Lv1 空を駆ける船
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その日ーーー久し振りに、眠れない夜を過ごした。
君が消えた時と、同じくらい。
「ユウナさん、おはようさ~ん」
マスターの声に、ひとり、カウンターでコーヒーを飲んでいたアヤは振り向く。
「おはよう、ユウナ」
「おはようございます、アヤさん、マスター」
ユウナの美しい白い肌に、うっすらと隈ができている。
「ーーー眠れなかった?」
「・・・はい」
「どうぞなのね~」
差し出された皿には、トースト、オムレツ、サラダが見映え良く盛られている。
「マスター、ほんとに料理が上手ね」
「ありがとさ~ん」
「アヤさんは、料理は・・?」
そういえば、アヤが料理をしているところを殆どみたことがないなと思い、オレンジジュースを受け取りながら、話し掛ける。
「あ~、苦手というか、ヘタ。アーロンの方が上手だった」
アヤが笑いながら答えると、ユウナ自身も録に料理をしていないことに気付く。
「ナギ平原でアーロンさんが作ってくれた夕飯、美味しかったな~」
あれが、彼のストレス発散の仕方なのよと説明した。
「ユウナ・・・ほんと言うとね、私もイヤなの。ザナルカンドを見せ物にされるの。12年前、初めてあのドームに足を踏み入れた時ーーー」
カウンターに肘をつくと、顎の下で指を組む。落とした視線の先は、遠いザナルカンドを映す。
「生あるものは何一つないあの空間で、漂っているのは、死者の魂だけ。聞こえるのは、死者の言霊ーーその先に、未来なんてあるわけない。そんな絶望しかない場所に、笑い声がこだまする。
最初は、耐えられなかった。でも、忘れられるのも、イヤなの。
だから、ああいう形でも、みんなの記憶に残ればって・・」
たった2年で、千年も繰り返されてきた悲劇は、遠い過去になってしまったのだろうか。
それとも、哀しい過去を忘れたい人々が、遠くに追いやってしまうのか。
いつか、ナギ節をもたらすために命を落とした召喚士たちの名前すら、忘れられてしまうのだろうか。
愛する人を究極召喚で失ったーーー
この事だけは、ユウナとアヤ、互いとしか共有出来ない想いなのかもしれない。
哀しみの淵に気持ちが落ちかけたとき、個室の扉が開く音が聞こえ、バタバタと足音が近付いて来る。
「おはよー。早いねえ、ユウナん、アヤ」
リュックの明るい声が、2人の気持ちを掬い上げる。
「おはよう、リュック、パイン」
「おはようございます、アヤ。おはよう、ユウナ」
「さー今日もハリキッてスフィアを探そーー!」
「うん!!」
「あれ、アニキとダチは?」
皿を受け取りながら、リュックは2人の部屋を見上げる。
「ブリッジよ。情報集めてる」
「なんだなんだ、ヤル気が溢れてるな」
大きく口をあけてパンをかじる。
「フフッ、今度はちゃんとしたスフィアが見つかるかもな」
その時、アニキのけたたましい声が響く。
『情報だ!!カモメ団、全員集合!!』
「お!ウワサをすればってヤツだね」
リュックはトーストを持ったまま、立ち上がる。
「おぉ、来たか」
「リュッーーク!!行儀が悪い!!」
立ったままトーストをかじっているリュックに、アニキの雷が落ちる。
「だって、ちょうど朝ごはんを食べてたんだよ。お腹ペコペコ~」
「話が終わったら喰ってこい」
「それよりダチ。スフィアの情報は?」
「あぁ!すんごいスフィアがあるって情報だ!もう、大勢ひとが集まってるってよ!場所は、キーリカの森だ」
「すんごいスフィア・・・」
ユウナはうっとりと宙を見る。
「争奪戦だ!行くよね?」
「リーダーは俺だ!俺に聞け!」
リュックがユウナに訊くと、アニキが怒りだす。やれやれと、ダチはアニキに聞き直す。
「どうする気だ?」
「行くに決まってる!祭りだ祭りだ~!!」
腕を振り上げて叫ぶと、リュックも呼応する。盛り上がっていると、通信ランプが点滅した。
「ちょっと待て、緊急信号だ。アヤ宛に、SOSが来てるぞ」
「SOS?誰から?」
「ちょっと待て、今、繋げる」
スピーカーをONにすると、カン高い声がブリッジに響き渡る。
『ういうい!アヤさん、トーブリです!助けて下さい!一大事なんです!』
「誰?」
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