度止めた。
視線が合うと、ホークアイは銃口をエドワードたちに向ける。
アームストロングは、錬成陣が刻まれた手甲を着け構える。
「ーー何のつもりだ」
「頼まれたのでね。君たちを、入れてくれるなとーーー」
冷たく言い放つマスタングを睨み付ける。
「誰に?」
「・・・・・」
「あーそうか。だったら、力ずく通ってやるよ」
「お願いだから、言うことを聞いて」
「出来るか!!アルモニが危ないんだぞ!!」
「そのアルモニちゃんの気持ちも、少しは考えてあげて」
「アルモニの・・・」
一瞬俯くが、すぐに顔を上げる。
「そんなこと関係あるか!!あいつはーーあいつはーー俺の弟子なんだ。俺が必ず助ける!!それくらい出来なくて、何が師匠だ。何が錬金術だ!!」
「どうしてもか?」
「どうしてもだっ!!」
退かないマスタングに、拳を握り締める。
「あぁーー確かに俺たちは子供さ。でも、いつかは大人になる。けど、アルモニはそうじゃない。いまが全てなんだよ!!」
「なら、仕方ない」
マスタングは手袋をはめる。
焔の二つ名、サラマンダーの描かれたもの。
実力を行使しても、引き留める気だ。だが、引くわけにはいかない。
エドワードは、マスタングに向かっていく。
「そこをどけえーー!!」
マスタングに殴りかかろうとした時、アトリエから眩い光が放たれた。錬金術が起こす光だ。
光は空まで届く勢いでーーその光とともに、アトリエは跡形もなく消滅した。
エドワードはガックリと膝をつく。
「うそ・・だろ。ジョーダンだよな・・まだ何も、何ひとつ錬成出来てねえじゃねえか。これで終わり?終りなのかよ」
「・・兄さん、あれーー何だろう?」
まだ輝きが消えない光の中心に、白い羽が浮かんでいるのをアルフォンスが見つける。
「アルモニの・・・・」
エドワードは近づく。それを少し離れた場所からエリスは見ていた。
「賢者の触媒・・・か」
羽を両手で包むと、エドワードの頭の中に何かが流れ込んで来た。
床に描かれた錬成陣の上に、アルモニは横たわっていた。眼を開けると、ヴィルヘルムが映る。
「痛むかい?アルモニーー」
優しい眼差しに、アルモニの口元が緩む。
「・・・パパ」
「お前は、恨むかもしれん・・」
「変なパパ・・恨むなんて・・・」
「もういい、喋るな・・お前にはわからなかったろうが・・
私は、誰よりもお前を愛してきたつもりだ。
だが、私にはわからなかった。お前にとって、何がいちばん幸せなのか。
お前の幸せのために、何をしてやればよかったのかーー」
「バカだなぁパパ・・私、ちゃんとわかってたよ。だって、パパの娘だもん。パパ・・」
「何だい?」
「私、パパの娘だよね?」
「バカはお前だ。あたりまえだろう」
「そっか・・ふたりともバカなんだ・・・やっぱ、親子だねーーうっ!!」
苦痛に顔が歪む。もう、時間がない。ヴィルヘルムはアルモニの身体を優しく抱き締める。
「アルモニーー安心しろ、ひとりでは逝かせん。これは、私たちだけのーーー」
父の胸の中で、アルモニの顔に喜びが溢れる。
「ごめんね、エド・・でもね、わたしーーー」
ーーー幸せだよ
全てを伝え終わると、羽の光りが消えた。
「バカヤロウーーバカヤロウが・・・それで満足だってのかよ」
嘆くエドワードの後ろに、神父が立った。屋敷の窓から、光を見たのだろう。
「あれは、笑っていたかい?エドワード君」
「・・・あぁ、笑ってたよ。教授もアルモニも、笑いながら死んでった・・・」
「そうか、笑っていたか・・ならば、悲しむ必要はない。2人はきっと、幸せだったにちがいない。
たくさんの過ちを犯したヴィルヘルム教授だったが、最後に最良の選択をしたんだ。
もっとも辛い、最良の選択を・・・」
神父は言うが、エドワードはまだ項垂れたままだ。
「こんなーーこんなのが最良の選択かよっ。何も、死ぬことなんかないだろ!他の道だってあったはずだ。それなのに・・・また俺はーーー」
「兄さん・・・」
「エドワード君、こんな時になんだが、君に、頼みがあるんだが」
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