Lv1 空を駆ける船
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祈り子の間に足を踏み入れると、やはり、思い出さずにはいられない。
2年前、私たちはこの場所で、ずっと信じていたものをーーー捨てた
死の螺旋の合間に訪れる、束の間の平和
まやかしの、希望を
「はーっはっはっはっ!!」
感傷を遮るように、挑むような笑い声が響いた。
「誰ぇ!?」
「よくぞここまでやって来た!スフィアハンター諸君!!だが、タダでお宝を渡すわけにはいかないぞ!!」
「やるのか!」
パインは身構える。
「お宝が欲しければ、合言葉を言うのだ!!」
「合言葉?」
予想外の展開に顔を見合わせるが、すぐにシドや子供団が盛んに言っていたことを思い出す。
「ヒントのこと?」
「はいは~い!合言葉は、『サル』!!」
「惜しい!!最初のひと文字が足りないぞ!!」
「じゃあ・・・アサル、イサル、ん?イサル?」
『あ』から順に『サル』の前につけていくと、聞き覚えのある言葉に気付く。
「イサル?」
「ん?大きな声で!」
謎の声に促され、リュックは叫ぶ。
「イ!サ!ル!」
「正解!!」
そう言うと同時に、謎の声の主は姿を現す。それは、元召喚士のイサールだった。
「な、何してるんですか!?」
「これが、今の仕事だよ。聖地を見物に来た人たちのお相手さ。かつては、この地を目指して旅した身だからね。ここで働けるなら、本望だよ」
「そうなんですか・・」
「そうそう、忘れていた。はい、正解の記念品」
「ありがとうございます」
「こちらこそ、来てくれてありがとう」
礼を言うと、イサールは背中を向けた。
「ザナルカンド遺跡は、いつでも君たちを待っているよ!!」
そう叫び、広間へ歩いて行く。姿が見えなくなると、パインが
「元・召喚士も、色々、だな」
いつものクールな喋り方で呟く。
「そ、そだね・・・」
マローダが、イサールの近況をはぐらかしていた理由がわかった。
彼は、人々のために犠牲になろうとしていた兄、イサールを尊敬していた。だからこそ、最後まで見届けようと、幼い弟と共にガードになったのだ。
ザナルカンドで道化紛いの観光案内をしている今の兄の姿は、不本意なのだろう。
「じゃ、帰ろっか」
記念品を手に、満足気にリュックは踵を返す。
「うん」
「ちょっと待った。検索装置に反応があったんだ、どこかにスフィアがあるはずだろ」
「あ、そっか」
「スフィアハント、再開」
探知機を確認すると、点滅は祈り子の間より、更に奥にスフィアがあることを示している。
「ここから、更に奥があるのね」
「寺院には、まだまだ謎があるってことか」
「でもさぁ、ザナルカンドやべべルみたいにおっきな寺院はともかく、ビサイトやジョゼみたいな小さな寺院に何かあるとは思えないけど。ねぇ、アヤ。アヤーー?」
アヤはリュックの問いに、ニヤリと笑う。
「ウフフ、どうかな~」
「アヤさん・・怖い」
「さ、探索探索。行くわよ」
祈り子の間の奥ーーー
ユウナレスカは、ここで召喚士が苦難を乗り越え、揺るぎない決意を胸に秘めた召喚士を待っていたのだろうか
僅かな明かりを頼りに進むと、スフィアの反応が強くなった。
「この辺なんだけどなーー」
「あ、あったーー!」
崩れ落ちた壁の中に、鈍いスフィアの輝きを見つける。パインが掻き分けると、果たしてスフィアが埋もれていた。だが
「割れたスフィアかーー」
スフィアは半分に割れていた。辺りを探してみたが、片割れは見当たらない。
「無駄足だったか」
「割れた片割れが見つかれば、映像が再生出来るかもしれないわ。取り合えず、船に保管しておきましょう」
アヤはスフィアを受け取った。
ドームを出ると、ダチに迎えに来てくれるように告げる。
最初から、ここへ下ろしてもらえば手間は省けたのだが、あの場所に今一度立ちたかった。
思い出に浸るとか、懐かしいとかじゃなくてーーー
君は居たんだ
ただ、それだけを確かめたくて
待機していたセルシウスは、直ぐに上空に現れた。また、待ちくたびれたアニキが飛び降りてくるのだろう。
セルシウスを見上げながら、アヤはユウナに
「ユウナ、すっきりしない?」
ザナルカンドが観光地化していることについて訊ねる。
「・・・アヤさんは、平気なんですか?」
「・・脅威が去れば、人の気持ちも変わっていくわ。仕方ないのかなってーーー」
「私はまだ・・ムリです」
「いいんじゃない。イヤなものは、イヤで」
「ユウナ~!!!」
予想通り、アニキが飛び降りてきた。その一途な姿に、リュックは疎まし気に蹴りを加え、ユウナたちは笑った。
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