最終章 赤い涙
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「いくぞーー」
「うん」
エドワードとアルフォンスが、台座に両手をつく。すると、エドワードの指にはめられた、赤い指輪が光り出した。
それに呼応するように、錬成陣の文字も光り出す。
同時に、赤い石を中心に風が渦巻き始めた。アーレンが帽子を押さえる。
風は、ゆっくりと石を持ち上げた。
4人とひとりが見守る中、石は眩い光りとともに、割れた。
「うわぁーー!!」
「石がーー」
「割れた・・・」
石が割れると同時に、風がやんだ。
「ーー石の力が、解放されたんだ」
割れた石の欠片が、雪のように部屋中に降り注いだ。
ひらひらと ひらひらと
エドワードが掌にそれを受けると、赤い欠片はふわりと消えた。
何度目かわからなくなったゴーレムの復活に、マスタングは舌打ちする。
「くそっ!まだ甦るのか!!鋼の!そう何分も持ちこたえられんぞ!!」
人ではない相手に、さすがの焔の錬金術師も、疲れが見えていた。
アームストロングも同様だ。
気丈に戦うリザ・ホークアイも、口には出さないが、動きが鈍っている。
認めたくない限界を、マスタングが感じ始めた時ーー
「これはーー!?」
突如、ゴーレムの身体がドロドロと流れ出した。そして、その泥は動かなくなる。
ホークアイは、銃を下ろした。
「きっと、エドワード君がーー」
「そうか。やったな、鋼の」
マスタングは、ホールの奥を見た。
赤い石の力が喪われ、シャムシッドの街が崩れ始める。
「台座の錬成陣は、あんたに残った、人間としての最後の心だったんだな。クロウリー・・・」
降り続く赤い雪の中、玉座に座るミイラにアーレンは語りかけた。
だが、感慨に耽る間もなく、建物が大きく揺れる。
「地震ーー!?」
揺れがおさまると、アーレンは帽子をかぶり直す。
「部屋が崩れるぞ」
「急いでここから出よう!!」
「ああっ!」
走り出したアーレンに、エドワードも続く。アルフォンスもその後を追おうとした。
「あれっーー マリィ !?」
ついて来ない マリーゴールド に、アルフォンスは立ち止まる。
「 マリィ !早く逃げないと!!」
急かされても マリーゴールド はただ首を振る。
「私はーー行かない」
「何言ってんだよ。ここにいたら死ーー」
・・・
「だからーー行けないの」
マリーゴールド の云わんとしたことを理解したアルフォンスは狼狽する。
「でもーーだってーーイヤだよ!!兄さん!!」
言葉を探しあぐねエドワードを見る。しかし、エドワードは振り返らない。アーレンも押し黙っている。
「行くぞ、じいさん、アル」
「あぁーー」
「兄さん!!!」
走り出したエドワードの背中に叫ぶ。
今いちど立ち止まったエドワードは、掌を握り締めて怒鳴る。
「いいから来いーーっ!!」
「兄さんーー」
行ってと、 マリーゴールド は微笑んだ。アルフォンスは、後ろ髪を引かれる思いで何度も振り返りながら後を追った。
「エド、ゴメンねーーーありがとう・・」
走るエドワードの背中を見送る マリーゴールド の眼から、赤い涙がひと粒、零れ落ちた。
.
