エピローグ
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十日後。
イーストシティーからアメストリス国の首都、
「ほんとに楽しいーー旅でしたわ」
客たちを掻き分け、見送りを受ける裕福な女性の横を通り、エドワードたちは汽車に乗り込む。
トランクを網棚にのせていると、ドアが開き、客がひとり入ってくる。
アームストロングが見るともなしに見ていると、その客はトランクを網棚にのせるのに難儀していた。
アームストロングは席を立ち、近づいた。
「これでやっとセントラルに行けるな」
発車の時刻を示す駅の時計を見上げ、エドワードが呟く。
「ずいぶん色んなことがあったから、すごく遠回りになっちゃったね」
「ご苦労であったな、エドワード・エルリック。良い働きだったぞ」
戻ってきたアームストロングが、エドワードたちの向かいの席に腰を下ろした。
「よい働きはいいけど、そのわりには誰ひとり見送りに来ないってのは、どうなってるんだろうね」
「東方指令部の者たちも忙しいのだ。それから、アーレン殿だがーーあれからまた、旧シャムシッドに戻ってしまった」
「シャムシッドに?」
「余生をあそこで過ごすと云って聞かんのだ。まだ、一般人は立ち入り禁止なのだが」
「ふう~ん・・」
「ねぇ、兄さん・・もしかして、ボクたちもクロウリーさんと何も変わらないのかもしれない。一歩間違えたら、ボクたちがクロウリーさんになってーー」
「間違えないさーー」
アルフォンスの言わんとすることを遮ると、エドワードは白い手袋をはめた掌を見る。
「俺たちは、その一歩だけは間違わない。俺たちは、絶対に自分たちのために、他の誰かを代償になんかしない。
自分たちのために、他人を犠牲にするなんて、そんなの等価交換じゃないんだ。
だから俺たちは、別の自分たちの道をーー何だよ、少佐」
自分をじっと見るアームストロングに気づき、エドワードは怪訝な顔をする。
「今回の一件で、大きく成長したようだな、エドワード・エルリック」
「え?何?大きく成長した?いやあーー」
『成長』したの意味を履き違えるエドワードの耳に、発車の笛が聞こえた。
流れ始める景色に、窓の外に眼をやる。汽車に手を振る見送り客。
その中で、穏やかな顔のクロウリーとエルマが手を振っていた。そしてーー
「ーーー!!」
彼らの隣で、 マリーゴールドとアニスが手を繋ぎ、微笑んでいた。
ふたりの手首には、ブレスレットがつけられていた。
薄いピンクのブレスレットはマリーゴールドに。薄紫のブレスレットはアニスに。
窓から身を乗り出し、4人を見つめる。だが、瞬きをした刹那、それは娘をふたり連れた夫婦に変わった。
「どうしたの?兄さん」
放心した様子で座り直したエドワードを、アルフォンスは気遣う。
「ーーーいや、何でもない」
それは、そうであって欲しいと願うエドワードの心が見せた、幻だったのかもしれない。
汽車は小気味良い汽笛をひとつ鳴らし、一路、セントラルへと向かった。
終
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