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イーストシティー(東部)からアメストリス国の首都、セントラル(中央)へ向かう汽車が停車しているホームは、それに乗る客と見送りの者で、ごった返していた。
「もう~、なかなか電話に出ないんだもん」
改札を抜け、人々を掻き分けて進みながら、少女は独り言ちた。
駅に向かうのが遅れたのは、ホテルを出る前に掛けた電話に、相手がすぐに出なかったからだ。
「ほんとに楽しいーー旅でしたわ」
別れの挨拶をする婦人の声が聞こえた。
一瞥すると、上等な服が目に入った。首には、大粒の真珠のネックレス。指にはルビーにサファイア、ダイヤのリング。
きっと彼女は、一等車両か特別誂えの、コンパートメントに乗るのだろう。
「よいしょっーーとっ!」
二等車両の入り口から乗り込むと、重いドアを引っ張り、車内を見渡した。
幸いこの車内には乗客が少なく、誰も座っていないボックス席は、すぐに見つかった。
「良かった、空いてて・・ん~~」
網棚にトランクを乗せようと、爪先立ちになる。だが小柄な彼女は、なかなか重いトランクを乗せる事が出来ない。
悪戦苦闘していると、不意に、トランクが独りでに網棚に乗った。
「あれ?」
振り返ると、青い軍服の大男が立っていた。この男が、トランクを乗せたようだ。
「ありがとうございます。えっと・・」
口ごもって見上げると、金色の口髭をはやしたいかつい顔が見下ろしていた。
「アレックス・ルイ・アームストロングだ」
「 エリス・ハーディーです。ありがとう、アームストロングさん」
幼なそうに見えた彼女の笑みは 艶やかで大人びていた。
「いやいや、これしきの事。 エリス殿は、独りで旅をしているのかね?」
「はい、友だちに会いにいくんです」
ヘーゼルの瞳が、嬉しそうに細まる。
「我輩は、あの席におる故。何か困った事があれば、遠慮なく云うが良い」
軍服を見ても物怖じしない彼女に、アームストロングのつぶらな青い瞳も、嬉し気に笑う。
そして、奥のボックス席を指差した。
その席には鎧を着た人物と、金髪を三つ編みにした、フードのついた赤いコートの少年が座っていた。
鎧の人物は、 エリス に向かって軽く会釈する。 エリス もつられて、お辞儀をした。
顔を上げて隣りの少年を見ると、彼は エリス に気づかないのか、窓枠に肘をついて、ホームを眺めている。
「では エリス 殿」
アームストロングは手を上げて、自分の席へ戻って行った。 エリス も固い座席に腰を下ろすと、見るともなしにホームに視線を向ける。
発車の合図が鳴り、汽車はゆっくりと走り出した。
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