第9章 愛しい人
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燃える炎が、赤い石を抉り取る。
ヒィアアアアァァァァーー!!
胸から剥がれた石が床で跳ね、二つに割れた。
女は断末魔のような悲鳴を上げ、転がりながら花壇に倒れ込む。
部屋の中の花壇は、踏みつけられ蹴散らかされ、無惨な有り様だった。
その上に横たわる女に、恐る恐る近付く。
「死んじゃったのか、なーー?」
アルフォンスが呟いたその時ーー青白い光りが女を覆った。
光りが消え始めると、アーレンは驚愕する。
「そ、そんな・・まさか・・まさかーー!!」
「じーさん?」
「アーレンさん?」
いぶかしがるエドワードたちをよそに、アーレンは膝をつき女の上半身を抱き上げる。
怪物は、美しい女に姿を変えていた。
「エルマ・・エルマーーッ!!しっかりしろエルマ!!エルマ!!」
「アーレン・・」
エルマはうっすらと目を開け、アーレンを見上げた。
「エルマって・・あのヒトのーー」
「あぁ・・」
エドワードはマリーゴールドに頷いて見せる。
「どうして・・・」
3人はエルマを囲んだ。
「エルマ・・あの怪物があなただったなんてーー」
「アーレン・・お願い・・・石をーー石を壊してーー」
嘆くアーレンの腕の中で、エルマは消え入りそうな声で懇願する。
「石?石とはなんです?」
「大きな・・大きな赤い石・・・それを壊せば、あの人はーー」
「ーー赤い石ですね。わかりました。きっと壊します」
約束するアーレンに、弱々しく微笑んだ。それから、いち度苦し気に瞼を閉じた後、エルマはエドワードに笑みを向ける。
儚い笑みだった。
「・・・ありがとう」
ーーーどうか、自分を責めたりしないで
ーーーすべては、私が望んだこと
エドワードは、眼を反らした。
「お願い・・こんどはあのヒトをーー」
眼を反らしたまま頷いた。
すると、エルマはマリーゴールドを見た。
「ごめんなさい・・あのヒトを・・赦してーー」
「ーーはい」
「・・・ありがとう。アーレン・・」
エドワードとアルフォンスに礼を云い、マリーゴールドに謝罪したエルマは、アーレンを見上げる。
「エルマ、なんです?」
「ーーーさようなら、アーレン・・」
「ーーーエルマッ!!」
眼を閉じたエルマは、白い砂になった。
砂はエルマを抱き締めていたアーレンの指の間から、サラサラとサラサラと落ちていく。
「エルマ!!エルマ!!エルマ!!エルマーーッ!!!エルマ・・・」
どれだけ呼んでも、エルマはもう答えてくれなかった。
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